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第47話 騒がしい休日

皆さん、大変長らくお待たせしました。

主要メンバーを全員登場させたので思いのほか手間取ってしまいました。

そして今回の話、そのせいでかなり長くなってしまってます。ホントすみません……。

「……フーー……」



亜弥と恭佳が奈々瑠に事情を訊きに零治の部屋に向かってから、零治は何をするのでもなく、吹き抜けの廊下の柵にもたれながら桃を盛るのに使っていた小皿を片手に気持ちを落ち着けようとタバコをずっと吸っている。



「う~……落ち着かねぇなぁ……」


「あっ。居た~」


「ん?」



右側から聞き覚えのある声がしたので視線をやれば、そちらから臥々瑠がトテトテとやって来る。



「臥々瑠。どうした。何か用か?」


「ん~? なんか姉さん達、奈々瑠に大事な話があるからアタシは兄さんの相手をしてろだってさ~」


(……上手く訊き出してくれるといいんだが)


「で? 兄さんは何してるの~?」


「見りゃ分かんだろ。タバコ吸ってんだよ……」


「……ねえ。禁煙しようとは思わないの?」


「全く思わんな」


「そ、そうなんだ……」


「ああ」


「…………」


「…………」



話し相手としてこの場に来たのに早くも会話が途切れてしまい、臥々瑠は困ったように首を捻りながら何か話題を出そうとするが一向に浮かんでこない。

零治は相変わらずタバコの煙を吹かし、遠い眼をしながら空を見つめ、互いに押し黙ったままだったが、零治は何かを思い出したように左手に持っている小皿に視線を落とした。



「あ、そうだ。臥々瑠、悪いがこの皿を厨房に返しといてくれ」


「えぇ~。何でアタシが持ってかなきゃなんないのさぁ~」


「頼むよ。オレはここで考え事がしたいんだ」


「ブ~。分かったよ」



臥々瑠は口をへの字にしながら零治から小皿を受け取り、厨房まで足を運んでいく。

零治はタバコの煙をプカリと吹かして、揺らめきながら空を昇っていく煙を見つめながら昨日の戦いについて考えを巡らせる。

今の零治には昨日の戦いについて一つの疑問が浮かんでいたのだ。



「昨日の戦い……姉さんがあの場に現れた、そこまでは憶えている。そして突然、胸に激痛が走って……それから何があった? いつの間にか春蘭達が到着していたし、黒狼もあの場から姿を消していた。オレには間の記憶が無い。あの後なにがあったんだ……」


「戻してきたよ。兄さん、次からはちゃんと自分で返してよね」


(……そうだ。もしかしたら臥々瑠なら)



零治が疑問に思う自分の記憶の空白期間。

あの時なにがあったのか、臥々瑠なら知っているかもしれない。

零治は昨日の戦いについて、臥々瑠に尋ねてみる事にした。



「臥々瑠」


「な~に?」


「昨日の戦いについてお前に訊きたい事があるんだが、構わないか?」


「別にいいよ」


「昨日姉さんがあの場に現れた後、春蘭達が到着するまでの間、黒狼と闘っていたのは誰だ?」


「……兄さんだけど」


「オレが?」


「うん」


「…………」



零治は困惑の表情を浮かべる。

春蘭達が到着するまでの黒狼と闘っていたのは零治自身だと臥々瑠は言う。

だが零治にはその時の記憶は無い。かと言って臥々瑠が嘘を言っているようにも見えない。

零治は念を押すようにもう一度訪ねる。



「本当にオレだったのか……?」


「そうだよ」


「姉さんじゃないんだな?」


「うん」


「…………」


「兄さん、憶えていないの?」


「んん~……原因は分からんが、あの時の記憶が途中から無くてな……」


「そうなの?」


「ああ」



臥々瑠の様子を見る限り黒狼と闘っていたのは自分で間違いないのだろうと零治は思う。

しかしそれでも途中からの記憶が無い理由の説明には繋がらない。

零治は別の質問を臥々瑠に投げかけてみる事にする。



「なあ。あの時、何か変わった事とかはなかったか?」


「変わった事ぉ?」


「ああ。どんな些細な事でもいい。あの場に何か異常とか無かったとか、何でもいいんだ」


「…………」



臥々瑠は無言で思考を巡らせる。

あの時、変わった事は確かにあった。

臥々瑠は言っていいのか頭を悩ませるが零治の疑問に答える事にし、無言で零治を指差す。



「…………」


「ん? オレがどうかしたか?」


「あの時の兄さん、変だった……」


「オレが? ……どう変だったんだ?」


「……上手く言えないけど、なんか……凄く怖かった……」


「怖かった?」


「うん。あの時、兄さんの闘ってた姿は凄かったよ。あの黒狼も圧倒していたもん。でも……」


「…………」


「あの時の兄さんは完全に別人だった。近づく者はみんな殺すような雰囲気があったし、何より……人じゃない何かの気配を感じたもん……」


「なっ!?」


「…………」



零治は臥々瑠から告げられた言葉に衝撃を受けてしまう。

人じゃない何かの気配というのも衝撃だが、零治にとって一番ショックなのは近づく者はみんな殺すような雰囲気という言葉である。



(オレが……近づく者全てを殺すような雰囲気を……っ!? そんな……。それじゃオレは銀狼と同じじゃないかっ!)



近づく者すべてを殺す。それは戦場では敵味方の区別も無く無差別に人を殺す事を意味する。

そして昨日の戦いで零治はその雰囲気を纏っていたと臥々瑠は言うのだ。

その時、零治の脳裏にかつて死神に言われた自分の本性についての言葉が蘇る。



『“自分の過去に対して後悔しているアンタ”と、“戦場で人斬りを楽しんでいたアンタ”……一体どっちがアンタの本性なんだい? 音無零治……』


(オ、オレは……本当のオレは一体どっちなんだ……っ!?)


「兄さん。大丈夫?」


「はっ!?」



零治は自分の事で頭がいっぱいになってる内に目の前が見えなくなっていたが、臥々瑠が心配そうに顔を覗き込みながら声をかけてきたので現実に引き戻される。



「はぁ、はぁ、はぁ……」


「兄さん、手が震えてるよ。大丈夫なの?」


「あ、あぁ。だ、大丈夫だ……」


「兄さん……」



臥々瑠は両手を伸ばして震えを起こしている零治の右手を優しく握りしめる。

それにより零治の手の震えは収まり、臥々瑠の手の温もりが伝わってくる。



「あっ……震えが」


「兄さん。大丈夫だよ」


「えっ?」


「大丈夫。例えこの先に何が待っていてもアタシは兄さんの側を離れないよ。アタシはこれからもずっと……兄さんの味方だからね」


「が、臥々瑠……」



臥々瑠からかけられる彼女なりの優しい言葉。

その言葉に胸を打たれ、零治は思わず臥々瑠に思い切り抱き付く。



「わっ!? に、兄さんっ!?」


「臥々瑠。ありがとう。そう言ってくれて少し安心したよ……」


「にへへ~♪ どういたしまして~」



最初は零治の行動に戸惑いを見せていた臥々瑠だが、本人もまんざらではない様子で表情を綻ばせながら零治の背に両手を回して抱き付き返す。

しかし、今日の零治はつくづく不幸に見舞われているのか、最悪のタイミングで亜弥と恭佳がその場に来てしまう。



「お~い。零治~。待たせた……ね……っ!?」


「……零……治。貴方……何をして……」


「ん……? なっ!?」



互いに眼が合い、その場を支配する気まずい沈黙。

別に零治はやましい気持ちで臥々瑠に抱き付いているのではない。ただ臥々瑠に対して感謝の意を籠めて抱きしめているだけなのだ。

しかし亜弥と恭佳はその事を知らない。二人の眼には零治が臥々瑠に愛おしそうに抱き付いてる、その情報だけしか入って来ない。



「ちっ、違うっ! これは……っ!」


「零治ーーっ!! そこを動くなーーっ!!」



零治は慌てて臥々瑠から両手を離してバタバタと振り回しながら事情を説明しようとするが、前方に居る恭佳が怒鳴り散らしながら問答無用の勢いで突っ込んできて右腕を大きく後ろに振りかぶる。

零治は即座に理解する。このままでは姉の鉄拳制裁を喰らう羽目になると。



「違うんだ姉さん! 話を聞いてくれっ!」


「言い訳なんか聞きたくなーいっ! 零治! この……幼女趣味がーーーっ!!」


「だから違うんだーーーっ!!」


「うらあぁぁぁぁぁっ!!」



零治との距離が目前まで縮まり、恭佳は思いっきり右の拳を零治の顔面に叩き込む。



「ぐっはあぁぁぁぁっ!?」



恭佳の拳は零治の顔の中心を捉えていたので、打ち込まれた鉄拳は零治の鼻を直撃し、零治は鼻血を吹き出しながら廊下を一回、二回、三回と転がりながら吹っ飛んでいき、反対側の壁に背中から叩き付けられてそのままズルズルと座り込むように崩れ落ちた。



