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44話 貿易路

「そろそろ、陽が見えてきたな」


「2人を起こします?」


「そうだな」


朝になった。


自問自答を繰り返し、自分の中で、多少は考えが落ち着いたと思う。


今日からは切り替えて、前に進もう。



さて、今日から本格的に進むこの道は、「イズムルド連合」が「ボルカン帝国」の先にある国々と貿易するために造られた道だ。


「ボルカン帝国」側のこの道の脇から入り、「イズムルド連合」の方に行くとなると、ほぼ真っ直ぐの道を進むだけらしい。


“ほぼ”、というのは、旅の途中で水を汲んだりするために、川や湖に逸れるための道があるからだ。


まあ、そんな道は、一日中歩いて見当たるかどうかくらいらしい。


水は希少とはいえ、毎日ほど汲んだりしていては邪魔になるので、1回で数日分の水を汲むのが普通であるためだ。


朝飯を食べ、歩く。


少し歩き疲れたら数分程度休み、また歩く……、の繰返しだ。


「ヘイスト」は使っていない。


「獣の森」で大変な思いをしたことから、無暗に魔法に頼らないようにしたいという、自分と科若さんの考えからだ。


もちろん、この森はそこまで危険な動物はいないし、盗賊なども現れることも少ないとは聞いている。


だけど、いざというのはいつ起こるか分からない。


確率は低くとも、それが起こったら大事になるのは明白だった。


そして今は、昨日のこともあるから、帝国軍の検問があるかも知れないからだ。


一応ここは既に「イズムルド連合」の土地だ。


しかしながら、表面上は平時である今、小規模な帝国軍の集団が入り込んでも国家間の問題にはなりえない。


この周辺国家には、「領土侵犯をしてみる」という「演習」が存在するからだ。


これは、実際に宣戦布告をして戦争になったときの想定というよりは、互いになんらかの異変や武力衝突、若しくは宣戦布告の誤報があった場合の対処という名目でも行われるためだ。


勿論その名目自体嘘ではないが、実際には互いに相手の国が強襲した場合にどのように対処するのかを見定める戦略上の偵察の任務で行われることの方が多いと、イズムルド電力研究所のコモリ所長や、帝国の騎士っぽい人が言っていたが。


兎にも角にも、なるべく早く「イズムルド」に戻ったほうがいいことに変わりはないみたいではある。


そういう意識が無意識下に存在するからか、足も早足になってしまっていたらしい。


「なんか今日は、お腹の減りが早い気がしますね……」


「そうですか?じゃあ今日は、今の内から狩りを初めて、その肉で昼食としますか?」


「異議はない」


「さんせ~い!」


小さくなったお腹の音を消すように言った言葉に科若さんが提案をし、ミハルさんは静かに、アズハは元気に返していた。


「勿論、僕もその方向で」


そして、昼飯前の腹ごなしも兼ねての昼食の調達が始まった。



「はぁ~、食べた食べた」


「私はまだこの、味のしない焼いた鳥は慣れません……」


昼食を終え、各々がちょっとした感想を言い合い、再出発をしようとしたときだった。


「何か来る……?」


「もしかして、帝国軍……!?」


科若さんとアズハのその言葉に、皆に緊張が走ったと思ったが、ミハルさんはただ一人、落ち着き払っていた。


「いや、これは帝国軍じゃない。帝国軍なら、もっと緊張感を出してきているだろう」


「とするとこれは、普通の行商人とか、ですかね……?」


ミハルさんは落ち着きながら、応えてくれた。


「その可能性もあるが、盗賊が移動しているというのもあるかもしれん。多少の警戒は必要だが、警戒心むき出しだと、盗賊も強情な態度で襲ってくる可能性もある。適度に注意するのがいいだろう」


「適度に注意って……」


「弓や棍棒にまだ手を掛けない方がいいだろう」


「……分かりました」


そうして少し待ってみると、音が近づき、その音についても分かってきた。


「これは……馬車?だとすると、盗賊ではないかも?」


「盗賊の中には馬車を使って行商人に見せかけての強盗をする輩もいるらしい。まだ安心はできない」


「そうですか……」


馬車の音に気を取られ、気を緩めそうになったときに、ミハルさんが気を引き締めてくれた。


「見えてきたな」


「あれ、というかあの人は……」


近づいてくる馬車の人に、見覚えがあった。


そしてその馬車の人は、気さくに話しかけてきた。


「ん?おみゃあさんら、こん道で立ち止まっらあなん、どした?……って、おみゃあさんらは……」


この訛りがキツイ声に、3、40代くらいの欧米人っぽい顔をしている男の人。


日本人が「外国人」と言われて思い浮かべる金髪の白人みたいな感じの印象を持つ、馬車の操り主と言えば、自分は……というか、自分と科若さんは、この人しか知らなかった。


「エフセイ・グランさん……?」


「確か……、サクラィ君と、シンモさんやったかな?その2人はどちらさんかぇ?」


名前は間違えられているのか、訛りでそう聞こえているだけなのか、ともかく、きっと会うことがないだろうと思っていた人に、再会することとなったのだった。

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