表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/110

第30話 酒乱の女王降臨

さあさあ、設定にも記載していた亜弥のもう一つの姿がいよいよお披露目される回がやってまいりました。

中々に酷い壊れっぷりですが、楽しんでもらえたら幸いです。

ここは洛陽の街にある、とある酒屋で零治のお気に入りの店である。

零治、凪、真桜、沙和の四人は本日の勤務を終え、揃って今日の疲れを癒すため夕食も兼ねた酒盛りをしている。



「いやー、今日も疲れたなぁ」



真桜が椅子の背もたれに思いっきりもたれかかりながら伸びをし、いかにも一仕事終えたような素振りを見せながら言う。



「……ちょっと眼を離した隙にガラクタ市場を覗いて仕事を怠けていた奴が言うセリフとは思えんな……」



一緒に勤務していた零治は酒の入った盃を片手に、真桜の態度にジト眼を向けながら毒づく。



「なんや隊長。その事なら謝ったやんか」


「だがその後すぐに、工具屋に行って仕事を怠けていたのは一体どこの誰だったっけ……?」


「さあ? 誰やろ?」



真桜はワザとらしく首を傾げ、腕を組みながら言う。



「真桜。お前、帰ったら始末書百枚な」


「えー!? 隊長、それは堪忍してぇなぁ!」


「安心しろ。冗談だ」


「ほっ」


「だが、次やったらホントに書かすからな……」


「げぇ……」


「げぇ、じゃないだろ。ったく……んっ、んっ、んっ……ふぅ~……」



零治は盃に注がれてる酒を一気に喉に流し込み大きく息を吐く。



「隊長、そんなに一気に呑んで大丈夫なんですか?」


「うんうん。そんな事してたらすぐに酔っちゃうよー?」


「大丈夫だ。この程度で酔ったりしねぇよ。それより、お前らも遠慮せずにどんどん注文して構わんぞ。今日はオレの奢りだからな」


「おおっ! 隊長太っ腹ー!」


「やったー、なの!」


「おっちゃーん! 注文ええかぁ?」


「へい。何にしやすか?」


「えーっと、ウチはなぁ、これとこれとぉ……」


「沙和はねぇ……」



真桜と沙和は零治の奢りと知ると店主を呼び、二人揃って採譜に書かれてる品書きを指差しながら手当たり次第に料理を注文し始める。



「おい真桜、沙和、少しは遠慮を……」


「いいっていいって。凪、お前も遠慮しなくていいからな。ほら、お前も呑め」



零治は手近にある酒瓶を手に取り、ぐいっと凪の盃に注ぎ口を突き出す。



「し、しかし……」


「いいから遠慮すんなよ。……それとも、オレの酒は呑めないって言うのか?」


「い、いえ、そういう訳では……」


「ならこの話はもう終わりだ。だから盃をこっちに向けろよ」


「は、はい。では頂きます」


「おう。素直でよろしい」



凪は諦めたように盃を手に取って差し出し、零治は酒瓶を傾けて中の酒をなみなみと注ぎ込む。



「ちょ、ちょっと隊長! そんなに注がないでください! 入れすぎですよ!」


「これぐらいで何言ってんだ。ほら呑めよ」


「もう……隊長、ひょっとしてもう酔っておられるのではないですか……?」


「酔ってない」


「はぁ……まったくもう。……んっ、んっ……んぅっ!?」



凪は盃に注がれた酒をあおる。

すると、焼け付くようなきついアルコールが喉を流れ通り、凪は顔を真っ赤にしてむせ返る。



「げほっ、げっほっ! た、隊長! 何なんですかこのお酒は!? もの凄くきついじゃないですかっ!」


「んー? 白酒パイチュウだが……そんなにきつかったか?」



白酒とは中国の蒸留酒の一種で、平均アルコール度数は40~50前後。

呑み慣れてない人間にとっては充分きつい部類に入る物だ。



「隊長、私は明日も仕事があるんですから、こんなきつい物を呑ませないでくださいよ……。二日酔いにでもなったらどうしてくれるんですか」


「そんな一杯ぐらいで二日酔いになるかよ……んっ、んっ、んっ……あぁ~っ……」



呑ませた張本人の零治は涼しげな顔で自分の盃に注いだ白酒を再び一気に呑み乾し、大きく息を吐く。



「隊長、絶対に酔っちゅうやろ……」


「沙和もそう思うの……」


「酔ってないって言ってるだろ」


「へい。ご注文の品、おまち」



店主が真桜と沙和が注文していた料理をテーブルまで運んでくる。

並べられた料理は決して豪勢な物ではないが、辺りのは美味しそうな匂いと湯気が漂い、今日の仕事の疲労と空腹間のせいもあって、真桜と沙和の食欲をいたく刺激してくる。



「おっ、来た来たー」


「うわー! とってもおいしそうなのー! いただきまーす♪」


「親父、これもう一本追加で」



零治は白酒の空瓶を振り、酒を追加注文する。



「へい」


「隊長、いくら明日非番だからって、ホント呑み過ぎですよ……」


「この程度で呑み過ぎと言われる憶えは無い」


「はぁ……酔って歩けなくなっても知りませんよ」


「そこまで呑んだりしねぇよ」


「ごめんよー、邪魔すんでー」


「へい、らっしゃい」



そこへ、霞が一人でふらりと店に来店してくる。



「あー。霞様なのー」


「おっ、なんや。零治達も来ちょったんか」


「姐さんも一緒にどうです?」


「零治、構わんか?」


「ああ」


「んじゃ、失礼するでぇ。おっちゃん、ウチ老酒を一瓶。後、適当になんかつまみも頼むわ」


「へい」


「ん? 真桜、沙和。そんなに食いもん頼んで……金の方は大丈夫ながかえ?」


「ふっふっふー。姐さん、実はコレ全部隊長の奢りやねん」


「えーっ!? ええなぁ。なあ零治~、ウチの分も奢ってぇやぁ」


「おい。仮にも国に仕えてる将軍様が自分よりも立場が下の警備隊の隊長にたかるんじゃない」


「まあまあ。同じ釜の飯を食ってる者同士、堅い事は言いっこ無しや」


「ふざけんな。お前の分まで奢ったらオレの財布がスッカラカンになっちまうだろうが」


「ちょ、それどういう意味よ!?」


「……奢りなのを良い事に酒を頼みまくられたら敵わんわ」


「そんな事せんてー。だから奢ってや~」



霞は零治の肩を掴み、ゆさゆさと零治を揺さぶりながら奢って奢ってと隣で連呼し始める。

最初は零治は完全なる無視を決め込んでいたのだが、霞が次第に揺さぶる勢いを強めてきたため、酒を呑もうとすれば盃が揺れて中身がこぼれる始末。

このままでは落ち着いて酒も呑めないので、零治は諦めたように左手を上げて霞を制止する。



「あー、分かった分かった。なら今頼んだ分だけだぞ? 追加の分は自分で払えよ」


「むぅ……微妙にケチっとるなぁ」


「これ以上は譲歩せんぞ」


「しゃあないな。それで納得しちゃるわ」


「へい、老酒とつまみ、それと白酒おまち」


「おっ、来た来たぁ」



霞は頼んだ品が来た途端眼の色を変え、酒を盃に注いでそれを一気にあおり、表情をほころばせる。



「んっ、んっ、んっ……かぁっ! 旨いっ!」


「んっ、んっ、んっ……ふぅ~……」


「おー零治、ええ呑みっぷりしとるやないの」


「そう言う霞もな」


「なあ零治、その白酒一杯呑ましてやぁ」


