15話 獣の森
「獣の森」の説明は前回おこなったので割愛……といきたかったが、少し説明不足であった部分の説明をする。
ここ「獣の森」には、「魔物」という動物が出てくる。
この「魔物」、前回説明した「クマやヘビが冬眠期に活動期となる、また別の危険な動物」の多くがそう呼ばれる動物だ。
「魔物」とはズバリ、「魔法の使える動物」の略称だ。
「魔物」の特徴とは、「高い知能」、「背骨のある動物(脊椎動物)」、「高い魔力を持っていること」があげられる。
「高い魔力」とあるが、普通の動物にも魔力自体は体内に存在する。
E種の戦闘に用いられる魔法である、「マジカルドレイン」で普通の動物から魔力を吸収して魔力を回復させることができるらしい。
自分も科若さんも使えないから意味はないけど。
また、「魔物」全てに当てはまるわけではないが、「群れで活動するものが多い」こと、クマやイノシシほど「突出して筋力が高いものがいない」こと、足、腕、翼などの数が「計6つ以上有するものがいる」こと、「二重のねじれのある真っ直ぐな角をもつもの」がいることなども、上の特徴と合わせて考えられる特徴だ。
最後にこれは特徴ではあるがそれを見るときは緊急事態である「動物が魔法を使う」ことでも一応判別できる。
ま、どの道クマやイノシシ、魔物と出会わないように立ち回り、祈りながら進むだけだ。
●
「獣の森」に入って一日目の夜。
流石に入って一日ともあってウサギや鳥ほどの小動物以外とは会わなかった。
今日の晩御飯は食べられる野草とウサギと鳥の肉だ。
ウサギと鳥は〆て血抜きをして焼いて食べる。
毛抜きはそれらをして更にとなるとかなり時間を食うので皮は省略して薪の材料とした。
〆方は「黒の森の東の村」の宿屋の女将さんに教えてもらった。
実際に実践でやるのも野外でやるのも初めてだから上手くはいかなかったけど、食べられないもののほどではなかった。
……のだけれど。
「まずい……」
「うん……。確かに、美味しくないね……」
二人して感想は同じだった。
塩も胡椒もなく、ただ焼いた肉と水の魔法で洗っただけのクセの強い野草。
美味しくなる道理はなかった。
肉にある脂から出る微かな旨味を噛みしめ、味わって食べた。
ただでさえ皮を薪代わりにしてもったいないので肉として焼いたものは全て食べた。
食べたものの後始末をした後は、E種の水の洗浄魔法である「ウォッシュアップ」で軽く体を洗い、風の清浄魔法である「クリーナップ」で乾かす。
これらは服を着たまま服の洗濯も兼ねて行えるから便利だ。
宿屋で洗濯と入浴をした方がより清潔さを保てるけど、普通の旅ではこれで最低限の衛生は保てる。
他、明日への身支度を済ませ就寝、つまり野宿だ。
「先に寝ます、おやすみ」
「おやすみ」
科若さんに断りを入れ、先に寝る。
二人で一緒に寝るのではなく、一人は起きて火と周りの見張りの番だ。
火、自体は火の魔法で付けたらいいけど、何かに燃え移ったら大変だし、消えたら寒くて起きてしまう。
今野宿している場所は何かのベースキャンプというほどのものでもないけど、おそらく以前に旅人か誰かが野宿していたであろう、道のわきに切り拓かれたスペースだ。
そんなスペースだから、森の草木の中や道の真ん中よりかは大分マシだ。
それでもこれは体を痛めそうだけど。
そういうわけで、改めて、おやすみなさい。
………………。
…………。
……。
「桜木君、起きて」
「んお?」
「大体交代の時間」
もうそんな時間か……、疲れは取れた気がしないな……。
「ぁい……」
寝起きのボケた声で返事をして、体を起こした。
●
「すー……、すー……」
科若さんが寝息を立てて寝ている。
何気に科若さんの寝顔を見るのは二度目だ。
最初の「霊気の平原」に転移した時以来、寝顔は見たことがない。
「黒の森の東の村」の宿屋では二段ベッドだったから見ていないし、他の街や街道での宿屋もそうだった。
「黒の森の東の村」から「黒曜石の街」へ行ったときも、科若さんより先に寝て後に起きたのか、寝顔は見ていなかった。
科若さんはショートスリーパーなのか寝つきが悪いのか、はたまた気遣いをしてくれているのだろうか。
いや、寝顔をただ見られたくないだけかもしれない。
男でも寝顔を見られたくない人は女子ほどではないかもしれないが少なくない。
「ふぁ~わ……」
だめだ、座りながら火を見ているだけだと寝てしまいそうだ。
ただでさえ夜だというのに、火が薪をはじく音と風が森を撫でる音がさらに眠りを誘う。
立とう。
「よっ、と……」
歩きながら森と火を交互に見ることによって、襲う眠気を振り払う。
そして時折、科若さんの寝顔を盗み見る。
本当に可愛いな。
「黒の森の東の村」を出たときから、彼女はずっとほぼすっぴんだ。
保湿液やらなんやら……詳しくは分からないが、肌の手入れの最低限のものしか持ってきていないらしい。
それでこの可愛さ、反則級だ。
そういや大抵ギャルゲの世界の女性ってモブを含めて殆どが可愛く描かれるけど、実際はどうなんだろう。
本当に可愛かったのならギャルゲの世界の男どもは羨ましい限りだ。
そんな風にギャルゲ世界に思いを馳せながら見張りを空が明るくなるまで続けるのであった。
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