31話 帝国
本日は10話ほど投稿いたします。
明日からは水曜日4回、それ以外2回の投稿に戻ります。
「ボルカン帝国」。
「イズムルド連合」に接している、軍事強国とされている国家。
複数の王国を属国とし、また帝国直轄領と、ある程度独自の自治の認められた州からなる国家だ。
食料自給率は「イズムルド連合」よりも程度低く、比率1を割っているが、一部の作物は国民の必要以上量が採れるので、それらを輸出して外貨を稼いでいるらしく、互いに仮想敵国ではあるがその貿易相手に「イズムルド連合」も含まれているらしい。
また、属国や「ボルカン帝国」との仮想敵国を共有する弱小国からの朝貢もあって食料や外貨を得ているとのこと。
そして今、自分たちがいる場所はその中でもある程度の自治を認められているらしい州、「グロム州」にいる。
自分たちが真に目指す「秋華滝」は「グロム州」の中にあり、帝国内でさらなる越境をしなくてもいいらしい。
ただ、「秋華滝」という場所は「グロム州」の中でも帝国の首都、「帝都」側……つまり帝国の奥地の方の山にあるため、到着まで時間が掛かってしまう。
国境から最も近い街から「秋華滝」への道のりは、(前回の「流れ者」からの情報が10年くらい前のものであるため正確ではないが)おおよそ1か月半くらい掛かり、行きと帰りで3ヶ月ほどだ。
また「秋華滝」付近の山々は、「獣の森」よりも穏やからしい。
具体的に言うと、「越境のときに時間の掛かる道」より少し危ない、といったところらしい。
「具体的に」なんて言っても、自分たちはその道を使ったことはないので分からないが。
兎にも角にも、グライダーで越境してから数日間歩き、「ボルカン帝国」での初めての村、「クライ・ラヴニニィ」という村に到着した。
「広い……」
この村、今までの「村」よりもかなり大きなものだった。
見てきた中で最も敷地の広い村とは、転移して最初の「黒の森の東の村」だった。
あの村は油を量産し、それを交易に使っているため、製油するためのアブラナのような植物が畑を広げていた。
それに加えて彼らが食べるための野菜を育てる畑もあったはずだが、それらと住宅なども含めてもこの「クライ・ラヴニニィ村」の方が広く感じる。
この村も多く植物を育てているようで、二種類の植物が見渡せる土地を占めていた。
一つは小麦か大麦か、それとも他の麦なのかは分からないけど、取り敢えず麦というのは分かった。
だけど、もう一つが分からなかったので、二人に聞いてみると。
「芋……かな?」
「芋だな」
芋らしい。
……芋ってこんな感じだったけ?
普段はスーパーに並ぶ姿しか見ておらず、芋の葉や茎なんて、幼いころの芋掘り体験以来見ていないような気がする。
あと、今がこの世界にとってどれほどの文明が発達した時期なのかは知らないけど、物語でイメージする中世みたいな世界だけど芋とかが普通にあるんだね。
魔法が発達しているせいか飲み水や汚水処理、貨幣や写本もそれなりにあって、識字率も結構高いのかな?
ま、今考えても仕方ないか。
閑話休題。
到着したときは昼過ぎだったので、取り敢えず宿屋を取ってみて、この国の雰囲気や情勢について調べることにした。
「―――という訳でして、旅をしているんです」
「そうかい。だが生憎、ここは分かる通り田舎でね。あんまり情報っつっても、そんなに詳しいものもないけど……」
宿屋の店主に聞いてみたけど、聞けたのは「イズムルド電力研究所」でコモリ所長から聞いた話に毛が生えたような情報ばかりで、有益な情報は聞けなかった。
ただ、話している言葉は通じた。
そのことについては、一先ず一安心といったところだろうか。
「そうだ、君たちの行く先の途中に『州都』があればそこで情報を収集してみたらどうだ?君たちの行先ってどこなんだ?」
だが店主は情報収集の提案をしてくれた。
「ええと……『ゴラ・ゴスポディナ』っていう山の滝です」
「また遠くの……それで、滝って言うと、グロム州側か?」
「はい」
「また遠くの」と店主は言うが、自分たちには「ヘイスト」があるから3週間で行けるはずだから、問題はないと思われる。
「となると、『ザ・ゴロイ』に寄るよね?」
「す、すいません。あまり、この国の地理に詳しくなくて……」
突然知らない地名が出てきて狼狽えてしまった。
「ああ、ごめんごめん。君たちはこの国の人ではなかったね。『ザ・ゴロイ』ってのは、『ゴラ・ゴスポディナ』のこっち側に唯一ある村だよ」
「そうなんですか」
「そう。だから直接行くよりも、そこで最後の準備をして、山に入ることを勧めるよ」
なら、そうした方がいいか。
「ゴラ・ゴスポディナ」に登るまではこの州の街道を歩くことになるので、食料や宿、そして安全などはあまり考えず、速度優先で移動できるけど、山に入ると「獣の森」のときのように食料や安全に気を払って登らないといけない。
「秋華滝」は「ザ・ゴロイ」から片道だいたい2日くらい掛かって着くという。
1日で着かないのは山道によるものだという。
山で傾斜があって、そして動物もいるから楽観視できないし、「秋華滝河原の石」を手に入れてからUターンして戻ってくるので少なくとも4日分の用意は必要だろう。
また、越境の時の山は登らず、グライダーで越境していたので、実際に「山を登り降り」したという感覚はなく、実質山に登るのは初めてだ。
「で、そこなら『州都』が途中にあるはずだから、寄って確認するといいと思う」
「あ、はい。分かりました」
山登りの懸念を頭に浮かべていると、店主は「州都」への行き方を説明し始めたので、素直に聞くことにしたのだった。
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