「なら代わりにその老酒を一杯くれよ」


「おう、ええで」



二人は注文した酒をどんどん呑み続けるので、酒瓶から凄まじい勢いで酒が減っていく。

凪、真桜、沙和の三人は食事の箸を止め、唖然とした表情で零治と霞の酒を呑む姿を見つめていた。



「うわー……お酒がどんどん無くなっていくの……」


「霞様もそうだが、隊長も酒豪なんだな……」


「せやな。隊長なんか姐さんが来る前から呑んでるのに、顔色一つ変えてへんからな……」


「ん? どうしたんだ三人とも? 箸が進んでいないようだが」


「おっ、沙和ぁ。それ食わんのやったらウチが全部貰うでぇ」



霞はワザとらしく言いながら沙和の皿に箸を伸ばそうとするので、沙和は慌てて皿を霞から引き離す。



「あーっ! ダメなのー! これは沙和が食べるんですからー!」


「へへっ。冗談やて。でも一つくらいええやろ?」


「もう、一つだけですよー?」


「はぁ。騒がしい事だな。……んっ、んっ、んっ……ふー……。ん~……」



零治は唸りながら呑み乾した盃を凝視し、ポツリと元居た世界でよく呑んでいた酒の名を呟く。



「白酒も悪くないが、やっぱジンの味が恋しいなぁ」


「ん? 零治、じんってなんや? 天界の酒の名前かえ?」


「ああ」


「なあなあ。それって旨いんか?」



酒好きの霞の眼の色が変わり、零治に詰め寄りながら訊く。



「どうだろう? かなり独特の味がする酒だからなぁ……この世界の人間から言わせると旨いとは言えないかもな」


「でも、零治は旨いと思っちゅうんやろ?」


「まあな」


「なあなあ、その酒こっちの世界でも造れんがかえ?」


「無理だな。ここじゃ手に入らない材料が幾つも有るからな」


「ほんなら、零治のあの……物質なんとかって術で水をちょちょいと」


「今のオレの技量じゃそれは無理だ。だいたい出来るんならとっくにやってるさ」


「ほんなら隊長、その術で材料を用意して一から造るのはどうなん?」



と、横で話を聞いていた真桜が口を挟んでくる。



「それも難しいなぁ。今のオレの技量で創り変えた食材の味はどうしても本物には味が劣るからなぁ。……だが、やってみる価値はあるかもしれんな」


「おっ! もしかして零治、その気になったん?」


「ああ。時間があるときに試してみるとしよう」


「おおっ! よう言うた! それでこそ男や!」



よほど嬉しいのか、霞は零治の背中をバシバシと叩きながら言う。



「零治、その酒完成したら絶対ウチにも呑ましてやぁ」


「分かった。分かったからそんなに背中を叩くな、痛いだろ」


「にゃはは♪ 堅い事言いなや。ほれ、景気づけに呑みや」



霞がグイっと老酒の瓶を差し出し、零治の杯に酒を注ぐので、仕方なく零治はそれを一気に呑み乾す。



「はいはい。……んっ、んっ、んっ……あぁ~」


「おぉ、惚れ惚れする呑みっぷりやな。おっちゃん、老酒もう一本追加な」


「へい」


(やれやれ。これでまた忙しくなるのは確定か。さて、材料はオレが用意するとして……蒸留器は真桜に作らせるか。後、蒸留器を置く蔵も用意しないとなぁ……明日華琳に相談してみるか)


「そういえば隊長……」



零治が思案してる中、不意に凪が話しかける。



「何だ?」


「ふと思ったんですが、亜弥様は呼ばなくて良かったんですか?」


「あー、それは沙和も思ってたのー」



亜弥の名を出され、零治の表情が強張り、嫌な汗が流れ落ちる。



「な、なんでそこでアイツの名前が出てくるのかなぁ……?」


「だって亜弥様も沙和達の上官だしー、仲間はずれにするのは良くないと思うのー」



沙和の言い分は尤もな事。しかし零治が彼女をこの場に呼ばなかったのには理由がある。

そして凪達はその理由を知らない。



「…………」


「どしたん隊長? 顔色が悪いで」


「ん? なんや零治。もう酔ったんかぁ?」


「違う。……お前ら、オレが今からする話、誰にも言わないと誓えるか?」


「どうしたんです? 急に改まって」


「いいからオレの質問に答えろ。誰にも言わないと誓えるか?」



いつになく零治の真剣な態度に凪達は怪訝な表情で互いに顔を見合わせる。

しばらくして、代表として凪が答える。



「分かりました。誰にも喋らないと誓います」


「よし。……では説明するが、なぜオレがこの場に亜弥を呼ばなかったかというとだなぁ……」



零治はそこで一呼吸置き、凪達を見回し、一同は零治が続きを話すのを黙って待つ。



「それは……亜弥の奴が超が付くほど酒癖が悪いからだ」


「へっ? そんだけ?」



あまりにも意外性も何もない理由に真桜が素っ頓狂な声を出す。



「それだけだが?」


「零治、なんやの。その面白みもなんも無い理由はー。いつに無く真剣やき、ウチもっと凄い理由があると思うてたのにぃ」


「お、面白みだと……っ!? あのなぁ、アイツと一緒に酒を呑むと命が幾つ有っても足りやしねぇんだぞ!」


「た、隊長、落ち着いてください。とにかく続きを聞かせてください。正直、今の説明だけでは誰も理解できないと思いますので」



凪に宥められ冷静さを取り戻した零治は数回深呼吸をし、改めて話を続け出す。



「……お前ら、亜弥の性格だが……どう思う?」


「はっ? 隊長、今度はなんよ? 姉さんの性格を訊くとかって……」


「いいから質問に答えろ。これはオレがアイツをこの場に呼ばなかった理由わけにも関係してるんだからな……」


「そうですねぇ……人当たりの良い温和な性格……といった所でしょうか」


「うんうん。その上、亜弥様ってすっごく美人だから警備隊の間でも人気があるもんねー」


「そうだな。アイツは基本的に誰とでも仲良くなれる性格だ。だが……酒に酔うと、アイツは人格が豹変するんだ」


「豹変て……どんな風によ?」



霞の問いに零治は長い間を置き、静かに答えた。



「…………周りに居る人間を病院送りにしてしまうほどの凶暴な性格にだ……」


「えーっと……隊長、それは……冗談ですよね?」



凪が表情を引きつらせながら言う。内容が内容なだけに四人とも信じる事が出来ないようだ。



「オレがこんな事で冗談を言うと思うか?」


「だって隊長、あの姉さんがそんな風になる姿ら想像つかんし。それに以前警備隊の間で開いた宴会の場では、すぐに寝てしもうてそんな風にならんかったやん」


「アレはオレが亜弥に睡眠薬入りの酒を呑ませたからだ」


「うーん、ちなみに零治、さっき命が幾つ有っても足らんって言ってたけど、酔った亜弥ってそんなに危険なが?」


「オレは酔っ払ったアイツに三回も殺されかけた事があるんでな……」


「……どんな風にですか……?」


「まず一回目の時は、アイツと一緒に初めて呑みに行ったときの事だ。……しばらく二人で呑んでいたんだが……不意に亜弥が席を立ってな、用足しに行くんだろうとオレは思ってたんだが……次の瞬間、突然頭に鈍器で殴られたような痛みが走り、オレは意識を失った……。で、眼が覚めると、オレは頭に包帯を巻かれた状態で病院の寝台の上に横たわっていた……」