「き、恭佳……。い、今のは……やりすぎなのでは……?」


「なに言ってんのさ!? 亜弥! アンタも見ただろ! 零治が臥々瑠に何をしていたのかをっ!」


「え、えぇ。見ましたよ。ですが、何やら事情があったように思えるんですが……」


「そんなの知るかっ! アタシは……アタシは悲しいよ! 零治が……弟がまさか幼女趣味に目覚めていたなんて……っ!」



どうやら恭佳の中では零治が幼女趣味に目覚めたと完全に決めつけられてしまったようだ。

確かに臥々瑠は零治と歳が離れてはいるし童顔、更に精神年齢も幼いが、少なくとも外見だけで言うと臥々瑠は幼女とは表現しにくいと思う。



「兄さんっ! 大丈夫っ!?」


「うぅぅ……」



殴り飛ばされた零治に臥々瑠は慌てて駆け寄り、介抱するが零治の口からはゾンビのような呻き声が漏れるだけでその間も容赦なく鼻血がドバドバと流れ出ている。



「とりあえず、彼の手当てをしてあげましょうかね。それから話を訊くとしましょう」


「ふんっ! どんな言い訳をしてくるのか楽しみだねっ!」


………


……



「いってて……」


「まったく。それならそうと早く言いなさいよね……」


「……問答無用の勢いでオレをぶん殴っておいてよくそんなセリフが言えるな」



あれからすぐに零治は衛生兵に鼻の手当てをしてもらい、亜弥と恭佳にも臥々瑠になぜあんな事をしていたのかもちゃんと説明した。

それにより何とか誤解は解く事も出来たが、零治の鼻は全く無事では無いようで、今の零治は鼻の部分、顔の中央に包帯を巻き付けた少々おかしな姿を晒していた。



「ったく。いきなり姉に顔面パンチを貰うとはな。ひでぇ休日だぜ……」


「だから悪かったって思ってるわよ……」


「しかし感謝の意を表すにしても、もう少し他のやり方を選ぶべきだったのでは? あれじゃ第三者が見るとどう思うかぐらいすぐに分かる事でしょうに」


「むぅ……」


「……兄さん。鼻、大丈夫?」


「大丈夫だったらこんな包帯姿なわけないだろうが……」


「にしても零治。昨日の戦いで何が気になるっていうのさ? そんなに気になるんならアタシが答えてやるよ?」


「…………」



零治は恭佳の申し出にどう答えたものかと無言で俯きながら頭を悩ませる。

確かにあの時の状況を考えれば、恭佳が零治の疑問の答えを知っているのは間違いない。

だが内容が内容なだけに、今この場で話すのはよそうと零治は判断した。



「いや、いいんだ。そんな大した事じゃないから」


「そう? それならいいけど」


(今はよしておこう。確かに気はなるが、休みの初日ぐらい普通に過ごしたいからな)


(もしかして零治の奴……あの時の記憶が……?)



零治と恭佳、お互いにそれぞれの想いを胸に抱きながら零治の自室の扉に到着し、部屋に残っていた奈々瑠が零治達を出迎える。



「あ、兄さん。おかえりなさい」


「ああ」


「って、兄さん。その顔……どうしたんですか?」


「姉さんにぶん殴られてこうなった……」


「ちょっ!? 零治! いくらなんでも話を端折りすぎじゃないかっ!」


「殴ったのは事実だろうが……」


「……ケンカでもしたんですか? ダメですよ。姉弟なんだからちゃんと仲良くしないと」


「いやいや、奈々瑠。別にアタシ達はケンカなんかしちゃいないよ。これは一種のスキンシップってやつさ」


「あんな暴力的なスキンシップがあってたまるか……」



恭佳の強引な言い訳に零治は呆れた視線を向けながら嘆息した後、本を片手に目の前の椅子に腰かけている奈々瑠に視線を移してまじまじと見つめるので、奈々瑠はどうしたのだと言いたげに首を傾げる。



「…………」


「ん? あの……私の顔に何か付いてますか?」


「いや、何でもない。気にするな」


「はぁ」


(どうやらいつもの奈々瑠に戻ってるようだな。変調の原因については、後で亜弥から訊いてみるか)



などと考えながら零治は奈々瑠の前を横切りながら頭をポンポンと軽く叩きながら素通りして、そのままベッドの前まで足を進めてゴロンと寝転がって普段と同じ休日の過ごし方に入る。



「零治。たまには寝る以外の休日の過ごし方をしたらどうなんですか……」


「うるせぇ。こちとら負傷している身なんだ。こういう時こそ寝て過ごすのが一番だろうが」


「いや確かにそうなんですが……」


「なあ、零治。仕事が休みならアタシにこの世界の街を案内してくれよ」


「嫌だね。今日のオレはテコでも動かんぞ。観光ガイドが欲しいんなら他を当たれよ」


「じゃあ、亜弥」


「別に構いませんが、出来れば私も今日くらいはのんびり過ごしたいのですが」


「はぁ。まったく。揃いも揃ってつれない弟と友人だわ……」


「ガイドは今度別の日にしてやるよ。だから姉さんも今日くらい大人しくしてろよ」


「はいはい……」


「……ってか、お前らいつまでオレの部屋に居るつもりなんだ。いい加減自分の部屋に戻れよ」


「まあまあ。いいじゃないですか。こうして全員が揃って休みの日なんて滅多に無いんですから」


「まったく……」


「あの、兄さん。もしご迷惑なら私達は自分の部屋に……」


「もういいって。気にすんな。好きなだけ居ろよ」


「わ~い♪ だったらアタシ、今日は一日中ここで過ごそ~っと」


「やれやれ……」



零治は掛布団を被って横で談笑をしている亜弥達に背を向けて寝転がり、寝る態勢を決め込むが、こんな近くで雑談をされていては当然ながら眠る事など出来やしない。

なので零治は眠る事は諦めて、とりあえず横になって昨日の戦いの疲れを癒すのだった。


………


……



それからしばらく時間が経過する。

時間帯的にはちょうど昼時だろうか。



「兄さ~ん。お腹空いた~。ご飯作って~」


「んぁ? もうそんな時間かぁ……?」



臥々瑠に揺さぶられながら起こされた零治は気怠そうにベッドから起き上がり、部屋の窓から太陽の位置を確認する。



「……あぁ、確かにそろそろ昼飯時だなぁ」



零治はその場で軽く伸びをしながら首を回して身体を解し、そのままクルリと横に向きを変えて両脚をベッドから降ろして腰かける姿勢で部屋に居るメンバーをグルリと見回す。



「で、お前らなんか食いたい物のリクエストとかはあるのか?」


「おや。私達の分も作ってくれるんですか?」


「ああ。その代わりあんま手間のかかる料理はお断りだぞ。どうしても食いたいんなら自分で作れ」


「う~ん……なら兄さん。丼物辺りが丁度いいのではないですか?」


「丼物かぁ。確かにそれなら大して時間はかからんが……となると飯の上に乗せる物を統一する必要があるな。全員がバラバラだと結局手間がかかるだけだからな。で、お前らは何丼がいいんだ?」


「零治に任せます」


「アタシもアンタに任せるよ」


「私も」


「肉! お肉沢山入れてねっ!」


「ったく。揃ってアバウトな注文しやがって。作るこっちの身にもなれや。……そうだ。姉さんは一緒に来るんだ」


「はっ? 何でアタシが」


「決まってるだろ。料理の練習のためだ。いい加減に姉さんも自分で料理できるようになろうぜ」


「うっ……」



練習という単語を聞かされ、恭佳は嫌そうに表情を歪める。



「あれ? 恭佳さん、料理できないんですか?」


「ああ。テンでダメだ。姉さんに何か作らせようとしたら出来上がるのはいつも真っ黒焦げになった何かだった……」


「あぁ、そうでしたねぇ。確か零治が料理を始めるきっかけもそれが原因でしたしねぇ……」


「へぇ~。意外だなぁ。恭佳姉さんも兄さんと同じように料理が上手だと思ってたのに」


「姉弟だからって料理まで同じように上手とは限らんぞ。……ほら姉さん、行くぞ」


「今日はいい……」



乗り気じゃない恭佳は手近の椅子に座り込んで首を横に振り、部屋から一歩も出ないと意思表示する。

昔から見慣れた光景に零治はまたかと言わんばかりに嘆息する。



「何でだよ。今から作る料理はそんなに難しくないって。簡単だから姉さんでも出来るさ」


「アンタの言う簡単は当てにはならないのよ。アタシは今は食う専のままでいいよ」


「いいから来るんだ」



零治は問答無用と言わんばかりに恭佳の首根っこを掴み、そのままズルズルと引っ張り始める。



「なっ!? コラ零治! 離さないかっ!」


「やかましい。たまには弟の言う事を聞け」



恭佳を引きずりながら押し問答を繰り返しつつ部屋を後にしようとしていた所に扉がコンコンとノックされたので零治は足を止める。



「ん? 開いてるぞ。入れよ」



扉が開け放たれ、季衣を先頭に流琉、秋蘭、そして最後尾には何やらデカいボウルのような器を抱えた春蘭が部屋にやって来た。



「やっほー、兄ちゃん。奈々瑠、お見舞いに来たよー」


「失礼します、兄様」


「失礼するぞ、音無」


「ああ。みんな悪いな。奈々瑠のために。……って、春蘭」


「ん? 何だ?」


「何だじゃない。お前が抱えているそのデカい器は一体なんだ……?」


「んん? あぁ、これか。……奈々瑠はどこに居る。この器のせいで前がよく見えんのだ」


「あの……ここですけど」


「おぉ、そこか。よしよし。音無、これをここに置かせてもらうぞ」


「はっ? いや、それは別に構わんが、一体それは……」



春蘭は零治の疑問には一切答えず、奈々瑠が使用しているテーブルの上に抱えていた大きな器をドンっと置き、その振動で中に入っている何やらサイコロぐらいのサイズのした無数の白い四角形の塊とサクランボが軽く宙を舞った。



