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第62話 それぞれの帰還 魏編

お久しぶりでございます、皆さん。

長い間お待たせしてしまって申し訳ありませんでした。

リアルでトラブルが絶えなかったせいもあり、ここまで遅れてしまいました。

では本編の方をどうぞ。

定軍山の戦いは思わぬイレギュラーが発生はしたものの、何とか劉備軍を追い返す事には成功した。

だが零治は無傷とは言えない状態だ。銀狼との闘いで左腕を切断されたと思いきや、今度は無粋な一人の兵士の放った矢を首に受けてしまう始末。

そのため亜弥達は酷く消耗している零治を休ませるため付近にある村を目指しているが、まだ疑問はあった。なぜ死んだはずの零治がこうして生きているのかである。

その疑問を解消するべく、恭佳に肩を貸してもらっている零治の隣を歩いている亜弥がその事を率直に尋ねた。



「零治。貴方に訊きたい事があります。なぜ……なぜ生きているのです。あの時、貴方は確かに私達の目の前で死んだはずなのに……」


「…………」


「確かにアタシもその点が気になっていた。アンタはあの時間違いなく死んだ。でもこうして生きている。零治、アンタ……一体どんな魔法を使ったのよ?」


「そ、それは……」



亜弥と恭佳の質問に零治は言い淀む。この様子から零治が何かを知っているのは間違いないだろう。それも、とても言いづらい事なのだ。

零治は遥か彼方の地平線を見つめながら思考を巡らせ、やがて結論が出たのか、大きく息を吐いて重々しく口を開いた。



「オレが死ななかったのは……BD、血の魔導書ブラッド・ディクテイターのおかげなんだ」


「……どういう事です」


「確かにオレはあの時死んだ。だがBDが内包する魔力を使って……オレの命を繋ぎ止めたんだ。だから生きているのさ……」


「ちょっと待ちなよ。つまり何かい? 零治、アンタの持つ魔導書が蘇生術なんて高度な魔法を使用したって事なの!?」


「厳密に言うと少し違うがそんな所だ……。そしてそれには際限が無い。つまりオレは……文字通り不死身になったんだ。もう誰にも殺せない身体になったのさ……」


「なっ!?」


「えぇっ!?」



零治の口から告げられた衝撃の事実を前にして、亜弥と恭佳は驚きの声を出した。

不死身の肉体。この世界だけに限った話ではないだろうが、世の権力者ならば喉から手が出るほど欲する力だろう。

だが、何事もそう都合よくいかないのが世の常だ。たいていの場合、こういった事には必ずリスクが付きまとう。零治は自虐的な笑みを浮かべながらその事を打ち明かした。



「まあ、これには条件があるがな。オレとBDの融合が成り立っているからこそ出来る芸当だそうだ。奴がオレの身体に起こった『死』という事象を無理やり捻じ曲げているそうだからな……」


「貴方との融合が成り立っているから……という事は、零治」


「ああ。BDとの融合を解除したら、オレは今度こそ本当に死ぬ事になる。まあ、オレはコイツとの融合を解く気は無いがな。今のオレにはまだやる事があるんだからな……」


「そう……だね……」


「それとお前らにもう一つ言っておくが、この事は誰にも言うんじゃないぞ……」


「誰にもって……零治。まさかこの先ずっと隠し通すつもりなんですか?」


「言えるわけないだろ、こんな話……」


「それはそうですけど……左腕は完全に別物になっていますし、ずっと隠すなんて絶対に無理ですよ。お風呂の日とかどうするつもりなんですか」


「全員が入り終わったのを見越して最後に入れば済む話だ。いいな。絶対にこの事は華琳達には話すなよ……」


「……分かりましたよ」


「兄さん」


「ん? どうした?」


「アレを見てください」



奈々瑠が前方を指さすので、零治達は奈々瑠の指先を追い、そちらに視線を向けた。

奈々瑠が指差す方角からは大量の砂塵が舞い上がっており、何者かの集団がこちらに接近している事を物語っていた。



「亜弥。アレってまさか……」


「ちょっと待ってください。いま確認します」



亜弥は眼鏡を外して再度前方に巻き上がる砂塵を凝視した。

砂塵の中には無数の騎馬隊の存在が確認でき、その先頭には華琳の姿があった。

更に騎馬隊内の所々には牙門旗が翻っており、その旗には『曹』に『夏候』、紺碧の張旗などなどと魏の首脳陣が勢揃いだ。

これだけ判断材料が揃えば考えるまでも無かった。あの騎馬隊を指揮しているのは華琳だとすぐに分かった。



「間違いありません。アレは華琳達ですね」


「姉さん。逃がした連中に口止めはしていなかったのかよ……」


「いや、一応してはいたよ。でもまあ、アイツらがそれを素直に守るとは思えなかったんだよね」


「ったく。口の軽い奴らだ……」



零治は自分達の事を漏らした兵士達の事を毒づくがもう後の祭りである。

騎馬隊との距離はもう目と鼻の先。この状況で逃げる事など無理だし、周りには身を隠せるほどの遮蔽物も無いためやり過ごす事も不可能である。

となれば今の零治達に出来る事はこのまま大人しくしている事ぐらいだ。そうこうしている間に零治達は華琳率いる騎馬隊にあっという間に取り囲まれてしまい、部隊の先頭に立ち、愛馬である絶影に跨りながら華琳は零治に険しい表情で無言の威圧的な視線を向けていた。



