プロローグ
自分は、桜木 尚人、高校2年生。
どこにでもいるヒョロっとした帰宅部、放送委員で仕送りを受けながらアパートに一人暮らしをするオタクだ。
話の内容といえばタイトルを見ればわかる通りだけど、どういった経緯でこうなるのか。
今回はそんなお話。
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とある会社のゲームブランド、「シュガーベーグル」から発売された新作ギャルゲ、「モモミネウィンドリグレット」、通称「モモウィグ」なるゲームがあった。
「シュガーベーグル」というゲームブランド、従来のゲームは常連プレイヤーからキャラ萌え6、感動(泣き)4で作っていると評されており、キャラ萌え成分が高いがそこそこに感動もできるシナリオであることが一定の人気を買っているとされている。
で。
この「モモウィグ」というゲームは従来のシナリオよりも重めの設定がされている。
そして軽く炎上した。
理由は簡単。
前作「ハナイロブルーミング」が同ブランドの中でも明るい作風だったのも理由の一つだけど、主な理由はもうひとつ。
この作品でかなり人気のサブヒロイン、「科若 胡桃」の存在だ。
このサブヒロイン、作品主人公と同学年で同じクラスの委員長である。
作中のボケ、ツッコミ両方できる存在で、下ネタには戸惑いながらもツッコミを入れ、シリアスパートでは頼りになる存在なのだ。
そんな彼女はどのルートを選択しても生存してエンディングを迎えることはない。
共通ルート終盤、彼女は何らかの形で亡くなり、各個別ルートにて彼女の死がヒロインと主人公の心の成長を促し、二人の距離を縮めることとなるのだ。
人気なこのヒロインのルートはおろか、生存すら許されず、あまつさえ別のヒロインと主人公の恋愛を後押しするダシとして扱われてしまうのだ。
自分もこの悲しみに打ちひしがれた一人だ。
全ルート完走後、この開発ブランドのウェブサイトの投稿フォームに彼女の生存するルートを与えてほしいと、ファンディスク、またはアペンドの作成を頼み込む投稿を送ったのだ。
投稿した次の日、自分と同じ意見を持つものへの回答がウェブサイトにて公開された。
「『モモミネウィンドリグレット』のファンディスク及びアペンドの要望が多数寄せられましたが、現在弊社におきましては『モモミネウィンドリグレット』のファンディスク等後続作、アペンド等追加シナリオの作成の予定はございません。ご了承ください。今後とも弊社及び弊社製品をよろしくお願いいたします。」
泣いた。
「科若胡桃」が初めて死亡したシナリオを見たときと同様に三日三晩泣いた。
嘘だ。
だが彼女が初めて死亡したシナリオを見たとき以上に悲しみを受けていた。
初めて死亡したシナリオを見たときは半日ほど泣いていた、が、今回、涙は出なかった。
この報告を見たとき、ただただ悲しみと空虚な状態を繰り返していた。
朝に報告を見て、気づいた時には日は沈んでいた。
昼飯を食べておらず、腹が減っているのに気がついたのだった。
この状態で流石に自炊する気にはなれず、家にはカップ麺など、インスタント食品もなかったので、近くのスーパーかコンビニで何かを買いに行っていたときだった。
この時も、きっと感傷の中に沈んでいたのだろう。
なぜ気が付かなかったのだろうか、歩道の信号は完全に赤だった。
言い訳するつもりはない。
出来るはずもない。
夜の暗さも、雨の音も、なにもかもが自分を擁護することのできないものだ。
きちんと前方の大型トラックは、ハイビームでこちらを照らしている。
耳を劈く、甲高いブレーキの音。
全ての情景が、ゆっくりと流れる。
眩しいライトの中に、今までの思い出。
早いような、ゆっくりのような、走馬灯。
その中で自分は
(……これ、車と人だから、トラックの運ちゃんもある程度責任負っちゃうんだよな……なんだか、少し……申し訳ないな……)
そんなことを考えている中で、自分の意識は光の中に消えて行ってしまった。




