近鉄内部・八王子線 2
前回投稿より1年あまり経ってしまい申し訳ありません。実はもう一度取材へ行くと思っている内に、夏が来て秋がきて、春が来てしまいました。残り1ヶ月もない近鉄としての路線ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
日永駅へ戻り、内部行きへ乗り込む。ちなみに、西日野から四日市へ向かう列車はここで内部行きと交換するので、全駅乗下車の際には便利である。
列車の交換が頻繁で2面3線を有する日永駅であるが、同駅も無人駅であり、列車の発車信号も構内踏み切りも全て自動だ。
内部・八王子線の致命的な欠点と言えるのが、ほとんどの駅が古い市街地の中にあるため、ロータリーを作るための充分な土地がないことだ。しかしながら、この日永駅だけは整備すればロータリーになりそうな土地を近傍に有している稀有な駅だ。
今後ぜひとも整備して欲しいものである。
さて、内部・八王子線でちょっと珍しいと思ったのが、一種の信用乗車方式を取っていることだ。通常ワンマン列車の場合、後ろ乗り前降りにして乗務員が必ず切符を確認できるようにするか、或いは全ての駅に改札機を設けて切符の販売と収受を機械任せにしている。
しかしこの路線では駅に自販機こそ付いているが、改札があるのは有人駅の四日市と内部のみで、その他の駅にはない。それにも関わらず扉は全て開き、運転手が切符を確認することもなかった。
日永駅で八王子線からの四日市方面の列車と交換すると、内部線の内部方面の列車は出発する。
次の南日永駅は住宅街の中にある1面1線の駅であるが、有人駅時代の木造駅舎がある。筆者が下車した時は、ちょうど警察による見回りの時間であり、駅の柱に設けられた確認表に、お巡りさんが判子を押していた。
南日永駅も駅前に特に店もない住宅街の中の駅だが、一区画出れば県道があり、規模の大きい書店や電器店もある。今後もし北勢線のような大規模な駅移転を行うのであれば、是非ともこうした人通りの多い場所への移転を行うべきだろう。
次の泊駅は、日永と共に列車の交換が出来る駅で、島式ホーム1面2線の構造となっている。上下とも昼間は30分に1本の内部線の電車は、この駅で上下電車が交換する。駅舎はあるが、やはり無人駅であり、駅周辺の道路も狭い住宅街の中の駅である。
近傍にショッピングモールがあり、また15分ほどあるけば関西線の南四日市駅へ出られるが、特にそれを周知している様子もなく、今後の利用客増進に関して一考の余地ありだろう。
泊を発車した電車は、伊勢街道と旧東海道を渡り、そのものズバリの地名を冠した追分駅に到着する。追分駅は現在無人駅であるが、有人駅舎時代の駅舎は大きく、閉鎖されているが商店(旅行センターか?)らしき痕跡もある。
駅舎前には小さな広場があり、タクシーが止まれるようになっているが、ロータリーを作れるほどの余裕はなさそうであった。ただし、バス停があり食事できるおにぎり屋さんがあり、内部・八王子線の駅としては周辺に活気がある駅だ。
また筆者来訪時は開店していなかったが、近所には近鉄車両専門の鉄道模型店があり、その看板が駅構内にある。
追分の次は小古曽駅である。この駅は1面1線の駅であるが、終点の内部駅一つ手前であり、駅舎に通じる路地が特に狭い駅である。筆者来訪時は電気系統の保守が行われていてが、関係者の乗った車が駅前に付けられず、線路反対側の道路に止められていた。閑静な住宅街の中にあるのは他の駅と同じだが、輪を掛けて寂しさが漂う駅である。
なお、この駅は元々無人駅であったそうで、自動券売機が唯一ない駅である。そのため、整理券の発券機のみが置かれている。
そして小古曽を出た電車の右手に検車区が見えてくると、終点の内部駅に到着である。内部駅は有人駅であり、また検車区も置かれているため構内も広い。ただし、ホームは1面1線である。そこからはかつて延伸の計画もあったとのことだが、残念だが夢で終わってしまった。
駅舎も整備されたものが置かれているが、他の駅同様ロータリーはなく今後何らかの改善を期待したいところだ。
内部駅併設の検車区はナローゲージらしくこじんまりとした物だが、日中も整備や洗車を行っている姿をホームや走行中の列車から確認でき、内部・八王子両路線を支える要の駅としての機能を垣間見ることが出来る。
かつて内部線は現在の湯ノ山線、八王子線と合わせて三重交通の762mmのナローゲージ鉄道として一体運用されていたが、近鉄合併直前に湯ノ山線は名古屋線と合わせて標準軌化工事がなされ、それまで湯ノ山線伊勢松本駅にあった検車区は内部駅へと移転した。
その後、内部・八王子線はナローゲージのままで残されたものの、栄光ある近畿日本鉄道の一路線として、北勢線や養老線とともに三重県内のローカル輸送に黙々と従事してきた。
走る車両が変わり、列車がワンマン化され、沿線の開発が進んでも、小さなおもちゃのような電車が町の中を進む姿だけは変わらない。
しかし、モータリゼーションの発達と車両ならびに施設の老朽化は如何ともしがたく、三重県内で唯一の近鉄直営の独立路線であったこの路線も、凋落の道を歩むこととなった。
幸いにも、路線は第三セクターの四日市あすなろう鉄道へ転換され、車両の更新計画も発表されている。一方で、40年間に渡った近鉄路線としての歴史は間もなく終わろうとしている。
2015年3月31日、近畿日本鉄道内部・八王子線はその40年の歴史にピリオドを打ち、翌日から四日市あすなろう鉄道の路線へ生まれ変わる。この路線がどのような歴史を刻んでいくのか、それはまだ誰にもわからない。願わくば、次の40年も走り続ける路線となってほしい。
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