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第28話 反董卓連合終結

董卓連合はこれにて終了。

しかし、本当に大変なのはこの先からなんですよね。

連合軍による攻城戦が開始して数日が過ぎた。

しかし未だ進展が無いので、華琳は自軍の首脳陣達を集め、軍議を開いている。



「状況はどう?」


「……あまり芳しくありませんね。袁紹や袁術も攻城戦を繰り返してはいますが、都の城壁は高く、一進一退の状況です」



華琳の問いに、桂花が渋面を作りながら答える。

次に華琳は秋蘭に視線を移し、相手の動向について訊く。



「華雄は?」


「流石に今回は出て来ないようで……」


「まあ、流石に今回出て来たら、見殺しにされるでしょうね」


「私なら春蘭が出たら一度で見殺しにしますが」


「だからどうして私を引き合いに出す!」



桂花に引き合いに出され、流石にこうも立て続けに引き合いに出されてしまうため、春蘭は憤慨する。

しかし、周りのメンバーは何も言わずに、ジト眼で春蘭を見つめる。



「な、何だ……」


「……いや別に」



零治はそう言って適当にお茶を濁す。

その時、攻城戦に出撃していた季衣と流琉が帰還してきた。



「ただ今戻りました」


「お帰りなさい。様子はどうだった?」


「……全然ダメでした。上からああも反撃されたら、手も足も出ないですよー」



季衣が悔しげに報告し、流琉が補足を加える。



「劉備さんの軍も攻めてましたけど、状況は同じようでした。今は袁紹さんの軍が攻めてますけど……多分、状況は変わらないんじゃないかと」


「そう。あまり時間も無いし、早く決着をつけたいところだけど……」


「そうですねぇ。このままダラダラ時間を掛けてたら連合の士気も低下しますし、ただでさえ悪い連携が余計に悪くなりますしねぇ……」


(それどころか、史実のように内部分裂が起こり、この討伐作戦が失敗しかねんな……)



