24話 次の場所へ
本日は10話ほど投稿いたします。
明日からは水曜日4回、それ以外2回の投稿に戻ります。
新しい朝が来た、希望の朝だ。
ガタガタの二段ベッドとは違って、素晴らしい快眠だった。
というか、今まで地面に突っ伏していたか切り株に座りながらのどちらかだったので、これは逆に慣れない感じまでもあった。
それは兎も角として。
目覚めたのはいいけど、起き上がるのは躊躇われた。
何故なら今、自分の耳には布擦れの音が入ってきているからだ。
今起き上がったらおそらく、目に入るのは白い肌、耳に届くは黄色い叫び、そのあとに残るのは黒に汚れた経歴だろう。
この世界に経歴書があるのかは知らないけど。
とりあえず科若さんが着替えるまで待っておこう。
……。
布擦れの音が止み、カバンなどを確認するような音が聞こえる。
これで大丈夫だと思って起き上がる。
「……おはようございます」
「おはよ」
もし科若さんがまだ着替えていたらと思ってドキドキしていたけど、耳に届いていた情報と変わりなく、彼女はカバンの中身を整理と確認をしていた。
安心半分、失望半分。
……おっと、顔を引き締めないと。
科若さんは今、カバンを見てこちらを見ていないから大丈夫だけど、もし今自分の顔を見られたら何を考えているか多分、分かられてしまうだろう。
……。
「昨日はこれからの方針について話したけど、今から軽くこれから行く目的地と中継地の確認をしたいなと思って」
「分かった」
今日から行くのは一旦「黒曜石の街」まで戻って、「黒曜石の街」が有する「ボルカン帝国」との国境から越境する。
そして「秋華滝」まで行って「秋華滝河原の石」を取り、再び同じところから越境して戻ってくる、という道筋だ。
この“越境”、「イズムルド電力研究所」のコモリ所長によると、国境にある検問所を通るよりかは不法出入国の方がいいらしい。
というのも、「イズムルド連合」と「ボルカン帝国」は互いに仮想敵国であり、国家間の緊張があるため、例え通行許可証があっても検問所では顔なじみとなるような行商人か、大手で両国に名の知れた貿易業者、そして国家の役人や貴族など身元の知れた者が優先的に通され、それ以外の旅人たちは後回しにされてしまう。
そのうえ、自分たちみたいなこの地域では馴染みのない顔立ちの者がその国の珍しい石を取っていこうとするならば検問所で後回しにされる以上に検問をされることや、下手をしたらそのまま牢屋行き、なんてこともあり得るとのこと。
それを行き帰りの2回もしなければならないのだからそのリスクも2倍。
行きだけ検問所で誤魔化しながら入って別の場所から不法越境で帰ってくるという方法もあるけど、それでは土地勘のない自分たちがちゃんと帰って来られる保証はない。
それなら行きと帰りを同じ道筋にして、覚えがある道を帰ってきた方が安全だと思ったらしく、この方法をコモリ所長に勧められた。
改めて地図を見てもその通りに行けるかどうかは分からないけど。
「それは『黒曜石の街』で『イズムルド電力研究所』に寄ってより詳細をコモリ所長に聞けばいいと思う」
「それもそうだよね」
そうして、「銀の街」を発つことにした。
●
行きは慣れず、そして道なりに一本道とはいえ迷うことがあってはならないと思って少し慎重に進んでいったというのもある。
そして体力、魔力の温存ということもあって、「ヘイスト」などの旅の進行を早めるような魔法は使ってなかった。
だけど、それらを使ってある程度道の感覚が分かった状態で行くと、行きが2週間前後掛った道が帰りは1週間と数日で帰れるだろう。
……帰り、とはいっても「秋華滝河原の石」を取りに行ったあと、また1往復することにはなるけど。
それはそれとして、「黒曜石の街」に行く途中、道の半ばにあった掲示板に目に留まった。
「どうしたの?」
「いや、ちょっとね……」
その掲示板に貼られていた一つの情報が気になった。
「『炎の飛竜が街に飛来して壊滅状態』……」
場所は「連合の府」から少し離れた海沿いの街らしく、それが起こったのは2ヶ月ほどだった。
自分たちが「銀の街」に着く、少し前ほどか。
そしてその情報がこの掲示板に貼られたのはここ数日での話らしい。
どうやら街の人の殆どが犠牲者となって、生存者も重症を負った者とそれらを治療する者に充てられて、情報自体が遅れたというのが現状だったらしい。
その街を襲ったのは数頭程度で、確認できたのは多くとも片手で足りるほどだったとのこと。
つまりたった少数で一つの街を壊滅させられるだけの力をもっているということだ。
「……えーっと、こんなのがウヨウヨいるような島に行って、その鱗を取ってくるってことだよね、つまり……」
「……」
科若さんは黙ってしまっていた。
その飛竜と闘わなくていいというのが唯一の救いだけど、はっきり言ってそんなところには行きたくないというのが本音だ。
しかしながら、「炎の飛竜の鱗」を得ないことには、元の世界には帰れない。
「この被害を受けた街に行って、落ちてる鱗を探すってのは……」
「……本気で言ってる?」
「……ごめんなさい」
ですよね。
この考えは我ながらあまりにも浅はかで下衆な考えだった。
ただでさえ復興が必要な街に、そんな火事場泥棒というか、墓荒らしのような真似はできない。
たとえ手段を択ばなかったとしても、そのような希少なものはこの2か月でとっとと換金されて、復興の資金にされているだろう。
売られた鱗も何かに加工されるか、誰かのものになっているかで、「転送魔法」には使えそうにないと思う。
あまり下衆な考えはしないことにしよう。
科若さんからのイメージも下がり、他にも何か痛いしっぺ返しが帰ってきそうだ。
とにかく、これは正攻法で得るしかなさそうだな。
そんなことを考えながら、「黒曜石の街」への道を再び進むのであった。
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