「…………」


(あぁ、これもデジャヴだな)



その姿を前にした零治の脳裏には初めて会った時の光景がフラッシュバックし、既視感を感じて感慨深げな表情を浮かべた。

それとはまったく異なる心境の華琳はすぐに馬から飛び降りて零治の前までつかつかと足を進め、わなわなと怒りで身体を震わせながら零治を正面から見据え、しばらくして右手を大きく振り上げ、零治の頬を思いっきり引っ叩いたのだ。

辺りにはパンッと乾いた音が鳴り響き、零治の頬には鋭い痛みが走ると同時に軽くよろめいてしまった。



「っつぅ……っ!」


「零治。なぜぶたれたのかは分かるわね……」


「ああ……」


「貴方、この定軍山の事を知っていたのね。罠という点も含めて……」


「…………」


「私達に嘘をついて勝手な真似をしたばかりか心配までかけて……貴方はどれだけの無茶をすれば気が済むのよ!」


「言い訳はしないさ……」


「今回の件、きっちり説明してもらうわよ。いいわね」


「ああ……」


「華琳。ちゃんと説明はしますから。今は零治を休ませてあげてください。彼は酷く消耗していますから」


「いいでしょう。この近くに村があったわね。まずはそこに向かいましょう。零治。貴方は私の馬の後ろに乗りなさい」


「ああ……」



零治はフラフラとした足取り絶影の横まで足を進め、あぶみに足をかけて左腕の繋ぎ目から走る痛みに耐えながら何とか跨る事ができ、続いて華琳も乗馬し、亜弥達も他の者の馬の後ろに跨る。

その際に一人見慣れない人物である樺憐の姿が眼に止まり、亜弥に無言で何者なのかと問いかけた。



「大丈夫。彼女は味方です。彼女の事もちゃんと説明しますから、今はとにかく零治を休ませてあげてください」


「分かったわ。……零治、飛ばすからしっかりと掴まってなさいよ」


「ああ……」


「行くわよ。はっ!」



鞭を打たれた絶影は首を持ち上げながら一度大きくいなないてグルっと方向転換をし、そのまま一気に荒野を駆け抜けていき他の者達もその後の続いて移動を始め、その場には再び大量の砂煙が舞い上がり始める。

零治は華琳の腰に両腕を回して掴まり、出来るだけ楽な体勢を取りながらユラユラと身体を馬に揺らされていた。



「まったく。貴方が無茶なのは知っているつもりだったけど、まさかここまで酷いとはね……」


「…………」


「ちょっと零治、聞いてるの?」


「はぁ……はぁ……」


「零治?」


「はぁ、はぁ、はぁ……っ! うっ!」



ただでさえあの激闘の後で身体に堪えているにもかかわらず無理をしていたのだ。

ついにその無理がたたってしまい、零治は限界を迎えて体勢を崩して落馬してしまい地面の上に転がり落ちてしまった。

華琳もそうだが、後に続いていた春蘭達もすぐに手綱を引いて馬を停止させたので何とか零治を踏みつける大事には至らなかったがそれでも緊急である事に変わりは無い。

馬から飛び降りた華琳はすぐに零治の側に駆け寄って身体を揺さぶりながら声をかけた。



「零治! どうしたのよ零治! 返事をなさい!」


「はぁ……はぁ……っ!」



華琳が声をかけるも返ってくるのは荒い息遣いだけだった。

続いて亜弥がその場に駆けつけ、零治の首筋に手を当てて脈を取り、どういう状態なのかを確かめた。



「酷い汗だ。それに脈も弱い。やはり今まで無理をしていたのか。……華琳」


「ええ。零治がこんな状態での移動は危険ね。やむを得ないわ。今夜はここで野営をしましょう」



零治がこうなってしまっては移動どころではないし、危険でしかない。

なので急遽ここで野営をする事となり、華琳達は迅速に行動を開始。

華琳はすぐさま春蘭達と兵達に指示を飛ばし、野営の陣を構築して最優先で零治を寝かせるための天幕を立てる。

また、本人の希望もあって天幕の入り口前には奈々瑠と臥々瑠を見張りとして立たせる。

そうこうしている間に日も暮れて辺りは真っ暗となり、陣の周りには見張りの兵士をしっかりと配置して安全を確保し、華琳は首脳陣達を陣の中央に集め、周りには篝火かがりびを焚いて明かりを灯し、予め用意した椅子に腰かけながら亜弥達を正面から見据え、今回の件の説明を求めた。