「隊長、一体何をされたん?」


「医者の話では、背後から酒瓶で思いっきり頭を強打されたらしい」


「隊長、その時に亜弥様がやったって気付かなかったのー?」


「その時は酔った他の客にやられたんだろうと思っていたんでな」


「店の人には話を訊かなかったんですか?」


「そうしようと思ったんだが、店主もとばっちりを食らったようでな。オレの隣の寝台で全身に包帯を巻かれた姿で寝込んでいた」



凪達は話の内容に絶句し、どう反応していいか困り果ててしまう。

それとはお構いなしに零治は話を続ける。



「でだ、店主が退院してから改めて話を訊こうと思ったんだが、オレの知らぬ間に退院して、店も畳んで姿を消しちまってな。結局その時の真相は分からずじまいだったんだ」


「じゃあ、二回目は……?」


「二回目は亜弥も含めた仲間内で呑みに行った時だが……アイツは普段と同じ勢いで酒を呑んでいて、しばらくすると酔い潰れたのか、店の卓の上で寝込んでいたんだが、突然起き上がったと思った瞬間……ギャーギャー喚き散らしながら店の椅子を振り回して暴れ初めてな。仲間内で取り押さえようとしたんだが手がつけられず、オレも含めた全員が全治三ヶ月の重傷を負わされた……」