亜弥の言葉に同意するように零治が内心不安を抱いてる時、不意に華琳が声をかけてくる。



「零治」


「ん? あぁ、どうした?」


「それはこっちの台詞よ。どうしたのよ? 急に難しい顔をして黙り込んだりして……」


「いや、ちょっと考え事をな。で、何だ?」


「零治、確か貴方の世界には……こんびにと言うものがあったわよね?」


「あん? そりゃあるけど……それがどうかしたのか?」


「まあ、それはこの後開かれる軍議でのお楽しみよ」


「はあ?」



零治は華琳の意図が理解できず、怪訝な顔で首を傾げる。

それからすぐに、連合に参加してる全諸侯が集められた軍議が開かれる。



「……攻め続ける? どういう事だ?」



怪訝な顔で馬超が訊く。



「うわ……えげつないですねぇ……」


「張勲、どういう事なのじゃ! 妾にも分かるよう、説明してたも!」


「今も我が軍は間断なく攻め続けているでしょう。やり方をどう変えろとおっしゃいますの?」


「……間断なくぅ?」



公孫賛が袁紹に訝しげな表情を向ける。



「……何か文句ありますの?」


「いや、別に……」



袁紹と公孫賛のやり取りをよそに、華琳は自らが提案する作戦の概要を説明する。



「簡単な事よ。今の散発的な城攻めの方法を変えて……そうね、一日を六等分にでもしましょうか」


「……そうして、一つの隊が六分の一ずつ攻め続けると言う事ですか?」


「そうよ」



諸葛亮の問いに華琳は軽く頷く。今の言葉で他の諸侯達も華琳の提案する作戦の内容を理解した様子。



「一日の六分の一しか攻めないようでは、いつまでたっても城なんか陥ちませんわ!」


「麗羽の言う通りなのじゃ! 残りを昼寝されたら、堪らんぞ!」



しかし例外も存在していた。袁紹、袁術の二人だ。

話の内容を理解できず、文句をブータレる二人に、他の諸侯達から呆れた視線が向けられる。



「な、何なのじゃ?」


「何ですの、その眼は……」


「あくまでも一隊が、の話ですよぅ。お嬢様、それが六隊あったらどうですか?」



話を理解できていない二人に、張勲が補足を加える。



「六分の一が、六個あるのかえ……?」


「…………一日が全部埋まってしまいますわ!」


「そうよ。朝も昼も晩も攻められたら……数で劣る向こうとしては堪らないでしょうね」


「あー。それでコンビニの話を持ち出したのか」


「そう言う事。……数で圧倒的に勝る今のうちでなければ、試せない作戦でしょうしね。ここまでば、向こうもすぐに音を上げてくると思うけれど……どうする?」



華琳は集まってる諸侯達を見渡し、問いかける。だが、結論は既に出ていた。

そして、作戦はその日からすぐに実行される。


………


……



「うぉはよー」



玉座の間に来た張遼は、眼をゴシゴシと擦りながら気怠そうに集まってる首脳陣達に挨拶をする。

張遼だけに限らず、他のメンバーも眠そうな顔をしており、呂布に至っては立ったまま頭をコックリコックリと揺らしており、今にも寝落ちしてしまいそうなほどであった。



「ああ、おはよう」



寝不足に悩まされてる他のメンバーとは対照的に華雄だけは普段通りに挨拶をする。



「…………ぐぅ」


「れ、恋殿ー! 起きてくだされー!」


「…………眠い」


「賈駆っちー。月は?」


「調子が悪くて、まだ寝てるわ。流石に夜もまともに眠れていないみたい」


「ここ数日の連中、一体何なんや……。朝も晩も延々攻めて来よって……おはようからおやすみまで仕掛けられても困るっちゅーねん!」


「それが連中の狙いなんでしょうね……ふわぁ」


「楽しい楽しい我慢比べっちゅう訳か……やられた方としちゃ、堪らんなぁ」


「ふみゃ……効果的な作戦である事は、間違いないのです……ふわわ」


「…………むにゃ」


「おいこら、呂布。どこに行く気だ」


「…………布団」


「寝るなー!」


「つか、華雄は元気ええなぁ……。夜もしっかり寝られとるん?」


「当たり前だろう。いつ如何なる時でも安眠できてこそ、一流の武人と言うものだ!」


「羨ましい体質やなぁ……。けど、これが続くようじゃ、ホントに保たんで」


「決戦……しかないわね」



賈駆は瞳に決意を宿らせ、呟く。



「せやなぁ……。こっちの力が残っとるうちに、仕掛けるか……」


「なら、月を起こしてくるわ」


「よしとき。ギリギリまで休ませたり」


「恋とねねは……」



賈駆は二人に視線を移す。その先には……。



「…………ぐぅ」


「……むにゃ……恋どのぉ……」



呂布と陳宮の二人は睡魔に耐えきれず、立ったまま既に半ば寝ている状態だった。



「おい、貴様ら……」


「ええって。休むんも仕事のうちや。どうせ恋の仕事は、決戦が始まってから山ほどあるんやし」


「……ふむ」


「賈駆っちはウチと作戦を考えてもらえるか?」


「了解」


「なら、私は物資の確認をしてこよう」


「頼むわ。くれぐれも……くーれーぐーれーも、勝手に出るんやないでっ! 今度出たら、見捨てたるからな!」


「分かっている。決戦と決まったのなら、今出る理由などどこにも無いわ」


………


……



―――――連合軍本陣。

今日も諸侯達を集め軍議を開き、現在は桂花が董卓軍の動向を報告している。



「……と言う訳で、敵の反抗がいつもより大人しかった事もあり、敵は今日明日中に決戦を仕掛けてくると思われます」


「なら、こちらもしっかり準備を整えて……」



袁紹の言葉に、華琳は首を横に振る。



「攻撃はこのまま続けないと意味が無いわ。ここで兵を退いては敵に休ませる時間を与えてしまうわよ」


「だったら、ハズレを引いたらどうなるのじゃ!」


「そりゃ運が悪かったらそのまま決戦に参加するか、撤退するしかないんじゃないか?」



公孫賛が袁術にそう説明する。

確かにこればっかりはタイミングの問題なので、ハズレを引いてしまったら運が悪かったと諦めるほかない。



「そんな不名誉な事、妾は嫌なのじゃ!」


「そうですわ! 今日からしばらく、貴方達だけで城攻めをなさい! これは連合の総大将からの命令ですわよ!」


「なんだそりゃ!」



馬超が声を荒げる。

しかし、こんな理不尽な命令をされれば誰だって声を荒げるというものである。



「妾も出ないのじゃ。攻撃の当番を持ってきても良いが、絶対に出ぬからの!」


「貴方達……」



華琳の米神がピクピク痙攣する。表情も険しくなり、今にもキレそうな様子だ。



「……はぁ。袁術の代わりは私がするわ」



孫策が溜め息を一つ吐き、袁術の代わりを買って出る。



「なら、わたくしの代わりには…………劉備さん」


「はいっ?」



いきなり声を掛けられたので、劉備は上ずった声で返事をしてしまう。



「貴方の軍、有能な将に、天の御遣いが四人も居るようだから、隊を二つに分けても何ともありませんわよね?」


「え、そ、そんな……! 私の軍、兵の数はそんなに……」



白羽の矢が自分に立ち、劉備は困り果てる。

このやり取りを傍らで見ていた金狼と銀狼が声を潜めて話し合う。



「気に入らねぇな、あのアマ……いっちょ脅しでも掛けるか?」


「今回ばかりは僕も君に同感だね。袁紹の奴、名門の出だからって調子に乗り過ぎだね。総大将としての自覚も全く無いしさ。……て言うかアイツ、北郷の事も戦力に入れてるつもりなのか?」


「あぁ? あんなガキが戦場で役に立つわけねぇだろう」


「本人から訊いた話じゃ、元の世界じゃ剣道をやってるみたいだけど……ま、その程度じゃ戦場に出ても即あの世逝きだろうね」


「だよなぁ。……って、んな事はどうでもいいんだよ。それよりあのアマだ。どうする。やるか……?」


「貴様ら、余計な事はするな……」



金狼と銀狼の物騒な会話を横で聞いていた黒狼が静かに口を開き、二人に釘を刺す。



「何だよ、黒狼。このままじゃ面倒な事になるだけだろうが……」


「いいから黙って見ていろ……」



黒狼は顎をしゃくり、金狼、銀狼に前を向くように促す。



「……なら、兵は私の兵を貸しましょう」


「曹操さん……」


「関羽のような逸材に使われるのなら、私の兵も本望でしょう。それでどう?」


「桃香様……」



諸葛亮が声をかける。華琳が兵を貸すと言う後押しもしてくれた以上、断る理由は無いはずだ。



「……うん。分かりました。お引き受けします」


「なら結構。それでは華琳さん、決戦の布陣を説明してくださるかしら?」



華琳は諸侯達に決戦の布陣の説明を始める。

やがて軍議は終了し、一同は解散するが、その際に劉備は華琳に声をかけてくる。



「あ、曹操さん……」


「ああ。どうしたの?」


「あっ……」



華琳に何か言おうとしたとき、不意に零治と眼が合ってしまい、劉備は言葉に詰まる。



「…………」



零治は何も言わずに踵を返し、一足先に自分の陣へと戻って行った。



「……ん? 彼がどうかしたの?」


「いえ、何でもないです。……それより、お礼が言いたかったので」


「礼を言われるほどの事をした覚えはないわ。少なくとも、この戦いの間は同盟を組んでいるのだから」


「それでも……ありがとうございます」


「……ふむ」



華琳はジッと劉備を見据える。

その視線に劉備はキョトンとする。



「はい?」


「何でもないわ。兵は後で連れて行かせるから、なるべく減らさずに返してちょうだい」


「はいっ! ありがとうございます!」



劉備は丁寧のお辞儀をして礼を言い、諸葛亮を伴い自分の陣に戻って行った。



「……随分と気前が良いんですね」



亜弥は意外そうに言う。



「諸葛亮や関羽の指揮を間近で見られる良い機会だもの。その代価と見れば、高いものではないわ」


「ふむ……。では」


「桂花。兵の中に間諜を数名選んで入れておくように。人員の選定は任せるわ」


「はっ!」


(フッ、流石に抜け目ない。伊達に英雄と呼ばれていた訳ではありませんね)