「あ、あの……春蘭さん。何ですかコレ……?」


「杏仁豆腐だ」


「あ、杏仁豆腐……?」



春蘭に言われ、奈々瑠は改めて大きな器の中身に視線をやる。

確かに言われてみれば中に入っている白い四角形の塊は杏仁豆腐に見えるし、サクランボも一緒に入ってる点から間違いは無いだろう。

ただ、気になる点はその圧倒的ともいえる量である。



「あの……春蘭さん。これをどうしろと……?」


「うむ。食え」


「……春蘭さん。私こんなに沢山食べれませんよ……」


「あっ。だったらアタシも食べる~」


「おおっ! ちょうど腹が減ってたんだ。アタシも手伝ってやるよ」


「あぁ、それなら私も食べきれるかも。春蘭さん、構いませんか?」


「構わんぞ。そう思ってレンゲも人数分用意しといたからな」



奈々瑠、臥々瑠、恭佳の三人が器の中の杏仁豆腐をすくい取り、そのまま口に運ぼうとしたが、零治が声を張り上げながら手をかざして制止してくる。



「待った!」


「ん? 何だい、零治。アンタも食いたいの?」


「そうじゃない。……春蘭、一つ訊きたい事がある」


「何だ?」


「その杏仁豆腐を作ったのは誰だ……?」


「私だ」



零治の疑問に春蘭は胸を張って答える。

そしてその答えを聞いた零治の心境は最悪なものだ。春蘭が料理が出来ないという事は秋蘭から前に聞いているし、最近になって春蘭が料理をできるようになったなんて話も聞いた事がない。

そんな人物が作ったと思われる杏仁豆腐を今の奈々瑠に食べさせたりでもしたら、せっかく回復した体調が悪くなるどころか下手をしたら生死の境を彷徨う可能性もあると言っても過言ではないだろう。



「お前……料理なんか出来たのか……?」


「馬鹿にするな! 私だって料理の一つや二つ出来るに決まっておろうが!」


「……試にオレも食っていいか?」


「う、うむ。食ってみるがいい!」


(うぅ……人柱は正直ご免だが、これも奈々瑠のためだ!)



零治は恐る恐る春蘭お手製の杏仁豆腐をレンゲですくい取り、口元まで運び、しばらくの間を置いた後に意を決してそれを食べてみる。



「あむっ!」



部屋に広がる奇妙な沈黙。

零治は杏仁豆腐を噛み締めるように口を動かしてみるが、予想に反して口の中に広がってくる味は旨いの一言に尽きる味だった。



「う、旨い……」


「ふふ~ん。参ったか!」


「ああ。これが旨い事は認めようじゃないか。三人とも、食っていいぞ」


「待ってましたーっ!」


「いただきま~す♪」


「いただきます」



零治のその一声で三人は手に持ってるレンゲで杏仁豆腐をすくい取り口に運び、その美味しさに表情を綻ばせる。



「くぅ~っ! コイツは旨い!」


「うんうん! 凄いじゃん春蘭。見直したよ~」


「はっはっは! そんなに褒められると照れるではないか」


「……春蘭さん。一つ訊いてもいいですか?」


「何だ?」


「あの……どうして突然、私に杏仁豆腐を作ったりなんかしたんですか?」


「それはお前への礼だ」


「お礼? 私、春蘭さんにお礼されるような事しましたっけ?」


「うむ。先日の戦いの事、華琳様から聞かせてもらった。あの時、お前は身を挺して華琳様を庇ったそうではないか」


「あ、あれは無我夢中で身体が勝手に動いていただけで……」


「それでもお前が華琳様のお命を救ってくれたのは事実だ。あの時お前が居なかったら、華琳様はこの世を去っていただろう。奈々瑠、改めて礼を言わせてほしい。華琳様の事をお守りしてくれて感謝する」



春蘭は敬愛する主君の事を助けてくれた事に対する精一杯表すべく、奈々瑠に向かって大きく頭を下げて礼を述べる。



「えっ? えぇっ!? あの、春蘭さんっ!?」


「奈々瑠。私も姉者に同意見だ。お前のおかげで華琳様は死なずに済んだ。私からも礼を言わせてくれ。奈々瑠、華琳様を助けてくれた事、本当に感謝している。ありがとう」



春蘭に続いて秋蘭までも頭を下げて奈々瑠に感謝の意を表し、奈々瑠はどう反応していいのか困り果ててしまう。



「あ、あの! 二人とも頭を上げてください! 私、そういう事をしてもらいたくて華琳さんを助けた訳じゃないんですからっ!」


「二人とも。もうその辺にしてやれ。奈々瑠が困ってるだろ。頼むから普通に接してやってくれ」


「そうか? まあ、貴様がそう言うのなら。……ほれ、奈々瑠。遠慮せずにもっと食わんか」


「は、はい」



春蘭に促され、奈々瑠は臥々瑠や恭佳と違ってがっついて食べるような真似はしないが、春蘭の好意をありがたく受け取る事にし、パクパクと杏仁豆腐を口に運ぶ。



「ねえ、奈々瑠。傷の方はもう大丈夫なの?」


「はい。まだ少し痛みますけど」


「ふぅ。上手くいきましたね。秋蘭様……」


「あぁ。そうだな……」


「ん?」



春蘭達をよそに何やらボソボソと会話をしている秋蘭と流琉の様子が零治の眼に留まる。

その時、零治の頭に一つの予想が浮かび上がったので、零治は秋蘭の隣まで歩み寄り、ボソっと声をかける。



「おい、秋蘭、流琉。二人に話がある。ちょっと付き合え」


「う、うむ……」


「はい……」


「亜弥」


「何です?」


「お前、確か胃腸薬を持ってたよな?」


「有りますけど、それがどうかしたんですか?」


「今すぐ持ってきてくれ。患者は秋蘭と流琉の二人だ」


「あぁ、なるほど。分かりました」



零治の言いたい事を即座に察し、亜弥は一足先に部屋を後にして、零治もそれに続くように秋蘭と流琉を伴って部屋を立ち去って行った。


………


……



「ここでいいだろう」


「で、音無。話というのは?」


「決まってんだろ。あの杏仁豆腐の事だ」


「うぅ。兄様。なるべく早く済ませてくださいね。気持ち悪いので……」



見れば秋蘭と流琉は顔色が少々青ざめており気分が悪そうな様子だ。

これを見ただけで答えは分かりきっているが、それでも零治はあえて二人に訊く事にする。



「アレ、作ったのはお前らだろ?」


「うむ。その通りだ……」


「で、春蘭が作った物はお前ら二人が食ったんだな」


「はい……」


「危険だと分かってて何でそんな事をしたんだ……」


「奈々瑠の体調を崩したくなかったという思いもあるが、なにしろ姉者を悲しませたくなかったし、姉者が初めて一人で作った料理なのだ。捨てるのも忍びないではないか」


「すまんな、秋蘭。気を遣わせてしまって」


「気にするな。お前には日頃から世話になっている。これはせめてもの礼だ」


「ホントすまん。しかし、何で流琉まで……?」


「うぅ……秋蘭様が死地に赴くのなら、私だって……」


「……秋蘭。良い部下を持ったな」


「全くだ」


「ん? あぁ、三人とも。ここに居たんですか」



そこへ部屋に胃腸薬を取りに戻っていた亜弥が合流してくる。

彼女の左手には何やらラッパのマークらしき物が記されたラベルが貼られた茶色の小瓶が握られている。



「姉様。どうしたんですか?」


「何、大した用ではありませんが、その様子から大体の事情は理解しています。……零治、すみませんが代わりに」


「分かってる。二人とも、手を出せ」



零治に言われ、秋蘭と流琉は右手を開きながら零治の前に差し出す。

零治は瓶の蓋を開けて、瓶を傾けながら人差し指でトントンと叩いて瓶の中に入っている黒色の丸薬をそれぞれ三粒ずつ秋蘭と流琉の掌に落とした。



「何だこれは?」


「オレの世界の胃腸薬だ。心配すんな。変な物は入ってない」


「うぅ……兄様、これ物凄い臭いがするんですが……」


「良薬は口に苦しって言うだろ? 大丈夫だ。そいつを飲んで半日も大人しくしてりゃ腹の調子も良くなる。それとそいつは水と一緒に飲めよ。かなりキツい味をしてるからな」


「そうか。なら、ありがたくいただいておくとしよう」


「二人とも。本当にすまんな。今度なんか旨い物作ってやるからよ」


「ふっ。では期待して待っておくとしよう」


「それじゃあ兄様、私はこの辺で失礼しますね。奈々瑠さんによろしく伝えておいてください」


「では、私も失礼させてもらう。華琳様に頼まれ事をされているからな」


「ああ」



秋蘭と流琉は零治から渡された胃腸薬を片手にその場を後にし、零治も亜弥と共に自分の部屋へと戻っていった。


………


……



あの後、部屋に戻ってみれば秋蘭と流琉が作った杏仁豆腐は臥々瑠と恭佳がほとんど食べてしまい、零治と亜弥が食べれるほどの量も残っておらず、仕方ないので残りはすべて奈々瑠に譲り、零治と亜弥は零治が作った特製豚丼で済ませる事にしたのだが、そこから更に臥々瑠と恭佳も食べたいと言い出したので結果的に零治は四人分の昼食を用意する羽目になる。



