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37話 提案

アズハさんと出会って、この「ザ・ゴロイ」に着いてから2日が経った。


昨日は考えながら「秋華滝」へ行く準備をしていた。


とはいえ、準備したのは科若さんの矢の調達、ミハルさんの剣の手入れ、保存食の調達くらいだった。


3人で考え出したのは、彼女の能力と、家の状態を加味してからになるという判断だった。


自分と科若さんはあまり彼女を同行させる気はなかったというのもあって、その判断というのも、ほとんど彼女を切ることに納得させるための材料になればいいと思っていたところもある。


ミハルさんはというと、同行させることについて、否定とも肯定ともとれない態度をとっていた。


……彼の態度はアズハさんの家に居たときのような挙動不審さはなかったけど、なにか腹に抱えたものがあるような感じがしたのはなぜだろう。


とにかく、今日の判断でアズハさんを連れていくかどうかを決める。


今の時間は朝で、残暑の余韻はまだ感じられないほどの時間帯だった。


そして、彼女の家の前に着いていた。


「これって、家の戸でも叩けばいいのかな?」


「どうかな……。今はまだ、早いとはいえ朝だし……」


「俺も、帝国の、それも田舎の村の礼儀については詳しくないな……」


3人で呼び鈴のない家にどうやって到着を知らせるか迷っていたところで、家の戸が開いた。


「あ、皆さんもう到着していたんですね。そうなら家の戸でも叩いて知らせてくれればよかったのに」


そう言って姿を現したアズハさんの恰好は、2日前に見た農作業を行う村人のような恰好ではなく、更にもっと動きやすそうなものだった。


「アズハさん、その恰好って……」


「はい!皆さんについていこうと思って!」


「まだ連れて行くって決めたわけじゃ……」


「勿論、分かっています。だから、今から判断してもらおうと思いまして」


「判断?」


どういうことだろう?


「皆さん、初めて合った日に話してくれた話によると、確か『秋華滝』に行きたいって話でしたよね?」


「そ、そうだね」


このことについては2日前、目の前にあるこの家の中で話したことだ。


「それで思ったんです。『秋華滝』の場所、私は知っているので、その場所まで私が案内します。その中で、私がどれだけ皆さんの旅に役立てるのかを判断してもらおうと思いました」


そういうことか、でも……


「家のことは?今はあまり動けないお母さんの代わりに、姉弟3人でなんとかやっていけているんだったよね?」


「それも、今回のことで判断してもらおうと思いまして。今回、『秋華滝』まで行くのと同時に、私の妹と弟がどれだけ家のことが出来るのかを試すこともしてみようと思っています」


「それで、大丈夫なんですか?」


科若さんが、もっともな疑問を投げかけた。


「お恥ずかしい話、家事については、妹の方が上手なんです。それに農作業の方も、力仕事ならもうすぐ弟の方が出来るようになってくる年齢ですから……。そういう訳で、今回の『秋華滝』までへの旅で私がどこまで旅でお役に立てるのかと、妹と弟がどれだけ家のことを出来るのかを判断すればいいのかと思いました。これで私が旅で役に立たなければ、若しくは妹たちが家のことで音を上げれば、私は同行しません」


「う~ん……」


彼女の言い分は確かだ。


彼女が旅に堪えられるかと、彼女の家族が彼女の不在に堪えられるか。


自分たちが本質的に問いたい部分はそこだったからだ。


確かに、自分たちが昨日まで話し合って決めた、「彼女の能力と、家の状態を加味してから」というものの通りだった。


判断の仕方について、前者は魔法や戦闘能力、生活力を見てから、後者は面談か相談(という名の同行させないための説得)をしようと考えていたけど……。


だが、彼女が言った方法はそれらより実践的で、再現性の高いものだった。


「う~む……」


だがなぁ……短期間とはいえ、どちらも判断しきっていない状態で実際に旅に出るのと同じ状態になるしなぁ……。


「桜木君……」


悩む自分に、科若さんが話しかけてきた。


「この件だけでも、彼女を一度、連れて行ってみたら?」


「そ、そう……?」


「確かに不安が残っているのは分かるけど、『秋華滝』までの道を教えてもらうのは確かに助かるから」


「……そうだな。クルミの言うとおりだと、俺も思う。特にここは『イズムルド』の外。俺たちが聞いている道の情報や、持ってきた地図がどこまで正確かは分からない。それに、例え彼女が俺たちに襲われたことを恨んでいたことを危惧しているのなら、それは問題ないと思う」


そうか、彼女が未だ恨んでいるということもさっきまで上手く言葉にはできていなかったけど、そういう不安もあった。


「……と、いうと?」


「3人と1人。まず勝てない。彼女が自分の命を無視して襲い掛かっても失敗する可能性は高いし、彼女が付いていきたいといった理由を考えると、彼女が命を懸けて襲い掛かるのは割にはあっていないからな」


……それもそうだ。


「ふむ……」


それに、「イズムルド」に戻ってからの話もある。


「飛竜の巣」に2人と「香り花の山」に1人で分かれて行こうかと考えていたとき、1人の方が不安だと考えていた。


彼女が加われば、2人と2人で丁度いいかもしれないと、今は思える。


「そう……ですね。じゃあ、取り敢えず、『秋華滝』に行ってこの村に戻ってくるまでの間で色々と試して考えてみるってことで……」


そういうことで、一先ず話はまとまった。


「じゃあ、一応確認しておくけど、念のために保存食とか、その荷物の中に入ってる?」


「あっ……」


「あー……。それとかを買いに行ってからかな?『秋華滝』に出発するのは」


先行きは不安が混じるものだった。

次の木、金は朝と昼の投稿です。よろしくお願いします。


良ければ是非ともご評価・ご感想を頂ければと思います!

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