「ところで、亜弥……」


「はい?」


「零治、劉備との間に何かあったの?」


「あっ……やっぱり気付いてましたか」


「当たり前でしょう。で、何があったの? 怒らないから正直に言いなさい」


「その……シ水関攻略の時、劉備軍……正確に言うと、関羽と零治がひと悶着やらかしちゃいまして……それに、劉備とも軽く言い争いを……」


「はぁ……」



華琳は呆れたように頭を抱えながら溜め息を吐く。



「すみません。私も止めようとはしたんですが……」


「まったく、ここ最近の零治は問題行動が多すぎないかしら……?」


「……それは多分、黒狼のせいでしょうね。零治はあの男が絡むと気性が荒くなりますから……」


「まったく。そういう意味では春蘭といい勝負よ、今の零治は……」


「ハハ。否定はできませんね」


「ま、今はこの話はいったん止めにしましょう。まずは目の前の戦いに集中する事よ」


「はい」



二人は決戦の準備に備え、自分達の陣へと足を進めていった。


………


……



「これが最後の決戦……やな」



城の城壁から連合の軍勢を見下ろしながら、張遼は感慨深げに呟く。



「三万か……。これで、よく保ったものだ」


「どっかのバカが無茶せんかったら、もうちょっとおったんやけどなぁ……ま、今更言っても仕方ないっちゃ仕方ないけど。……恋、用意はええか?」


「…………全部倒す」


「その意気や。……賈駆っち、ねね、城の守りはよろしゅうな」


「ええ。任せておいて」


「恋殿の後背はしっかりお守りするのです!」


「張遼様! 敵軍は城を四方から取り囲み、いつでも攻められる状態になっています!」


「まあ、モロバレなのは分かっとったけどな。ま、ええわ。景気づけに……お前ら、聞けぇ!」



張遼は背後に控えてる兵士達に声高らかに叫ぶが、誰も何も言おうとしない。



「……って、誰も喋らんのかい!」


「…………苦手」


「かっ、かっ、かかっ!」



華雄が何か言おうとしているが、緊張してるせいで、『か』、から先の言葉が出てこようとしない。



「どもるくらいなら黙っとき!」


「皆の者! 今までよく頑張った! ここが最後の決戦だ! この戦いに勝てば、再びゆっくり眠れるあの日々が帰ってくるだろう!」



時間も惜しいので代表として賈駆が声高らかに宣言する。



「しかし、もし退けば、この悪夢の日々は未来永劫続く事になる! 我らの平和を、略奪者から守るのだ! 総員、戦闘用意!」



賈駆の言葉で董卓軍の兵士達に士気は一気に高まり、全員が雄叫びを上げる。

そして、城門が開放される。



「報告っ! 城の正門が開きました!」


「見えているわ! 皆の者、聞きなさい!」



凪の報告を受け、華琳は背後に控えている兵達に声高らかに宣言する。



「ここが正念場! この戦いに勝てば、長い遠征もおしまいよ! けれど、もし奴らをあの城の中に押し戻してしまったら、この遠征は永劫に続いてしまうでしょう! この戦いばかりの日々を終わらせるわよ! 総員、戦闘準備!」


「門より敵部隊出撃! 突撃して来ます!」



桂花が言うように、董卓軍の兵士達は、大量の砂塵を舞い上げながら一直線に華琳達に目掛け突撃してくる。だが、華琳は余裕の笑みを浮かべる。



「……さあ、誰が私達の相手をしてくれるのかしらね……春蘭!」


「はっ! 総員、突撃ぃっ!」



春蘭の号令と共に戦闘開始の銅鑼が鳴らされ、兵士たちは一斉に突撃。決戦の幕開けである。

双方の軍勢はあっという間に激突し、辺りは激戦区と化す。

その戦場で入り乱れる兵士達の間を、零治と亜弥は凪達三人を率いて、立ちはだかる敵を斬り伏せながら城を目指しながら疾風の如く駆け抜けていく。



(まったく。いち早く城に侵入し、董卓を取り押さえろだなんて、華琳のヤツも無茶な命令をしやがる。だいたい、顔も知らない人間をどうやって捜せって言うんだよ……)



