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第51話 涼州攻略 前編

今回の話は少々短めです。

その代わり、後編はかなり長くなってしまってます……。

慌ただしい戦の準備を終えてから、華琳達は涼州を目指して出撃。

零治にとって遠征はもう慣れたようなものなのだが、乗馬で長期間の移動は久々であり、馬の上で揺られるのはやはり嫌らしく、どこか不満げな表情をしている。

その最中にいま目指している涼州について考えており、隣に馬を並べて移動している稟に質問を投げかけてみた。



「なあ、稟」


「何ですか?」


「涼州ってどんな所なんだ?」


「そうですね……実力のある多くの諸侯が緩やかな共闘態勢を取っている……そんな所です」


「反董卓連合みたいにか?」


「涼州には五胡という分かりやすい敵が居ますからねー。反董卓連合よりは、はるかに統制の取れた集まりですよー」


「五胡か……」



風から聞かされた五胡という単語。

零治も三国志について知ってはいるが、あくまで一般レベルの知識程度である。五胡についても名前を聞いた程度なため、いまいちピンと来ない様子だ。



「天の国には五胡の存在はありませんか?」


「名前は聞いた事はあるが、詳しい事までは知らんなぁ。……ん~……」



零治はこんな時はと言わんばかりに、稟と間を挟んで移動している亜弥にチラリと視線を向ける。



「……一応知ってはいますが」


「なら説明してくんね?」


「…………」



亜弥は宙を見上げながら考える仕草をして見せる。

思考を巡らせながら言葉を選び、パパっと簡潔に説明をした。



「西方の異民族、騎馬民族の集まりって程度しか私も知りませんよ」


「ん? おい、お前がその程度しか知らない訳……」


『零治』


『っ!? な、何だよ……』



零治の言葉を遮るように亜弥が念話で話しかけてくる。

目と鼻の先に居る距離でこれを使うという事は、人に、特にこの世界の人間に聞かれるとまずい内容なのだろう。



『零治。確かに私は五胡の事も知っていますよ。さっきの説明はその場を誤魔化すためのもの』


『何でわざわざそんな事をするんだよ?』


『五胡の名が最も知れ渡る、五胡十六国時代は三国志よりも後の時代の話なんです。この時代よりも先の話をあまりベラベラ喋るのも良くない気がするので』


『あぁね……』


『理解できましたか?』


『分かったよ』


「お二人ともどうしたのですか? さっきから黙ったままですが」


「いや、何でもない。……稟、続けてくれ」


「はぁ。……では話を戻しますが、その五胡の侵攻と常に戦ってるのが涼州の諸侯ですね。騎馬ですから機動力も高いですし、何より戦慣れしています。大兵力の激突よりも、少数での奇襲や神出鬼没な遊撃が中心となって来るでしょう」


「今までの戦い方が通用しない相手って事か……」


「……ぐー」


「寝るなっ!」


「……おおっ!」



乗馬しているにもかかわらず、風は心地よい陽気に誘われ居眠りを始めたので、すかさず稟がビシッとツッコミを入れて叩き起こした。



「馬の上で寝るとかどんだけ器用なんだよ……」


「えへへー。馬の上って、ゆらゆらして気持ちいいじゃないですかー」


「……落馬して頭を打ったらどうするつもりだ。下手したら死ぬぞ」


「そうですねー。だったらお兄さん、一緒に乗せてもらえませんかー?」


「勘弁してくれ……」


「むー。ケチなのですー」


「風、無茶言わないの」



と、その時である。

前方から何やら雄叫びのようなものが聞こえ、砂塵も舞い上がっている。どう見ても何かあったとしか思えない光景である。



「ん? 前方が騒がしいな……」


「隊長っ! 姉さん! こんな所におったんかい!」


「真桜? 何かあったんですか?」


「奇襲や、奇襲! 涼州連合の連中、いきなり攻撃仕掛けて来てん! ホンマに馬ばっかりやで!」


「チッ! すぐに戻る。凪と沙和は?」


「とっくに準備始めとるわ!」


「敵の旗は? 馬騰の本隊ですかー?」


「旗は無いから分からへん。とにかく急いでや!」


「分かってる。亜弥、行くぞ!」


「はいっ!」


「姉さんは万が一に備えて、奈々瑠と臥々瑠と一緒にここに居てくれ!」


「ああ。任せときなさい」


「稟、風。ここは頼むぞ」


「はいー」


「零治殿、亜弥殿。くれぐれもお気をつけて」


………


……



前方は切り立った崖に挟まれた街道になっており、上からは涼州連合の諸侯が率いる騎馬隊から矢を浴びせられ、先頭の部隊は攻撃の良い的となってしまっていた。おまけに行く手を阻むように街道の前方からも少数編成による騎馬隊が突撃を仕掛けて来ている。

