48話 再訪
電力研究所のコモリ所長が言っていた「長い方の道」とは、一度「黒の森の東の村」を経由してから越境する、という道だったらしい。
「初めてこちらの世界に辿り着き、『霊気の平原』から出てきた地点」を過ぎて数十分、自分と科若さんは再び、ミハルさんとアズハにとっては初めての「黒の森の東の村」に到着した。
「お久しぶりです、えぇっと……イドリス村長」
「憶えとったか、サクラィにシンモ……やったか?」
名前を憶えていたか不安だったけど、それはイドリス村長も同じだったらしい。
「っちゅうことは、暫くはここで休むんきゃえ?」
「いえ。もう遅いので1晩はここの宿に泊まらせてもらおうと思っていますけど、明日の朝にはすぐに出ようかと」
「そうか?もし魔法とか、新しいモン覚えちょったら、ここでまたあの『試験』でもした方がいいと思うき」
「それって、したら何かあるんですか?」
「それは―――」
イドリス村長が言うには、高度な魔法を使えるようになって、それを更新しないとなると、何か問題が発生して、この国の官吏に見られると、怪しまれてしまうらしい。
そして、高度な魔法が使えるということは、それだけ魔法の知識が信頼できる人として、他の人格面においても信用に足る人物として扱われることもあるらしい。
もっとも、そんな問題に出会わないことの方が大事ではあるし、普通に暮らしていては、そのような状況に陥り、怪しまれたり、またその逆だったりすることもないらしいけど……。
「じゃあ、再試験を受けてみます」
自分が選んだのは、その資格の更新をすることだった。
自分たちは旅人で、普通に土地に根を張って暮らしている人とは違う。
それも、「帰るための転移に必要なものを集める」という、かなり特殊な目標が存在するのだ。
もしかしたら、まだ見ぬ「連合の府」や「飛竜たちの巣」で何か面倒ごとに巻き込まれてしまうかもしれない。
「皆はどうする?」
「じゃあ、一応念のために、私も受けておこうかな」
「俺も受けよう」
「私は……別にいいや。帝国の民がここの資格を持っていたら、帰った時に何か疑われそうだし」
とのことで、自分の他に魔法の試験を受けるのは、科若さんとミハルさんの2人となった。
アズハの言い分も分かるので、そのことに特に意見する人は自分含めていなかった。
「ところで、その試験って、最短でいつできて、いつ結果が返ってくるんですか?」
「試験自体は明日にでもできらぁ、返ってくんのぁ前と同ぃ、大体1週間くらいえ」
どうやら試験ができるのもその結果が返ってくるのも、最初にこの村に来たときの対応がデフォルトらしい。
そういう訳で次の日、以前やったような試験を再びして1週間ほど、前に泊まったところに4人で、男女分けで2人部屋に2-2で泊まることになった。
因みに、グランさんはここで分かれ、彼はイズムルド国内で様々な取引をするために、この村を出ていたようだった。
●
1週間ほど、自分たちはあの宿で宿代とご飯代を稼ぎ、余った時間は魔法や近接術などの訓練をして過ごしていた。
そして―――
「やっぱり、C種が2になってる……。他は全く変わらないけど」
「私はA種が2になってた……。ちょっとだけ中級魔法が使えて、知識もあんまりできたようには感じなかったけど……」
「俺はD種が2に上がってたな。ほぼ剣しか扱ってこなかったが、意外と上がるものなのか?」
……あれ?
これ、この4人の魔法の使える度合いを考えたら、自分がC種の出来る水準を1つ上げただけで、他2人も成長していたから、飛びぬけて自分ができていたわけではない?
そのうえ、全体で考えてみると、寧ろ弱くなっていることになってしまうと思う。
アズハももしかすると、彼女自身が考えているよりも魔法が使えるような気がするし……。
……いやいや、あまり考えないようにしよう。
アズハのように、前を向いて考えよう。
3人とも、魔法の技能が上がって良かった、と。
そして考えを改めて、この村を出ることに……する前に。
「おみゃさんら、その準備品は預けてったらどうきゃえ?」
そう言ったのは宿の女将さんだった。
確かに、転移に必要な準備物は旅そのものには必要ない。
という訳で、自分と科若さんはそれぞれ預けている場所に、「狂月花の種」と、「秋華滝河原の石」を預けた。
そうしてから女将さんとイドリス村長に挨拶を交わして村を出た。
●
そして村から「黒曜石の街」の間はある程度安全でもあり、「ヘイスト」を使えば1日で行けるため、科若さんの「エリアヘイスト」を使って、「黒曜石の街」に1日ほど使って移動し、またそこで、すぐさま「イズムルド電力研究所」に顔を出した。
「あー……そういうことになっちゃったかぁー……」
「すいません……」
「いやいや、いつかはこうなるかもと思っていたから、大丈夫だよ。それより、君たちが無事で、なによりだ」
コモリ所長にグライダーの件を謝った。
コモリ所長は苦笑いをしていたけど、特に怒っていたり、呆れていたりしている風ではなく、これから「流れ者」の行くべき場所のついでにグライダーの実験を兼ねた越境の必要性がなくなってしまったことと、できなくなりそうなことを懸念した顔をしていた。
使い勝手について話、自分たちが気まずそうにしていると、コモリ所長は大丈夫だよと言ってくれ、研究所を出やすくなったので、それで研究所を出て、「黒曜石の街」から「連合の府」に繋がる途中の街、「銀の街」に再び行くことになったのであった。
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