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22話 反省

科若さんを担いで逃げた。


「お姫様抱っこ」のようなロマンある持ち方などではなく、米俵担ぎで運んだ。


なるべく早く逃げるために「ヘイスト」を掛けて。


……。


「あのー……」


自分に掛けた「ヘイスト」が切れ掛かってきたころ、科若さんが声をかけてきた。


「あ、科若さん、落ち着いた?」


「だいぶ前から……」


「そっか」


そりゃあ、よかった。


「それで、さぁ……降ろしてほしいんだけど……この姿勢、お腹痛いし」


「あ、ゴメンゴメン」


言われてすぐに科若さんを地面に降ろした。


この担ぎ方、確か運ぶ方は楽に早く運べるんだけど、運ばれる方はお腹を圧迫されて苦しくなってしまうんだった。


いつしかの避難訓練だったかでこの方法で運ばれたけど、確かに苦しかった覚えがあった。


「そういや、腕は大丈夫?」


「運ばれているときに『ヒーリング』掛けたから大丈夫」


「それなら大丈夫そうかな」


科若さんは腕を見せて、治っていることを示してくれた。


「それで……科若さん、走れる?できればまだ走って逃げたいんだけど……」


「大丈夫……、まだお腹痛いけど……」


科若さんはお腹をさすりながら応えた。


体力の方も大丈夫か。


「逃げたいんだったら、私も『ヘイスト』使った方がいい?」


「あー……それなんだけど、逃げるときに掛けた僕の『ヘイスト』、もう切れかかっていると思うんだよね……。できれば、その……『エリアヘイスト』を使ってもらえると助かるかなぁ~って……」


「そんなこと?別にいいけど……ここまで運んでくれたのは桜木君なんだし」


「助かりまぁす!」


追手のオオカミに気づかれると困るから小声ではあったけど、勢いよく最敬礼で科若さんに頭を下げた。


「そこまでしなくて大丈夫だから……アハハハ。……じゃ、いくよ?『エリアヘイスト』」


科若さんは下げられた頭に苦笑いをしながら「エリアヘイスト」を掛けてくれた。


それでは、再び夜道を出発だ。



あのまま日が昇るまで歩き続けた自分たちは、朝から今まで夜に睡眠をとってきたのと同じように片方が寝て、片方が見張りをする方法をとって睡眠をとった。


そうして、二人ともが起きて再び歩き出したのは昼の少し前くらいのときだった。


そして昼に差し掛かり、最後の携帯食料を食べながら歩いていたときだった。


「少し考えたんだけどね」


科若さんが帰り方について話し出した。


具体的には、オオカミの追手に襲撃される前の歩き方についてだった。


今までの歩き方では問題があって、歩き方を変える必要性が出てきたということだった。


オオカミに襲撃されたのは、その日の朝から「ヘイスト」を二人とも掛け続けて、魔力が十分に回復しない状態で夜を迎えてしまっていたことにあった。


確かに、あの日の晩にどちらにしろオオカミの群れが襲うことを決めていたのなら、魔力が回復していた方がオオカミ達はその日は諦めていたかもしれないし、襲われていたとしても使える魔法の選択肢が増えてもっと柔軟に対処できたはずだった。


そこで科若さんが提案してきたのは次の方法だった。


昼間も夜も片方が寝る、という方法だ。


どういう方法か詳しく説明すると、常に片方が片方を背負って自分だけ「ヘイスト」を掛けて進み、「ヘイスト」が切れたら背負うのを交代して進む、というもの。


因みに狩りをするときと食事のときは一緒に起きておく、その二つは流石にどちかが寝ていることに意味はないし。


でも、それって……


「僕は大丈夫だったけどさ……科若さんはそれ、できるの?」


自分は男の中でもヒョロヒョロの部類に入ることは理解しているが、それでも標準的な同年代よりかは多少は軽い、といったところ。


それに荷物が2つにナイフと棍棒まである。


科若さんはもともと運動系の部活に入っていたし、運動能力も同年代の女子の平均よりもまあまあ高い。


だけどそれでも普通に考えて、彼女自身にも荷物があって、そのうえ他に荷物がある状態の高校生男子を背負っていけるほどの筋力はなかったはず。


「ストレングスアップ」を使えば出来ないこともないかもしれないけど、それでは「魔力の節約」という目的は果たせないだろう。


というか、自分も科若さんを担いで逃げるとき、戦闘中に掛かっていた科若さんの「エリアストレングスアップ」のおかげで歩けていたけど、「ヘイスト」が切れかかる前に「ストレングスアップ」が切れたときは結構歩くのにキツイものがあった。


口には出さないけど、彼女自身、平均的な女子より少し身長が高いというのと、胸部に豊満なモノをお持ちなので、平均的な女子よりも体重が……そういうことです。


「なんか今、すっごく失礼なこと考えてない?」


科若さんは会話途中にジト目でこちらを睨んできた。


「ソンナコトナイヨ、マッタク」


「ふぅん……」


彼女は疑るような視線を向けてから、元の話題に戻った。


あっぶなぁ~……、今度からは考えることすらもやめておこう。


ともあれ、試してみると……


「無、無理かもぉ~~~~……」


ダメ見たいです。


「あ~……じゃぁ、『ヘイスト』をやめて、『ストレングスアップ』だけにするってのは?」


「あっ」


こうして、科若さんが言っていた方法の「セルフヘイスト」の部分を「セルフストレングスアップ」に変えた方法で帰ることになったのだった。

これからは土日も2話ずつ、投稿しようと思います。


良ければ是非ともご評価・ご感想を頂ければと思います!

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