零治がそう思っていた時、不意に零治達を呼び止める者が現れる。



「そこの貴様! 待てっ!」


「ん?」



零治達は足を止め、声がした方向に視線を向ける。その先に居た人物は……華雄である。



「その服装……貴様、シ水関に現れた御遣いの一人だな」


「亜弥、アイツひょっとして……」


「ええ。恐らく華雄でしょうね」


「また面倒な奴が現れやがって……」


「おいっ! 私の質問に答えろ!」


「はぁ……だったら何なんだ?」


「やはりそうか……。あの時の雪辱を晴らすため、貴様に一騎打ちを申し込むぞっ!」



華雄は自身の使用している戦斧を零治に突き付け、声を張り上げ意気込むが、零治は嫌そうに顔を歪める。



「あぁ……やっぱそう来るか。ったく、面倒だなぁ……」


「あれ? 兄さん、こんな所で何してるんですか?」



零治が思案している時、奈々瑠と臥々瑠が合流してきた。



「ん? ああ、奈々瑠に臥々瑠か。そっちは片付いたのか?」


「うん。それで兄さんと合流して手伝おうと思って来たんだけど……どうしたの?」


「いや……厄介な奴に絡まれてな……」



零治は顎を華雄に向けてしゃくり、奈々瑠と臥々瑠は視線を華雄に向ける。



「あ~……納得です……」


「兄さん、なんならアタシ達が相手しようか?」


「いや、その必要は無い。……亜弥」


「はい?」


「お前は凪達を連れて先に城に向かえ。華雄を片付けたらオレも後からすぐに追いかける」


「えっ? ですが……」


「結果の分かりきっている闘いの観戦などしても時間の無駄だ。早く行け……」


「分かりました。零治、気をつけて。……では貴方達、私達は行きますよ」


「はっ。隊長、ご武運を……」


「ああ」



亜弥は凪達を率いて、一直線に城を目指していった。

それを見届けた零治はゆっくりと華雄に向き直る。



「待たせたな……」


「ふんっ! 随分と余裕ではないか。己の武勇に余程の自信があるのか……?」


「ああ。お前程度の相手など、すぐに終わらせてやるさ……」



零治のその一言が引き金となり、華雄の顔に朱がさす。



「なっ!? 貴様、言わせておけばっ!!」



華雄は戦斧を振り上げ、戦闘態勢を取る。



「いいだろう。その思い上がった性根を、この私が完膚なきまでに叩き潰してくれる!」


「フッ、この程度の挑発に乗るとはな……呆れて物も言えん……」



零治はゆっくりと叢雲を鞘から引き抜く。



「さあ、かかって来い……」


「言われずとも……。我が一撃、受けてみよ! はあああああっ!」



双方の武器がぶつかり合い、軽快な金属音を鳴り響かせ、火花を散らす。


………


……



「くっ……っ! やっぱ、この戦力じゃ厳しいかっ! 恋とははぐれてもうたし、華雄の奴は勝手に独走するし……っ!」



別の戦場で張遼は奮戦こそするが、劣勢に立たされてるこの状況を歯痒そうに言う。



「待てぇっ! 張遼!」


「待てるかボケ!」



張遼は迫り来る公孫賛を無視し、馬に鞭を討ち、あっという間に公孫賛を引き離す。



「くっ、この私が馬術で追いつけんだと……!?」



公孫賛は呆気にとられながら張遼を見送る事しかできなかった。


………


……



「……やれやれ。やっと撒いたか」



張遼は後方を確認し、溜め息を吐きながら安堵する。



「けど、どう見てもこっちの負けやなぁ……。月と賈駆っち、上手く逃げられたやろうか」



張遼が二人の安否を気にしていたその時……。



「待て! 見つけたぞ、張遼!」


「あちゃぁ……このクソ忙しいときに。一騎打ちの申し込みなら、もう締め切っとるぞ!」


「ふんっ! そんな事は知らん! 私との勝負に応じるまで追いかけるまでだ!」


「その眼……ダメっちゅうても仕掛けてくる眼やな。恋や華雄っちとおんなじ眼ぇや」


「……貴様も同じ眼をしているぞ?」


「あかんなぁ、自分を殺しとるつもりやったんやけど……ええよ。どうせこの戦、ウチらの負けや。最後くらい自分の趣味に走ってもバチ当たらんやろ。名ぁ名乗りぃ!」


「我が名は夏侯元譲!」


「曹操の夏侯惇いうたら、暴れん坊で手が付けられん方か! ええで……来ぃや!」


「良い心がけだな。ならば、行くぞ!」


「おおおおおおっ!」


「でやあああああっ!」



春蘭の愛刀の七星餓狼と、張遼の持つ槍、関羽の青龍偃月刀を模して造らせた、飛龍偃月刀が火花を散らす。


………


……



「でやあああああっ!」



華雄は戦斧を高々と振り上げ、零治に目掛けて、渾身の力を込め振り下ろす。



「……そんな大振りの攻撃がオレに当たると思っているのか?」



零治は身体をスゥッと横にずらし、その一撃をひらりと躱す。

華雄の一撃は地面に叩きつけられ、凄まじい轟音を響かせながら地面を陥没させる。



「……力だけは一丁前のようだな。だが、所詮それだけか……」


「ふんっ! ただ逃げ回っているだけの奴にそのような事を言われる筋合いは無い!」


「そうかい。ならば教えてやろう……力の差と言うものをな……」



零治は叢雲を鞘にしまい、ゆっくりと居合いの構えを取る。



「これ以上続けても時間の無駄だ。この一撃で終わらせる……」


「面白い……やってみろっ!」



華雄は戦斧を構え直し、改めて零治と対峙する。

その場に緊迫した空気が張り詰める。その刹那……。



「フッ!」



零治は眼にも止まらぬ速さで、華雄の懐にまで踏み込む。



「なっ!?」



華雄はあまりの出来事に反応しきれず、咄嗟に防御の体勢を取る。



「遅いな……」



零治は叢雲を振り抜き、そのまま華雄の横をすり抜け、叢雲を振りぬいた体勢のまま華雄の数メートル先で止まる。

華雄自身も、そして華雄が率いてる兵士達も何が起こったのか理解出来ないまま硬直する。その中、零治は無言で叢雲を鞘に納める。その瞬間、何かが砕けるような金属音が華雄の手元から響いた。



