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43話 長い道

「ところで、桜木君はどうして『エンハンスヒーリング』を使えたの?」


「長い方の道」に行くために地図を確認しながら村の中を歩いていると、科若さんが話しかけてきた。


「それなんだけど、特にこれといった理由の心当たりはないんだよね。ここで科若さんを喪ったらマズいって思って、なるべく心を落ち着けて出来ると思ったから出来ただけで……」


「そうなんだ。出来るタイミングとか、コツとか分かればよかったんだけど……」


「私も使えたらよかったな~」


「俺も何か使えるようになれば遠距離で役に立つと思っていたんだが……」


他2人も自分が新しい魔法が使えたことに思うところはあったらしい。


実は既にある程度魔法を使えていた人が新たに魔法を使えるようになることはしばしばあるとのこと。


今まで知らなかった魔法や、何かの魔法の上位魔法など。


だけど、「ヒーリング」みたいな自分だけに効果のある魔法のみを今まで使えていて、「エンハンスヒーリング」のような他者に効果がある魔法を使えなくて、それが後から使えたという例は少ない。


それこそ今まで魔法の使えなかった人が使えるようになるのと同じくらいのようだ。


だからこそ、自分が新たに「エンハンスヒーリング」を使えたことに皆の興味が湧いていたらしかった。


皆には申し訳ないけど、特にこれといった回答が出来ないというのが結論だった。


直感的に「今、出来る気がする」という感じがしたというだけだ。


因みに、「エンハンスヒーリング」以外にC種の2の魔法である、「キュア」を試しに唱えてみたけど、特に発動することはなかった。


自分が使えるC種2の魔法は「エンハンスヒーリング」のみらしい。


今後も何か、新しく魔法が使えるように試したり調べたりしようと思うのだった。


……。


「ここが、『長い道』の方の入り口……ってとこかな」


「さっきの道よりは道路が整備されているように思えますね……。広めの獣道か、大きめの石を除いた道か、くらいの差ですけど……」


科若さんの言葉に、アズハは感心しながら道を眺めていた。


「早めにここから越境しないと、こちらの道にも軍の検問が敷かれるかもしれない。ここも早めに移動しよう」


「勿論です」


ミハルさんの意見にすぐさま肯定した。


もうそろそろ科若さんが氷の柱に貫かれ、兵士たちから逃げる際に掛けた「エリアヘイスト」の効果が切れるころだけど、特にそれを掛けなおすこともなく、なるべく早足で移動し続けていたのだった。


……。


「ここは……」


「やっとか」


自分たちの前に現れたのは、自分たちがいる一応非正規な道ではなく、より整備された国と国とを繋ぐ道だった。


「はい。この道を行けば、『イズムルド』まで着けます。途中まで『ヘイスト』で歩いていたり、早足で歩いていたりしたので多少は早く着くかもしれないですけど、大方の予想では大体3週間くらいで着く予定です」


「け、結構掛かるんですね……」


アズハは慣れないだろうけど、野営は4人で順番に夜の見張りを交代するから、毎日緊張と眠気に堪えなくても済む。


アズハのいないときに比べると、2晩に1晩は完全に眠れるので、負担が大分と軽くなった。


「ま、そのうち慣れるよ。そこまで野営は不快感ないしね。寝疲れはすると思うけど……」


「そうなんですね……アハハ」


アズハは苦笑いしていた。



「今日は、ここで野営するとしますか」


「そうだね、日ももうすぐで沈みそうだし」


ここは国と国を繋ぐ道。


しかも、「イズムルド連合」と別の国々とを繋ぐためではあるけど、少し「ボルカン帝国」を渡るグレーな道。


国の中の街道とは違い、宿屋や食事処があるわけではない。


「獣の森」よりは道が整備されているけど、食事と睡眠についてはそのときと同じようなものだった。


「今日は女性陣が寝ていてほしい。アズハは最初の野営で疲れたと思うし、僕は少し、ミハルさんと話したいことがあるから……」


「分かった」


「は~い」


そういう訳で、2人は寝るために用意した草むらを切り開いた場所で横になった。


……。


「いいか?」


2人からしてくる寝息を聞いてか、ミハルさんが話しかけてくれた。


「あ、はい。大丈夫です」


「今日のことか」


「そう……、ですね」


ミハルさんは腕を組み、溜め息を吐いていた。


それに合わせる意図はなかったけど、自分もなぜかそれに被さるかたちで溜め息を吐いてしまった。


「ミハルさんは……」


「前に……、な。盗人に荷物を奪われかけて、抵抗したら剣で襲ってきたからそれに更に剣を使ってやったらそれで……」


「そう、ですか……」


「どのことについて、悩んでいるんだ?」


「僕にも、分かりません。ただ、これで良かったのかって……」


焚火に照らされる自分の手を見る。


自分が直接手を下したわけではない。


そして、この手にもその感覚はない。


だが、そうなるように結果的に加担したのは、同じことなんじゃないのだろうか。


「ナオト、お前があの時魔法を使わなければ、俺はあそこで死んでいたと思うし、他の皆も無事では済まなかったと思う。そういうことを考えたのなら、それで良かったんだと思う」


「……」


「気にするな、なんて言わない。初めてああいう状況になって、全く気にしない方が珍しいだろうからな。今後に影響がないように、この夜、考えつくしておいた方がいい。それに答えが見つからなくても、それでいいと思えるくらいにな」


「はい。ありがとうございます……」


こうして、夜は更けていったのだった。

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