「あぁ~。食った食ったぁ」


「ったく。あれだけ杏仁豆腐を食ったくせにそこから更に食うとか……カロリー過多なんじゃないのか」


「ふふん。死人のアタシにはカロリーなんか全く関係ないね」


「むぅ。そこは同じ女性として羨ましく思いますね……」


「同感です。姉さん……」



と、その時、またもや来客が来たのか部屋の扉がコンコンとノックされる。



「ん? また誰か来たのか? 開いてるぞ」



部屋の戸が開け放たれ、稟、風、桂花の軍師三人組が中に入ってくる。



「失礼します、零治殿」


「お兄さん、失礼するのですよー」


「…………」


「ん? ……おい。稟と風はともかく、何でお前まで……?」


「何よ。私が来ちゃ悪いの……」


「いや。ただ……珍しいなぁと思ってな。あんなに奈々瑠達と犬猿の仲なのにお前がわざわざ見舞いに来るなんてさ」


「ふん! 勘違いしないでよね。私はお見舞いに来たんじゃないわ。ただ様子を見に来ただけよ。その女も我が軍の大事な戦力なんですからね」


「…………」



人はそれをお見舞いと言う、と零治は一瞬ツッコんでやろうかとも思ったが、それをやれば桂花が逆上してヒステリックに喚き散らすのは考えるまでも無く明らかだろう。

折角の休日に桂花のヒスなんか見てもいい気分なんかしやしないので、零治はあえてそこはツッコまない事にする。



「……何か言いたそうね」


「いや、別に……」


「やれやれ。素直に奈々瑠殿が心配だから来たと言えないのですか、貴方は……」


「ちょっと! 誰もこんな奴の心配なんかしていないわよっ!」


「おうおう、嬢ちゃん。たまには素直になったってバチは当たらねぇだろ」



と、風の頭の上に乗っている宝慧が風のセリフを代弁する。



「こら、宝慧。風の台詞を勝手に取らないでほしいのです」


「だから違うって言ってるでしょう!」


「あぁ、もう。ただでさえ今日は部屋の密度が上がってるんだ。頼むから喚くんじゃない」


「うるさいわね! もう! 用は済んだから私は行かせてもらうわよ! あんた達と違って暇じゃないんだからっ!」



結局、桂花は案の定ヒスを起こして零治の部屋の中で散々喚き散らし、さっさと部屋から退出して乱暴に部屋の扉をバンッと閉めて行った。



「まったく。二人もあまり桂花をいじるなよ。折角の休みの日にアイツの喚き声なんか聞いてもちっともいい気分なんかしねぇんだからさ……」


「別にいじっていたつもりはないのですが。ただ、彼女ももう少し自分に素直になるべきと思って言っただけですよ」


「その点は同意だが……その結果があれじゃなぁ……」


「まあ、いいじゃないですかー。桂花ちゃんは桂花ちゃんなりに奈々瑠ちゃんの事を心配していたんですよー」


「そうは見えなかったが……。まあいいか。二人ともせっかく来てくれたんだし、茶でも飲んでけよ」


「いえいえー。そこまで長居はしませんのでお構いなくー」



と、風は言いながらトテトテと零治が使用しているベッドの前まで足を運んで、そのままうつ伏せに倒れ込んで、ゴロンと仰向けに寝転がり、まるで自分の部屋のようにくつろぎ始める。



「おい。風……」


「何ですかー? お茶なら結構ですよー」


「一体なにをしているんだ……?」


「見ての通り、ここでお昼寝をしていこうかと思いましてー」


「長居はしないんじゃなかったのか……?」


「ぐぅ……」


「寝るなっ!」


「おおっ!」



完全に寝る体勢に入っていた風に零治はデコピンを一発喰らわせて風を叩き起こす。

そんなに力は入れていないのに風はワザとらしく額を押さえながら零治に恨めしげな視線を向ける。



「むむむー。奈々瑠ちゃんと臥々瑠ちゃんは寝れたのに風は駄目なんですかー? これは少しばかり不公平な気がするのですがー……」


「はっ? 風。いきなり何を言い出すんだ?」


「昨夜、お兄さんが奈々瑠ちゃんと臥々瑠ちゃんと一緒に寝た事を風が知らないとでも思っていたのですかー?」


「っ!?」


「ほえ?」


「……風。何で知ってるんだ」


「蛇の道は蛇と言うではありませんかー」



風は口元に手を当てながら意味深な含み笑いを漏らして零治の疑問を適当にあしらう。

一体どこでこの話を知ったのかは疑問ではあるが、この様子では風は本当の事を話しはしないだろうと思い零治はその事をこれ以上追及はしなかったが、その話題が原因で別の問題が生じてしまう。



「はっ!? まさか零治殿。昨夜、寝台の上で無防備な姿で眠っている二人に……っ!」


「はい? おい、稟……?」


「まだ年端もいかぬ幼気な少女二人に……あんな事や……そんな事を……っ!」


(っ!? まずいっ!)



風の話を横で聞いていた稟がいつもの妄想癖をフル稼働させて顔を紅潮させながら何やら不穏当な発言を繰り返している。

稟がこんな状態で居たら最終的にはどうなるのかは分かりきっている。

零治は咄嗟にベッドにある掛布団を引っ張り上げ、稟の前にかざして盾代わりにする。



「…………ぶっはっ!!」



案の定、稟は盛大に鼻血を吹き出し、零治が手に持っていた掛布団を真っ赤に染め上げてそのまま床の上にぶっ倒れてしまう。

その染まり具合はドラマのワンシーンに出てくる殺人現場並みであった。

掛布団を犠牲にはしてしまったが、これのおかげでベッドその物が鼻血で染め上げられることは何とか防ぐ事ができた。



「……相変わらず凄い量の鼻血ですね」


「亜弥。この稟って奴、妄想癖持ちなの……?」


「ええ。それもかなり危ない内容の妄想ばかりするようで」


「大丈夫なの? 何か凄い量の鼻血を吹き出したけど……」


「大丈夫です。いつもこんな調子ですので」


「り、稟さん!? 大丈夫ですかっ!?」


「お~い。り~ん。こんなとこで寝てたら風邪ひいちゃうよ~」


「うぅぅ……」


「……風」


「何ですかー?」


「侍女に新しい掛布団を持ってくるように頼んできてくれるか……」


「分かりましたー」


「それと……こいつも一緒に連れてけっ!」



未だ床の上で呻き声を漏らしながら鼻血をドクドクと垂れ流している稟に向かって、オレの休日をこれ以上引っ掻き回すなと言わんばかりに手に持っている掛布団を投げつけた。


………


……



半ば追い出すような形で風と稟に部屋を後にさせて、侍女から新しい掛布団を受け取り、それをベッドに置き、今までの気苦労を紛らわせるように零治は仏頂面をして部屋の窓辺でタバコの煙を吹かしている。



「……フーー……」


「零治。いつまでそうやってタバコを吸っているつもりなんですか……」


「オレの気が紛れるまでだ……」


「そんなにスパスパ吸って……肺癌になったらどうするつもりなんですか……?」


「別に。人間は寿命が来ればいつかは死ぬんだ。それにオレの場合はいつ死ぬか分からない身だしな。だから癌になろうが気にしないね」


「はぁ……。恭佳。黙ってないで貴方も何か言ったらどうなんですか。貴方の弟でしょう」


「そう言われてもねぇ……アタシも生前は吸ってた身だし、零治がヘビースモーカーなのはアンタも知ってるだろ。今更なにを言ったって無駄だよ」


「まったく。この姉弟ときたら揃いも揃って……」



と、その時、またもや部屋の扉がコンコンとノックされる。

やはりみんな奈々瑠の容体が気になるのだろうか。



「また誰か来たのかよ。……開いてるぞ。勝手に入れ」


「おーっす、零治。邪魔すんでぇ。よう、奈々瑠。見舞いに来てやったでぇ」



部屋の戸が開け放たれ、あっけらかんとした様子の霞がズカズカと中に入ってくる。

だが霞の右手には酒が入ってると思われる陶器の酒瓶が握られており、どう見ても見舞いに来たようには見えなかった。



「はぁ……よりによってうるさい奴が……」


「あん? なんか言ったか?」


「いや。独り言だ。気にするな」


「そうか? ……奈々瑠。ここ座ってもええか?」


「はい。どうぞ」


「ほな失礼すんでぇ」



霞は奈々瑠に相席するように反対側の椅子に腰かけて、手に持ってる酒瓶もテーブルの上に置く。

おまけに懐から盃まで取出し、完全にここで酒を呑む気が見え見えである。



「奈々瑠~。傷の方はどうや~? 痛んだりとかはせえへんか?」


「まだ少し痛みますけど、もうほとんど大丈夫ですよ」


「そうかぁ。それ聞いて安心したわ」



霞はそう言って酒瓶の蓋を開け、盃になみなみと酒を注ぎ、それを一気に煽って表情を綻ばせる。



「くぅーっ! 旨いわぁー」


「おい。霞。お前こんな真っ昼間からなに酒なんか呑んでんだ。仕事はどうしたんだよ……」


「ふふーん。生憎とウチは今日は非番やねん。だから昼間から酒を呑んでもお咎めは無しや」


「むぅ。そう言われては何も言えんな。ってか、酒が呑みたいんなら自分の部屋で呑めよ。なんでわざわざオレの部屋で呑む必要があるんだ……」


「細かい事は気にしなや。それに大勢で呑んだ方が楽しいやんか。零治もどうや? 仕事は休みやろ」


「オレは昼間から呑んだりしねぇぞ……」


「つれない奴やなぁ。ほな恭佳はどうや? 呑むか?」


「おっ! いいねぇ。ならありがたく頂こうじゃないか」



部屋の主である零治の意思をガン無視して霞と恭佳は揃って昼間からその場で酒盛りを始めだす。

だがその時、霞は何か重要な事を思い出したのかハッと顔を上げて恐る恐る亜弥に向かって口を開いた。



「あ、亜弥……ひょっとして……」


「ん? あぁ、私はいいです。私も零治同様、昼間から呑む気は無いので」


「そ、そうか……」



亜弥が呑む気は無いと確認でき、霞は心の中で大きな安堵の溜息をつく。

その際に、零治が霞の耳元まで顔を寄せてボソボソと釘を刺すように呟いた。



「おい、霞。もう分かってるだろうが、亜弥に酒を呑ませたらオレ達はお前を生贄にしてここから一目散に逃げ出す。命が惜しかったら亜弥には絶対に呑ませるんじゃないぞ……」