「ん? ……なっ!?」



華雄はその音の正体が気になり、ふと視線を自分の武器の柄の部分にやる。

その視線の先には、柄の中心部から真っ二つに折れていた自分の戦斧が飛び込んできた。



「それでお前の武器は使えん。終わりだ……」


「バカ……な……」



華雄は地面に両膝を付き、がっくりと項垂れる。



「華雄将軍が……負けた……?」



一人の兵士がそう呟く。その瞬間その言葉が引き金となり、華雄の部隊の兵達の間に瞬く間に動揺が走る。



「華雄様が負けたっ!? に、逃げろぉ!」


「うわあああっ! こ、こんな所に居たら俺達まで殺されちまうぞぉ!」


「なっ!? お、おいっ! 待たんか、貴様ら!」



兵達は華雄の言葉に耳も貸さずに、蟻の子を散らすようにその場から散り散りに逃げだしていく。



「フッ、指揮官が負けたら、兵達がああなる事など誰にでも予想できる事だ。もうお前の部隊は終わりだ……」


「くぅ……っ!」


「お前も死にたくなければさっさと逃げるんだな。じゃあな……」



零治は言う事だけ言い、華雄には眼もくれずに城を目指してその場を走り去って行った。



「…………くっ!」



華雄はその場からフラフラと立ち上がり、悔しげな表情で唇を噛み、兵士達が入り乱れる戦場の中を一人走り出した。


………


……



「…………」


「……くっ! 呂布め、何という強さだ……!」



別の戦場では秋蘭が、季衣、流琉、張飛、文醜と共に呂布を相手取っているが、呂布の強さの前に手も足も出ない状況に置かれていた。



「流琉! いっちー、ちびっこ! もう一度、仕掛けるよ!」


「うん!」


「おっしゃ!」


「だから、チビにチビって言われたくないのだ!」


「…………何度やっても無駄」



呂布はそう呟くが、季衣と流琉は問答無用で左右から攻撃を仕掛ける。



「でええええいっ!」


「はあっ!」


「…………だから、無駄」



呂布は方天画戟を素早く振り、飛来してくる鉄球と鋼鉄のヨーヨーを弾き返す。



「そうかぁ? 背中ががら空き……」


「…………無駄」



背後から文醜が攻撃をしようとしたが、呂布は身体を反転させ、戟を横に振り、文醜を押し返す。



「……だああっ!」


「甘いのだ!」


「…………無駄」



続いて張飛が正面から高速の突きを放つが、呂布は赤子の手を捻るように、いとも簡単にそれを弾き返す。



「ひゃっ!」


「……くっ。やはり、関羽でも連れて来ねば足止めすら厳しいか……」



秋蘭が歯痒そうに呟いていたその時、一人の男が背後から一同に声をかける。



「無様だな……」


「ん……? なっ!? お前は……黒狼っ!?」



一同の視線の先には、魔王剣ディスキャリバーを手にした黒狼が佇んでいた。



「退け、貴様ら。呂布の相手は私がしてやる……」



黒狼は秋蘭達を押しのけ、呂布の前に対峙する。



「秋蘭様。あの人、誰ですか? なんか兄ちゃんと服装が似てますけど……」


「……あの男の名は黒狼。劉備の下に降り立った天の御遣いの一人……そして、かつて音無の師だった人物、だそうだ……」


「秋蘭様。あの人って、兄様より強いんですか?」


「音無の話によると、実力は音無よりも上だそうだが……」



秋蘭達は後方に下がり、呂布と対峙する黒狼を静かに見守る。



「久しぶりだな、呂布。……と言っても、貴様は憶えてはいないだろうがな……」


「…………?」



呂布は黒狼の言っている言葉の意味が理解できずに首を傾げる。



「フッ、理解する必要など無い。……呂布。悪いが少しの間、私の退屈しのぎに付き合ってもらうぞ……」



黒狼はそう言うや否や、周りからは消えたと思われるほどの凄まじい速度で呂布の懐に踏み込み、死をもたらす横薙ぎの一撃を呂布の首筋に目掛けて浴びせる。



「……くぅっ!」



素早く反応した呂布は、何とかその一撃を受け止めるが、あまりにも強力な一撃だったため、後ろに追いやられる。



「ほお……よく受け止めたな。褒めてやる……」


「なっ!? あの呂布を一撃で後ろに押しやるとはっ!」



秋蘭は驚愕する。自分達は先程まで手も足も出ない状況だったと言うのに、黒狼はいとも簡単に呂布を押し返したのだ。彼女の心に受けたその衝撃は計り知れないだろう。



「さあ、次は貴様の番だ。来い……」



黒狼は右手をだらりと下げ、左手を突き出し、手招きをして、かかって来るように呂布を挑発する。



「…………」



呂布は戟を肩に担ぎ、黙って黒狼を見据え、様子を伺う。



「どうした。来ないのか? それとも……私が怖いのか?」


「…………行く」



呂布はそう呟き、黒狼に勝るとも劣らない速度で懐に踏み込み、戟を振り下ろす。



「フッ……ふんっ!!」



しかし、瞬時に反応した黒狼は左手を突き出してその一撃をあっさりと受け止め、戟を掴み取る。



「あの一撃を素手で掴み取るだと!? 奴は本当に人間なのか!?」



またもや秋蘭は驚愕する。いま目の前で繰り広げられてる闘いは互角どころか黒狼の優勢に傾いてるのだ。この場に居る人間全員がこのような展開を予想する事など出来やしなかった。



「所詮この程度か……」


「…………」



呂布は黙ったまま戟を握っている右腕に力を込めるが、微動だにしない。



「これ以上は時間の無駄だな。終わりにさせてもらうぞ……」



黒狼は不意に戟を握り締めている左手で呂布を後ろに押し返し、その勢いでバランスを崩した呂布の腹に回し蹴りを叩き込み、数メートル後ろに呂布を蹴り飛ばした。



「くぅ……ぁ……っ!」



呂布は苦悶のうめき声を漏らしながら地面にうずくまる。

あまりにも一方的な展開の結果により、黒狼から興味心は完全に消え失せ、まるでその辺に転がってる小石を見るかのような視線を呂布に向ける。



「つまらん。退屈しのぎに来てやったというのに、とんだ期待外れだな……」


「…………まだ……やれる……」



呂布は何とかその場から立ち上がり、改めて黒狼に対峙する。



「ほお、まだ立つか。よほど痛い目に遭いたいらしいな……」


「…………」


「恋殿! 恋殿はいずこにっ!」


「…………ここ」


「おお、恋殿ー……!」



その場に緊迫した空気が張り詰めた矢先、馬に乗った陳宮が駆けつける。



「…………月は?」


「城は陥ち、月殿と詠殿は既にお逃げになりました。恋殿もお早くです!」


「…………霞は」


「霞殿と華雄殿は行方が知れません。けれど、あの二人の事ですからきっと無事でしょう。今は二人で逃げるのです!」


「おお、貴様ら! こんな所に居たか!」


「…………ちっ」



華雄がその場に現れ、陳宮は不満そうな顔で小さく舌打ちをする。



「どうした、陳宮」


「なんでもないのです」


「…………なら、行く」


「はいっ!」


「…………」



呂布は黒狼に警戒の眼差しを向ける。



「失せろ。もはや貴様に用は無い。それに、その方が他の連中はありがたいようだしな……」


「…………行こう」


「はっ」


「おう!」



呂布は陳宮と華雄を伴い、その場を走り去って行った。



「……世の中には、あんなに強い奴が居るんだなぁ……。ふー、びっくりした」


「休んでいる暇は無いぞ。呂布が居ない今、残りの勢力を一気に制圧する機会は今しかない!」


「あ、文ちゃーん」


「おお、斗詩~! あたいが心配で探しに来てくれたのかぁ!」


「違うよぅ。華雄さん、見なかった? 追いかけてきたんだけど……」


「かゆーなら呂布と逃げたのだ」


「呂布さんと? ……それは厳しいなぁ」


「ちょうど良い。貴公も文醜と、残る兵の制圧に戻ってくれ。呂布と合流した華雄を捕まえるのはもはや不可能だ」


「ですね……そうします。文ちゃん、戻ろ」


「おう! お前ら、それじゃな!」


「分かったのだ! 鈴々も戻るのだ!」


「もう来なくていいよ! ちびっこ!」


「季衣、いい加減にしなさいっ!」



未だに季衣は張飛の事をチビ呼ばわりするので、見かねた流琉が季衣をたしなめる。



「では、私も戻るか。もうここに用は無い……」



黒狼も踵を返し、ゆっくりとした足取りでその場から去って行った。



「…………」



秋蘭は呆然とした表情で黒狼を見送る。



「……秋蘭様、秋蘭様ってばっ!」


「あっ……あぁ、季衣、どうした?」


「どうしたじゃありませんよう。早くボク達も戻りましょうよ」


「ああ、そうだな」



季衣に声を掛けられ、現実に引き戻された秋蘭は季衣、流琉と共に残りの敵の制圧に戻るため足を進める。



(あの呂布が赤子同然の扱いとは……。黒狼……恐ろしい男だ……)