「では亜弥、説明してもらいましょうか。今回の件について」


「はい。ですが華琳、一つ断っておく事があります」


「何?」


「貴方は以前に私達に言いましたよね。我々が知る歴史の話はするなと……」


「ええ。憶えているわ。それがどうかしたの?」


「今回の件はそれが深く関わっているんです。私に説明させるという事は、私は貴方の命を破るという事になる……」


「…………」


「それが認められるのであれば真実を話します。認められないのなら話す事は出来ません……」


「…………」



華琳は亜弥達を正面から見据えながら思考を巡らせる。

そもそも零治達に彼らの世界の歴史の記録の話を禁じていた理由は至極単純である。

零治達にとっては真実でも、華琳達から見ればそれは絵空事にすぎないのだ。

仮に零治達の世界の歴史の記録の話を信じてそれに合わせた最善策を事前に打てば事を有利に運ぶことも可能だろう。

だが全てがそう上手く行くとは限らない。零治達の話を鵜呑みにして最悪の状況にでもなった日には眼も当てられない。だからこそ華琳は歴史の話を禁じていたのだ。

しかし今は亜弥達から真実を訊き出す事こそが最優先だし、このままでは他の者達も納得は出来ないだろう。なので華琳は命を破る事を認めた。



「いいでしょう。亜弥、話して御覧なさい」


「分かりました。ではお話しいたしましょう、今回の件について。まず、この件には秋蘭が大きく関係しているのですよ」


「私が?」


「はい。華琳。貴方は以前、定軍山の情報を得た後、秋蘭にその調査を命じましたよね?」


「ええ。その事も憶えているわよ。でも、それがどうしたというの?」


「私達はあの時、秋蘭を定軍山に向かわせる訳にはいかなかったのです。なぜなら……」



亜弥はそこで言葉を区切り、グルリと魏の首脳陣達を見回す。

華琳達は固唾を飲んで亜弥が先の言葉を発するのを見守り、やがて亜弥は重い口を開き、真実を打ち明けた。



「私の知る歴史では夏侯淵は定軍山で劉備軍の罠にはまり、黄忠に討ち取られ戦死しているのです……」


「「「「「っ!?」」」」」



亜弥から聞かされた真実を耳にした華琳達は戦慄し、顔を青ざめさせた。

実際に定軍山の件は罠だった。今回は零治達だけが対処に当たったし、この事実を知っていたからこそ事前に最善策も用意し、様々なイレギュラーは発生したが劉備軍の撃退にも成功している。

もしもあの時、零治達ではなく秋蘭が向かっていたらどうなっていた事か。

恐らく亜弥の言う通り、定軍山で罠にはまり彼女が知る歴史通りに事は進んでいただろう。



「亜弥、なら貴方達は……」


「はい。秋蘭を死なせないために今回の事を仕組んだのです。ですが、そのために私達が勝手な真似をし、貴方達に心配をかけたのは事実だ。華琳。それにみんな。すみませんでした!」