「零治、その時に気付かんかったが?」


「その時は日頃の鬱憤が溜まっていて、それが酒に酔ったせいで爆発したんだろうな……と思っていたんだ……が」


「流石に隊長も不審に思われたんですね……」


「ああ。それで日を見計らって奈々瑠と臥々瑠を護衛に就けて、試しに二人で呑んでみたんだが……その時も案の定な……」


「それでようやく気付いたんですね……」


「あぁ……」



凪の言葉に零治はどこか遠い眼をしながら小さく返事をする。



「ちなみに隊長、姉さん、酔ってる時の記憶は?」


「無い……」


「そ、そうなんや……」


「まあ……元気だしや、零治。今日はウチと一緒に嫌な事なんか忘れて呑み明かそうや。なっ?」


「そうだな……。親父、白酒をもう一本追加してくれ」


「へい」



それからしばらくの間、零治達の酒盛りは延々と続いた。


………


……



「おい霞、起きろよ。帰るぞ」



零治は酔い潰れて卓の上に突っ伏して寝ている霞を揺さぶりながら起こそうとするが、霞は全く起きる気配を見せない。

霞は気持ちよさそうに寝息を立てて、おまけに寝言まで言い出し始める。



「むにゃ……あぁ~零治~、ウチもう呑めへんでぇ~……」


「なに寝言を言ってんだ。早く起きろ、風邪を引くぞ」


「隊長、こうなった霞様は絶対に起きないと思いますよ」


「仕方ねぇなぁ……よっ……と」



零治は霞を無理やり引き起こし、霞の腕を自身の首に回して肩を貸す。



「隊長、私も手伝います」



と、凪が反対側から零治同様に肩を貸して霞の身体を支える。



「悪いな。……しかし酒臭ぇなぁ、コイツ」


「それは隊長も同じでしょう……」


「酔い潰れていないだけ霞よりマシだろう? 真桜、金を渡すから代わりに会計を済ませといてくれ」


「あいよー。……おっちゃん、これで足りるかぁ?」


「へい、確かに。まいどありー」



会計を済ませ、一同は城まで帰路に着く。


………


……



「おい霞、着いたぞ。いい加減起きろよ」


「すぅ……すぅ……」



零治と凪は何とか城まで酔った霞を引っ張り、本人の部屋の前まで到着したのだが、霞は未だに起きず、気持ちよさそうに寝息を立てている。



「はぁ、まったく……。凪、悪いが霞を」


「はい。後は私達でやっておきますので」


「あれ? 隊長、せっかく姐さんの部屋に入れる絶好の機会やに入らんが?」



真桜がニヤニヤ笑いながら零治をからかう様に言うが、真桜の予想に反して零治は顔色一つ変えずに涼しげに返す。



「誰がそんな事するか」


「なんや。つまらん反応やなぁ」


「うるせぇ。……じゃ、後は任せた」


「はーい。隊長、お疲れなのー」


「あぁ、お疲れさん。……それとだ、三人とも……」


「何ですか?」


「今日言った事は、亜弥の名誉のためにも絶対に口外するんじゃないぞ」


「分かっとるって」


「それと……絶対に一緒に酒も呑むんじゃないぞ」


「それも分かっとるっちゅうに。隊長、ウチらの事が信用できんが?」


「お前らの日頃の行いを考えれば、少なくとも凪以外は信用できんな」


「むーっ! 隊長、その台詞は聞き捨てならないのー!」


「せやせや。こんな可愛い部下に対して失礼やと思わんのかえ。凪、アンタもなんか言ったってやぁ」


「いや、私も隊長に同意見なんだが」


「がーん!」


「うぅ……凪ちゃんに裏切られたのー……」


「じゃ、後は頼むな?」


「はい。お疲れ様でした、隊長」


「ああ」



零治は三人に軽く挨拶を済ませ、酔い潰れている霞と同じぐらい酒を呑んだにもかかわらず、普段と変わらない足取りで自分の部屋に帰って行った。



「それじゃあ、私は霞様を寝かせてくる」


「あいよー」


「ほら霞様、行きますよ?」


「うにゃぁ……」



凪は霞を寝台に寝かすために、霞を引っ張りながら部屋に入っていく。



「なあ、沙和」


「なーに?」


「隊長のあの話、沙和はどう思うよ?」


「うーん……正直信じられないのー。そう言う真桜ちゃんはどうなのー?」


「ウチも信じられへんのよなぁ」


「ふぅ……。ん? 二人して何の話をしてるんだ?」


「あ、凪ちゃん。霞様はちゃんと寝たのー?」


「ああ。大丈夫だ。で、何の話をしてたんだ?」


「姉さんの事よ。凪はどう思う?」


「……隊長の事を疑っている訳ではないが、正直な話、信じられないな……あの亜弥様が酒乱だなんて」


「やったら……確かめてみんか?」


「確かめるって、何をー?」


「やから隊長の言ってた事がホンマかどうかをよ。明日の晩、姉さんと一緒にあの店に呑みに行こうや」


「あはは♪ 面白そうだねー。沙和は賛成なのー」


「おい二人とも。さっき隊長が言っていた事を忘れたのか?」


「なんや? 凪は気にならんのか?」


「いや……確かに気にはなるが……」


「なら決まりやな。明日の晩、姉さんと一緒に呑みにいくで」


「おーなのー」


「はぁ……この二人は……」



次の日の晩、真桜と沙和はこの軽率な行動を、そして凪は二人を腕ずくでも止めるべきだったと激しく後悔する事になる事を三人は知る由もなかった。


………


……



そして次の日の晩、予定通り昨日行った店に亜弥を連れて凪達は酒盛りを始める。



「いやー、今日はすみませんねぇ。私なんかのために」


「気にせんでええって。ウチらと姉さんの仲やないかぁ」


「ふふ、嬉しい事を言ってくれますねぇ。……店主殿、白酒を一瓶お願いします」


「へい」


「……亜弥様も白酒を呑まれるのですね」


「ん? 凪、私もとはどういう意味です?」


「いえ、昨日隊長とも一緒にお酒を呑んだんですが、隊長は白酒ばかり呑んでいましたので」


「あぁ、そういう事ですか。私もそうですが、零治は基本的にきつい酒を好んで呑みますからねぇ」


「そうなんだー。でも、どうしてきついお酒ばかり呑むのー? 他にも色々あるのにー」


「本人が言うには、きつい酒じゃないと呑んだ気がしないから、だそうですよ。私は違いますがね」


「へい、白酒おまち」


「おっ、来ましたね。では早速……」



亜弥は白酒の瓶を手に取り、盃に注いでそれを零治同様に一気に呑み乾し、表情をほころばせる。



「んっ、んっ、んっ……あぁ~、美味しい。店主殿、これは良い白酒ですね」


「ありがとうございやす」


「うわー……隊長とおんなじ呑み方してるのー……」


「なあ姉さん、姉さんって酒には強いが?」


「どうしたんです、真桜? 急にそんな事を訊いて」


「いや、姉さんって隊長とよく呑みに行ったりしてたんやろ。昨日隊長と一緒に呑んだんやけど、隊長全然酔わんかったき、姉さんも酒には強いのかな~と思ってな」


「あぁ、そういう事ですか。んー、どうでしょう。まあ弱い方ではないと思いますよ」


「そうなんだー。じゃあ、隊長と亜弥様、どっちが強いのー?」


「それは分かりませんね。彼と呑み比べをした事はないので」


「そうなんだー」


「それより、貴方達も何か注文したらどうです? 今日のお礼にここは私が奢ってあげますよ」


「いや、亜弥様。昨日隊長にも奢ってもらってますし、流石に二日続けてというのは……」


「構いませんよ。私も零治同様にお金の使い道が殆ど無いんで結構余裕は有りますから、遠慮する必要は無いですよ?」


「よっしゃあ! おっちゃん、注文頼むわー!」


「沙和も沙和もー!」


「はぁ……亜弥様、すみません」


「お気になさらず。さっ、凪も私の事は気にせず好きな物を頼んでください。私は一人で勝手にやっていますから」



亜弥はそう言い、一人白酒を美味しそうに呑み続ける。



「んっ、んっ、んっ……ふぅ~……」


(見た所、昨日隊長が話していたような感じになる様な素振りは無いな。やはりあれは、隊長が私達を単にからかっていただけなのだろうか?)



凪は酒を呑む亜弥の姿を観察するようにジーっと見つめるが、今の所、昨日零治が話していたような様子になる素振りは無かった。

凪は内心、零治は昨日冗談であんな事を言ったのだろうと思うが、そう思っていられるのも今の内でしかないと、本人は知る由も無かった……。


………


……



それから、約二時間後。

凪、真桜、沙和の三人は相当の料理を頼んだのだろうか、テーブルの上には何枚もの皿が積み上がっており、真桜は満足げな表情で椅子に背を預けながらポンポンと自分の腹を数回叩く。



「いやー、食った食ったぁ~」


「うぅ……沙和、ちょっと食べすぎちゃったの……」


「まったく二人とも、いくら亜弥様の奢りだからって、少し頼みすぎなんじゃないのか?」


「よう言うわ。なら凪、あんたの横に積み上がっとるその皿はなんよ?」


「こ、これは……っ!」


「ねえ二人ともー、そんな事より亜弥様を起こさないとー」


「すぅ……すぅ……」



すぐ横で騒ぐ三人をよそに、亜弥は酔い潰れたのか、机に突っ伏して寝息を立てながら気持ちよさそうに寝ていた。



「結局隊長が言ってた風にはならなかったねー」


「やはり昨日のあれは冗談だったのだろうか?」


「かもな。……しっかし姉さんかなり呑んだなぁ。白酒の瓶を六本も空にするとは恐ろしい人やで。確か隊長も昨日同じぐらい呑んでなかったっけ?」


「だったと思うが、今はそれよりも亜弥様を起こして会計を済ませるぞ。この様子では、恐らく自力で歩いて帰る事は出来ないだろうしな。……亜弥様、起きてください。そろそろ帰りますよ?」