これが騎馬戦に慣れていない指揮官だったら部隊はあっという間に壊滅させられていただろうが、いま前方の部隊を率いているのは霞だ。

まずは部隊が混乱しないように霞は声を張り上げて周囲の兵士達に指示を飛ばす。



「ええい、上は無視しぃ! まずは馬の足を止める事を考え! 隊形は密集すんな、踏まれるで!」


「霞、無事か!」


「何とかな。……感謝しぃや? ウチが先頭やなかったら、グズグズになっとったとこやで!」



と、こちらの主力の一人である春蘭が合流。とはいえ、これで状況が変わった訳ではない。

まだこちらが不利な点は変わらない。問題はここからこの状況を切り抜けなければならないが、春蘭と霞の二人が揃えば、その程度の事もすぐにやってのけるだろう。



「助かった! 帰ったら酒でも奢ってやろう!」


「当ったり前や! 一番ええ酒、アホほど注文させてもらうからな! 行くで!」



霞を先頭に魏の軍勢が涼州連合に反撃を開始。

そしてそこへ遅れて零治と亜弥も合流し、騎馬戦に一番慣れている霞が的確に指示を出してくれるおかげで涼州連合とも互角に戦えていた。

そして次第に戦況は魏へと傾き始め、敵方はこれ以上の戦闘は危険と判断し、すぐさま撤退を開始した。

こちらも追撃こそするが、まだここが敵の本拠地ではないとはいえ向こうが有利にあるのだ。

その点を踏まえ、秋蘭が兵達に指示を飛ばす。



「深追いはするな! 隊形を整える事を優先せよ! 別の襲撃が来るやもしれん。警戒を怠るな!」


「……なるほど。確かに今までの戦い方が通用する相手ではなさそうね」



先の戦闘を後方から観察し、分析を行っていた華琳は誰に言うのでもなく呟く。

大きな損害は出なかったものの、今までとは戦い方が違ってくる上に、今後こういった奇襲が何度も起こり得るだろう。

そうなれば当然こちらの兵達は疲労が溜まり、遠征どころではなくなってしまう可能性もあるのだ。



「相手の詳細は不明ですが、馬騰の本隊ではないようですね。当分はこの手の小さな衝突が続くのではないかと思われます」


「敵の規模は大した事がなくても、襲撃が続くというのは厳しいわね」


「御意」


「ふむ……ともかく、見晴らしの良い所に陣を張って、警戒を厳重にするしかないか……」


「情報収集も継続させます。まずは敵の戦い方に慣れる事から始めなければ」



桂花の言う通りである。

この状況の改善策はとにかく相手の戦い方に慣れる事である。一番理想的なのは襲撃が起こり得ない状況を作る事なのだが、それは難しいだろう。



「でしょうね。国を出た途端にこれでは、先が思いやられるわ……ふむ」



その時、華琳の頭の中に一つの考えが浮かび上がり、不敵な笑みを浮かべながら前方の地平線を見つめる。



「どうかなさいましたか?」


「……秋蘭。至急、使いを出しなさい。面白い事を思いついたわ」


………


……



華琳達が涼州を目指して出撃してから数日が経過した。

その日の夜。華琳達は今まで通り開けた場所に陣を張り、敵の襲撃に備えて複数の武将に交代で見張りに当たるように指示を出す。

この日も零治は見張りについていたが、交代の時間になったので自分の天幕に戻り、相方の恭佳が出迎える。



「ふぅ……」


「お帰り、零治。今日はもう終わり?」


「ああ。奈々瑠と臥々瑠に交代したからやっと休めるぜ……」


「お疲れさん」


