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第35話 戦う理由

この話は今までで一番短いですね。

まあ、登場人物が少ないと言うのもありますが、話の内容がある人物の個人的な事になっているせいもありますがね。

劉備軍が袁紹軍の追撃を逃れるために華琳の治める領土を通過し、益州に難を逃れてから数日が経過した。

劉備達は現在手近にあった城を活動拠点としている。

その城の城壁に一人佇み、夜空を見上げる人物、黒狼が居た。



「…………」



黒狼はただ黙って、静かに数多の星が煌めく夜空を見上げている。

その時、不意に背後から声をかける人物が現われる。



「黒狼さん」


「……劉備か。どうした、何か用か?」


「いえ、別に用って程では……ただ、何をしているのかなぁ、と思って」


「別に何もしてはいない。ただ……星を見ていただけだ……」


「星を……ですか?」


「ああ……」


「あの、私も一緒に見てもいいですか?」


「好きにするがいい……」


「ありがとうございます。じゃあ、隣失礼しますね」



劉備は黒狼の隣に並び、彼同様に夜空を見上げ、感動したように声を盛らす。



「うわぁ……綺麗」


「…………」


「黒狼さん、綺麗ですね」


「そうだな……」


「…………」


「…………」



お互い何も言わなくなり、その場を奇妙な沈黙が支配する。

劉備は気まずそうな表情でチラチラと黒狼の表情を伺う。



(うぅ……ど、どうしよう。黒狼さんって基本的に無口だから会話が続かないよ~。何か話題……話題は~……)


「劉備……」


「うひゃあっ!? は、はい! な、何ですかっ!?」



不意に黒狼が声をかけてきたので、劉備は裏返った声で返事をしてしまう。



「劉備、無理に話題を探す必要などないぞ……」


「あうっ……分かっちゃいましたか……?」


「それだけあからさまに顔に出ていれば、私でなくとも分かるぞ」


「うぅ……」


「まあ別に悪い事ではない。言い換えれば、それは心が正直という意味だからな」


「えへへ♪ ありがとうございます」



劉備は照れくさそうに表情をほころばせながら右手で頬をぽりぽりと掻く。



(だからと言って……それが『良き王の姿』になる訳ではないがな……)