「わ、分かっとるって。ウチかてこんな所で死にたくはないき……」


「ならいい……」


「お~い、霞~。早く注いでくれよ~」


「ん? あぁ、すまんすまん」



恭佳が右手に持つ盃を振りながら早く注いでくれと急かすので、霞はすぐに酒瓶を傾けて酒を盃に注ぐ。

恭佳は口元まで盃を近づけ、まずは酒の芳醇な香りを楽しみ、それから盃の端に口を付けながら傾けて中に注がれてる酒を一気に呑み干す。



「かぁ~っ! 旨い! いや~、酒なんて久しぶりに呑んだよ。霞ー。いい酒持ってんじゃん」


「気に入ってもらえて嬉しいでぇ。そいつはウチのお気に入りやきなぁ」


「ほらほら。霞も呑みなよ」



恭佳は空になった盃を霞に返して酒を注ぎ、受け取った霞はまたもやそれを一気に煽って呑み干す。



「あぁ~。昼間っから呑む酒は格別やなぁ~」


「同感だね」


「やけど……やっぱ二人で呑んでも今一つ盛り上がらんなぁ~」


「それは仕方ないじゃん。零治と亜弥は呑まないって言ってるんだし」


「ん~。……ん?」



頬杖を突きながら空になった盃を片手に部屋を見回しながら唸っていた霞の眼に奈々瑠の姿が止まる。

眼を合わせた奈々瑠はどうしたのだと言いたげに首を傾げる。



「せや。奈々瑠、どうや? あんたも呑んでみんか?」


「はっ? い、いや、私は……」


「堅い事言いなや。一杯くらい呑んでも酔ったりなんかせんて。恭佳ー。ちゅー訳で酒を注いでや」


「はいよー」


「おい! この酔っ払いども! なに奈々瑠に酒を呑ませようとしてんだっ!!」


「なんや。零治まで何を堅いこと言っとんのや。酒は百薬の長って言うやろ」


「アホかーっ! 奈々瑠は病気じゃねぇ! ただ負傷しているだけだ!」


「そんな細かい事は気にしないや」


「霞。これぐらいなら大丈夫だろ? ほれ」


「おっ。おおきに」



半分ぐらいの量の酒を注がれた盃を霞は恭佳から受け取り、それをズイッと奈々瑠に突きつける。



「ほれ。奈々瑠。ぐいっといってみ」


「い、いいですよ。私お酒なんか呑めませんってば」


「まあまあ。そう言わんと。試に一杯だけ呑んでみや」



半ば酔っている霞は奈々瑠の首に腕を絡ませて無理やり酒を呑ませようとするので、零治が凄まじい剣幕で間に割って入り、霞を奈々瑠から引き剥がしながら両腕を押さえつける。



「だからやめろっつってんだろうがぁ! そんなに誰かと呑みたいんなら他を当たれ!」


「こら零治! 邪魔しなや! 一杯くらいええやんけ!」


「よくないっ!」


「ええからその手を離すんや!」


「誰が離すか!」


「ああ、二人とも。部屋でそんなに暴れては」



押し問答を繰り返す零治と霞の間に亜弥が入り仲裁しようとしたが、その時に霞の手の中から盃がすっぽ抜けてしまい、宙を舞った酒入りの盃は奈々瑠の頭上で綺麗に回転しながら逆さまに向いてそのまま落下していき、奈々瑠の頭に酒を浴びせた。



「きゃっ!?」


「あっ……」


「な、奈々瑠っ!? すまん、大丈夫かっ!?」


「…………」



部屋に広がる気まずい沈黙。

奈々瑠の頭に乗っていた盃はそのままズルズルと滑り落ちながら床に落下してカランと乾いた音を立てる。

零治は慌てた様子で奈々瑠の顔を覗き込みながら大丈夫か尋ねるが、奈々瑠は何の反応も示さない。

が、それからすぐに奈々瑠からある反応が示される。



「……ひっく」


「ん? おい、奈々瑠。どうした……?」


「ひっく。……えへへへ~。兄さ~ん」


「奈々瑠っ!? 一体どうし……って、のわぁっ!?」



奈々瑠は紅潮した顔で表情を緩ませ、腑抜けた笑い声を出しながら零治の首に両腕を絡ませてそのまま床の上に押し倒す。

そして先程から繰り返すしゃっくり。そう。奈々瑠はさっき頭から浴びた酒がそのまま顔を伝っていき、少量ではあるが口に入ったそれを飲み込んでしまった。

つまり、今の奈々瑠は完全に酔っぱらってしまっているのだ。



「兄さ~ん。だ~い好きですよ~」


「奈々瑠! お前まさか酒に酔って……っ!?」


「ん~? おかしな事を言うのですね~。私、おしゃけなんか呑んでましぇんよ~」



酔いが完全に回ってしまったせいで奈々瑠の呂律もおかしな事になってる。

誰がどう見ても今の奈々瑠は只の酔っ払いであった。



「色々とツッコみたい所はあるが……今はどうでもいい! 奈々瑠! 今すぐにどくんだっ!」



零治は奈々瑠の両腕を首から引っぺがしてそのまま押し返そうとするが、奈々瑠も負けじと両腕に力を入れて零治を押さえつけようとする。



「あん。兄さ~ん。どうしてそんなに冷たいんでしゅか~。そんな事言う兄しゃんは……こうしちゃいま~す♪」


「おいこら! 何だこのバカ力はっ!? って、奈々瑠っ! 何し……んぅ……っ!」


「んっ……ちゅ……んぅ」



奈々瑠は零治の腕を床に押さえつけながらそのまま覆いかぶさり、零治の唇に自分の唇を押し付けて熱烈な口づけをする。ただ、片方がただの酔っ払いに成り下がっている上、無理やりしているためシチュエーションとしては最悪としか言えないが。

目の前の生々しい展開に亜弥達はどう反応していいか分からず、唖然としながら硬直してしまう。



「うわ~。奈々瑠の奴、酒に酔ってるせいとはいえ、大胆な事しよるな~」


「そんな事言ってる場合ですか。早く止めないとまずいでしょう……」


「でもどうやって止めるんだい? 零治があの有様だし、引き剥がすのは難しいと思うよ」


「それは分かってますよ」


「ぷはぁ! おい! 誰でもいいから早く奈々瑠を止めろ!」


「んふふふ~♪ 兄さんの唇、おいし~♪」



奈々瑠は右手の人差し指で自分の唇の愛おしそうに撫で回し、チロッと舌なめずりをする。

その姿から放たれる妖しい色気に零治はゾクッと背筋に嫌な寒気を憶える。



「兄さ~ん♪ 愛してま~す♪ このまま行くとこまで行っちゃいましょうね~♪」



そう言うや否や、奈々瑠は零治のズボンのベルトに手を伸ばしてカチャカチャとベルトを外してズボンを脱がせようとする。

これは誰がどう見ても非常にマズい展開である。



「ちょっ!? 奈々瑠! 何しやがる!?」


「何って~……ズボンを脱がしぇようかと」


「コラ! 今すぐやめろ! ズボンから手を離せっ!」


「離しませ~ん。兄さんこそしょの手をどけてくだしゃいよ~」


「誰が離すかっ! おい、ホントやめろ! ズボンを引っ張るなっ!」


「あ、亜弥。奈々瑠の奴、何だってあんな事を……?」


「恐らく……酒に酔ってタガが外れて、彼女が内に抱えている願望が表に出てしまってるのではないかと……」


「ああね。確かにあの子、零治とチョメチョメしたいって言ってたしねぇ」


「おいお前らーっ! 見てないで助けろーっ!」


「にゃははは。ええやん別に。そのまま流れに身を任せてまえや。ウチは気にせんき」


「この酔っ払いがーっ!」


「しかしこの状況、このまま放置するわけにはいきませんね。恭佳、奈々瑠を止めますよ」


「あいよ」



流石にこれ以上放ってはおけないので、亜弥と恭佳は後ろから奈々瑠の肩を掴み、そのまま引っ張り上げて零治から引き剥がそうと試みるが、奈々瑠は零治の首に両腕をしっかりと絡ませて離れまいと抵抗する。



