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16話 遭遇

「獣の森」に入って数日が経った。


道はだんだんと細くなっていき、野営できそうなスペースは狭く鬱蒼となっていった。


「ここは……左かな」


「ここの目印があるから、左だと……思うわ」


分かれ道では書いてもらった情報をもとに進んでいくが、その目印の見つけ方も見にくく難しくなっていく。


「ッ!?……ただの鳥か」


「はぁ……あまり驚かせないでほしいわねぇ……」


鳥の羽音に驚き振り向いてしまう。


いざというときのために変な音がしたときは注視するようにしているけど、そのせいもあってか精神がジワジワ削れていく。


十分に睡眠がとれていないことも重なって更に疲れていく。


………………。


…………。


……。


「今日はここで野営しますか」


「そうね……もう暗いし、この先にこれ以上広そうな場所もなさそうだし」


いつもならある程度日が沈んでも光を照らす魔法で野営ができそうな場所まで進み、晩御飯の用意をして寝ていたが、今日はそうはならなかった。


「じゃ、光を照らしていてください。草とか刈って多少はマシな状態にしますんで」


「分かった」


今までは草のない野営のできそうな場所があったが、今日はある程度進んでもなかったのでその場所を作ることになった。


「ここでいいか……『ウィンドカッター』!」


デコボコの少なそうな場所を選び、魔法で草を刈った。


「この草、まとめて薪の代わりにする?」


「そうね。そうした方が薪を集めるのも少なくて済むし」


「了解。……『クリーナップ』」


「あ、そうだ」


と、科若さんが何かを思いついたような顔。


「どしたの?」


「桜木君は薪を集めといて。私、晩御飯の料理をしとくから」


役割分担をして時短か。


「分かった。行ってくる」


「こっちも作るのに少しは時間が掛かると思うから、薪は多めに集めてきてね」


「はいはーい」


魔法である程度多く持てるから、少し野営場所から離れて木を切って薪を集めるか。


そんなことを考えながら野営場所から歩き出した。


……。


「『サイクロンカッター』!……ん?」


「ウィンドカッター」を発展させた高威力の切断する魔法で木を切っていたところ、何かの気配を感じて振り返った。


「気のせいか……?夜だしよく見えないな」


月明りが照らしているとはいえ、もともと陽の入りにくい森だ。


暗くて何がいるのかも分からない。


光を照らす魔法で照らしても、向こうに確実に存在も位置も気づかれるからそんなことは出来ない。


サワサワサワァ……と、草をかき分けて何かが遠ざかる音がした。


「……どんな動物でも、危なくないか分からない動物には近づかない方がいいか。とっとと帰ろ」


怖さを紛らわせるために言ったのか、帰る言い訳をしたのかは分からないが、その言葉を放った自分に夜の森に対する恐怖の心があったのは事実だろう。


そう感じ、そそくさと野営場所へ戻るのだった。



「―――ってことがあって、さっさと帰ってきたんだよ」


「別にそこまで長い時間木を切らなくてもよかったのに。草が燃える時間は木より短いから結構消えそうだったし」


晩御飯を食べながら、先ほどあったことを話した。


晩御飯の方は味気ないけど最初のときより料理する技術が上がったのか、食べやすくはなっていた。


未だに美味しいとは言い難いけど。


「ハハハ、それもそうだね。……兎も角、夜の見張り番は互いに気を付けよう」


「分かった」


晩御飯を食べ終わった後、体を魔法で汚れを取って就寝した。



「はぁ……」


見張り番交代の時間が来て、この時間は自分が起きている。


今の季節は夏。


しかし「獣の森」は森の特性で、夜は夏でも涼しい。


夜明け前となると「涼しい」から「寒い」になってしまうほどだ。


そういう時間だから、寒さを紛らわせるためについつい溜め息も出てしまう。


まだまだ暗いとはいえ、ほんのり朝を思わせる明るさを感じ始める時間帯だった。


ガサガサガサァ……!


「!?」


遠くに草木のかき分ける音。


「科若さん……」


「……ん?」


呼びかけると、科若さんはすぐに起きた。


「動物がいるかも知れない」


「分かった」


科若さんはすぐに矢筒から矢を取り出して、弓に矢をつがえた。


「……」


「……」


二人は無言のまま、いつの間にか互いに背を預けて警戒する。


そのまま数分が経った。


――――――ッ!?


「!?」


「!?」


音がして驚いて、二人ともその方向を見た。


バサバサバサバサバサ……。


その方向には鳥、いや、コウモリの群れが飛んでいた。


「なんだ、コウモリか……はぁ」


「ふぅ……緊張した」


二人ともため息を吐いて警戒を解いた。


「ごめん、勘違いして起こして」


「いや、こういうのでちゃんと起こしてくれなかったら、本当に何かあるときに最悪死んじゃうから。気にしないで」


「そう言ってくれると助かる。……はぁ、空もだんだん明るくなってきたね」


この数分である程度、空も明るくなってしまっていた。


おそらく日は出ていないけど、歩いて移動するには問題はなさそうだ。


「科若さんはどうする?まだ寝ててもいいけど」


いつもならまだこの時間は見張り番じゃない方は寝ている時間だ。


「大丈夫。今から寝ても疲れは取れなさそうだし、それより『狂月花』の種だっけ?それを歩いて行って、採って早く帰ろ?」


「科若さんが大丈夫なら、分かった」


そんなこともありつつ、今日は早めに歩き始めたのだった。

出来たら小話を明日の朝、投稿するかもしれません。


良ければ是非ともご評価・ご感想を頂ければと思います!

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