「ん~……んぁ?」



凪が隣で寝ている亜弥の肩に手を乗せてゆさゆさと揺さぶり、彼女を起こす。

起こされた亜弥は顔だけを持ち上げ、寝ぼけた眼で周囲を見渡し、隣で顔を覗き込んでる凪と眼が合う。



「亜弥様、大丈夫ですか? 立てますか?」


「…………」


「もしや酔って歩けないのですか? それでしたら私が肩を貸してさしあげますので、ご心配なさらず……」


「…………ない」


「はい? 亜弥様、今何と?」


「……足りない」


「足りない? 何がですか?」


「まさか姉さん……金が足りんとかって話やないやろうなぁ?」


「それでしたら大丈夫です。足りない分の支払いは私が出しますから」


「そうじゃない……」


「えっ?」



凪達三人は面食らう。というのも、今の亜弥にある変化が起こっていたからだ。それは……。



「ねえ、真桜ちゃん。亜弥様……口調が変わってなかったー?」


「たぶん……酒に酔っちゅうせいやろ……?」


「あの、亜弥様。では……何が足りないと言ってるのですか?」


「私が足りないと言ってるのは……」



亜弥はそこで言葉を区切り、眼をギラリと光らせ、目の前に転がっている白酒の空瓶をガシリと掴み取る。



「酒の事だーーーーっ!!」



亜弥は大声で叫びながら空瓶を大きく振りかぶり、そして凪の後頭部を強打した。



「ふぎゃっ!?」



あまりの突然の出来事に凪は防御する事も出来ずにその一撃をもろに喰らってしまい、まるで尻尾を踏まれた猫のような声を出して卒倒してしまう。



「きゃーーーーっ! 凪ちゃーーーーん!?」



沙和が慌てて駆け寄り、凪を揺さぶるが凪は眼をグルグルと回して完全に気絶していた。



「ちょっ!? 姉さんいきなり何しとんのよ!? 凪の後頭部を酒瓶でど突くとかって!」


「うるさーーーーいっ!!」


「ひっ!?」



亜弥は真桜を一喝し、手にしていた空瓶を投げつけ、床に叩き付けられた瓶はバリンと派手な音を立てて砕け散る。

その怒鳴り声といい今の振る舞いといい、普段の亜弥からは想像も出来ない姿であった。



「ま、真桜ちゃん……亜弥様、眼が……完全に据わっちゃってるの……」


「もしかして……これが隊長が言っていた……」



二人は即座に悟る。自分達はとんでもない過ちを犯してしまったのだと。しかしもう後の祭りである。

こうなってしまった亜弥は零治でも手がつけられない相手なのだ。

零治が止める事が出来なかった相手を、真桜と沙和の二人で止めるなどどう考えても不可能である。



「親父! 白酒追加だ! 今すぐ持ってこい!」


「ひっ!? へ、へいっ!」



亜弥は席に座り、テーブルをドンっと叩く。

その凄まじい迫力に気圧された店主は大急ぎで追加の酒瓶をテーブルまで運び、それからすぐに調理場まで避難し、顔だけ台から覗かせて様子を窺い始める。



「ちょっ!? おっちゃん、なに酒を渡しとんの! この状況が分からんわけちゃうやろ!?」


「い、いや……今の神威様に逆らったら……命が無い気がするんで……」


「真桜、沙和。こっちに来て酌をしろ……」



亜弥はちょいちょいと二人に手招きをする。

しかし真桜と沙和は首をブンブンと左右に激しく振る。今の亜弥に近づいたら何をされるか分かったものではない。



「ああん? 私に酌をするのが嫌だとでも言うつもりか……?」



二人の態度に亜弥は眉を吊り上げ、その表情はますます険しいものになる。

真桜と沙和は思わずビクリと肩を震わせ、必死の形相で亜弥を宥める。



「ち、ちゃうちゃう! その……何と言うかぁ、姉さんに酌をするのは恐れ多いっちゅうか……っ!」


「そ、そうそう! 沙和もそう思っていた所なのー!」


「あぁ、私は気にしない。いいから酌をしろ」


「ウチらが気にするき!」


「やれやれ。仕方ない。なら私が酌をしてやる。ほら、こっちに来るんだ」


「ね、ねえ真桜ちゃん! これどうしたらいいのー!?」


「どうするもこうするも、これ隊長を呼ぶしかないやろっ!? ウチらじゃどうにもならんで!」



真桜と沙和は声を潜めながらこの状況を打開しようと話し合うが、結論は一つ。零治をこの場に連れてくる以外ない。

だが問題はどうやって零治をこの場に連れてくるかである。この世界には電話も無線機も存在していないのだ。この場合、真桜か沙和のどちらかが直接呼びに行く他に手段はない。



「そ、それはそうだけど……でも、どうやって連れてくるのー!?」


「とりあえずウチら二人で姉さんの相手すんで。ほんで沙和、ある程度したらウチが姉さんの注意を逸らすき、あんたはその隙にここを抜け出して隊長を連れて来るんやっ!」


「う、うんっ! 分かったのーっ!」


「さっきから二人して何をコソコソ話をしている。早く来ないか……」


「は、はい~……。では失礼して……」


「失礼しまーす、なのー……」



二人は恐る恐るの足取りでテーブルに歩み寄り、静かに亜弥の前に着席する。



「よし。まずは沙和からだ。ほれ、盃をこっちへ」


「は、はーい……」



沙和はビクビクと手を震わせながら盃を差し出す。

だが、手の震えが大きかったので思わず盃を床に落としてしまった。



「あっ……すみませーん、新しい盃を……」


「いや、必要ない……」



亜弥は手で制し、ゆっくりとその場から立ち上がり、酒瓶を片手に沙和に歩み寄る。



「あのー、亜弥様、盃が無いとお酒が呑めないんだけどー……」


「なーに言ってるんだ? 盃が無いんなら……」



亜弥はニヤリと笑みを浮かべながら左腕を沙和の首に絡ませる。そして……。



「直接呑めばいいんだーー!」


「がぼっ!? んぐぅっ!? んぅぅぅぅっ!?」



亜弥は沙和の口に酒瓶を突っ込み無理やり白酒を呑ませる。

焼け付く程の強烈なアルコールが喉を流れ通り、沙和はバタバタと手を振り回し抵抗するが亜弥の腕を振り解くことは出来なかった。



「ちょ!? 姉さんやめや! そんな呑ませ方したら沙和が死んでまうって!!」



真桜が反対から亜弥の腕を引っ張って止めようとするが、亜弥はケタケタと笑いながら沙和を離そうとしない。



「大丈夫、大丈夫。この程度じゃ死にやしないって♪」



気付けば酒瓶の中は空になっており、それを確認した亜弥はようやく沙和を解放する。

しかし、きつい酒を一気に呑まされた沙和は既に酔いが回っており、顔は真っ赤になって足元もフラフラしていた。



「げほっ! げっほ! ……ま、真桜ちゃん……沙和は……もう、ダメ……な……の……ガク……」


「あぁ! おい沙和、しっかりするんだ! 死ぬんじゃない!」



亜弥は沙和の両肩を掴み、上体を起こしてガクガクと揺さぶって起こそうとするが、沙和も凪同様にグルグルと眼を回し、完全に気を失っていた。



(こ、こうなったら……ウチが行くしか……)



亜弥が沙和に気を取られている隙に、真桜はコソコソと店から脱出を図るが……。



「真桜、どこに行く気だ?」



背後からがっしりと亜弥に肩を掴まれる。やはり現実は甘くはなかった。



「えっ!? えっと、その……」


「今度はお前が呑むんだぞ? ……親父、白酒を追加だ」


「へ、へい……」


「嫌やーーーーーっ!」



真桜はジタバタと暴れて抵抗するが、亜弥の拘束を振り解くには至らなかった。



「ええいっ! 暴れるな!」


「は、離してや! ウチはまだ死にたくないねーーーん!」



と、その時。



「ごめんくださーい。随分店内が騒がしいようですが、何かありましたか?」



幸運にもたまたま近くを見回りしていた警備隊の隊員の一人が騒ぎを聞きつけ店にやってきた。



「おぉっ! て、天の助けや!」


「り、李典様。これは一体……? どうしたのですか、この惨状は?」


「今説明しとる時間はないねん! アンタ、今すぐここに隊長を連れて来るんや!」


「はっ? 隊長をですか?」


「いいから早くするんや! このままじゃウチら……ぎゃあぁぁぁぁっ!? ね、姉さん、髪を引っ張らんとってーーーーっ!」


「真桜ーーーーっ! 逃げるんじゃなーいっ!」


「ふ、副隊長っ!? 一体何をして……」


「そ、そんな事より……は、早く……隊長をっ!!」


「わ、分かりました! すぐにお連れいたしますっ!」



隊員は脱兎の如くその場から走り去り、一目散に城を目指していった。



「た、頼むで! アンタだけが頼り……ぎゃあぁぁぁ!? ね、姉さんやめてやぁぁぁぁっ!!」


「アハハハハハハ♪」



真桜いきなり仰向けにされ、酒瓶を片手にした亜弥が馬乗りになって酒を呑ませようとしてくるので、真桜は必死の形相で亜弥の腕を両手で支えて酒瓶を押し返し、何とか抜け出して狭い店内を走り回って、近くのテーブルをひっくり返してバリケードを形成して足止めを図るが、亜弥も負けじとテーブルを蹴って粉砕して真桜に迫りよる。

