47話 あの場所
「おみゃらがいりゃ、携帯食料より食べ物らしい食べ物食えるかぁ、ありがてぇき」
「いえいえ、グランさんが居なかったら、僕たちは今頃あの検問で引っかかって、足止めを食らうどころか追い返されていたかもしれませんから、お互い様ですよ」
道中で獲った鳥を焼き、その鳥をグランさんに渡す。
朝昼晩、特別な事情でもない限り、それが毎食のこととなっていた。
検問所から過ぎて更に十数日が経ち、もうそろそろ近くの村にまで近づいたようだ。
あと数日もすれば、その村にまで到着するだろう。
「んま、もう少し上手けりゃまったく文句もねぇだが」
「ハハハ、碌な調味料もありませんからね、僕たちは」
「いんや、責めてるわけじゃねん。俺が荷馬車に香辛料だかを積み込んでりゃ良かったってことき」
「それこそグランさんの責任じゃないですよ。そもそも僕らと出会うこと自体、偶然だったんですから」
「そだな。まともなものが食えるだけ、感謝しなけりゃな」
そんな話をしていて、いつの間にか昼食を食べ終わり、移動を再開する。
「交代ですね。じゃ、上での見張り、よろしくお願いします」
「はーい」
「ああ」
昼休憩を挟んで見張りと休憩を交代するのは、グランさんと再会して、見張りと休憩をすることになってから決めていたことだった。
……。
自分とアズハはある程度打ち解けたけど、科若さんとミハルさんは打ち明けたのだろうか?
もし打ち明けていたなら、組み合わせを変えることも考えたけど、その考えに至ったころには、もう旅路の半分以上過ぎていて、変えても面倒と自分の中で落ち着いてしまったので、今もこうして休憩と見張りの組み合わせを変えないでいた。
「アズハはどう思う?」
「私は別に誰でもいいかなって。帝国の中で旅したときに結構上の2人とお喋りしたから」
……じゃあ、この「なるべく珍しい組み合わせをして息合わせ」を目指したのは、あまり効果がなかったのかんば?
いやいや、それは向こうの2人が……って、それについてを今考えていたんだった。
「アズハから見て、ミハルさんと科若さんは、仲良くなったと思う?」
アズハは「んー」と人差し指を顎に当て、上を見て考えてから口に出した。
「あんまり?」
「……というと?」
「『というと?』も何も、こっちはお喋りしてるからある程度仲良くなってると私は勝手に思ってるけど、ミハルは自分からお喋りする方じゃないし、クルミはそんなミハルを気遣って、何かいうって感じの人じゃない気がする」
「それもそうだね……」
「グランさん!上の2人は休憩してるとき、何かお話してる?」
自分が納得していると、アズハは馬を引いているグランさんに話しかけていた。
「どうだがゃ……。少しは話していることもあんが、おみゃら程はしてなんだな。仲が悪いっちゅうもんでもねんだが」
グランさんからも似たような評価を頂いた。
うーん……、やっぱり、この異色の組み合わせをするのはあまり成果の出たものでもなかったかも。
「私は、そうは思わないよ?」
どうやら口に出してしまっていたらしい。
「そうは思わないって?」
「ある程度長くいても会話のリズムが合わないっていうのも、今後、旅をしていくのに重要なことでもあると思う」
「どういうこと?」
「人っていうのは、どうしても息が合わせられないっていう組み合わせみたいのなのがあると思うの。それがたまたまミハルとクルミなんだと思う。それを加味して、旅の緊急時に、そういうことを考慮しながら、どういう組み合わせがいいのかを考えていくかとかもいいのかも。少なくとも、あんまりミハルとクルミを合わせず、別の組み合わせをしていくっていう感じで」
「……それなら別に、途中で変えても良かったんじゃない?」
「それだと、『本当はあっているんじゃないか』って考えちゃって、その組み合わせを状況によっては考えてしまうかもしれないから、その選択肢を潰すって意味で良かったと思う」
「そういう考えもあるか……」
「ま、私はあんまり暗く考えるのが嫌なので、そう考えるようにしたいって、こじつけみたいなものですけどね」
こじつけ、か。
ん?
「じゃあ、それが分かった今は、もしかして組み合わせを変えた方がいい?」
「別にそれもこじつけちゃっていいと思うよ?『この旅が終わるまで、この組み合わせでまだ何か息の合うことがあるかも知れないから、それを試す』……みたいな感じで?」
「そういうものかな?」
「それでいいと思うよ?」
そんなもんか。
「あー……」
とか思っていると、グランさんが何かを思い出したみたいで、声を出していた。
「サクラィ君、思ったよぃも、少い早めに着いよるかも知れんあ」
「そうなんですか?」
「ここ、見覚えないかぇ?」
「ここ……、ですか?」
そういや、確かになにか、見覚えが……っていうか、記憶頼りの大体ではあるけど、この地理的な距離なら、考えられる場所は1つしかなかった。
「もしかして……、『霊気の平原』……ですか?」
その疑問にグランさんは、短く応えた。
「んぁ」、と。
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