「労いの言葉どうも。……そっちは大丈夫だったか?」


「ああ。今の所、同居人の事は誰にも知られてないよ。なっ、華佗」


「…………」



恭佳はニヤニヤと横に座っている華佗の今の姿を面白がるような笑みを浮かべながら話しかける。

見れば今の華佗の格好は、上に全身を覆い隠すようなフードつきの黒色のローブのような物を身に纏っていた。



「姉さん。あまりからかうのはやめろよ」


「はいはい」


「すまんな、華佗。気を悪くしないでくれ」


「いや、俺は気にしてない。……しかし凄いな。この外套は。羽織ってるだけで本当に誰にも気づかれないとは……」


「ふふん。そうだろぉ。そいつはアタシが昔使ってたステルスローブだからね。そいつを着てりゃ誰にも存在を気取られる心配はないよ」


「……すて……何だって?」



聞き慣れない言葉を耳にした華佗は首を傾げながら恭佳に尋ねる。

本来なら言い出しっぺの恭佳が説明するべきなのに、当の本人は零治に視線を向けながら代わりに説明してくれと言わんばかりに眼で訴えかけていた。



「全く……。ステルスってのはオレ達の世界の言葉で、『隠密』、『こっそり行う』って意味があるんだ」


「なるほど。……だけど、どうして二人はこれを着ている俺の姿がちゃんと見えるんだ?」


「あぁ、それはコイツのおかげさ」



華佗の次の疑問に答えるべく、恭佳がコートを開いて裏地に貼り付けられているお札のような物を見せる。



「それは?」


「細かい説明は面倒だから省くけど、この札にはそのローブの効果が無効化される術が施してあってね。コイツを持ってれば姿が視認できるのさ。でなきゃ周りの味方が困るだけだからね」


「なるほどな。最初は信じられなかったんだが、あんた達が天の御遣いというのは本当らしいな」


「しかし姉さん、よくステルスローブがあったな。一体どうやって用意したんだ?」


「……自分で創ったのさ」


「創った? でも姉さん、物質変換魔法は苦手だったはずじゃ……」


「いやいや。あれとは違う。……正確に言えば、アタシが『無』から『有』を生み出したのさ」


「無から有を……? おいおい。姉さん、いつの間にそんな高度な魔法が使えるようになったんだよ?」


「多分この身体になってからだと思うよ」


「……怪我の功名ってやつか? やれやれ。喜んでいいのか複雑な気分だぜ」


「ははは。そうだね。……あぁ、そうそう。アタシのこの魔法だけど、そこまで万能じゃないから過信は禁物だよ」


「どういう事だ?」


「出撃する前に色々と試したんだけどね……まず、創り出せる物がアタシ自身が記憶している物だけに限られてるみたいなんだ」


「ふむ。他には何かあるのか?」


「ああ。ここが一番重要だよ。アタシが創った物には存在に制限時間があるみたいだ。試した結果、創り出した物は最終的には消滅しちまったよ」


「時間はどのくらいだ?」


「それが厄介な事に、現存時間にバラつきがあったから正確な時間が分からないんだ」


「マジかよ。って事は、華佗が使ってるこのローブも」


「ああ。何の前触れも無くいきなり消滅する可能性が高い。だから一日も早く馬騰が居る城に辿り着く必要があるんだ」


「消滅したらまた創れば問題ないだろ?」


「……理屈ではそうなんだけどねぇ。それ一着創るのにもかなりの時間と魔力を消費したんだよ。同じ物をまた創ったら、少なくともアタシは戦力外通告を受ける羽目になっちゃうね」