店内には真桜の悲鳴と亜弥の笑い声と店の内部が破壊されていく音が響き渡る。



「あ、あぁ……あっしの……店が……」



店主は調理場の奥で二人の押し問答と店内が破壊されていく様を黙って見ている事しか出来なかった。


………


……



同時刻、玉座の間にて。



「城の敷地内に蔵を?」



零治から手渡された提案書に眼を通し、華琳は怪訝な表情で零治に訊く。



「ああ」


「ふむ。まあこの位置なら邪魔にはならないけど……一体何をするつもりなの?」


「ちょっと酒を造ろうと思ってな」


「お酒を?」


「ああ」


「それはひょっとして、天の国のお酒なの?」


「そうだが?」


「……ふむ。いいわ。蔵の建設の手配はこちらでしておいてあげるわ」


「悪いな」


「ただし」


「ん?」


「そのお酒が完成したら、必ず私にも呑ませる事。これが条件よ」


「ああ、それは分かってるさ」


「よろしい。零治、期待してるわよ」


「はいはい。あぁ、それと蔵の建設なんだが、中に酒を造るでかい絡繰を真桜に作らせるつもりだから、蔵の建設には真桜も立ち合せてやってくれ」


「ええ。分かったわ」



華琳から許可を得て、零治は玉座の間を後にする。



「さーて、これで蔵の方はいいとして、次は蒸留器か。明日真桜に話をして……」


「あっ! 隊長ーーーーっ!」


「ん?」



廊下の反対側から、真桜から伝言を預かった隊員が猛スピードで走ってくる。



「どうしたんだ、そんなに慌てて? 何かあったのか?」


「隊長、緊急事態です! 非番の所を申し訳ありませんが一緒に来ていただけますか!」


「緊急事態? 一体何事だ?」


「その……隊長の行きつけの酒屋で酔っ払いが騒ぎを……」


「はあ? それのどこが緊急事態なんだよ? それぐらいお前一人でも対処できるだろうが」


「あのそれが……騒ぎを起こしてるのが……その……副隊長……なんです」


「はっ? 副隊長って……それは……亜弥……の事か……?」



隊員は無言で頷く。



「おい。一つ確認したい事がある」


「何ですか?」


「アイツ以外に店に誰か居たか?」


「……楽進様、李典様、于禁様の三人が……」


「アイツらぁ……あれ程亜弥と一緒に酒は呑むなと言ったのに……っ!」


「それで隊長、どうなさいますか?」


「はぁ……。オレが行くしかないだろう。お前は通常の巡回に戻って構わん」


「はっ。了解であります」


「あ、おい、それとだ」


「なんですか?」


「この事はくれぐれも他言無用に願うぞ。いいな?」


「は、はい……。分かりました」



眼を細め、まるで脅しでも掛ける様に隊員に釘を刺す零治。

その迫力に隊員はたじろぎながらも、姿勢を正して返事をして一礼して巡回へと戻って行った。



「……さて、オレも行くか。っと、その前に睡眠薬を取って来ないとな」



零治はいったん自室に戻り、机の二重底になってる引き出しの中に隠してある睡眠薬を回収し、現場の店に大急ぎで向かい、到着する。



「……さて、店に着いたが……アイツらは無事……」



と、その時、店の窓が突き破られ、一枚の皿が通りに飛び出し、パリンと音を立てて砕け散る。

さらに店内から真桜の悲鳴と亜弥の笑い声が響き渡ってきた。



「じゃないみたいだな。はぁ……」



零治は溜め息を一つ吐き、意を決して店の引き戸に手をかけ、中に足を踏み入れる。



「おいお前ら、随分と騒いでいるみたいだな?」


「あっ! た、隊長! やっと来てくれたっ!」


「あ~、零治~。お前も呑みに来たのか~?」


「おいおい……こりゃまた随分と派手にやってくれたなぁ……」



店内を見渡せば中は悲惨な状況になっており、床には割れた皿や空になった酒瓶が散乱しており、亜弥達が使用していた物以外のテーブルや椅子も完全に破壊されており、壁にも数箇所穴が開いていたりしている。