黒狼の闘いぶりを目の当たりにした秋蘭は、改めて黒狼の実力とその恐ろしさを実感した。


………


……



「でりゃああああああっ!」


「だああああああっ!」



裂帛の気合いと共に双方一歩も引かない様子でぶつかり合う春蘭と張遼。互いの得物の刃が激しく火花を散らす。



「ふふ……っ! 楽しいなぁ、やっぱ本気で戦える相手っちゅうのは、血が滾るわ!」


「うむ! 貴様ほどの使い手を制したとあらば、華琳様もお喜びくださるだろう! はーっはっはっは」



お互い命を懸けて闘っているにもかかわらず、まるで無邪気な子供のように楽しげな笑みを浮かべる。



「姉者!」


「おう、秋蘭か! 見よ、もうすぐ華琳様の御前にこ奴を連れて行けそうだぞ!」


「そうか。なら、周りの敵は私が対処しよう。姉者は張遼を頼む」


「応っ!」


「気を付けてな」


「……すまんな。待たせたか?」


「ええで。それよりアンタ、後どのぐらい闘えそうや?」


「ふんっ。貴様の倍は合数を重ねて見せるわ! そんな事は気にせず、かかって来い!」


「ええなぁ……それ、良すぎるわ……! なら、遠慮なく行くで!」


「おう! 来るなら来…………」



二人が改めて戦いを再開しようとしたその時、張遼の後方から空を斬る音が聞こえる。



「姉者っ!」


「……ぐ……っ!」



秋蘭が鋭く叫び、それと同時に一人の無粋な兵士が放った矢が春蘭の左眼に深々と突き刺さり、春蘭は苦悶の声を漏らしながら左眼を抑え、地面に片膝をつく。



「姉者っ! 姉者ぁっ!」


「…………ぐ……くぅぅ…っ!」


「ちょ……惇ちゃんっ!?」


「ぐ…………ああああああっ!」


「くっ、おのれぇぇっ!」


「ぐはっ!」



秋蘭は怒りを露わにしながら、春蘭に矢を射かけた兵士を一撃で射殺した。



「姉者! 大丈夫か、姉者っ!」


(く……っ。ここで張遼が号令を掛ければ、こちらの中衛は崩れ去ってしまう……。くそっ、こんな時に何を考えているのだ、私はっ!)


「くっそぉぉ……っ! 誰じゃあ! ウチの一騎打ちに水差しおったド阿呆ぅは! 出て来ぃ! ウチが叩き斬ったる!」


「しっかりしろ、姉者! 気を確かに持て!」


「ぐあああああああ……っ!」



春蘭は苦悶の叫び声を上げながら自身の左眼に刺さっている矢を無理やり引き抜いた。



「姉者っ!」


「夏侯惇っ!」


「……天よ! 地よ! そして全ての兵達よ! よく聞けぇい!」



春蘭はその身を奮い立たせ、その場から立ち上がり、矢を握りしめたまま声高らかに叫ぶ。



「我が精は父から、我が血は母から頂いたもの! そしてこの五体と魂、今は全て華琳様のもの! 断り無く捨てる訳にも、失う訳にもいかぬ! 我が左の眼……永久に我と共にあり!」


「夏侯惇…………!」


「んっ、んぐ……ぐっ……がは……っ!」



春蘭は矢に突き刺さっていた自分の目玉を喰らった。



「姉者! 大丈夫か、姉者!」


「……大事ない。取り乱すな、秋蘭。私がこうして立つ限り……戦線は崩れさせん」


「姉者……! せめて、これをその眼に……」



秋蘭はそう言って、蝶のデザインを模った眼帯を春蘭に手渡す。

それを受け取った春蘭は傷口の周りの血をぬぐい取り、左眼に眼帯をあてがう。



「うむ。……水を差されたが……待たせたな、張遼。さあ、一騎打ちの続きと行こうではないか」


「な…………」


「ん? 来んのなら、こっちから行くぞ?」


「なんや……アンタって奴は……。ええ、ええなぁ……最高や……。鬼気迫るっちゅうのは、そういうのを言うんやろうなぁ……! まさかあの世に逝く前に修羅と戦えるなんざ、思うてもみんかったわ!」


「御託はいらん! 来るなら来い!」


「おう! もう口上も戦場も関係ない! ウチはアンタと闘うために、ここにおる! 征くでぇっ!」



再び二人の得物が激しくぶつかり合い、火花を散らしだす。


………


……



「ここが城内ですか……」



零治を置いて一足先に宮城内に突入した亜弥は辺りを見渡しながら一人呟く。



「もうほとんど制圧も終わっとるなぁ……」



真桜が言うように、既に城内には他国の軍勢もかなり入り込んでおり、制圧もすでに終わっているに等しい状態だった。



「……ん? お前ら、まだこんな所に居たのか?」


「あ、隊長。ご無事でしたか」


「ああ、見ての通りピンピンしてるぞ」


「零治、随分と早かったですね」


「あんな正面から突っ込む事しか出来ない奴の相手なんか最後までしていられるか。武器を使えなくして速攻で終わらせてやったわ。それより董卓は居たのか?」


「いえ、それらしき人物はどこにも……」


「あ、隊長。あそこに誰か居るのー」



沙和が指差すその先に居た人物は……。



「……ひゃあっ!」


「きゃっ!」



コソコソと隠れるように城から逃げ出そうとしていた董卓と賈駆であった。

二人は逃げ出すのに夢中で零治達の存在に気付かずに、うっかり鉢合わせしてしまった。



「だ、誰っ!?」


「うぅ……」



賈駆は警戒しながら鋭く叫び、董卓は怯えきった様子で賈駆の背に隠れながら小さく呻き声を上げる。



「どうしたのー? そんなに怯えて」



沙和が二人から事情を聴こうと優しく話しかける。

賈駆は恐る恐るの口調で尋ねる。



「アンタ達……連合軍なの?」


「詠ちゃん……」


(二人のこの反応……それにこの少女、随分と上等な衣装を身に付けているな。という事は……)


