50話 王国の遺物
本日は10話(実質7話)投稿します。
「ミハルさんは、その『カラムジン家』とやらについて、何か知っているんですか?」
「まあな。一応俺もこの国の人間で、それも比較的近くの旧領の家だったからな」
そうして、ミハルさんはこの国の領主、貴族の話をする前に、この国が「王国」から「連合」……いや、「共和制」へ移行したときのことについて、話してくれた。
「移行したときのこと」とは言ったが、これも100年くらい前の話なので、歴史書で見た話らしかった。
イズムルドという国が、未だに王制を敷いていたときのこと。
その時の国は王国の直轄管理領以外は貴族、もとい領主によって治められていた。
その領主たちによって治められていた土地は領主の権利が強くはたらく地であって、王が「命令」しても、それが了承されることは多くなく、王から領主らにするのは殆どが「請願」であったらしい。
一つ例を挙げると、一部の領主の領土のうち、外国に面している場所などでは、王の命令なく戦争……というか、紛争のようなものが行われていた。
王が知るのはその紛争が決したとき、なんてこともざらではなかったとのこと。
領主は王に大した請願をするわけでもなく、王も領主に税などを要求することはあったが、度重なる無視によってその要求は次第にしなくなっていった。
このようなかなり緩い、実質ほぼ上下関係がなく、あくまで書面上だけの上下関係だけで、王と領主の関係が数百年程度続いてきたらしい。
だがそんな状況も、ある事件によって大きく揺るがされた。
毎度のことのように勝手に国境を有する領土をもつ領主が紛争をし始めたとき、相手国の領土の範囲を間違えたのか、当時紛争していた相手の領主の地以外の、別の領主が治めていた土地にまで侵攻してしまったらしい。
そのことが理由で、その戦争を仕掛けた領土は2つの領土を同時に相手にする羽目になってしまい、また相手国の領土を複数侵攻してしまったことによって、相手国の国家軍がやってくることも時間の問題となってしまった。
侵攻していた領主が気づいた時には間違えて侵攻していた領土の領軍は来てしまっていて、和解交渉をできるような状況ではなかった。
そのうえ、他、イズムルドの領主はなるべくこの件に関わりあいたくないと自分たちの領土が敵国に侵攻されないように領軍を守るように配置し、援軍を送るということもほぼなく、数少ない援軍を送ったのはその領の「やっかいもの」を集めたような、金に困った傭兵や用心棒、果てには荒くれ者どもで結成された義勇軍しか送られてこなかったらしい。
流石にその報を知ったイズムルドの国王はすぐさま他の領主に援軍を送るよう命令し、王自身も王国軍を派兵することになったのだが、そして命令に従う領土などはなく、派兵した王国軍がその領土に着いた頃にはその領軍が壊滅していたのであった。
その戦争において王国軍は奮戦し、なんとかその領土が紛争を起こす前の国境線で和解することが出来るように持ち込んだのだった。
最終的にその領土の兵士の命が失われたというだけという、不毛な結果になってしまった。
当時の王はこの状況について重く見て、国家体制の変革に取り掛かったのだった。
最初は各地の有力貴族を集めた会議を定期的に行ったり、税の要求を全て無視するような領土に対して王国軍を送って圧力を掛けたりし、「弱い王制」から「強い王制」へ移行するようにはたらきかけた。
だが、これでは各地の領主に不満を抱かさるだけの結果となってしまい、その両方は失敗に終わった。
次に手を打ったのは、国家体制の根本的な変化であった。
領主の発言権を弱めるため、そもそもの王の発言権すら弱くし、また領主や王などによる惰性で行われる世襲の政をなるべく切り離すため、国家運営は国王やその家臣たちから議会を有する共和制政府へ、地方の運営は領主から地方行政機関へ移された。
一応、最初の1人目についてはすぐさま議会などで選ばれた人間には引継ぎが難しいため、国王と元領主によって運営されていたのだった。
また、全ての軍は国家軍に統合され、領軍という制度は全て廃止された。
因みに、「共和国」ではなく「連合」としたのは例え元領家の支配する土地に不満を持ったものが直接戦争や内戦を起こす前に連合内の別国家への移行、独立化、または特別自治州への移行をさせることによって無為な争いを減らすためであるのと、もし「連合」が戦争し、他の領土を手に入れた際、直接法を変えるとその土地の住民の不満を抱えてしまう可能性があるため、その領土に独自の法(以前の法)を敷き、徐々に慣らせていくという方針を当事の国王が考えたためである。
閑話休題。
移行はほぼ成功し、地方から中央政府まで比較的風通しの良い、命令が生きて届く環境が生まれた。
だが、この変革においてあまり変化のない場所があった。
それはもとから国家そのものに対してあまり発言権のない領土だった。
もとは「領主の発言権を弱くする」という目的によって行われた変革は、もとから発言権の弱かった地域では考え方の変革をすることは難しかったらしい。
そしてその「もとから発言権の弱かった地域」というのに、「カラムジン家の支配していた領土」も含まれているらしかった。
また、地域として中央政府からもあまり重要視されていないため、ほぼ世襲が黙認されている状況であったらしい。
「だからあいつはあんな昔の制度に固執した態度をしていたと思う」
そう言ってミハルさんは目を瞑って頷きながら自分の言葉を反芻しているようだった。
「兎にも角にも変な人に目をつけられてしまいましたね。とっととこの旅を終わらせて、再び会わないようにしましょう」
「桜木君が言うと、また会いそうな気がするんだけど」
「……」
なんかそんな気がしてきた……なんでだろう……。
「ま、まあ、桜木君の言ったことは正しいから、その通りにしたらいいと思う……!」
科若さんは慌ててフォローしていたけど、自分には科若さんが言った言葉が暫く頭から離れなくなってしまうのだった。
次話、次々話は設定などです。
良ければ是非ともご評価・ご感想を頂ければと思います!
ブックマークもお願いします!
書く気力に繋がります!




