36話小話6
小話です。今回は長めです。
世界観とキャラの掘り下げのはずが何故こんな長さに……。
「不遇サブヒロイン科若さん」
「秋華滝」のある山、「ゴラ・ゴスポディナ」。
そしてそこにある村「ザ・ゴロイ」に来て2日目。
アズハさんのことをどう判断するかを考えるその前に、旅の支度をしている。
ミハルさんは自分の剣の調整があり、その他の準備を自分と科若さんでするため、村を見て回っている。
取り敢えず、科若さんの矢を追加するために、武具屋に向かっていた。
「科若さん。もう大丈夫?」
「え?何が?」
「いや、アズハさんと初めて会った時のこともあるから、矢を見て思い出してしまって気分が悪くなったりしないのかなって」
「あー……。まあ、大丈夫……かな?」
「そか。大丈夫ならいいけど……旅の緊急時とかに影響が出そうなときは言ってほしいかな。みんなの命にも関わってきちゃうからね」
「流石にそこまで影響は出ないよ~」
科若さんは弓矢の関連具を見ながら、なんでもないように言っていた。
「科若さんって、結構運が悪いよね」
「え?」
「アズハさんのアレも事故みたいなものだったし、『獣の森』でも2回もオオカミに襲われたし……」
「『獣の森』のは桜木君も同じでしょ?」
「あー……襲われたっていうのは、噛まれたって意味で」
「そっちね。確かに……。私って、運、悪い?」
「周りから見るとそうかな……」
「この世界」に来てからもそうだし、科若さんの……、というか、「モモウィグの世界」での彼女の運も悪かったような……。
彼女は前の世界ではクラス委員長だったけど、主人公の所属するクラスだからか、色々な問題が起こっていたし、果てには全てのヒロインのルートで死を迎えるというのもある。
例を挙げれば、後輩キャラ、秋風竜胆のルートでは秋雨で増水した川に溺れる少年を前に、このキャラは立ち竦んで動けないでいるも、近くにいた科若が救助、少年の命は助かるも科若は亡くなり、それをこのキャラが後悔するようになる、という話だった気がする。
「でも悪運だったり、問題が起こった時の解決力だったりはかなりあるようには見えるけどね」
「う~ん……悪運はともかく、解決力の方はあんまり見せたことがないような……」
「あ、そっちはゲームの方で……」
「なるほどね」
ルート分岐点付近の彼女の死についてはともかくとして、彼女の周りで起こった事件の数々は、その多くを彼女が解決していた。
「解決力はそうだね……。家のことがあったからかな……?」
「家のこと?」
「私の家って、お父さんとお母さん。それと2人の姉がいるのは知ってたんだっけ?」
「2人の……?」
その情報は初耳だった。
ゲームのストーリーでは姉がいるということだけは知っていたけど、数や名前までは出てきていなかった。
「あー……長女の佳紀音姉さんと、次女の紀久美姉さんっていう姉がいるんだけど、そっちは知らない感じかな?」
「うん、知らなかった」
「まあいいや。それでなんだけど、私の家はそれほど裕福じゃなかったから、問題が起こったらなんとか解決しなくちゃいけなかったからね。それでその場の問題の解決力みたいな力が養われたのかも。私自身、あまり自覚はなかったけど……」
「はぇ~……」
うーん……、少し気になったことが。
「答えたくないなら良いんだけど……、『裕福じゃなかった』って言ったけど、それがもしかして弓道部をやめてバイトをし始めた理由と何か関係が……?」
「それは……進学とかの話でね?」
科若さんは咳払いを軽くしてから続けた。
「姉さん2人が大学に行って、私も大学に行く予定だったんだけど、どうにも家のお金と奨学金では足りなくなってしまって……アハハ……」
科若さんは乾いた笑いをしながら、左手で首の後ろを撫でていた。
「それで、1番上の佳紀姉さんは就活があるからしてなかったけど、紀久姉さんもバイトしてくれて、紀久姉さん自身の学費を稼いで家のお金を少しでも私に、って感じになったんだ。佳紀姉さんも、就活が終わって就職できたら私の学費の足しに仕送りしてくれるって言ってた」
「科若さんも大変だね……」
こういう話はストーリー上ではもちろん、設定資料集やオフィシャルファンブックでも載っていない話だから、かなり貴重な話なんじゃないか?
「そういえば、科若さんの行きたい大学ってどこなの?」
ついでに聞いておこう。
「一応看護系の大学かな……。そのあたりの事前に知っていた方がいい知識とか勉強していたから、回復魔法とかの扱いが得意になっていたのかも」
「そういう知識も回復魔法に関わってくるのか……」
「この世界じゃ、どれほど通用するのかは分からないけどね」
科若さんは悪戯っぽく笑っていながら言った。
最後に、科若さんが比べている矢を見て、さっき思いついて気になったことを聞いた。
「話、少し戻るけど、科若さんはなんで弓道部に入ってたの?」
「あれ?前に言ってなかったっけ?」
そうだっけ?
「聞いてなかった気がするけど?」
「ふむ……ま、いっか。弓道部に入ってた理由は確か……私自身の考えはなかったと思う」
「というと?」
「私のお父さん方の家訓で、『女でも自分の身を守れるようにする』っていうのがあって、それで何かやってた方がいいって感じで、弓道部に入ってたの。姉さんたちも、佳紀姉さんは剣道、紀久姉さんは薙刀とかやってたからね」
「みんな違うのをやってたんだね」
「まあ、私と紀久姉さんは“おさがり”が好きじゃなかったから、そうでないのを選んだって感じかな?今考えると、そのせいで家計が苦しくなっていたのかも……?」
「ハハハ……“おさがり”って、やっぱり嫌なモノなんだね?」
「桜木君は兄弟とかいなかったの?」
「直也っていう、小学5年生の弟が1人いるけど、僕自身直也を甘やかしたりして、自分の小遣いから新品を買ってあげたりしてたから、そこまで“おさがり”を貰う場面を見たことがないな……。昔は嫌がっていたような気もするけど、僕が新品を買ってあげた頃から“おさがり”を貰っても文句を言わなくなった気がする。むしろ少し喜んでたりしてたかな?」
「新品を買ってあげるって、かなり仲が良かったんだね」
「ま、弟が可愛かったっていうのもあるのかな?結構年が離れてるし」
「私は本当に“おさがり”ばっかりだったから、嫌だったのかも……。服とか基本的に“おさがり”ばっかりだったから。最近はバイトもし始めて、学費に回さなくてもいい金額は服に回してたってくらい」
「科若さんのお姉さんの服装って、どんなのだったの?」
「一言で言うと……『動きやすい服装』って感じかな?あんまり可愛くない感じの。まあ、服について、紀久姉さんは佳紀姉さんの服の趣味は大きくは違わなかったらしいから、私よりかはあまり不満がなかったみたいだけど……。私はもう少し、可愛い服が好みだったから、かなり不満があったなーって」
なるほど……。
ということは、科若さんのあの「清楚〇ッチ」っぽい服装を好む感性は科若さんの家庭事情が絡んでたのか……。
「桜木君?」
「はいっ!?」
「……今、かなり失礼なこと考えてたでしょ?」
「ソ、ソンナコトナイヨー」
「嘘だー!?」
こうして雑談をしながら、明日の用意をしていくのであった。
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