「あの、黒狼さん」


「今度は何だ?」


「ずっと気になっていた事があるんですが、訊いてもいいですか?」


「ああ」


「黒狼さんの戦う理由は一体何なんですか?」


「…………」



黒狼は劉備の質問に答えず、どこか遠い眼をしながら夜空を見上げ、黙り込む。



「あっ、言いたくないんなら別に無理に答えなくても……」


「いや……」



慌てふためきながらその場を取り繕う劉備の言葉を遮るように黒狼は静かに口を開く。



「別に答えたくないのではない。ただ……人に聞かせるほどの大層な理由ではないのでな……」


「……そうなんですか?」


「少なくとも、この世界に平和をもたらしたい理由で戦うお前に比べれば、私の戦う理由などちっぽけなものだ……」


「へえ~。あの、一体どんな理由なんですか?」


「それについてはまた別の機会にな。……今日はもう遅い。お前も早く寝るといい」


「あっ、誤魔化しましたね」


「さてな……」


「もう……。分かりました。私は行きますけど、黒狼さんもあまり夜更かししちゃあダメですよ?」


「ああ」


「それじゃあ、おやすみなさい、黒狼さん」



劉備はそう告げ、その場を去り、一人自室に戻っていく。

黒狼はちらりと横目でその姿を見送るが、すぐに視線を遥か彼方の地平線に戻す。



「私の戦う理由……か。そんな事を訊かれたのはいつ以来だろうか……」



どこか感慨深げな表情で地平線を見つめながら黒狼は誰に言うのでもなく呟く。

その時、黒狼の背後から一人の人間の気配が湧き出て、黒狼の表情が険しいものに変わる。



「老いぼれが。一体何をしに来た……」



黒狼は忌まわしげに背後に立つ人物に問いかける。

その態度の黒狼をあざ笑うかのように、背後に立つ人物、導師のような服装をした白装束の老人はしゃがれた声で笑いを漏らす。



「ふぉ、ふぉ、ふぉ。これはまた随分な物言いではないか。黒狼よ……」


「何をしに来たのかと訊いているのだ。……用が無いのなら消え失せろ。私は今、非常に機嫌が悪いのでな……」


「これはこれは……先程とは随分な態度の変わりようではないか」


「何の事を言っている……?」


「先程、この外史の傀儡の一人、名は確か……劉備じゃったか? その者とやけに親しげに話していたように見えたのでなぁ。ふぉ、ふぉ、ふぉ」


「そう見えたのなら、貴様がますます年老いた証拠だな。一度医者に眼を診てもらったらどうだ……?」


「やれやれ。相変わらず口の悪い男じゃな」


「さっさと用件を言え。それとも……腕ずくで吐かせてやろうか……?」


「分かった分かった。じゃからそんな恐ろしい殺気を放つでない」



老人はひょいっと肩を竦め、軽く一つ咳払いをし、口を開く。



「まあ、別に大した用ではない。ただ……随分と懐かしい気配を感じ取ったのでなぁ。ちょいと顔を見に来てみたのじゃよ」


「ならば今すぐにこの場を去れ。私は貴様の顔など見たくはないのでな……」


「そう邪険にせんでも良かろうが。少し話もしたいのでなぁ」


「貴様と話す事など私には一切無い。分かったら今すぐこの場から失せよ……」


「まあそう言うな。時間は取らせんよ」



黒狼は眼を閉じ、諦めたように溜め息を吐く。

これだけ言っても立ち去ろうとしないのだ。この老人は梃子でも動かないつもりだろう。



「……言ってみろ。聞くだけ聞いてやろう」


「ふぉ、ふぉ。すまんの。では……黒狼よ。お主は何故外史ここに戻ってきたのじゃ?」


「戻って来たのではない。単に巻き込まれただけだ……」


「なるほど。なら、この外史の起点はやはりあの若造と北郷か」


「何? 貴様、なぜ影狼の事を知っている……」


「おや? 儂は別に名前を言った憶えは無いがのぅ」


「はぐらかすな」


「ほっほっほ。余程あの男が気になるようじゃなぁ」



老人は黒狼の反応がよほど面白いのか、しゃがれた声であざ笑うように笑いを漏らす。

その態度が癪に障ったのか、黒狼はどす黒い殺気を老人に向かって放つ。



「貴様……」


「ほれほれ、そう短気を起こすな。ちゃんと疑問には答えてやるわい。……な~に、あの者とは随分前に街で会ったのじゃよ。占い師としてな」


「占い師だと? 貴様、何か余計な事でも吹き込んだのか……」


「いやいや、ちょいと忠告をしただけじゃよ」


「忠告だと……?」


「気になるのなら、本人に直接訊いてみるのじゃな」


「……ふんっ!」



黒狼は忌々しげに鼻を鳴らす。

彼は背後に立つ老人との付き合いは長いので、どれだけ追求した所で口を割らない事をよく知っていた。



「黒狼よ。もう一つ訊いても良いかの?」


「次は何だ……?」


「お主はいつまでこのような事を続けるつもりなのじゃ?」


「……何の事だ?」


「お主の抱いている理想は、ある意味では劉備が抱いてる物と同じよ。所詮は幻想でしかないのじゃ」


「…………」 