そして店内の中央では、亜弥が馬乗りになって真桜に白酒を呑まそうとしているが、真桜は必死の形相で抵抗していた。



「零治~、聞いてよ~。真桜のヤツ、ちっとも私の酒を呑んでくれないんだ~」


「はぁ……コイツ相当酔ってるな。……おい真桜、亜弥は一体どれだけの酒を呑んだんだ?」


「……白酒を六瓶……」


「そうか。で、凪と沙和は何をされてそうなっちまったんだ?」



零治は床でぐったりと横たわっている凪と沙和に視線をやる。

二人は相変わらず眼をグルグルと回して気絶したままだった。



「……凪は後頭部を酒瓶でいきなりど突かれて……沙和は、姉さんに白酒を無理やり呑まされて……」


「なるほど。で、手に負えなくなってオレに助けを求めてきたと、そういう事だな?」


「そうなんよっ! 隊長、お願いやき助けてや!」


「さて、どうするかな?」



零治は顎に右手を添えて考える素振りをしてみせるので、その態度に真桜は眼を丸くして声を張り上げる。



「はぁ!? た、隊長! まさかウチらを見捨てる気やないやろうなぁ!?」


「見捨てるも何も、そもそもオレは昨日お前達に忠告したはずだぞ。コイツと一緒に酒は絶対に呑むな、とな……」


「うっ……」


「にもかかわらず、お前達はその忠告を無視した。これは自業自得の結果だと思うが?」


「あーん! 今日の事はウチらが悪かったきぃ! これからはちゃんと隊長の言う事を聞く! 罰もちゃんと受ける! せやから助けてーーーーっ!!」


「その言葉、忘れるなよ? では助けてやろう。……おい亜弥、オレが酌をしてやるから席に着け」


「おおっ! 流石は零治! 話が分かるね~♪」



零治が酌をすると聞いた途端、亜弥は先程までの凶暴さとは打って変わり、眼を輝かせ素直に席に着き、零治もそこに相席する。



「ほれ、零治~。早く早く~♪」


「分かってる。だがその前にその盃を貸せ」


「ん? 別にいいけど。……はい」



零治は亜弥から無言で杯を受け取り、懐に忍ばせていた睡眠薬の粉を盃の中に入れる。



「何だその白い粉は?」


「……酒が旨くなる魔法の粉だ……」


「おおっ! そうかそうか~。流石は零治だ~♪ 気が利くな~」



完全に酔っている亜弥は零治のウソを信じ込み、何の疑問も抱かずに睡眠薬の粉が入った盃を受け取る。



「ほら~♪ 早く注げよ~♪」


「はいはい」



零治は盃に白酒をなみなみと注ぎ、注がれた酒によって中に盛られた睡眠薬の粉も酒の中にスゥッと溶け込み、消えてなくなった。



「ほら、一気に呑めよ?」


「分かってるさ~。……んっ、んっ……ぷっは~……ん~……?」


「…………」



酒を呑み乾した途端、亜弥は頭をコックリコックリと揺らし始め、零治は無言でそれ見守る。

次の瞬間、亜弥はパタンとテーブルに突っ伏するように倒れこみ、すぅすぅと寝息を立てながら深い眠りに落ちた。



「ふぅ……即効性の強い薬を用意しといて正解だったな」


「た、隊長……もう大丈夫ながかえ……?」



真桜は零治の隣に歩み寄り、恐る恐る尋ねる。



「ああ。かなり強力な薬を飲ませたからな。明日の朝まで起きる事はない」


「はぁ~……た、助かったぁ……」



事態がようやく収束し、安堵の溜め息を吐いた真桜はその場にへなへなと崩れ落ちる。



「うぅ……う~ん……」



その時、先程まで気絶していた凪がようやく眼を覚まし、頭を手で押さえながらムクリと起き上がる。



「んっ? おぉ! 凪、気が付いたんか!」


「真桜……? 私は一体……あっ! た、隊長、どうしてここに!?」


「どうしてもクソもあるか。周りを見てみろ……」


「はっ? 周り? ……なっ、これはっ!?」



店内の惨状を確認した凪は素早くその場から立ち上がり、警戒態勢に入る。



「隊長! もしや賊がこの店にっ!?」


「落ち着け凪。犯人は賊じゃない。やったのはコイツだ……」



零治は目の前で眠りこけてる亜弥を指差す。



「はっ!? あ、亜弥様が……ですかっ!? ……しかし、私はどうして気絶なんか……」


「凪、憶えとらんのかえ? アンタ、酔った姉さんに頭を酒瓶でブン殴られて気を失ってたんやで」


「あぁ、そういえばそんな気が……」


「凪、お前という者が付いていながらどうして真桜と沙和を止められなかったんだ。昨日オレが言った事を忘れた訳じゃないだろう?」


「うっ。す、すみません……」


「はぁ……まったく。……次は沙和だ。おい沙和、早く起きろ」


「うっ……うぅ……気持ち……悪い……の」



零治は未だに床の上で倒れている沙和を揺さぶって起こそうとするが、沙和はまるでゾンビのような呻き声を漏らすだけで起き上がろうとしない。



「隊長、コレ起こすの無理やろ。沙和の奴、姉さんに白酒を一瓶分の量を一気に呑まされたき」


「しょうがねぇな。……親父、悪いが桶一杯の水を持ってきてくれ」


「桶一杯の水ですか? へい、少々お待ちを」



店主は調理場の奥に引っ込み、それからすぐに手桶一杯に入った水を持ってくる。



「音無様、これぐらいで充分ですかい?」


「ああ、それでいい。悪いな。……凪、真桜、沙和を仰向けにしろ」


「は? あぁ、はい」



店主から桶を受け取った零治は続いて凪達に指示を出す。

凪と真桜は零治に言われるがままに床でぐったりと横たわっている沙和の身体を仰向けにする。



「隊長、一体何をするが?」


「何って? こうするんだよ」



そう言うや否や零治は手桶を逆さまに引っくり返し、中に入っている水を沙和の顔面にぶっかける。



「わっぷっ!? つ、冷たいのー!」



桶に入っていた冷水が沙和の肌を刺激し、思わず沙和は顔を両手で押さえながら床の上を転げまわる。



「た、隊長、これは少々やり過ぎなのでは……?」


「酔っぱらいはこうやって起こすのが手っ取り早いんだよ。それと、今のお前達はオレに対して文句が言える立場ではないという事を忘れるな……」


「は、はい……すみません」


「うぅ、今日の隊長、メッチャ怖いでぇ……」


「おい沙和、立てるか?」


「うぅ……隊長、か弱い女の子の顔にいきなりお水を掛けるなんて酷過ぎるのー……」



沙和はか細い声で文句を言いながら、その場からフラフラと立ち上がる。



「一人で歩けそうか?」


「うぅ……まだ気持ち悪いし、頭も凄く痛いのー」


「オレは亜弥を背負って帰らなきゃならんから、お前は凪と真桜に肩を貸してもらえ」


「分かったのー」


「では……お前達三人に対し、今回の騒ぎの件の罰を言い渡す。三人とも整列しろ……」



零治は急に声色変え、表情も険しくなり、三人に命令を出す。

凪達三人は零治の豹変ぶりにびくりと肩を震わせ、素早く零治の前に横一列に並ぶ。ただ、沙和は酒に酔ってる状態なのでフラフラしていて足元がおぼつかない状態にあった。



「まずはこの店の修理費についてだが、それはお前達三人の給金から差っ引いておく。分かったな?」


「はい……」


「へーい……」


「ふぇーい、なのー……」


「よろしい。では次だ。……楽進、李典、于禁。以下の三名は明日の通常勤務を終えたのち、今回の騒ぎに対する始末書をそれぞれ二百枚書いて明日までにオレに提出しろ。以上だ」


