29話 越境準備
本日は10話ほど投稿いたします。
明日からは水曜日4回、それ以外2回の投稿に戻ります。
さて、「イズムルド連合」と「ボルカン帝国」の越える国境の近くまで来た。
近くとはいっても、「複数回のグライダーの離着陸で越えられる」という意味ではあるけど。
「それにしても俺はE種の魔法が使えないから、今まで旅が不便なものだと思っていたが、使えるとここまで楽なものになるとは。凄いな」
ミハルさんは自分たちのE種の魔法に感嘆の声を漏らしていた。
それはそれとして。
「ミハルさん、移動の途中で軽く説明しましたけど、今から実際に飛ぶ練習をしようと思います」
「聞いてはいたが、こんなので本当に飛べるのか?風の強い魔法が使える熟練の魔法使いが空を飛ぶことができるとは聞いたことはあるが……」
「少なくとも僕と科若さんで練習したときは飛べたので、ミハルさんと息を合わせることが出来たら問題は無いと思いますよ?」
「そうか……」
ミハルさんは思うところがあるのか、目を細めて首を傾げながらも了承してくれた。
「そのために息を合わせて練習をしようということです」
「ふむ」
というわけで、練習だ。
……。
危ないし、見られると困るので、少しでも人が通るような道では練習ができないが、山のふもとの森の中でも開けた場所で練習はできた。
「3、2、1、今!」
「っとと、すまない。またズレてしまった」
「いえ、大丈夫ですよ。安全に飛べることが大切ですから」
自分と科若さんが特異なタイミングで跳んでいるのか、それともただミハルさんのリズム感が少々、必要な分があるのか、結構時間が掛かってしまっていた。
コモリ所長は早ければ半日、遅くとも1日くらいの練習と言っていたけど、これは1日必要な感じかもしれない。
……。
そしてしばらく練習して、夕方になった。
離陸の練習、着陸の練習、荷重移動と風の魔法の制御で旋回する練習もある程度できはした。
「これで練習は良いでしょうけど、体力的にも時間的にも今日は無理だと思うので、グライダーで飛ぶのは明日にしておきましょう」
「明日の朝、飛ぶ前にもう一度離陸する練習をしとくといいかも」
「了解した」
「それじゃ、野営の準備をしますか」
という訳で、グライダーの練習を切り上げて、野宿の準備も始めた。
滑走路を広めることと薪の調達のために木を切って、その薪の回収と運搬、燃えやすいように草や枯葉の収集をミハルさんに頼み、そのあとに晩飯の調達に向かった。
……。
晩御飯を食べ終わり、就寝だ。
就寝は二人が寝て、一人が見張りをすることになっている。
これで就寝時間が二人で旅をしているときよりも増え、大分寝るときのストレスが減った。
それもあるけど、「獣の森」よりも危険な動物が少ない……というか、動物の気配が少ないから、見張りをする際の緊張も少なくなって楽になった。
っと、そんなことを考えていたら、見張り交代の時間になった。
「ミハルさん、交代の時間です」
「……ん?あ、ああ……」
科若さんも眠りが浅い方だけど、ミハルさんはもっと眠りが浅いのか、かなり寝起きの切り替えが早い。
「ミハルさんって、ちゃんと眠れてます?」
「どうした?」
「声を掛けたらすぐに起きてきますし、眠りが浅いのかなって」
こういうことも聞いておかないと、いざというときにミハルさんが寝不足で、危険な状況になってしまうかもしれない。
「一人旅をしていたとき、宿屋が近くになかったときとか、泊まる金を渋っていたときに野宿をしていたが、なるべくすぐに起きられるように立って寝るようにしていたんだが、そのときの癖かなにかが残っているのか、音だったりの異変を感じるとすぐに起きてしまう体質になってしまって。起きたときはスッキリしているから大丈夫だ。一人で旅をしていたときよりもかなり快適に眠れているから」
そういうことなら大丈夫……かな?
「明日は飛んで越境しますから、睡眠含めて気を付けてくださいね」
「それをいうならナオトもだろう。より強い魔法を使ってグライダーで飛ぶ主軸になっているナオトが眠れていないと、飛ぶのが不安になるだろう?」
釘を刺したつもりが、逆に言われてしまった。
「ハハハ……それもそうですね」
「そうだ。こうして話しているよりも、寝た方がいいぞ」
「はい。それじゃあ、見張りをよろしくお願いします」
こうして、眠ることになった。
●
「それじゃ、最後に確認しておきましょう」
朝食を食べ終えて、科若さんの鶴の一声でグライダーの最終調整というか、昨日の息の合わせ方や感覚を取り戻すことになった。
……。
「じゃ、これで十分ですね」
「そうね。あとは経路を確認して、越境するだけだね」
「……」
「ミハルさん?」
軽い感覚合わせが終わり、遂に飛ぶことになると、ミハルさんは無言になっていた。
「どうした?」
「緊張してます?」
「あ、ああ、少しな」
無理もない。
今までは飛ぶ練習といっても、大空で「飛ぶ」というよりは「跳ぶ」の延長上で、練習では周りの木々の上より高く飛んだことはなかった。
これからは周りの兵士などに気づかれないように山の間を抜けるため、山の頂上より高くは飛ばないが、しかしそれより高く飛ぶ予定だ。
「きっと大丈夫ですよ。慣れですよ、慣れ。練習のときより少し高く飛ぶだけです」
「そうか……」
「じゃ、ハーネスの確認をしましょう」
「分かった」
ミハルさんはいつも落ち着て冷静に判断できる人だし、問題はないだろう。
じゃ、息を合わせて頑張ろう。
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