39話 判断
「帰ってきたね」
「その言葉を言うのは、私たちにとってはまだまだだと思うけどね……」
自分の言葉に、科若さんは優しく苦笑した。
「秋華滝河原の石」を2個ずつ、計4個を拾い、「ザ・ゴロイ」まで帰ってきた。
「ザ・ゴロイ」と「秋華滝」の往復までの間、アズハには食べ物の調達をしてもらっていた。
勿論、どれほど魔法……もとい、生きていくための手段があるのかを判断するためだ。
その結果はというと……少なくとも、今までの旅の経験と照らし合わせてみたら、大丈夫だった。
「ボルカン帝国」には「イズムルド連合」のような魔法の扱えるものを示す証明のようなものこそないけど、自分たちが判断すると彼女の魔法の扱いに関して、以下のようになると判断した。
A種2、B種0、C種1、D種0、E種1といったところ。
強化魔法と防御魔法が使えないのがやや難点かもしれないが、攻撃魔法の水準は2相当であるのは強かった。
遠くの鳥を捕らえるのに、風魔法の「ブラスト」を使って命中させ、鳥のバランスを崩すのは結構集中力がいる。
それは自分もたまに失敗してしまうほどの技能だった。
そして、回復魔法とその他の雑用などにも使える魔法も多少扱えるのはいいことだ。
また、鳥を捌くのもなかなか手際のいいものだった。
以上のことから、彼女を連れて行くのには、技術、技能面では問題ないと判断した。
残る判断材料は、アズハの家族のことだけになった。
……。
「ええっとつまり……大丈夫、ということですか?」
アズハの家にまで戻り、家族と話をした。
結果から言うと、問題は無いようだった。
弟さんの方はやや作業がいつもより掛かってしまっていた感じではあったらしいけど、それも慣れてきたらしい。
そして妹さんの方はというと、
「あー……はい。まったく」
とのこと。
最初こそ、科若さんが掛けた「エクスヒーリング」のおかげか、アズハのお母さんが少し手伝ったり、介護することもなかったりしたようだけど、それもだんだんと妹さんのみで、そしてやがて母親の介護をしながら家のことをこなしていたようだった。
「姉のことは私よりもできないことがあるなー……とは多少思うこともあったんですけど、いなくなっても案外一人で何とかなるものですね」
「はぅ……」
妹さんの言葉に、アズハはかなり落ち込んでいた。
「アズハ姉さん、あまり落ち込まないでよ。アズハ姉さんは帝国で魔術師として生きていく方が向いていると思うし、今からの旅もその経験を積むのと思って……」
アズハの家で会った妹さんは結構ストレートに言う方で、弟さんはそんな姉妹のフォローに立ち回る振る舞いを見せていた。
ともかく、アズハが自分たちの「イズムルド」へ戻るのに同行することが決定した。
「あ、じゃあ最後にまた少しお願いが……」
最後にされたお願いというのは、科若さんの「エクスヒーリング」をアズハの母にもう一度掛けてほしいというもので、断る理由もないものだったので、快諾した。
「じゃ、準備も終えたことだし、出発しますか」
「そうだね」
「問題ない」
「お姉ちゃん、本当に忘れ物とかない?」
「姉の威厳……」
「姉ちゃんたち、俺も見たから大丈夫だって!」
アズハの母は「エクスヒーリング」が改めて掛かっているとはいえ、安静にしていた方がいいとのことで、ベッドの上。
アズハの弟と妹が見送りをしてくれた。
「ケガなどをしないように、頑張ってください」
「ま、アズハ姉ちゃんなら大丈夫だと思うけど」
「君たちのお姉さんをなるべく安全に帰すように努めるよ……国境あたりまでだけど」
「そこから先なら俺だけでも付き添う。俺は色々あって……あまり土地には執着しないからな」
「改めて……行ってきます!」
こうして、彼女にとっての初めての本格的な旅……そして、自分たちにとっての帰還の旅が始まった。
●
「ところでアズハ、見送りのときの前、弟さんに『帝国で魔術師として生きていく方が向いている』って言われていたけど、あれってどういうこと?あんまり帝国についてあまり詳しくなくって」
「あー……あれかぁ」
アズハは人差し指を顎に指し、天を仰ぎ、少し何かを思い出すかのように話し出した。
「あれは基本的に帝国軍で働くか、魔法の研究職に就くかって話だね」
「軍の方はなんとなく分かるけど……魔法の研究職って何?」
「え?『イズムルド』でも、魔法の研究職くらいはあると思うけど……」
「……?」
困惑するアズハと、疑問符を浮かべた顔をするミハルさん。
「えぇと……僕と科若さんは『イズムルド』に来るまで、あまり魔法を使うような地域にはいなくて……」
研究職というと、やっぱりなにか実験をしたり、レポートを書いたりするのかな?
「そういうところもあるんだ……」
アズハは更に驚き、それから話を始めた。
「研究職といってもそれは2つあって、実際に魔法の理論を考えたり、実験結果を見てそれを論文どかを書いたり人とその助手として、魔法を実際に使う人の2種類に分けられるんだよ。私は魔法が使えるから、研究の助手として実際に魔法の研究の実践をする人だね」
「なるほどー……」
そういや研究助手というのもあったっけ……。
そんな話をしながら、一先ず州都に向けて歩いていくのであった。
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