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38話 秋華滝

結局、色々と足りていないものもあったので、それらを村で調達できるものは調達し、できないものはアズハさん加えた4人で相談しながら調整することになった。


そうこうしている内に、「ザ・ゴロイ」を出るのは昼前ぐらいになってしまった。


……本当に大丈夫なのかな、この娘……。


……。


「そういえば、アズハさんって……」


「アズハでいいですよ?私、皆さんよりも年下ですから」


「そ、そう?」


自分は年上だろうが同い年だろうが、それこそ年下だろうが、女性にはさん付けで呼んでいるから、この発言には多少戸惑ってしまう。


「じゃあ、アズハで……」


「はい!」


そう言った自分の口角は引きつっていた。


「アズハって、『秋華滝』に行ったことがあるって言っていたけど、どういうときに行ったんですか?確か片道2日くらいは掛かるって聞いたけど……」


「昔、お父さんが居たとき、家族で川辺に遊びに行ったとき、私、そのまま川に沿って走って行っちゃって……迷子じゃないですけど、疲れて戻れなくなってしまったことがあって……」


「な、なるほど……」


……本当の本当に、大丈夫なのかなぁ……。


いや、それは子供のときって分かってはいるけど……。



「ここが、『秋華滝』ですか……」


それから2日、特になにが起こるでもなく、目的地に到着した。


「ここで、この場所の河原の石を2個持っていけばいいんだっけ?」


「帰るグループで2個ずつだから、計4個だよね」


科若さんの言葉に、詳しい数を引き出して肯定した。


「ん?」


「ん?」


すると科若さんは何故か疑問符を浮かべて、それに対して自分も疑問符を浮かべた。


「え?」


「えぇ?」


「んぇ?」


「え……?」


そしてそれらを幾度か繰り返してしまった。


「……」


「???」


自分たちの会話を見て、ミハルさんは何か達観したような顔をして黙り、アズハは自分たち以上の疑問符を頭の上に並べ、首を傾けていた。


「え?いや……自分たちそれぞれの世界に戻るために2個と2個で計4個……だよね……?」


「えーと……私は桜木君の世界に行くつもりだったから、全部で2個だけで別にいいかなって思っていたんだけど……?」


「何故に……?」


科若さんが自分の世界に来るような話ってしたっけ……、してないよな……?


「桜木君、ちょっと……」


科若さんはミハルさんとアズハから聞かれたくないのかのように、少し2人から離れて、小声でも伝わるように顔を近づけてきた。


……科若さんはやはり綺麗だから、こんなに近づかれたらドキドキしてしまう。


科若さんの顔にも慣れて、話すだけで緊張することはなくなったけど、顔を近づけることなんてそうそうないし。


そう思っていると、科若さんは囁くように話し出した。


「まず私の世界は、桜木君の世界で売られていたゲームの世界なんだよね?」


「そ、そうだったね……?」


その手の話は「獣の森」へ「狂月花の種」を取りに行って、「銀の街」に戻ったあたりで話尽きたうえ、そこまで話すことも前よりは少なくなったから、そのことを思い出して困惑していた。


「で、おそらくだけど、私がトラックに轢かれたあとのことも桜木君は知っているんだよね?」


「そうかも知れないね……。で、でも、似ているだけの世界ってことも……」


「今はそういう可能性についてはいいから。……それで、その状態だったら、私は死んでしまうんだったよね?」


「ま、まぁ……そう、だね……」


「しかも、そのゲームの主要な話で、他の分岐を選んだときも、私は死んでしまうって」


「う、うん……」


なんか、ゲームのシナリオ思い出して泣きそうなだけど。


しかし、科若さんは自分の感傷には露知らず、話を続けた。


「つまりそれって、私があの世界に戻ったとして、どうにかなっても結局死んじゃう可能性は高いってことだと思わない……?」


科若さんは真剣な眼差しで、こちらの瞳を貫いていた。


「つまり科若さんは、そうした方がいいから、元から僕の世界の方に来ようと……?」


「そういうこと」


言いたいことは分かるけど……。


「でもそれって、僕の方がトラックに轢かれる可能性を否定できるわけでもないし、例え轢かれなかったとしても、科若さんは僕の世界に戸籍もないうえ、珍しい髪に瞳をしているから、もし無事に来られたとしてもかなり苦労すると思うけど……。それに、もし科若さんの世界に戻れるなら、戻りたいんじゃない?家族とかもいるでしょ?」


「それは……そうだけど……」


次に言葉に詰まったのは、科若さんの方だった。


「……」


科若さんは地面の方を見て、少し辛そうな顔をしていた。


彼女はこれでも、家族に会えなくなるだろうことなど、考えてはいたらしかった。


そのうえで、この選択を考えていたみたいだった。


うーん……。


そういうことなら彼女の意見を無碍にも出来ないけど……。


「じゃあさ、こうしない?」


「な……なに?」


涙目にこそなってはないけど、そんな少し潤んだ瞳で見ないでほしい。


いじめたくなっちゃう。


いや、いじめはしないけどさ。


「とりあえず、2セット分だけ持っていこうよ」


「それって……」


「もし、この旅が終わるときに、本当に僕の世界に来たいって思っていたのなら、僕の世界に来たらいいと思う。でも、途中で自分の世界に帰りたいってなったとき、2セット分がないと、また旅しないといけなくなるから……」


我ながら、普通のことしか言ってないな……。


「うん……わかった。そうする……」


その普通のことに納得してくれたのか、科若さんは了承してくれた。


……。


「話し合いは終わりました?」


「……」


アズハは自分たちにあまり深く突っ込まないで話を進めようとしてくれて、ミハルさんは剣の素振りをし続けていた。


「あ、うん。終わったよ」


「じゃあ、晩飯を食ってから、また戻るか?」


今度はミハルさんから聞いてきてくれた。


「いえ、今日はここで野宿してから、帰ろうと思います」


そう言って、今日は終わることにした。

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