「そう都合よくはいかんか……」


「そういう事。とにかく、今は華佗が着ているローブが目的地に着くまで消滅しない事を祈るしかないよ」


「なあ。ちょっといいかな?」



それまで話を終始無言で聞いていた華佗が軽く手を上げながら口を開く。



「何だ?」


「さっきから疑問に思ってたんだが、何でこんなこそこそした真似をする必要があるんだ? 別に隠すような事じゃないと思うんだが」


「……普通ならそうなんだが、ちょいとばかし特殊な事情があってな。誰にも知られるわけにはいかないんだ……」


「曹操にもか?」


「ああ」


「……分かった。なら俺もこれ以上は何も訊かない」


「すまんな」


「気にするな。理由が何にせよ、零治が馬騰を助けたいというのは理解している。だから俺も協力は惜しまないつもりだ」


「感謝する、華佗」



詳しい事情も明かしていないのに華佗は引き続き協力してくれるという意思を表してくれたので、零治は感謝の意を籠めて頭を下げた。



「さて、オレは明日に備えてそろそろ寝させてもらうよ」


「なら俺もそうするとしよう」


「あぁ、華佗。悪いけどアンタは隅っこの方で寝てくれるかい? 万が一って事もあるからね」


「分かった」



恭佳の指示に従い、華佗はローブを纏ったまま天幕の一番奥の隅っこに寝転がり眼を閉じて眠りについた。



「姉さんは寝ないのか?」


「アタシはもうしばらく起きてるよ。ここの見張りも兼ねてね」


「分かった。おやすみ、姉さん」


「ええ。おやすみ、零治」



零治も明日に備えて見張りでの疲れを癒すためにその場に寝転がり、恭佳にこの場の見張りを任せて眠りについた。


………


……



「そっか。みんな上手くやってくれてるか」



翌日の朝方。場所は変わってここは涼州連合を率いている馬超が張っている本陣内。

散発的な奇襲が上手くいっているとの報告を従妹であり、共通点のある服装に太めの眉毛、短めのサイドポニーテールの髪型をして鉢金を巻いた馬岱から受け、馬超は満足げに頷いた。



「うん。昨日は様子見だったけど、曹操軍、かなりピリピリしてるって」


「こういう姑息なの、あんまりやりたくないんだけどなぁ。もうちょっと正面からぶつかるとか……」


「ばかー!」


「ひゃあっ!」



いきなり馬岱が大声を張り上げながら馬超の事をバカ呼ばわりして、馬岱の突然の行動に馬超は驚きの声を上げて飛びのいた。



「勝てない相手に勝とうと思ったら、これくらいやらないと駄目だよー。それでなくても、相手はあの曹操とか、荀イクなんだよ? 姉様も、あの眼玉を食べた夏候惇の話とか聞いてるでしょ!」


「だよなぁ……。女の子を夜な夜な食べちゃうとか、千里先の敵の考えを読むとか、倒した敵の眼玉をバクバク食べるとか、どう考えても無しだよな……」



どうやら涼州内では華琳達が過去に成し遂げた偉業に尾ひれがつき、変な形で広まっているようである。

だがしかし、噂とは尾ひれがついて広まるものではあるので仕方ない面もあるにはある。

加えて言うと、女の子を夜な夜な食べるという言葉はある意味では間違いは無いが、この場ではその点には触れないでおこう。



「だからせめて、城に着くまでにヘロヘロにしとかないと駄目なの! みんなもそれで協力してくれてるんだから!」


「そっか……そうだよな。なら、あたしは自分に出来る事をするまでだ!」


「うん! 今日も訓練、頑張ろー!」



馬岱は気合を入れた様子で声を張り上げる。

華琳達と馬騰が率いる涼州連合との戦いはまだ始まったばかりだ。

互いに譲れない信念の下、両軍の激闘はまだまだ続く。


…………


……



華琳達が涼州を目指して遠征に出てから更なる数日が経過した。

ようやく目的地である涼州に近づいたので、その事について秋蘭が報告をする。



「華琳様。昼過ぎには涼州に入ります」


「そう。これで、全行程の半分ほどかしら……」


「半分は過ぎたかと思いますが……いよいよ、ここからが敵の本拠地です。攻撃はより激しくなるかと」



桂花が緊張に満ちた面持ちで言う。

ここからはいよいよ敵の本拠地内である。向こう側が圧倒的に有利な立ち位置に立てるのだ。

敵の攻撃も激しさを増し、苦戦を強いられるのは間違いないだろう。



「そうね……。兵の疲労も酷いと聞いているし、少しはあれの効果が出れば良いのだけれど」


「今の所、敵の攻撃が緩んだようには思えませんね……」


「まあ、上手くいけば儲けものよ。計画は、効果が無かった事を前提に進めるように」


「御意」


………


……



華琳達が涼州内に入ってからというも、案の定あれからも涼州兵達による散発的な奇襲は続き、後を絶たない。

この日の夕方から零治は奈々瑠、臥々瑠、季衣と一緒に夜を通しての見張りに着くように指示されているので、交代の時間になったので一足先に所定の位置に足を運んだ。そしてその先で見た物は……。