「下らぬ理想を追うのはやめて、いい加減こちらに戻ってきたらどうじゃ? お主の行為は所詮は無駄な事でしかないのじゃからな」


「何だと……。貴様、もう一度言ってみろ……」



黒狼はクルリと後ろに振り返り、その視線の先に立つ小柄の老人に向かって、見る者全ての背筋を凍りつかせるような殺気の籠もった視線を向ける。



「ほっほっほ。何じゃ、気に障ったのか? 儂は事実を言っただけなんじゃがのう」


「老いぼれ、どうやら死にたいらしいな……」



黒狼の殺気に呼応するかのように、その右手に魔王剣ディスキャリバーが禍々しい姿を現す。



「ちょうどいい。一体どうやったら殺す事が出来るのか、貴様の身体で試してやるとしよう……」


「おぉ、これは恐ろしい事を言う奴じゃな。じゃが黒狼、忘れてはおらんか? お主も含め、儂らは死ぬ事など出来んのじゃぞ」



目の前に切っ先を突きつけられているにもかかわらず、老人は飄々とした態度を変えず、黒狼を嘲笑うかのように冷笑する。

しかし、黒狼はそんな態度をものともせず、ゆっくりと魔王剣を振り上げ、その刀身に月光が反射する。



「それがどうした? 試すと言っただろう……」



黒狼はそう言うと同時に魔王剣を振り下ろし、目の前の老人を一刀両断の下に斬り伏せる。

老人は声を出す事もなく、身体から鮮血を噴き出して物言わぬ屍と化した。

黒狼は老人の遺体にしばらく侮蔑の視線を向け、静かに口を開く。



「いつまで死んだふりをしているつもりだ。さっさと起きろ……」



老人は黒狼の問いに応じるようにその場からムクリと立ち上がり、服に付いた埃をパッパと払い落とし、恨めしげな視線を向けながら口を開く。

見れば先ほどつけられた身体の斬り傷も綺麗に塞がっていて、着ている服も元通りになっていた。



「……まったく、本当に殺すとは。何という事をしてくれるんじゃ、お主は。年寄りはもっといたわらんか」


「それは悪かったな。では次は痛みを感じぬように殺してやろう……」


「ふぉ、ふぉ、ふぉ。それはご免被るわい。不死身の身体とはいえ、何度もその物騒な剣で斬り殺されたくはないのでなぁ」



老人はその場から軽やかに跳躍し、黒狼の立つ先にある城壁の上に着地する。



「私から逃げられると思っているのか、老いぼれ……。私の邪魔をされては敵わんのでな。貴様にはここで退場してもらうぞ……」


「安心するが良い。別にこの外史をどうこうするつもりも、お主の邪魔もするつもりはありはせんよ。少なくとも儂はな……」


「それはどういう意味だ……」


「儂がこの外史に侵入した事で貂蝉が施した守りが弱まりつつあるかもしれんのじゃよ。その結果、他の連中もここに雪崩れ込んでくるかもしれんという事じゃ。何しろ、北郷が居るからの。あの二人が現れる可能性は高いぞ」


「…………」


「まあ、儂はお主の無駄な足掻きを見物させてもらうとするわい。ではな、黒狼。久しぶりに話せて楽しかったぞ」



老人は黒狼にそう告げ、その場からすぅっと音も無く姿を消した。

その場に取り残された黒狼は忌々しげに老人が立っていた先を睨みつけ、吐き捨てるように呟く。



「貂蝉め……少しは役に立つ奴だと思っていたのだが、案外そうでもなかったか……」



黒狼の手から魔王剣が消え、黒狼は再び星空に視線を戻す。



「まあいい。仮に奴らが外史ここに現れた場合は私が直々に始末すればいい。それだけの事だ。……影狼。遅かれ早かれ、いずれ貴様とは再び戦う時が来るだろう。その時は……貴様がどれ程まで成長する事が出来たのか、確かめさせてもらうぞ……」


『黒狼さんの戦う理由は一体何なんですか?』



不意に劉備の言葉が黒狼の脳裏をよぎる。



「…………」



その言葉に応じるように黒狼は一人、ポツリと呟く。



「私の戦う理由、それは…………ただ一つ、この無意味な生から解放される事、それだけだ……」



その言葉に答える者は居ない。それでも黒狼は続ける。別の地に居る一人の男に語りかけるかのように。



「だから影狼。早く私を……殺してくれ……」



誰に言うのでもなく、黒狼は一人冷たい風が吹き付ける夜空の下で、哀しげに己の胸の内を呟いた。

零治「なあ。なんか一刀に関する所で意味深なセリフがあったんだが」


作者「ああ。アレね。まあ、原作をプレイした方なら、誰の事を言ってるのかは一発で分かるわな」


亜弥「でしょうね。で、ホントに出すつもりなんですか?」


作者「一応な」


奈々瑠「ちなみにいつ頃ですか?」


作者「正直分からん。まあ、終盤辺りになるのは間違いないと思うが」


臥々瑠「ふ~ん。一体いつの話になるんだろうねぇ~?」


作者「それはどういう意味ですか……?」


零治「自分の胸に手を当てて訊いてみな」


作者「ちきしょう。反論できねぇ……」

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