「あーん! 邪魔しないでくださーい! これから兄さんといい事するんですから~!」


「何を言ってるんですか貴方は!? 奈々瑠! 酒に酔った勢いでそういう事をしてはダメですってば!」


「そうそう。こういう事はもっとムードがいい場所でだねぇ」


「恭佳は黙っててくださいっ!」



亜弥と恭佳は更に力を入れて奈々瑠を引っ張り上げるが、奈々瑠も同じく更に力を入れて零治にしがみ付いて離れようとしないので状況は平行線を保ったままだった。

おまけにそのせいで零治の首が無理やり持ち上げられてしまっているので、首の骨がミシミシと軋んでその痛みに堪らず零治は悲痛な叫び声を出す。



「あいででででっ!! や、やめろ! それ以上引っ張るとオレの首が折れる!」


「ですが今の奈々瑠を放置するわけにはいかないでしょう! 男なんだからこれぐらい我慢してくださいっ!」


「ふふふ~♪ 兄さ~ん。もう諦めて私を受け入れてくださいよ~」


「誰がそんな事するかってんだっ! こうなったら……臥々瑠っ!」


「な、何っ!?」



それまで終始無言のまま事の成り行きを見守っていた臥々瑠に零治は怒鳴るように声を張り上げる。

いきなり自分の名を呼ばれ、しかも怒鳴られるように呼ばれたので臥々瑠は肩をビクリと震わせた。



「臥々瑠! 一生の頼みだ! 今すぐ奈々瑠をぶん殴って気絶させろ!」


「えっ? ええっ!? で、でも、奈々瑠は怪我をして……」


「コイツが傷を負っているのは胸だろっ! 背後から後頭部に一発ブチ込んでやれ!」


「えぇ~っ!? でも怪我人を殴るのは流石にアタシも気が引けるんだけど……」


「後始末はオレがしてやる! だから言われた通りにしろーーっ!!」


「わ、分かったよ! もう……何でアタシがこんな事を……」



臥々瑠はブツクサと一人文句を言いながら押し問答を繰り返している零治達の側面に回り込んで奈々瑠の首筋に狙いを定めながら手刀の構えを取る。



「奈々瑠。ごめんね。……ていっ!」


「ふぎゃっ!?」



臥々瑠が放った手刀の鋭い一撃は見事に奈々瑠の首筋を捉え、完全に無防備な状態から手刀を打ち込まれた奈々瑠はまるで尻尾を踏まれた猫のような声を出して卒倒し、零治の上にパタンと倒れ込むように気絶した。



「はぁ、はぁ、はぁ……っ! よ、よくやったぞ、臥々瑠。ご褒美に今日の晩飯は超豪華な物を作ってやるからな」


「う~ん。ご飯は嬉しいんだけど……こういう事してご褒美を貰うのは複雑な気分だなぁ」


「オレがいいと言ってるんだ。お前は何も気にしなくていい……」



零治は覆いかぶさりながら気絶している奈々瑠をとりあえず床の上にどかして立ち上がり、ズボンのベルトを元に戻し、服に付いた埃をパンパンとはたき落して乱れた髪を整え、ゆっくりと霞に向き直る。



「さて……霞?」


「な、何でしょうか……?」



零治から放たれる圧倒的な威圧感を前にして、霞からは先程までのへらへらした笑みは完全に消え去り、強張った表情で返事をする。

霞は即座に悟る。今の零治に下手な事を言えば間違いなく逆鱗に触れてしまい、怒りの炎に油を注ぐだけだと。

なのでここは零治が何を言うのかを居心地の悪い空気に耐えながら静かに待つ事にする。



「オレが何を言いたいか分かるか……?」


「え、えぇっとな、零治……その……」


「言い訳なら聞きたくないし、聞く気も無いぞ……」


「ホンマにすまん! まさかあんな事になるなんて思ってなかったんや! この通りや! 堪忍してくれっ!」



もはや謝る他に道は無い。

霞は素早くその場で土下座をして頭を床に叩き付けるような勢いで大きく下げて精一杯の謝罪の言葉を述べる。

しかし零治からは何の反応も返ってこないので、霞は恐る恐る頭を上げて零治に視線を向ける。



「…………」



零治は無言のまま両腕を組み、仁王立ちで霞を見下ろしていた。

霞はしばらく零治に視線を合わせていたが、未だに零治は黙ったままなので、霞は意を決して口を開く事にした。



「れ、零治……? 許してくれるか……?」


「…………」



霞の言葉に零治は無言のままだったが、わなわなと身体を震わせている。

誰が見ても分かる。零治は間違いなく怒っているし、許す様子も一切ないと。

それが事実だと表すように、零治は仁王立ちのまま大きく息を吸い込んで、それほどの広さも無い自室で、それこそ城中に響くのではないかと思える程の大きさの怒鳴り声を上げた。



「今すぐここから出て行けーーーーーっ!!」


「はいーーーっ!!」



その凄まじい怒鳴り声に霞は素早くその場から立ち上がり、酒瓶を片手に脱兎の勢いで部屋を立ち去っていく。

扉が開けっぱなしだったので零治は肩で激しく息をしながら内に抱える怒りをぶつけるかのように乱暴に扉を閉めた。



「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……っ!」


「やれやれ。相変わらず凄い怒鳴り声ですねぇ……」


「全くだ。耳を塞いでて正解だったね……」


「うぅ……ちゃんと塞いでたはずなのに耳鳴りがするよ~……」



零治は部屋のど真ん中で肩で激しく息を繰り返し、しばらくして呼吸も安定してきて落ち着きも取り戻したところで、未だに床の上で気絶している奈々瑠を抱き上げてそのままベッドの上まで運んで寝かせ、掛布団をかけてあげた。



「オレはただ休みたいだけなのに、何でこんなに疲れなきゃなんねぇんだ……」



零治は誰に言うのでもなく、一人愚痴るように呟き、窓辺まで足を運び、タバコに火を点けて煙を吹かす。


………


……



それからしばらくの時間が過ぎて日は沈み、辺りもすっかり暗くなり夜の時間帯となる。

今現在、零治の部屋には凪、真桜、沙和の三人が訪れており、凪が代表として今日一日の業務報告を行っている。



「……というわけで、本日の報告は以上であります」


「ん、了解。お疲れさん。……はぁ~……」



零治は凪の報告を聞き終え、朝からの出来事でも思い出すかのように机に肘をついている左手で頭を押さえながら項垂れて大きなため息を吐く。



「……隊長。随分お疲れのように見えますが……何かあったんですか?」


「あぁ。今日は朝から色々あったせいで全然休めてないんだよ。正直、仕事をしていた方がまだマシだった気がするくらいだ……」


「そうなん? ……せやったら隊長、今からウチらの仕事を手伝ってくれへん? これからさっき言った報告の内容を書類に纏めないかんきよ」


「真桜。隊長は昨日の戦いで負傷しているから仕事を休んでいるんだぞ。いくら亜弥様より軽傷とはいえ、仕事を手伝わせたら休んでる意味が無いだろ」


「分かっとるって。ちょっとした冗談やんか。ホンマ凪は堅物なんやから……」



真桜はその場を和ませる軽い冗談のつもりで言ったんだろうが、凪からすれば真桜の日頃の行いを考えればそれは冗談には聞こえなかったようで、ジロリと睨み付けながら釘を刺すように言ってくる凪の態度に真桜はヒョイッと肩をすくめた。



「ねえ、隊長」


「何だ? 仕事なら手伝わんぞ……」


「違うよー。奈々瑠ちゃん、まだ具合がよくないのー? 沙和達が来た時から寝たままなんだけどー」


「ん? あぁ。そんなんじゃねぇよ。ただちょっと疲れて寝てるだけさ」



もちろんこれは嘘だ。

昼間酒に酔ったせいで押し倒され、危うく後戻りできない道へ足を踏み外しそうになった所を臥々瑠に殴らせて気絶させたなんて口が裂けても言えないし、言える訳が無かった。



「そうなんだー」


「ならば私達はこの辺で失礼しますね。あまり騒がしいと、奈々瑠もゆっくり休めないでしょうから」


(朝から充分すぎるほど騒がしかったんだがな……)


「それでは隊長、亜弥様。失礼します」


「隊長、姉さん。お疲れー。ちゃんと休まなあかんで」


「隊長。奈々瑠ちゃんが起きたら、今度一緒に可愛い服を買いに行こうねって伝えといてなのー」


「ああ。伝えとくよ。三人ともお疲れさん」



凪達三人が立ち去り、部屋にようやく静けさが戻り、零治は仕事時に使用している椅子に大きくもたれながら伸びをして疲労感を露わにする。



「零治、アンタも随分と大変な立場に就いてるみたいじゃないの」


「他の連中に比べればオレはまだ楽な方さ。だが……忙しい点は変わらんがな」


「ふ~ん。それにあの三人も随分とアンタらを慕ってるみたいだし……いやはや、零治。アンタ……いい居場所を見つけたじゃないか」


「別に自分で見つけた訳じゃ……」


「う……うぅ~ん……」



と、その時、ようやく意識を取り戻した奈々瑠は呻き声を漏らしながら右手で頭を押さえ、気怠そうにムクリと起き上がる。



「ん? おぉ、奈々瑠。起きたか」


「兄……さん? 私、どうしちゃったんですか? なんか昼間の記憶が途中から無いんですが……」


「あれから貴方、いつの間にか疲れて寝ちゃったんですよ」


「そう……なんですか? じゃあこの頭痛は一体……」



奈々瑠は頭頂部を押さえながら苦悶の表情で頭の痛みを訴えかける。

これが酒に酔ったせいなのか臥々瑠の手刀が原因なのかまでは判断できないので、零治は昼間の事には触れずに頭痛の事を尋ねる。



「どの辺が痛むんだ……?」


「なんだか……頭の奥からズンッと来るように痛むんです……」


(こりゃ完璧に酒が原因だな。ったく、霞の奴っ!)