「あれ? みんな、どうかしたの?」



零治が思案していた時、劉備がその場に現れ、零治達に話しかけてきた。



「ああ、劉備」


「…………」



亜弥は劉備に対して普通に挨拶をするが、零治は黙ったまま横目で劉備に視線を向けている。



「えっと……神威さん達、こんな所で何をしてるんですか?」



劉備はあの出来事以来、零治とは気まずい仲になっているので、比較的話しやすい亜弥に話しかける。



「えーっと……ですね……」


「どうもこの二人、董卓に仕えていた侍女か何からしくてな、城が無くなって居場所が無いようでな。ウチでは引き取る事も出来ないだろうから、どうしたものかと思ってな」


「えっ? 零治、彼女達そんな事は一言も……」


「シッ! いいから黙ってろ……」


「そうなんですか。なら、私達が預かりましょうか?」


「頼めるか?」


「はい。ウチも人手が足りてませんし、曹操さんには兵士も貸してもらったし。みんなに相談してみます」


「……だそうだが、二人ともそういう事で構わないか?」



零治は視線を董卓と賈駆に移し、尋ねる。



「は……はい……」


「そういう事なら……」


「じゃ、こっちだよ。私について来てね♪」



劉備は董卓と賈駆の二人を連れて、その場を後にする。

当然ながら、彼女は二人の正体には気付いていない。



「零治、いいんですか?」


「何がだ?」


「あの二人の事ですよ。彼女達、どう見ても侍女って感じじゃなかったじゃないですか」


「ああ。メガネをかけてた方は恐らく文官か何かだろうな。そして、もう一方の少女……かなり上等な衣装を着ていたから……恐らくアレが董卓だろうな」


「やっぱり気付いていたんですね。何だってこんな事を?」


「ただの気まぐれだ……」


「やれやれ。もしこの事が華琳にばれたら、何て言い訳をするつもりですか……?」


「董卓については顔も知られてないんだ。黙ってりゃ分かりゃしねぇよ。……言っとくが、お前も共犯だからな」


「はいはい……」


「あっ、兄さん。来ていたんですね」


「おお、奈々瑠か。どうした?」


「兄さん、城内の制圧はほぼ完了です。後は外の残党を制圧するだけですよ」


「分かった。なら、外の連中と合流するとしよう」



零治達はその場の仕事は兵達に任せ、その場を後にした。


………


……



「あーあ。負けてもうた」



張遼は地面に身を投げ出し、空を眺めながら悔しそうに呟く。



「ふっ……なかなか良い闘いだったぞ、張遼」


「ウチも最高やったわぁ。生きとるうちにこんな勝負が出来るなんて、思いもせんかったで。……もう悔いは無いわ……さ、殺しぃ」


「何を馬鹿な事を……。貴様にはこれから、華琳様に会ってもらわねばならんのだ」


「曹操に? 何でぇよ?」


「華琳様が貴様の事を欲しているのだ。故に私は貴様と闘い、こうして倒してみせた。……ここで死なれては私が困る」


「…………」


「張遼……我が主、華琳様に降れ」


「……ええよ、降ったる。アンタほどの鬼神がそこまで忠誠を誓う主……。こないだはロクな挨拶も出来ひんかったしな。どんな奴やったんか、興味あるわ」


「ふっ。面白い奴だ」


「アンタほどやないで」


「……ぐっ」



と、その時、とうとう限界が来てしまったのか、春蘭はそのまま地面に倒れこみ意識を失った。



「姉者!」


「ああもう! あないな無茶するからや! 曹操に会う前にアンタの傷の手当てや。夏侯淵、このアホ、後方に連れてくで!」


「うむ!」


………


……



それから、あの激しい戦いから一夜が明けて―――――



「もう復興が始まってるのか……」


「随分早いんですね。もう少し後になると思っていたんですが」



既に華琳は城内に兵を入れ、道路や倒壊した建物の片づけをさせ、周りからはトンカチで釘を打つ小気味の良い音が響いていた。



「ええ。陛下の側近に繋がりがあってね。そちらから既に許可は貰ってあるわ」


「……また桂花か?」


「またとか言わないでよ!」


「いいえ。個人的な繋がりよ」


「ふぅん……」


「……気になる?」


「別に。聞いたって分かりゃしないだろうし……」


「あ、そう」


「あーっ! 居たのじゃ麗羽!」


「見つけましたわっ! 華琳さん!」


「……またうるさいのが」



その場に現れた袁紹と袁術を見た華琳は、心底ウンザリした顔になる。



「あ、いっちー! 元気ー?」


「おー。きょっちーも流琉も元気そうで何よりだ」


「こんにちわ、音無さん、神威さん」


「こんにちわ。……二人とも、無事だったようですね。季衣達と一緒に呂布と闘ったと聞いたので、結構心配してたんですよ」


「そんな事より、何ですの、この工事は! またわたくし達に無断で……!」



袁紹は周りの事などお構いなしに、ヒステリックな叫び声を上げるが、華琳は涼しい顔で返す。



「大長秋を経由して、陛下の許可は頂いてある。問題があるようなら、確認してもらって構わないけれど?」


「な…………っ! 大長秋……!?」


「何でお主のような奴が大長秋と繋がりを持っておるのじゃ!」


「私の祖父が何代か前の大長秋だったのよ」


「ずるいのじゃ! それを言ったら、妾達とて三公を輩出した名門袁家の出身じゃぞ!」


「く~……っ! 点数稼ぎも良い所ですわ!」


「機を見て敏なりと言うでしょう。動きが遅い方が悪いのよ」



華琳は袁紹と袁術の文句を涼しげな顔で受け流す。



「亜弥、大長秋って何の事だ?」


「皇后府を取り仕切る宦官の最高位の事ですよ。華琳……曹操の祖父が任じられてた事は結構有名な話ですよ。名前は確か……曹騰でしたかな」


「なるほど。それで個人的な繋がりか……」


「ええい、猪々子さん、斗詩さん! こんな所に居る場合ではありませんわっ! 行きますわよっ!」


「木を見て瓶なのじゃ!」


「ひゃっ、ちょっと、麗羽様ー!」


「きゃーっ! 引っ張らないでー!」


「華琳さんっ!」


「……ん?」


「この、タマ無しーっ!」


「…………」



袁紹はとんでもない内容の捨てセリフを吐き捨て、袁術、文醜、顔良を連れてその場を立ち去って行った。

そのセリフを聞いた華琳は唖然としてしまう。



「…………そりゃ、玉は無いでしょうよ」


「ってか、女性が玉とか言っちゃダメでしょう……」