「アタシも謝るよ。心配をかけてすまなかった!」



どんな理由にせよ、自分達が勝手な事をして華琳達に心配をかけたのは紛れもない事実だ。

亜弥達は素直に謝罪の言葉を述べ、一度椅子から下りてその場に正座をして額を地面に擦り付けるように頭を下げた。

華琳はしばらくの間その姿を無言で見つめ、やがて静かに口を開いた。



「亜弥、恭佳。もういいわ。二人とも頭を上げなさい」


「はい……」


「ああ……」


「今ので貴方達がどうして今回の件を仕組んだのかは充分に理解できたわ。そういう意味では、私は貴方達に感謝しないといけないわね」


「華琳。ですが私達は……」


「そうね。私達に嘘をついて勝手な行動を取った事に変わりはないわ。だから二人には罰を言い渡すわ」


「ああ。どんな罰でも甘んじて受け入れる覚悟さ。さあ、遠慮なく言いなよ……」


「…………」



華琳は無言で亜弥達の姿をジッと見つめ、周りの首脳陣達は固唾を飲んでその姿を見守る。

亜弥達が勝手な真似をしたのは事実。だがそれと同時に秋蘭の命の恩人でもあるのだ。

願わくば厳しい罰は下さないで欲しいという希望を春蘭達はその胸中に抱いた。

やがて華琳が口を開いたが、彼女の口から告げられた罰の内容は思いもよらぬものだった。



「亜弥、恭佳。今後こういった話は私達にも包み隠さず教えなさい。いいわね?」


「……はい? あの、華琳?」


「何?」


「あ~、華琳? 今のが……罰なわけ?」


「そうよ。何を意外そうな顔をしているの?」


「いや、その……華琳。いいんですか? いま貴方が言った事はつまり……」


「ええ。貴方達の知る歴史の内容を知るという事になるわ。今回の件で、貴方達が持つ歴史の記録は有用性があると証明された。ならばこれを活用しない手は無いでしょう?」


「…………」


「何より、私はこの先の戦いで誰一人欠かす事無く勝利を収めたいのよ。貴方達も含めて、ね……」


「華琳」


「二人ともいいわね? この罰、ちゃんと受けてもらうわよ」


「ふふ。ええ。その罰、しかと受け止めましょう」



それまで事の成り行きを見守っていた首脳陣達は華琳が下した罰の内容が思いもよらぬものだった事に内心驚き、それと同時に安堵して胸を撫で下ろしながら大きく息を吐いた。

ひとまずこれで亜弥達の今回の行動についての説明は終わったが、まだ話は全て終わった訳ではない。

次の話題の中心人物である樺憐に全員の視線が集中した。



「分かってますよ。次は彼女についての説明でしょ」


「そうよ。見た所、奈々瑠達と同じ存在のようね」


「……ねえ、亜弥様ー」


「ん? 沙和。どうかしたのですか?」


「このお姉さんなんだけど……もしかして奈々瑠ちゃんと臥々瑠ちゃんのお姉さんだったりしないー?」


「ほお。なぜそう思うんですか?」


「だって眼の色が同じだし、何となくだけど顔が奈々瑠ちゃんに似ているから沙和はそう思うんだけれどー」


「へぇ~。沙和、中々いい所に眼を付けてるじゃないか」


「えへへ。恭佳様、ありがとうなのー。って事はやっぱりー」


「いいや。残念ながら違うよ」


「なーんだ。がっかりなのー……」



恭佳に褒められたのに自分の考えが外れた事を告げられた途端に沙和はガックリと肩を落とした。

その姿に苦笑ながら亜弥がすかさずフォローを入れた。



「いやいや。沙和、貴方の考え、眼の付け所は悪くありませんよ。ただ最後の所が外れていただけでして」


「えっ? 亜弥様ー。それってどういう事なのー?」


「おほん。皆さん。驚かないでくださいね。彼女、樺憐は奈々瑠と臥々瑠の実の母親なんですよ」


「……えっ?」


「「「「「ええええええええっ!?」」」」」



亜弥から告げられた事実に華琳はキョトンとして首を傾げ、それからすぐに華琳を含めた魏の首脳陣全員が驚きの声を上げて樺憐を凝視し、辺りは騒然となった。



「あの、華琳。そんなに驚く事ですか?」


「だよねぇ。母親が居るのは当たり前の事だし、別に不思議でもなんでもないだろ?」


「え、ええ。私もその点は同感よ。ただ、ね……」



華琳を始め、魏の首脳陣達は亜弥の右隣の椅子に腰掛けている樺憐に視線を移し、頭のてっぺんから足のつま先までじっくりと観察する。

視線を受けた樺憐は右手を口元に当てながら優雅な笑みを浮かべる。



「ふふ。いやですわぁ。そんなに見つめられては照れてしまうではありませんかぁ」


「……華琳。さっきから彼女の何が気になるというのですか?」


「だって……母親にしては若すぎるんじゃないの……?」



そう。華琳達が驚いている理由はこれなのだ。

ここに居る樺憐は外見だけで判断すると年齢は二十代前半くらいに見える。奈々瑠と臥々瑠は十代後半。

樺憐が二人を二十歳の時に生んだと仮定しても三十代後半でないと計算が合わないのだ。

しかし、目の前の樺憐はスタイル抜群で肌にはハリもあり、どこからどう見て二十代の成人女性。

奈々瑠達との血縁関係も母娘というより姉妹にしか見えないのだ。



「まあ、外見と年齢がかけ離れている人も稀に居るからそう珍しくはないと思いますけど」


「いや、それはそうなのだけれど……」


「オホン!」



辺りが騒然とする中、樺憐が一度大きく咳ばらいをしたのでその場は静まり、何事かと全員の視線が樺憐に集中した。

椅子に腰掛けたまま両眼を閉じていた樺憐は眼をゆっくりと開き、優雅な笑みを浮かべながら静かに口を開いた。ただし、眼は笑っていないが……。



「みなさん。わたくしの年齢が気になるのは充分理解できましたが……わたくしの歳はこの際どうでもいい事なのではないでしょうか……?」


「「「「「っ!?」」」」」



樺憐から放たれる威圧感、いや、むしろこれは殺気である。その場に居る全員が気圧され、背筋が凍りつきそうな寒気を憶えた。

今の樺憐は顔は笑っているが眼が笑っていないから間違いなく怒っているのだ。

