5話 道
今ある選択肢は三つ。
草原側から見て左に進む、草原側から見て右に進む、ここで誰かが来るまで待つ、の三つだ。
左の方向は草原と道の距離と方向から考えて一度近づくと思われ、右の方向はただ遠ざかっていく道に見える。
本当にただただまっすぐな道で、左も右も道の先が点となって消えている。
「どうしましょうか……」
そう彼女に問うと、彼女は腕を組み、目を伏せ俯いて少し考えた後、その問いに答えた。
「どうなるかと、どうしたしたいかで考えればいいと思う」
更に彼女が言ったことは、以下の通りだった。
どちらかに二人とも進んでみる。
どうなるか、それは疲れて、逆方向から追いかけるように歩く旅人しかいなかった場合、出会うことができない。
その場に留まる。
どうなるか、体力は温存できるけど、町が近ければ意味は少ない行動か。
反対方向に片方ずつ進み、誰かと会ったら逆方向に進んで追いかける。
どうなるか、どちらの方向からくる人にも対応できる。
が、野生動物のことを考えれば二人でも十分危険なのにもかかわらず更に危険になってしまう、その上二人とも疲れ、またここがどんな場所かも分からないから人さらいや言葉も文化も通じない人だったら更に困るかも知れない。
一番マシなのは……ここに留まることか。
たとえ近くに町が近くにあってもすぐに人が出てくる可能性は高い。
ということで、道の近くの木にもたれ、誰かを待つことにした。
●
1時間ちょっと待ったかな、といったところ。
初対面だが、互いにギャルゲの中のキャラっぽい人と、そのプレイヤーっぽい人。
適当な話をした後、どう会話しようか探っていたけど、それを考えていたら人が来た。
いや、人だけではなかった。
人と馬、そして馬車だった。
馬を操っている?男性は3、40代くらいの欧米人っぽい顔をしていた。
日本人が「外国人」と言われて思い浮かべる金髪の白人みたいな感じ。
英語は実践レベルではないし、他の外国語はできない。
おそらく科若さんもそうだろう、平均的な学力の学園の平均よりちょっと上程度の成績って設定に書いてあったし。
取り敢えず無難に話しかけるしかない。
この馬車を逃せば、次はないかもしれない。
無難に、そう、無難に……。
「ハ、ハロー?」
ど、どうだ?
「おみゃあさんら、あっこの草原から来たんきゃえ?」
すぅんごい日本語、そしてすぅんごい訛り。
どこかで聞いたような、そして今まで聞いたことがないような訛り方だった。
兎も角日本語が伝わるようで何より。
●
この人はエフセイ・グランさんという。
エフセイが名でグランが姓らしい。
事情を話すと、近くの村まで送ってもらえるらしい、感謝。
グランさんの話によると、10年前後の周期であの草原に人が現れるらしい。
定期的に表れ、大半が帰還する動きを見せるため、その対策、対応もあるらしい。
またその人たちのことを「流れ者」というらしい。自分たちも「流れ者」だ。
グランさんも10年ほど前、「流れ者」が帰るための準備をしているところに偶然遭遇し、野次馬として彼らが帰るところを見ていたらしい。
帰る方法はあるらしい、よかった。
帰るところは先ほどの草原、「霊気の平原」で行われるらしい。
帰る方法は魔法で行われるが、あそこは魔力が溜まりやすいため、ちょうどいいらしい。
魔法。
まあ、こんな不思議なことが起こって、帰る方法もあるのなら魔法とかがあってもおかしくないのかもしれない。
魔法の詳細は村に着いたら聞くとして。
先ほどの草原が「霊気の平原」と呼ばれていた理由は魔力が溜まりやすいのもそうだが、夜になると「出る」らしい。
この世界には魔法とやらがあるらしいのでアンデッドとかがいるのかと思ったが、この世界にはそういった類のモンスターは出ないらしい。
この世界における幽霊だとかゾンビだとかの認識は元居た世界と同じらしい。
……怖っ!!!
いや化け物が出ても困るけど、なんかこう……生々しいというかなんというか……。
そんなこんなを話している内に数十分。
森が開けて畑と木造の建物がぽつぽつ出てきた。
どうやら先ほど言っていた村に着いたらしい。
グランさんは村長に話をつけてくる、と、馬車をとある木造の建物の前へ停め、家の中に入っていった。
さて、どうなることやら。
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