零治は心の中で毒づきながら部屋に常備している水差しを手に取り、湯のみに水を注いでそれを奈々瑠に差し出す。



「ほら。これを飲めば少しは楽になるだろ」


「ありがとうございます。……んっ、んっ、んっ……」



零治から水が入った湯のみを受け取った奈々瑠は軽く会釈をして、湯のみのふちに口を付けて一気に傾けて旨そうに喉を鳴らして水を飲み干した。



「ふぅ……。ありがとうございます、兄さん。おかげで少し楽になりました」


「それは良かった」



と、その時、部屋に広がる穏やかな時間を打ち破るように臥々瑠と恭佳の腹の虫が、ぐぅぅ~っと大きく鳴いて空腹感を訴えかけてきた。



「兄さ~ん。お腹すいた~……」


「同じく。零治、つー訳でなんか作ってくれよ」


「お前らってやつは……はぁ。確かにそろそろ晩飯時だな。なら厨房に行くぞ。全員ついてこい」


「は~い!」


「おーっ!」



臥々瑠と恭佳は意気揚々と腕を宙に突き上げて声を張り上げてその場から立ち上がり、亜弥と奈々瑠はその姿に苦笑しながら立ち上がって全員が零治の後に続く。

が、その時にまたもや部屋の扉がコンコンとノックされる。



「またかよ。ったく、今日はよく客が来る日だな。……誰だ。開いてるぞ」



もうどうにでもなれと言わんばかりに零治はぶっきらぼうに来客に入って来るように告げる。

部屋の戸がゆっくりと開け放たれ、そこから中に入ってきたのは華琳だった。



「失礼するわよ」


「華琳? どうしたんだこんな時間に? ……まさか今になって仕事が入ったとかなんて言わないだろうなぁ……」


「安心なさい。仕事の話で来たのではないから」


「なら何だよ?」


「……ふむ。全員揃っているようね」



華琳は部屋の中を見回し、零治達が揃っている事を確認するかのように一人で呟く。



「貴方達、夕飯は済ませたの?」


「いや。丁度いまから厨房に向かう所だったんだが……」


「そう。……奈々瑠」


「何ですか?」


「傷の方はどう? 動ける?」


「はい。激しい運動はまだ出来そうにありませんけど、歩いたり軽く走るぐらいなら平気ですけど」


「それは良かったわ。……ならば全員すぐに身支度を整えなさい。今から街まで出かけるわよ」


「はっ? こんな時間にか? 一体なにしに行くんだよ?」


「それはついてくれば分かる事よ。だから早く支度なさいな」


「分かったよ」



零治はポールハンガーに掛けているコートを手に取ってそれを身に纏い、何が起こっても対処できるように叢雲もしっかりと装備して身支度を整える。

亜弥はコートこそ羽織ってはいるが、今の状態では戦闘など無理なので武装はせず、奈々瑠と臥々瑠もいつも着ているハーフコートを羽織って一応ながら武装もしておく。

恭佳に至っては先日と変わらないローブ姿のままだ。



「これでいいか?」


「よろしい。なら行くわよ。ついてきなさい」


「はいはい」



何の目的でこんな時間に街まで出かけるのかは疑問だが、この様子では華琳は答えてはくれないだろう。

とりあえずその疑問は胸にしまっておき、零治達は華琳の後の続いて部屋を後にした。

そして城門へ向かう際に吹き抜けの廊下を歩いてる時に反対側から秋蘭が歩いてきて、華琳の姿を確認した秋蘭はその場で立ち止まり、姿勢を正して口を開く。



「華琳様。お出かけですか?」


「ええ。秋蘭、頼んでいた例の件の方は?」


「はっ。既に手配済みです」


「結構。なら今から街まで出かけてくるわ。留守は任せたわよ」


「御意。行ってらっしゃいませ、華琳様」



華琳は満足げに頷き、秋蘭に留守を任せる意を伝え、優雅な足取りで横を通り過ぎていく。

今の会話の内容を聞く限りでは、秋蘭は華琳が街に行く目的を知っている様子だ。

気になった零治は秋蘭にその事を尋ねてみた。



「なあ、秋蘭。華琳の奴、何しにオレ達を街に連れて行く気なんだ?」


「それは行けば分かるさ。音無、折角の華琳様のご厚意だ。今日は皆で楽しんでくるといい」


「はあ?」



秋蘭の意味深な言葉に零治はますます訳が分からなくなり、怪訝な表情で首を傾げる。

その時、同伴者である零治達がいつまで経っても来ないので、廊下の向こう側から華琳が呼びかけてくる。



「零治。何してるの? 早く来なさい。置いて行くわよ」


「あ、あぁ、すまん。いま行く」



今更なにが来ようと驚かない。朝から散々な目に遭ってきたんだ。

零治は自分にそう言い聞かせ、内に抱える疑問は頭の片隅にでも置いて華琳の後に続いた。

しかしこの後、零治は違う意味で驚いてしまおうとは本人は知る由も無かったのだ。


………


……



街に到着してみれば、夜だというのに洛陽の繁華街は未だに賑わいを見せていた。

もちろんそれは街の治安が向上したからこそだ。治安が以前と変わってなかったらこの時間に人々は外を出歩いてなどいなかっただろう。

その光景に恭佳は意外そうに思い、思った事を口にした。



「へぇ~。こんな時間でも案外賑わってるんだねぇ」


「まあな。だが、昔はこうじゃなかったがな」


「それは貴方の仕事ぶりが実を結んだという事ね。零治、良い働きをしてくれたじゃないの」


「フッ。ありがとよ」



華琳に褒められた零治はまんざらでもない様子で口角を上げ、小さな笑みを浮かべた。



「所で……零治」


「今度は何だ?」


「昼間、何かあったの?」


「あん? 一体なんの話だ?」


「貴方、昼に誰かに向かって怒鳴ってたでしょう」


「……何で知ってるんだ?」


「あれね……私が居た執務室まで聞こえてきたのよ」


「…………」


「もっと正確に言えば、城中に響いてたそうなんだけれどね」


「…………」


「で、一体何がってあそこまで怒鳴ったのかしら?」


「……話すと長くなるから割愛させてもらうが、昼間に色々とあってな。それで我慢に限界を感じてつい怒鳴ってしまったんだ。すまん……」


「はぁ。まあ、貴方にも色々あるのでしょうけれど、次からは気を付けなさいよ……」


「はい。ホントすまん……」


「あの怒鳴り声……城中に響いてたんだね……」


「みたいですね……」


「……ねえ、臥々瑠」


「な~に?」


「兄さんが怒鳴ってた時……私、寝てた?」


「う、うん。寝てたよ……」


(よく起きなかったなぁ、私……)



正確に言うとアレは寝ていたのではなく気絶をしていたのだが。

だがまあ、あの時奈々瑠が眼を覚まさなかったのは不幸中の幸いと言える。

もしも酒に酔った状態で眼を覚ましていたら、状況は堂々巡りになっていた可能性があっただろう。



「なあ、華琳。一体どこまで行くんだよ? もう随分歩いてると思うが」


「もう少しで着くわよ」


「さいですか」



まだ目的地までは時間がかかりそうと思い、零治はすぐ後ろを歩いている亜弥に歩調を合わせてボソボソと今朝の事について尋ねる。



「亜弥。今朝の奈々瑠の件、あれから何か分かったか?」


「ええ。一応は」


「そうか。で、一体なんだったんだ、今朝のアレは?」


「ん~、強いて言うなら心の病と言ったところですかね」


「心の病?」


「まっ、そこまで騒ぐような事でもありません。いつか時間が解決してくれますよ」


「そうか」


(プラス、貴方次第ですよ。零治)



と、亜弥は心の中で付け加える。

その時、ようやく目的地に着いたのか、華琳が全員に声をかける。



「さ、着いたわよ」



華琳が零治達を連れてきた場所は西側の入り口付近にある高級感が漂う五階か六階建てくらいある一際大きな建物。

この店は街で一番高い事で有名な超高級酒家だ。



「おい。亜弥、ここって確か……」


「え、ええ。有名どころの豪商とかが商談に利用している高級店ですね……」


「あの~、華琳さん? 何でオレ達をこんな所に連れてきたんですか……?」


「決まってるじゃない。今夜はここで食事をするわよ」


「いやいやいやいや! 華琳! オレ達ここで飯食えるほど金持ってねぇから!」


「安心なさい。今夜は私の奢りよ。さ、入るわよ」



高級店を前にしてうろたえる零治達をよそに、華琳は店の引き戸を開けてさっさと中に入ってしまったので、やむを得ず零治達も後に続き、中に入れば店の店員の一人がうやうやしくお辞儀をして華琳達を出迎える。



「いらっしゃいませ、曹操様。本日は当店をご利用いただき誠にありがとうございます」


「いえ。こちらこそ急な予約を入れてしまって済まないわね。席の方は大丈夫かしら?」


「はい。ご用意できております。ささ、どうぞこちらへ」



場慣れしている華琳は店員とのやりとりもいつも通りだったが、零治達は初めて来る高級店の中の雰囲気に圧倒されてしまい、それどころではなくなっていた。



「あ、亜弥。何だあの壁? なんかメッチャ金ピカに輝いてるんだが……」


「……き、金箔でも貼ってるんでしょうか?」


「に、兄さん。あそこには……なんかすっごく高そうな壺が……」


「……他のお客さん達もすっごいお金持ちっぽいし……」


「アタシら……完全に浮いてるね……」


「むしろ場違いと言うべきじゃね……?」


「何してるの貴方達。早く来なさいよ」


「あ、あぁ……」



入り口の前で突っ立っててもしょうがないので、零治達は慣れない高級店の雰囲気にどこか居心地の悪さを感じながら案内する店員の後の続く。

華琳達に用意された席は上の階にあるようで、階段を昇っていき、三階に到着したら今度は広い廊下を真っ直ぐ歩いていき、その廊下を挟んでいる左右の壁には一定の間隔で扉が設置されている。