この時、全員が悟った。樺憐に年齢を訊くのは禁則事項なのだと。

それに確かに樺憐の言う通り、今は彼女の年齢の話をしている訳ではないのだ。華琳はぎこちない笑みを浮かべながら話を進める事にした。



「そ、そうね。貴方の言う通り、今は貴方の歳の話をしている訳ではないものね……」


「ご理解が早くて助かりますわ、曹操様……」


「こほん。では、樺憐とやら」


「何でしょう?」


「私の記憶が確かなら……前に一度会っているわね」


「……そうですわね。わたくしも断片的ではありますが、その時の記憶は確かにありますわ」


「……華琳様。この者と面識があるのですか?」


「ええ。直接顔を合わせるのはこれが初めてになるけどね」


「そうなのですか。しかし、いつの話ですか?」


「……前に劉備達が攻め込んで来た時よ、春蘭」


「おおっ!」


「風も思い出したようね」



因みにあの場には桂花も居たが、首脳陣が総出で城を出払う訳にはいかないので、彼女には留守を任せているためこの場には居ない。

そしてこの言葉で魏の首脳陣達は理解した。樺憐は劉備軍の関係者なのだと。

それを知るや否や春蘭は愛刀の柄に手をかけ、いつでも動ける体勢を取りながら樺憐に警戒の眼差しを向けた。



「春蘭。そう警戒しないで。大丈夫。彼女は味方ですって」


「亜弥。いくらお前の言葉でもそう簡単には信用できんな。こやつが芝居をしていないという保証がどこにあるというのだ……」


「彼女がその気になれば、私達は全員とうに殺されていますよ。樺憐はそれだけの実力者ですから」


「まあ。亜弥さん、わたくしはか弱い乙女ですのよぉ?」


「……か弱い乙女は人間の頭を鉄拳一撃で粉々に粉砕は出来ないでしょうが」


「あら。何の事を言っているのでしょうかぁ?」



定軍山での戦闘光景は亜弥の眼にはしっかり入っていたというのに、樺憐は知らぬふりを決め込む。

あくまでも自分はか弱い乙女という立ち位置を譲らないつもりの様子である。



「亜弥。この姉ちゃんそんなに強いが?」


「ええ。格闘戦に持ち込まれたら零治でも太刀打ちできないでしょうね」


「隊長より強いなんて……あの、よろしければ今度私と手合わせをお願いできませんか?」


「あらあら、困りましたわねぇ。もう、亜弥さ~ん」


「いいじゃないですか。貴方と凪は同じ素手による格闘術の使い手ですし。凪の良い手本になれると思いますよ」


「私と同じ!? ますます興味がわきました! 出来れば今すぐに手合わせがしたいですっ!」


「はいはい。凪、その辺になさい」



華琳は両手をパンパンと叩いて興奮気味の凪を落ち着かせ、落ち着きを取り戻した凪は周りに一度頭を下げて詫びの言葉を述べて席に着いた。

凪が静かになった所で華琳は樺憐に視線を戻し、静かに口を開いた。



「樺憐。改めて問うけれど、貴方の事、信用してもいいのね?」


「はい。わたくしはこの先、皆様のお力になる事をお約束いたします。何より、零治さんに娘達の面倒を見てもらったご恩を返す事こそが今のわたくしの使命なのですから」


「よろしい。ならば私の真名、貴方に預けましょう。私の真名は華琳よ。これからよろしくね、樺憐」


「はい。こちらこそよろしくお願いいたしますわ、華琳さん」



樺憐の問題も滞りなく解決し、樺憐は他の首脳陣とも挨拶を交わし、真名を預かる。

それが済んだ矢先に凪が早速手合わせをしてくれとせがんできた。

華琳は口元に手を当てながら笑みを零してその光景を見つめ、零治が寝ている天幕の方へと視線を移した。零治の身を案じながら。


………


……



場所は変わってこちらは零治が寝ている天幕の出入り口前。

そこの両脇には奈々瑠と臥々瑠が見張りとして立っており、誰一人通すつもりはない様子で微動だにせず周囲に気を配っていた。

その最中、臥々瑠はソワソワとして落ち着きを無くし、内に抱えている不安を奈々瑠に打ち明けた。



「ねえ、奈々瑠」


「ん? 何?」


「お母さん……大丈夫だよね」


「大丈夫よ。姉さん達が一緒だし、華琳さんが母さんの事を悪く扱うはずないじゃない」


「うん。そう……だよね。ゴメン、変な事訊いちゃって」


「気にしないの。アンタの気持ちは私も分かるから」



奈々瑠のおかげで胸の内の不安も晴れ、臥々瑠は気持ちを切り替える事が出来た。

が、実は彼女にはまだ気になる事があり、またもやソワソワして落ち着きを無くし、チラチラと隣に立つ奈々瑠に何度も視線を向ける。

そしてその視線に気が付いた奈々瑠は首を臥々瑠の方に向けて口を開いた。



「ん? まだ何か気になる事があるの?」


「う、うん……」


「何よ?」


「えぇっと、そのぉ……」



いざ話そうとしてみれば言葉が中々出てこず、臥々瑠は口を開けては視線を地面に戻して俯きながら黙り込み、もう一度奈々瑠に視線を戻して口を開こうとするがやはり言い出せずにいて、実に歯切れの悪い様子を晒した。



「どうしたのよ、歯切れが悪いわね。私達は姉妹でしょ? 気になる事があるのなら遠慮なく言いなさいよ」


「じゃ、じゃあ……訊くけどさ」


「何よ?」


「奈々瑠……兄さんの事が好きだったの?」


「っ!?」



よりにもよってその事を訊かれるとは。

話を聞いた途端、奈々瑠の顔は赤くなり、頭からは湯気がボンっと音を立てて吹き上がった。

おまけに脳裏には定軍山で死にかけていた零治に向かって告白した時の様子が鮮明に蘇り、零治の唇の感触まで思い出してしまった。

だがしかし、みんなが見ている前で告白をしたため否定は出来ない。奈々瑠は顔を赤くしたまま無言で頷いた。



「アレは驚いたよ。みんなが見ている前でチューまでしちゃうもん」


「うぅ……お願いだからもうそれは言わないでよ。恥ずかしさで頭が爆発しちゃいそう……っ!」


(ホント。顔が真っ赤っかだ。頭に卵を乗せたら目玉焼きが出来るかも)



