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34話 治療

この地域の民族衣装を身に纏い、褐色の肌にクリーム色の髪をしていて、目は伏せていて瞳の色は分からないが、年齢は自分たちより1、2歳くらい下の年齢くらいか。


自分たちが追い詰めていたのは、恐らく普通の、そんな見た目の村人の少女だった。


その衝撃に自分も、後から到着した二人も呆然としてしまっていた。


「う……うぅ……」


だが、少女の呻き声にハッとして、自分とミハルさんは駆け寄った。


「す、すいません……盗賊かもしれないと思っていまして……」


「俺が指示を間違えたんだ……追うことを止めることも、弓での牽制をさせないこともできた」


「いえ、あの時の判断ではまだ間違いと言い切れませんでしたから。……科若さん!……科若さん……?」


二人謝って、ミハルさんを擁護し、この中で唯一他人へ回復魔法の使える科若さんを呼んだが、彼女はまだ、呆然と立ち竦んでいた。


「わ……私、が……」


彼女は自らがしてしまったことに気が動転しているようだった。


「科若さん!」


「え、あ……えと……」


「一回、深呼吸しようか」


すー、はー、と深呼吸させると、ある程度は落ち着いたように見えたが、それが事の状況をより明確にさせて、再び動転しそうになる。


「科若さん、今は落ち着いて。この中で、他人への回復魔法が使えるのは科若さんだけです。大丈夫です。今手当すれば問題はないはずです」


彼女がパニックになってしまう前に、なるべく冷静に、落ち着いた印象を与えるようにゆっくりと、少し低めにした声で宥め、説明した。


「わ、わかった……。ふぅ……一回、矢を抜きますね」


「……」


矢が刺さった少女はぐったりとして、返事はしていない。


意識はまだあるようだが、太ももの太めの血管に刺さってしまっていたのか、結構血が出てしまっていて、怯え混じりの、そしてかなりの鎮静状態になってしまっていた。


科若さんは少女に刺さった矢を握り、強く引き抜いた。


ドバッ!


「「「!?」」」


結構血が流れていたが、それでも矢が血を止めていたのか、抜くと、更に血が流れだし、科若さん、ミハルさん、そして少女が驚いていた。


「みんな落ち着いて。科若さん、まだ間に合いますから、回復魔法を」


「う、うん……『エクスヒーリング』!」


彼女が、彼女の使える最上位の回復魔法である、「エクスヒーリング」を使った。


すると安らかな緑の光が輝き、少女の太ももの穴が元から無かったかのように、滑らかとなっていた。


「……」


その光景に、少女は怯えの表情を混じらせつつ、碧玉色の目を見開き、驚きの顔を見せていた。


「と、とにかくこれで、大丈夫だと思います」


「……」


少女は黙ったまま、脚を動かし、確認していた。


「問題はなさそうですか……?」


聞くと、少し驚いた顔で「は、はい……」と、呟くように少女は返してきた。


「何か、お詫びしたいんですが、何をしたらいいでしょうか……?」


明らかなこちら側の過失。


何か詫びなければならないとは思ったが、こちらも旅人。


多少の路銀もあるが、そう多い金額ではない。


あまり大それたことはできないけど、体を動かして許してもらえるならそれがいいかもしれない。


「うーん……」


少女は頭に指を当て、少し考えていた。


「じゃあ、取り敢えず、家に来てください」


少女はそう言って、すぐに歩き出した。


突然のことだったので、三人ともあたふたとしながら少女を追ったのだった。


……。


「ここは……」


少女は自分たちが少女を盗賊と間違えて追う前の道に戻り、その道に沿って歩いていたのである程度察しはついていたが、少女の入った村の看板と思われるものには「ザ・ゴロイ」と書かれていた。


実は本当に盗賊で、盗賊のアジトにでも連れてこられるのではないかと一応警戒していたが、その警戒は杞憂だったか。


村に入り、そのまま道を進む。


この村にはあまり外からの人がこないのか、時折、すれ違ったりする村の人に奇異の目で見られる。


そして、少女はとある家の前で立ち止まった。


「ここが、私の家です。どうぞ、入ってください」


そう言って、その家に少女は入っていったので、それに続いた。


「ただいまー」


「し、失礼しま~す……」


「失礼します」


「失礼する」


そのまま家の中に入り、居間兼客間のような場所に入った。


「お茶などはすぐに用意できませんが」


「い、いえ、急にお邪魔することになったのはこっちの所為ですから……。要件にも寄りますが、出来る事柄なら、要件を聞けばすぐにやって出ますから……」


「そうですか……。そういうことなら、要件を先に言ってもいいですか?」


「え、えぇ……」


科若さんは未だ、自分のしたことがショックだったのか、顔の青みを微かに残し、ぎこちなく応える。


「ふぅ……」


「……」


少女が一息吐いたのが場に緊張感を走らせ、自分たちは息を呑んで、少女がその望みを口にするのを待った。


「私の母を、助けてください……!」


少女はそう言って、深々と頭を下げて、刹那、この居間の空気を静寂と共に一層張り詰めたものにしたのだった。

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