そしてその内の一つの扉を店員が開き、華琳達をそこへ案内する。



「どうぞ。こちらになります」


「ありがとう」



華琳は軽く会釈をして中に入り、零治達も後に続く。

中は壁でしっかりと仕切りがされており、その壁にいくつも設置されたキャンドルスタンドに灯されたロウソクの明かりで中は思いのほか明るかった。ここはいわゆる個室、VIPルームという奴だ。

部屋の中央には大きなテーブルと椅子が設けられ、テーブルの上に店員を呼ぶために使う物と思われる小さな呼び鈴が置かれている。

部屋にはご丁寧に窓も設置されており、そこからは表の通りがしっかりと見下ろせる。



「……この店、個室まであるのかよ」


「ええ。三階から上の階は全部こうなってるわよ」


「マジかよ。スゲェ店だな」


「そんな事より貴方達も早く席に着きなさい。まさか立ったまま食事をするつもりなの」


「あ、ああ。そうだな」



華琳に促され、零治達は未だに委縮した様子で恐る恐る席に着く。

華琳は手近にあった採譜を人数分零治に手渡して、受け取った零治は残りの採譜を他のメンバーに回していく。



「で、何を頼めばいいんだ?」


「好きな物を頼んでいいわよ。今夜は私の奢り。遠慮は不要よ」


「そ、そうか。……なあ、華琳。一つ訊いても?」


「何?」


「何だって急にオレ達をこんな高い店に連れてきたんだ?」


「これは昨日の戦いのお礼、それにお詫びも兼ねてるのよ」


「……礼はともかくとして、お詫びってのは?」


「私のせいで奈々瑠を負傷させてしまったでしょう。その事に対するお詫びよ」


「華琳さん。私、昨日の事は気にしていませんし、その事でここまでしてもらわなくても……」


「貴方は気にしなくても私は気にするの。それに、いま私がこうして生きているのは間違いなく貴方のおかげなのだから、これぐらいの事はさせなさい。でないと私の気が済まないわ。いいわね? 今日はみんな、素直に私の厚意を受け取りなさい」



華琳は零治達を見据えてピシャリと言い放つ。

ここまで言われては零治達は何も言えない。それに予約までしてくれたのに、ここまで来て遠慮して帰るのは逆に失礼でしかない。

零治は観念したように両手を上げて、素直にその厚意を受け取る意を華琳に伝える。



「分かったよ。その厚意、ありがたく受け取らせてもらうよ」


「よろしい。だったら貴方達も何を頼むのか早く決めなさい。さっきも言ったけど、遠慮はしない事」


「はいはい。……どれどれ」



零治達は手に持ってる採譜を開いて書き込まれている料理の一覧にささっと眼を通すが、料理名の横に書かれていたデタラメとしか言えない値段の数字に眼を皿のように丸くし裏返った声で驚きを露わにする。



「ちょっ!? 何だこの値段っ!? メチャクチャ高ぇじゃねぇか!」


「う、噂には聞いてましたが、まさかこれ程とは……」


「はうっ! に、兄さん! 私なんだか眩暈が……っ!」


「う~……これじゃ逆に頼みづらいんだけど……」


「おいおい、華琳。ホントにいいのかい? アタシ達がこんな高い物を食っちゃって……?」


「私が良いと言ってるのだから良いのよ。で、何を頼むか決まったの?」



華琳の問いに零治達は互いに顔を見合わせながら困り果てた表情になる。

正直、何を頼めばいいか分からないのが現状だ。とりあえず分かっている事はこの店の物がメチャクチャ高いって事だけだ。



「すまん、華琳に任せていいか? オレ達、こういった店に来た経験が全く無いから何を頼んでいいのか決められそうにない……」


「やれやれ。しょうがないわね」



華琳は零治達の様子に苦笑しながら嘆息し、慣れた様子でささっと採譜に眼を通して注文する物が決まったのか、テーブルに常備されている呼び鈴を手に取り、それを軽く振って鈴を鳴らして店員を呼ぶ。

それからすぐに鈴の音を聞き付けた店員の一人が扉を開けて一礼し、中に入って注文を伺う。



「はい。ご注文ですか?」


「ええ。まずはこのフカヒレの姿煮を六人分お願いするわ」


「フ、フカヒレだぁ!?」


「何をそんなに驚いてるの。零治、貴方はフカヒレを知らないの?」


「いや、知ってるさ。食った事は無いが。ってか、まてまて華琳! そのフカヒレは五人分でいいっ! 臥々瑠には別の物を食わせろ!」


「どうして? ……あぁ、彼女が大食らいの事を気にしてるの? 心配ないわ。その事も踏まえて、お金にはちゃんと余裕を持たせてあるから」


「そうじゃない! コイツに高級食材の良し悪しなんか分かりゃしねぇ! だから臥々瑠には腹が膨れる物を大量に食わせとけっ!」


「ムッカ~っ! なんかすっごいけなされてる気分がする……」


「やれやれ。分かったわ。……悪いけど、姿煮は五人分に訂正して。この子には、そうねぇ……この海鮮餡かけ炒飯をとりあえず十人分大皿で用意してあげてくれるかしら」


「かしこまりました」



臥々瑠用の炒飯のデタラメな数字にも店員は全く動じず、華琳が頼んだ注文内容を小さめの竹簡に記入していき、丁寧にお辞儀をして部屋を立ち去り、下の階に降りて行った。



「まったく。零治、この程度の事で動じてどうするの。別に貴方が支払いをするわけじゃないのだから、もう少し気を楽にしたらどうなの?」


「オレ達を場馴れしたお前と一緒にしないでくれ……」


「やれやれ。そんな調子じゃ食事の味が楽しめないわよ」


「そうだな。今のオレは味を全く感じれない自信が有る……」


「胸を張って言う事なの? ……そうだ。お酒も呑む?」


「なんですとぉ!?」


「またそうやって驚く。確かにこの酒家は上等な酒も当然取り扱っているわ。でも、今夜は私の奢りと言ったでしょう? こんな店に来れる機会なんて滅多に無いのだし、少しくらい呑んでいったらどう?」


「…………」



ここに来て酒まで頼むのかと一瞬零治は言いかけたが、零治はその言葉を何とか飲み込む。

華琳は厚意で言っているのだ。それぐらい零治も理解している。

だが今この場には亜弥が居る。そういう意味で零治は酒は頼みたくないと思ってるのだが、断る言い訳が思いつかない。一番好都合なのは亜弥自身が酒を呑まないと言うのがベストなのだが、酒好きの亜弥がそんな事を言うのは考えにくいと思っていたが、意外な事に今回はその好都合な事態が起こった。



「……私は遠慮しておきます」


「ん? 珍しいな。酒好きのお前が酒を断るなんて」


「いえ……試に一杯ぐらい一番安いのを頼もうかと思ったのですが……値段を見たらそんな気になれなくて……」


「やっぱり高いのか……」


「ええ。一番安い酒でも私達の一ヵ月の給料が半月分消し飛びますよ……」


「一杯で半月分って……なら一瓶だと……」


「恐らく一ヵ月分丸々か、あるいはそれ以上か……」


「マジかよ……」


「華琳。そういう訳ですので、すみませんが私はお茶で充分です。折角のご厚意なのに申し訳ありません」


「そう? まあ私も無理強いはしないわ。零治と恭佳はどうする?」


「……オレもお茶でいい」


「アタシも……」


「やれやれ。折角いい酒家に連れてきてあげたのに、お酒を呑まないんじゃ意味が無い気がするけど……まあいいわ。なら今夜は食事だけを楽しむとしましょう」


「ああ。それから……華琳」


「何?」


「これからオレ達にこういった礼をするなら、今度からはお前の手料理を食わせてくれ」


「…………」


「それから酒もお前が気に入ってる物を呑ませてくれればいい。確かにこういう店で飲み食いするのは悪くないが……正直落ち着かない。折角の厚意なのにこんな事を言うのは悪いと思っているが……」


「いえ。いいのよ。貴方がそうしてほしいと言うのなら、これからはそうしてあげる。貴方達をこう言った店に連れてくるはまだ早かったという事ね」


「そういう事だ」



零治の口から出てきた手料理を食わせてくれという言葉に、華琳はまんざらでもない様子で表情を緩めながら窓に視線を向け、人々で賑わいを見せている街の風景を眺めるのだった。

奈々瑠「また私のキャラが崩壊してるじゃないですか……」


作者「ん? あぁ、酔っ払ったシーンか」


零治「おまけにそこ、かなり危ない事もさせてるしな……」


作者「面白いからいいじゃん」


奈々瑠「だからって危ない橋を渡らせないでくださいよ……」


零治「オレなんか姉さんに殴られたりするし。あれじゃ一刀と同じ扱いじゃないか……」


亜弥「確かに」


作者「アレはまだマシな方じゃね?」


臥々瑠「そうかなぁ?」


作者「ああ。原作じゃ一刀はもっと悲惨な目に遭ってるぞ」


恭佳「仮にも主人公なのに? ……なんかもうそいつ一度どんな奴か見てみたいわ」


作者「大丈夫。それは話が進めばいずれ会えるぞ」

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