臥々瑠の指摘で奈々瑠の顔はますます赤くなり、心臓の鼓動は激しさを増し、頭からはまるでオーバーヒートを起こした車のエンジンのように湯気が立ち昇っていた。



「あぁもう。何で急にそんな事を訊くのよ? ……アンタまさか」


「…………」


「もしかして……アンタも兄さんの事が好きなの?」


「……分かんない」


「分からない?」



臥々瑠は無言で頷いて地面と睨めっこしながら右足のつま先を使って何度も足元をじゃりじゃりと蹴り付けながら内に抱えてる気持ちを奈々瑠に打ち明け始める。



「アタシも兄さんの事は好きだよ。でも、これが奈々瑠と同じ『好き』なのかが分かんないの……」


「…………」


「もしもこれが……奈々瑠と同じ気持ちだったら、アタシはどうすればいいの……?」


「…………」


「アタシはみんなと楽しく過ごせればそれでいい。奈々瑠と兄さんの取り合いなんかしたくない。だって……兄さんは物じゃないんだから……っ!」


「臥々瑠……」



奈々瑠は臥々瑠の内に抱えている気持を痛いほど理解できた。

いま彼女が抱えている気持は、奈々瑠が零治への告白を躊躇っていた原因のそれとよく似ているのだから。

奈々瑠はゆっくりと臥々瑠の方まで歩み寄り、内に抱える感情を汲み取るようにそっと抱き寄せた。



「あっ……」


「臥々瑠、アンタの気持ちは私も分かる。でも大丈夫。アンタが思っているような事には絶対にさせないから」


「何かいい考えでもあるの?」


「勿論。……臥々瑠。兄さん達は狼の名を冠したコードネームを持っている。そして私達の身体には狼の血が流れているわ」


「うん。知ってるよ。でも、それがどうかしたの?」


「ここからが重要よ。狼とは基本的に群れで行動する。まさに今の私達がそうね。兄さんを中心としてその周りに私達や母さん、姉さんに恭佳さんが居る……」


「うん」


「だから……今の関係を崩さないため方法は一つ。兄さんを中心とした群れを形成する。つまり、ハーレムを築き上げてしまえばいいのよ」


「ほえ?」



臥々瑠は奈々瑠の言っている意味が理解できず、素っ頓狂な声を出して首を傾げた。

要するに奈々瑠は自分達だけでなく、亜弥達も含めたプチハーレムを築こうというのだ。

確かにこれならば今の関係が崩れる可能性は低いかもしれないが問題はまだある。

零治達がこの案を受け入れるかどうかが問題である。零治は自らに戒めを架しているし、亜弥も道徳的観点から受け入れるかどうか疑問だ。恭佳は悪ノリして案外受け入れるかもしれないが……。



「……ゴメン。奈々瑠の言ってる事よく分かんないんだけど、つまりどういう事?」


「難しく考える必要は無いわ。つまり今まで通り、みんなで仲良く過ごせるって事よ」


「そうなんだぁ。にへへ。それを聞いて安心したよ」


(もう後には引けない。兄さんに想いは伝えてしまった。でも、今の関係は私も崩したくはない。だから何としても……兄さんとのハーレムを実現してみせるっ!)



奈々瑠は愛おしげに臥々瑠を抱きしめながら星々が燦然と輝く夜空を見上げ、内に抱える計画を実現に向けて決意を新たにした。

奈々瑠にとってこの話はまだ臥々瑠にしか教えていないつもりなのだろうが、実はもう一人、この話を耳にしてしまった人物が居るのだ。その者は……。



「…………」



話を聞いてしまったのはその話題の中心人物である零治本人だった。

あれからずっと寝て休んでいた零治はようやく眼を覚まし、体調も落ち着いていたので気分転換も兼ねてタバコを吸おうと思って外に出ようとしたのだが、丁度そのタイミングで奈々瑠と臥々瑠の会話を聞いてしまったのだ。



「これじゃ出るに出られねぇよ……」



流石に今このタイミングで外に出るのは色々とよろしくはないだろう。

零治はタバコを吸うのは諦め、スタスタと天幕の奥へと引き返していき中央で仰向けにゴロンと寝転がり、左腕を宙に突き上げて深紅の装甲板で固められたグローブに覆われた左手を見つめる。