「ちょ!? 隊長、明日の仕事やった上に始末書二百枚、しかも明日までに提出とかって、冗談やろ!?」


「悪いが冗談ではないぞ……。それと始末書は提出が一日遅れるごとに五十枚ずつ上乗せするからな」


「隊長ー。沙和、明日は二日酔いで絶対仕事なんて出来ないと思うのー」


「それがどうした。二日酔いだろうがなんだろうが明日はキッチリ仕事をしてもらうからな……」


「隊長の鬼ー! ……あぅ、叫んだら頭が……」



沙和は頭の中にズキンと走る痛みに耐えきれず、頭頂部を両手で押さえながらその場に蹲る。



「分かりました。私はそれで構いません」


「ちょ、凪はそれでいいんかいっ!? 二百枚やで!!」


「もとはと言えば、隊長の忠告を無視した私達が悪いんだ。これくらいの処罰はされて当然だ」


「そうだ。凪はよく分かっているな。……二人も少しは凪を見習え」


「えー、でも二百枚を明日までにはキツイとウチは……」


「沙和もー……」


「これ以上文句を言うのなら、真桜と沙和には倍の四百枚書かせるぞ……」


「いやいや。やる! ウチは二百枚書くでぇ!」


「沙和も二百枚くらい余裕なのー!」


「よろしい、では話は終わりだ。お前達三人は明日に備えてさっさと帰って寝ろ。それと凪は念のため衛生兵に頭を診てもらえ」


「分かりました。では隊長、お先に失礼します」


「ああ」


「ほれ沙和、帰るで。ウチらの肩に掴まりや」


「うぅ……足がふらふらするのー。それに……なんだか吐き気が……」


「帰り際に吐いたりするなよ?」



沙和は二人に肩を貸してもらい、凪達と共にふらつきながら一足先に城に帰っていった。



「さて、オレも帰るか。……よっ……とっ」



零治はテーブルの上で眠りついてる亜弥をおぶさり、店の出入り口に足を運ぶ。



「あぁ、親父。今日は悪かったな。ウチの連中がバカ騒ぎした上に店をこんな風にしちまって。今日の分の支払いは店の修理費と一緒に払っておくからよ」


「いえ、いいんです。あっしは気にしてませんから」


「そう言ってくれると助かる。店が元通りになったら、警備隊の連中を連れて貸切の宴会でもするから、その時までに良い酒を仕入れといてくれ」


「へい。とびっきり良いヤツを仕入れときやすね」


「頼む。それじゃあな」



亜弥を背に背負い、零治も店を後にする。

波乱に満ちた酒盛りはこうして終わりを迎えたのだった。


………


……



翌朝、城の廊下にて。



「あぁ……昨夜はえらい目に遭ったわ……」


「うぅ……頭が痛いのー……」


「沙和、大丈夫か? 足がかなりふらついてるぞ」


「何とか平気だけど……凪ちゃんこそ大丈夫なのー? その頭の包帯」


「まだ多少は痛むが、今日の仕事には差し支えはない。……真桜も大丈夫なのか? 髪の毛が凄い事になってるぞ」


「あぁ、姉さんに散々引っ張り回されて、むしり取られもしたきなぁ。おかげさんで髪がグチャグチャやで。まあ、二人に比べりゃウチはまだマシな方やで」


「おーい! 三人とも、おはようさーん!」



廊下の反対側から霞が現れ、大きく手を振りながら三人に挨拶し、歩み寄ってくる。



「あ、霞様。おはようございます」


「おう、おはよう……って、三人ともどうしたんや? えらい元気ないけど」



霞は三人の元気の無さを疑問に思い、ひょいっと顔を覗かせながら三人に訊く。

その問いに、真桜が力なく答える。



「いやー……昨夜姉さんと酒を呑みに行ったんですよ、姐さん……」


「へ? 何でまた突然?」


「隊長の話が本当がどうか確かめるためなになのー……」


「あぁ、なるほど……。で、どうやったん? 零治の話、ホンマやったが?」


「ホンマでした。酔った姉さん、完全に人が変わってもうて、もう手がつけられませんでしたもん……」


「なら、三人のその酷いなりは……」


「はい。お察しの通りです。すべて酔った亜弥様にやられたんです……」


「沙和なんか無理やりお酒を呑まされて二日酔いなのー。今日はこのままお仕事もしなきゃいけないのー……」


「ウチなんか髪を鷲掴みにされて、引っ張り回されたりむしり取られたりしましたわ……」


「そうかぁ。……凪は何をされたん? 頭に包帯を巻いとるけど……」


「……亜弥様に酒瓶で殴られまして……」


「そ、そうか……」


「姐さん、あの人とは絶対に酒は呑んだらあきまへんで。ウチらみたいになりたくなかったら……」


「ああ。肝に銘じとくわ……」


「ん? これは皆さんお揃いで。おはようございます」



凪達の後方から零治と亜弥が歩いてきて、凪達に挨拶を交わしてくる。

凪は慌てて姿勢を正し、昨日の事は考えまいと普段通りに振舞おうとする。



「あっ! あ、亜弥様。お、おはようございます……」


「はい、おはようございます。……って凪、その頭の包帯はどうしたんです?」


「こ、これは、その……」



亜弥に頭に巻いてる包帯を指摘され凪はうろたえる。まさかこの包帯の原因が自分だなんて亜弥自身は夢にも思っていないだろう。

どう返答したものか困り果てている凪に零治が助け舟を出す。



「あぁ、凪の奴、今朝寝台の上から転がり落ちてな。それで家具の角に頭をぶつけたんだと」


「そうだったんですか。凪、大丈夫なんですか?」


「だ、大丈夫です。仕事に差し支えはありません」


「そうですか。なら構いませんが……で、真桜、その髪はどうしたんです? 寝癖にしては随分酷いですけど」


「いやー、今朝髪を整えんのに失敗してもうてな、こんなんなってもうたんよ……」


「なるほど。時間が有る時に直しておいてください。それだとみっともないですからね」


「へーい」


「で、沙和は? 随分気分が悪そうですね。大丈夫ですか?」


「あ、あははー……。沙和、昨日呑み過ぎちゃったみたいで二日酔いなのー」


「ちょ、ダメじゃないですか。仕事に影響しちゃうほど呑んじゃあ。大丈夫なんですか? もし辛い様なら休みますか?」



沙和自身は今すぐにでもそうしたいのだろうが、亜弥の背後で零治がそうはさせまいと、鋭い視線で睨みを利かせる。



「だ、大丈夫なの! これぐらい何でもないのーっ!」


「そ、そうですか。まあ本人が良いと言うのなら構いませんが。……では零治、私は先に行ってますね」


「ああ」



亜弥は警備隊の集合地点に向かうため、一足先にその場を後にする。

その後姿を凪、真桜、沙和の三人は呆然と見送る。



「なあ、隊長……」


「何だ?」


「姉さん、何であんなに元気なが? 昨夜は白酒を六瓶も呑んで泥酔しちょったのに……」


「あぁ、そういえば言ってなかったな。アイツ、どんなに泥酔していても翌日には完全回復する異常体質者なんだよ」


「そ、そうなんや……」


「なんて羨ましい体質なんや……」


「あん? 霞、何か言ったか?」


「いや、別に何も」


「そうか。じゃあオレも行くが……三人とも、あの件、忘れるんじゃないぞ……」


「は、はーい……」



零治は昨夜の件について三人に釘を刺すように言い聞かせ、集合地点に足を運んだ。



「三人とも、あの件って何の事や?」


「昨夜呑みに行ったお店が、酔った亜弥様の手によって滅茶苦茶に破壊されたので、その修理費を私達三人の給金から差し引かれる事になりまして……」


「うわぁ……それ最悪やな。まあ、しゃあない部分もあるんやろうけど」


「それだけならまだマシやったんですが、ウチら三人、今日の仕事が終わったらその騒ぎの件の始末書を二百枚書いて今日中に隊長に提出せなあかんのですわ……」


「はぁ!? 今日中に二百枚とかって、そりゃいくらなんでも無茶やろ!?」


「しかもー、提出が一日遅れるごとに五十枚追加するって隊長言ってたのー……」


「ちょ、それいくらなんでも厳し過ぎるんちゃうか?」


「霞様、仕方ありませんよ。あれだけの騒ぎを引き起こしてしまった上に、あのお店は隊長のお気に入りでしたから、隊長が怒るのも当然です」


「そんなに店酷い状況なが?」


「気になるんやったら見に行ったらどうです? まだ修理の工事は始まってないからそのまんまやと思いますよ」


「あぁ、暇があったら行ってみるわ……」


「では私達も行きますね」


「ああ。まあ……三人とも頑張りや……」


「はい。二人とも行くぞ」


「へーい……あぁ、もし時間が昨日に戻せるんやったらやり直したいわぁ……」


「そんなの無理に決まってるだろ」


「うぅ……沙和もやり直したいのー。うっ……吐き気がしてきたの……」


「頼むから仕事中に吐いたりするなよ……」



凪は普段通りの姿で足を進めるが、真桜と沙和の二人はその背に哀愁を漂わせていた。



「……零治って見かけによらず、怒らせると怖いんやな……。ウチも気をつけとこ」



三人の後ろ姿を見て、霞はそう心に誓うのであった。

亜弥「…………」


零治「おい亜弥、どうしたんだ?」


亜弥「…………」


作者「返事が無い。ただの屍のようだ」


亜弥「…………」


臥々瑠「反応が無いね」


奈々瑠「今はそっとしといてあげましょう……」


零治「そうするか。……ところで今回の話だが」


作者「何だよ?」


零治「拠点パートにしては随分長くないか?」


奈々瑠「あぁ、それは私も思っていました」


作者「いやー、書きたい事を全部詰め込んだらこんな風に」


臥々瑠「いやさ、それでも少しは妥協とか……」


作者「否! 今回の話は妥協案なんか出したくなかったんだよ!」


零治「あっそ……」


亜弥「……ヒック」


奈々瑠「ん……? 姉さん、何を飲んでるんですか?」


亜弥「えへへへへ♪ この酒おいし~♪」


零治「だ、誰だぁ! 亜弥に酒を呑ましたのは!?」


臥々瑠「し、知らないよ!」


零治「テメェか、このダメ作者!」


作者「オ、オレじゃないぞ!」


亜弥「お前達……」


零治「っ!? な、何ですか……?」


亜弥「私に…………酌をしろーーーーっ!!」


一同「「「「ぎゃあああああああ!!??」」」」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