「おーい。凪。交代の時間だぞ」


「…………」



凪は零治の言葉には反応せず、座り込んだ姿勢で俯いたまま沈黙を保っている。



「おい」


「ああ、凪ならよう寝とるで。声かけんといて」


「居眠りか……。悪いな、霞」


「かまへんて。遠征始まってから、ずーっとこんなやしな。特にこいつは気を張っとったみたいやし、疲れが出たんやろ」


「確かに、今回は流石のオレもまいったよ……」



涼州に入ってから敵の攻撃が激しさを増したのも悩みの種だが、一番の問題点はその攻撃を仕掛けてくる涼州兵が纏まった軍団ではなく、小集団の同盟な点だ。

ある集団が攻めてきてそれを追い散らしても別の集団には損害は全く無い。

そしてそこから無傷の別の集団が波状攻撃を仕掛けるかの如く攻めてくる。そんな事を延々と繰り返しているためこちらの疲労は溜まる一方。今の凪はまさにその状態なのだ。



「ま、ウチらの流儀だけじゃ世の中は成り立たんっちゅうこっちゃ。零治も天の国から来たばかりの頃は大変やったんやろ?」


「まあな。元々戦いには慣れていたが、最初の頃は多少なりとも苦労したかな。やってた事は基本変わらんが、今はもう慣れたよ」


「そっか。それにここしばらくは夜襲の数が明らかに減っとる。今日も無いんちゃうかな?」


「それならこっちも楽は出来るが……」


「すいませんっ! 寝坊しましたーーっ!」


「ほら臥々瑠! 早くしなさいよ! もう交代の時間よっ!」


「う~ん……まだ眠いよ~……」


「……っ! 夜襲かっ! はああああっ!」



時間に遅れてしまい季衣を先頭に、半ば寝惚けた状態の臥々瑠を奈々瑠が引っ張りながらその場に慌てた様子でやって来た。

そしてその声を聞いた凪は素早くその場から立ち上がり、氣を練って脚に集中させ攻撃態勢に移る。



「凪っ! 違うから! 敵襲じゃない! だから氣弾なんか撃とうとするなっ!」


「でぇいっ!」


「……ぐっ」



横に居た霞が素早く凪の首筋に手刀を叩き込んだおかげで凪は卒倒して気絶してしまい、騒ぎにはならずに済んだ。



「……容赦ねぇな、霞」


「こんな所であんなもんぶっ放されてたまるかい。じゃ、ウチも寝るき、凪が起きたらちゃんと寝なおすように言うといて」


「ああ。霞もお疲れさん」


「おやすみなさーい!」


「ほななー」


「さて、じゃあ今夜も気合を入れて仕事しますかね」


「そうだね。よろしくね、兄ちゃん。奈々瑠、臥々瑠」


「はい。こちらこそ」


「……ぐぅ~……」


「ちょっと臥々瑠。いい加減起きなさいよ」


「構わねぇさ。そのまま寝かせとけ。その時が来たら思いっきり働かせてやればいいんだ」


「……兄さんがそう言うのなら、私は構いませんけど」



そしてその日の晩。霞の指摘通り、夜襲が来る事は無かった。

なぜ最近になってあれだけ激しかった夜襲の回数が減ったのか、零治は疑問には思っていたが、今はそれよりも敵の攻撃が緩んだおかげで少しは楽が出来るという気持ちが勝ってしまい、その事をあまり気に留める事は無かった。

零治「なんだ? 今回は珍しく短いな」


作者「いや、本当はここの話は次の回と纏めて書いていたんだが、予想以上に長くなっちまったから前編後編に急きょ分ける事にしてな」


亜弥「なるほど。それでですか」


恭佳「ん? って事は、次の話はもしかして長いのかい?」


作者「まあ、ね……」


奈々瑠「その口ぶり……ひょっとして完成してるんですか?」


作者「一応、形にはなってるよ」


臥々瑠「何でいま投稿しないのさ?」


作者「まだ細かい修正と最終チェックが済んでないんだよ。だから後編の投稿はまだ先の話だ」


零治「そうかい。まあ、がんばれや。特に……誤字脱字のチェックに抜かりの無いようにな」


作者「言われなくても分かってら……」

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