『ケッケッケ。相棒、お前ってホントに愛されてるじゃねぇか』


「黙れ……」



零治は左手を見つめながら定軍山での出来事を思い出した。

劉備軍との攻防戦。そこから銀狼との死闘。更に原因不明の立ちくらみのせいで一瞬の隙を突かれ左腕を切断される始末。

そしてそこで出会ったBDのおかげで左腕を修復し、互いの命運を懸けた星との一騎打ち。

極めつけはそこで経験した『死』という事象と文字通りの生還。世界広しと言えど、これだけの出来事をいっぺんに経験する事はまず無いだろうし、特に最後の出来事は普通ではありえない経験だ。

零治は改めて痛感した。自分が人の身ではなくなった事に。



「オレ……人間じゃなくなっちまったんだな」


『何だぁ? 後悔しているのか?』


「…………」


『まっ、その気持ちは分からんでもない。だが悪く思うな。あの状況ではお前を死なせない方法はアレ以外に無かったんでな』


「ああ。分かっている。分かってるさ……」



零治はもう一度眠りにつくべく、右腕を使って視界を塞いでアイマスク代わりにする。

今は何も考えたくない。とにかく休みたい。今の零治はただそれだけが望みだ。

その時、彼の右頬に一筋の涙が流れ落ちる。その涙は自ら選択した道への後悔の念からなのか、もしくは人の身でなくなった事に対する哀しみからなのか、それは誰にも、零治自身にも分からなかった。


………


……



野営で一夜を明かし、華琳達は朝から馬を飛ばして一気に洛陽まで帰還する。

城に着いた時にはもう既に夜になっており、そこから首脳陣だけによる会議を開き、樺憐の扱いについてなどをさっさと取り決めてしまう。

因みに奈々瑠達の希望もあって樺憐は親衛隊の配属となり、自室も奈々瑠達と同居となった。

そして不在の間にあった他国の動きなどの報告を桂花から受けて会議は終了となり、各々は身体の疲労を癒すためにさっさと自室へと戻っていく。無論零治も例外ではない。そして、その日の夜の事。



「……うぅ。むぅ……」



自室に着いた零治はコートを無造作に床の上に脱ぎ捨て、さっさとベッドの上に寝転がって布団にくるまり、眠りにつこうとしていた。

しかし左腕の繋ぎ目に走る鋭い痛みのせいで中々寝付けなくて、忌々しげに唸り声を出しながら何度も寝返りを打っていた。

その時だ。辺りはすでに真っ暗だというのに部屋の扉がコンコンと二回ノックされたのだ。



「零治さん。起きてますか?」


「その声は樺憐か。開いてるぞ、入れよ」


「失礼いたします」



樺憐は扉を静かに開け放ち、入り口前で一度丁寧にお辞儀をしてから部屋に足を踏み入れ、そっと扉を閉めた。



「こんな時間にどうした? オレに何か用か? ……っ!? いっずぅ……っ!」



零治は上体を起こしてベッドから下りようとしたが、左腕に走る痛みのせいで苦悶の表情になり繋ぎ目を右手で強く押えながら苦痛の呻き声を漏らした。



「あっ、無理はなさらないでください。そのままで構いませんので」


「そ、そうか。悪いな。何のもてなしも出来なくて」


「お気になさらずに」



樺憐は無理をして起き上がろうとする零治を手で制止して、そのままゆっくりと零治が使用しているベッドの横まで足を進め、零治と視線を交わす。

室内の明かりは灯していないが、窓から差し込む月光のおかげである程度は樺憐の姿が確認でき、月明かりによって照らし出されるその姿は実に美しく、奈々瑠と臥々瑠も受け継いでいる透けるような白い肌、まるでルビーのような輝きを持つ赤い瞳、艶と光沢のある黒髪、それらの全てが月光と相まってまるで女神のような姿に零治は思わず見とれてしまったが、いつまでもジロジロ見ていては失礼でしかないので、その場を誤魔化すようにワザとらしく咳払いをして樺憐に用件を尋ねた。



「げふんっ! そ、それでだ。こんな夜中にどうしたんだ?」


「零治さんに改めてお礼を申し上げたくこうして参ったのです」


「お礼?」



樺憐はそう言うや否や、いきなりその場で土下座をして大きく頭を下げたので、零治は時間帯が夜中だという事も忘れて思わず大きな声を出してしまった。



「おい、樺憐! お前なにして……っ!?」


「シーー。零治さん。もう夜中ですのよ? あまり大きな声を出しては皆が起きてしまいますわよ」


「むぐっ!」



樺憐の指摘を受けて零治は慌てて口を塞いだ。

今の時間帯、城の人間は全員寝静まり返っているのだ。起きている人間が居るとすればそれは見張りの兵士ぐらい。

ヘタに大声を出して城の人間が起きて、もしも華琳達がこの場に来たら何を言われるか分かったものじゃない。場合によっては言葉攻めだけでは済まない可能性すらある。

零治はとりあえずツッコみたい衝動を押えながら樺憐に先を促す。



「はぁ……で、それは一体なんの真似だ?」


「零治さん。改めてお礼を言わせてください。娘達の事、これまで面倒を見てくださって本当に感謝しております」


「あぁ、もうそれはいいから。頼むから普通にしてくれよ。なっ?」


「いいえ。これだけでは不充分ですわ」


「はっ? この上一体何をしようってんだよ?」



樺憐はその場からゆっくりと立ち上がり、今度は片膝を突き、まるで主君に謁見する家臣のようにこうべを垂れ、言葉を述べ始めたのだ。



「零治さん。いえ、我が主。愛しき飼い主様」


(もうツッコまんぞ。本音はツッコミたいが……)



