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1話 転移と……

白。


目に映るもの、すべてが白。


真っ白だ。


意識を手放す前は……確か……トラックに轢かれたような……。


そうか。


ここはおそらく、死後の世界……なのか?


そう思った瞬間、耳と肌の感覚が入ってきた。


「ぅおおおおぉぉぉぉぉおお!!!!!???????」


耳には轟々と風の音。


それに対応するかの如く、風のような感覚が肌を強く擦った。


「なんっ……だっ……これっ……!!!」


その風の感覚が、口にも入り、呼吸の邪魔をする。


ただ、目の前の景色は変わらず真っ白。


雪景色でも、白い建物があるわけでもない。


全てが白。


白、白、白。


影、奥行き、光の強弱、そして現実感さえ、無い。


体全体が風に包まれる感覚と、目の前がただただ白い状態に、恐怖、混乱し、ただただ藻掻くしかない。


自分が立っているのか、しゃがんでいるのか、それとも浮遊しているのかさえ、分からない。


「……ぉ~ぃ……」


激しい風の音の中、人の声が聞こえた。


「……なっ……!?」


それに応えようとしても、風で声を阻まれる。


「すま~ん!」


風に抗いつつ耳を澄ますと、老人が謝っているような声。


「間違えて死にかけさせてでもある程度なんとかしてからまた帰るときにちょっと待あああぁぁぁぁぁぁ…………」


何か、言い訳でもするような声が遠ざかっていく。


そして、自分の意識も再び、手放すことになった。



次に目を覚ますと、目に映したのは青空だった。


「……痛い……」


頭がズキズキと痛む。


船酔いでもしたような、飛行機で気圧差にやられているかのような……。


トラックに轢かれる寸前に意識を失い、白い空間で何かを言われたようなところまでは、ある程度覚えている。


とりあえず、起き上がる。


まずは周囲の状況確認。


周りは青々しい木々があった。


木々の中、自分がいる周辺のところにだけぽっかりと、草原が生い茂っている。


次に自分の状態確認。


頭は引き続き痛みがするが、体にそれほどの痛みはない。


どれほど意識を失っていたのだろうか、合わない布団で寝たかのような痛みが少しだけ。


とりあえず、あのトラックに轢かれたような外傷はないようだ。


衣服もボロボロにはなっておらず、今の下も豊かな草原だからか土もついていない。


そういえば、スーパーかコンビニに晩飯を買いに行く途中だったから、一応にと、ショルダーバッグを持っていったっけ。


……。


カバンも問題なし、中身もおそらく何も失っていない。


家を出てすぐ、半分無意識で買った缶のカフェオレも冷めてはいたが、ちゃんとあった。


「ふぅ……」


一つ、小さくため息を吐く。


確認している内に、頭の痛みは引いて行った。


改めて周囲を確認する。


きれいな木々と草原。


川や湖、海などは見えない。


これからどうしようかと、少しぼーっとしていると。


「……ぅんん……」


後ろの方で、悩ましい声が聞こえた。


振り返ると、自分の他にもう一人、草原に学生カバンとともに倒れている人がいた。


そして自分は、この出逢いを、一生忘れないだろう。


濃い紫の髪色。


整った顔立ち。


数日前までは自分の学校の制服より見ていた、少し変わった紺のブレザー制服。


同年代の女子よりかは、少し高めの背。


その全てにどこか、見覚えがあった。


「……『モモウィグ』の、科若胡桃……」


……。


「の、コスプレ?」


少しは、違ったかな。

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