樺憐の自分に対する呼び方が色々ととんでもない事になっているが、ここで大声を出す訳にはいかない。

零治はツッコみを入れたい衝動を押さえつけながら樺憐の言葉に耳を傾けた。



「まずは謝らせてください。先日の戦いにおいて、わたくしは貴方様のお力になると言っておきながらその役目を果たせませんでした……」


「…………」


「ですが……ですが次こそはあのような事など決して起こさせはしません。この先わたくしは貴方様の牙となり盾となる事をここにお誓いいたします。愛しき飼い主様、どうかわたくしのこの想い、受け取ってくださいませ」



まさかここまでされるとは零治は思ってもいなかった。

だが樺憐にとって零治はそれだけの存在という事なのだろう。

本人は真剣そのものだし、ここまでされては逆に断りにくいし、疲労のせいもあって早く休みたいという思いから零治はあまり深く考えずに樺憐の申し出を受け入れる事にした。



「分かったよ。お前の想いは受け取るよ。もう好きにしてくれ……」


「ありがたきお言葉。感謝いたします、愛しき飼い主様」


(その呼称は制限するべきだったかもしれん……)


「では最後に、忠誠の証を貴方様に……」


「はっ? 忠誠の証?」



樺憐の言っている意味が理解できない零治は首を傾げるのみ。

対する樺憐はゆっくりと立ち上がり、そっと零治が使用しているベッドの横まで歩み寄り、その場でしゃがんで顔を近づける。



「愛しき飼い主様。わたくしの想い、受け取ってくださいませ。……んぅ」


「っ!?」



樺憐が取った行動は何と口づけである。突然の出来事に零治は思考が完全に停止して頭の中は真っ白になってしまい、樺憐を押し退ける事も出来なかった。

その間も樺憐は零治に熱烈な口づけを行い、零治の口の中には樺憐の甘い吐息が流れ込んでくる。



「んっ……んぅ……ぷはぁ」



ようやく口を離した樺憐は妖艶な笑みを浮かべ、右手を使って愛おしげに自分の唇をなぞる様に撫で回した。

その姿を前にした零治は背筋に嫌な寒気を憶え、その脳裏には以前の休日に酒に酔った奈々瑠に押し倒された時の光景がフラッシュバックした。

こういう所はやはり母娘ならではの姿という事なのかもしれない。



「うふふ。これでわたくしの身も心も全て貴方様の物ですわよ、愛しき飼い主様」


「か、樺憐。お前、何を考えて……」


「それではわたくしはこれで失礼いたします。お休みなさいませ、愛しき飼い主様。良い夢を」


「いや、おい……」



樺憐は零治の疑問には答えずスタスタと部屋の扉の前まで移動し、扉を開けてから零治の方に振り返り、一度丁寧にお辞儀をして挨拶の言葉を送り、そっと扉を閉めて自分の部屋へと帰って行った。

その場に取り残された零治はしばらくボーっと扉を見つめていたが、いつまでも扉を見ていても意味が無いので今の事は忘れて寝る事にして布団にくるまって横になった。が……。



「……眠れねぇよ。はぁ……外でタバコ吸ってこよ……」



やはり眠れる訳も無く、完全に眼が覚めてしまった零治は机に置いてあるタバコの箱とライターをズボンのポケットに捻じ込み、中庭へと足を運ぶのだった。

零治「……何だあのオチは」


作者「いいじゃないか。いい思いが出来ただろ? この色男」


亜弥「前の話での意味深発言、理解出来ましたよ」


恭佳「そして奈々瑠の告白の件はハーレム方向に持って行くのね」


作者「まあ、ね……」


奈々瑠「私ってあんな事言うキャラだったんでしょうか……」


臥々瑠「さあ? でもいいじゃん。告白もこうして出来た訳なんだし」


奈々瑠「他人事だと思って、アンタって子は……」


樺憐「あらあら。なら今夜はお赤飯を炊かないといけないわねぇ」


奈々瑠「母さんまで! からかうのはやめてくださいよ!」


零治「そういや今回のサブタイトル、『魏編』って書いてるけど、次なんかあるのか?」


作者「次は蜀の側の話を書くつもりだ。当初の予定では一緒にするはずだったんだが……予定が狂ってな。急遽分ける事にした」


亜弥「今度はどうしたんですか? また字数ですか?」


作者「それについての説明は次回にするよ」


樺憐「……ついでにわたくしと零治さんの熱い夜の話も書いてくださいませんかぁ?」


奈々瑠「母さん! いきなり何を言ってるんですか!?」


恭佳「臥々瑠。アンタの母親ってあんなエロいキャラしてたの……?」


臥々瑠「知らないよ……」

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