「……何だったんだよ、アイツらは」


「さあ? ……あら?」


「どうした?」



不意に華琳の視線が、近くで炊き出しをしている人物に止まる。

その視線が気になり、季衣と流琉がその視線の先を追う。



「あれ……?」


「あっ! ちびっこ!」



視線の先で炊き出しをしていたのは、劉備、関羽、張飛、一刀の四人であった。



「はいっ! まだありますから、慌てないでいいですよー!」


「愛紗ー! ご飯、足りないのだ! もっと持ってきてほしいのだ!」


「鈴々! お前、よもや自分で食べているのではないだろうなっ!」


「ほら二人とも、ケンカしてる場合じゃないよ! ちゃんと手伝ってよぅ!」


「桃香! 追加の分、持ってきたぞ!」


「ありがとう、ご主人様! それはそこに置いといてね!」


「あいよ!」


「桃香様……。これ、ここで……いいですか?」


「うん。そこに置いといて!」


「月、せーので置くわよ! せーの!」


「えいっ!」



そして、そこには劉備によって保護された、董卓と賈駆の姿もあった。



「……ああ、劉備達か」


「彼女達も早いうちから城に入っていたと聞いたけれど……あの関雲長が炊き出しとはね。……けれど、何をおいてもまずは民のため……か」


「それはお前も一緒だろ? 公共の道や橋を優先的に直させてるの、知ってるぜ?」


「…………」


「あ、華琳様、照れてるー!」


「……うるさいわね」



季衣に指摘され、華琳はプイッとそっぽを向いた。



「けれど、劉備か……。その名、心の留めておきましょう。桂花、劉備にこちらの予備の糧食を届けるよう手配しておきなさい」


「それは構いませんが……華琳様。あの劉備という輩、いずれ華琳様の覇業の障害に……」


「……でしょうね。けれど、その時は正面から叩き潰せば良いだけよ。違うかしら?」


「……御意」


「ここにいらっしゃいましたか。華琳様」


「あ、秋蘭様!」


「言われた通り、ちゃんと護衛は付けているわよ。文句は無いでしょう?」


「それは構わないのですが……」


「どうだった? 事後処理とやらは終わったの?」


「はい。それから華琳様に会わせたい輩が……」


「…………どもー」



秋蘭に促され、張遼が一同に小さく挨拶する。

張遼の姿を確認した華琳は満足げに頷く。



「そう、春蘭は見事に役目を果たしたのね。それで、春蘭はどうしたの?」


「それが……」



秋蘭が言葉を濁すので、華琳の表情は青ざめる。



「まさか……冗談、よね?」


「ご心配なく、至極元気です。……が、華琳様にはもはや顔を見せる訳にはいかないと」


「どうしたのっ!?」


「少々、怪我をしまして……。命に別状はないのですが……」


「っ!」



華琳は脇目も振らずにその場から走り出した。



「華琳様! 姉者は本陣の救護室におります!」


「分かったわ!」



その返事は既に通りの角の向こうから。華琳の小さな後ろ姿はあっという間に見えなくなってしまった。



「うぅ……」


「よく我慢したな、季衣」


「季衣、後でみんなでお見舞いに行こうね」


「……うん。いま春蘭様に一番会いたいのは華琳様だもんね……」


「秋蘭。春蘭は本当に大丈夫なんですか?」


「それは大事ない。無傷とは言わんが、あれで怪我人と言っては、怪我人に失礼だろう」


「…………」


「すまんな、霞。華琳様にはまた後で……どうした?」



周りの会話をよそに、張遼は呆気にとられた様子で、ある方向に視線が釘付けになっている。

その視線の先に居たのは……。



「詠ちゃーん!」


「ほら月、遅いわよ!」


「詠ちゃん、こっちだよー。道、違うー!」


「え、ちょっと、それを先に言いなさいよ!」


「…………」



張遼は、董卓と賈駆の無事な姿を確認する事が出来て、思わず瞳を潤ませる。



「張遼、どうかしたのか?」


「いや、何でもない。ちょっと眼にゴミが入ったみたいや……」


「……そうか。なら、オレ達も本陣に戻ろうぜ」



零治は張遼の心中を察したのか、深くは聞かず、周りに本陣に戻るように声をかけ、足を進めだした。



(良かったな、月、賈駆っち。なんや、ええ居場所があったみたいで……)


………


……



「あ、華琳様ー。どうかしたのー?」



本陣の救護所で救護班を務めている沙和が慌ててる様子で駆けつけてきた華琳の姿を確認し、声をかける。



「沙和! 春蘭はどこ!」


「はい。春蘭様なら、そこの寝台に……あれ?」



だが、その寝台に春蘭の姿は無かった。



「春蘭っ!」


「あ……っ!」



華琳が来るのを察知したのだろうか、春蘭はこっそりと本陣から抜け出そうとしていたが、すぐに華琳に見つかってしまい、春蘭は逃げるようにその場から走り出し、華琳も大急ぎで後を追う。



「ちょっと、待ちなさいっ!」


「待てませぬっ!」


「待ちなさいと言っているのが、聞こえないの!」


「華琳様のご命令とはいえ、それだけは聞けませんっ!」


「ええい、この子ったら!」



問答しながらも追いついた華琳は背後から春蘭の手を掴み、そのままグイッと引っ張って春蘭を引き倒し、尻もちをつくように転んだ春蘭の正面に回り込み、その顔を確認する。



「…………」


「…………その眼はどうしたの」


「張遼さんと闘った時に、流れ矢に当たったの」


「おいこら、沙和っ! それは内緒だと……!」


「あー……あははー♪」



とはいえ、もう喋ってしまったのでどうしようもない。とりあえず沙和は笑ってごまかす。



「そう。流れ矢に当たって……」


「申し訳ありません……。このような醜い姿……もはや、華琳様に会わせる顔がありません」


「どこを失ったというの? 失ったものなど、何も無いでしょう? いつもの春蘭と変わりないわ」


「しかし、この左眼は……!」


「その瞳は私への忠誠の証として捧げてくれたもの。春蘭の体は春蘭の物でも、春蘭の左眼と心は、ずっと私のものよ」



華琳は慈愛の満ちた笑みを浮かべながら、優しく春蘭の頬を撫でる。



「華琳様……っ! う……うぅ…………っ!」



春蘭の残った右眼から、ぽろぽろと涙が溢れ出てくる。



「よくやってくれたわね、春蘭。これからも私の剣となって戦ってちょうだい……」


「うわあああああああんっ!」



春蘭は華琳に抱きつきながら子供の様に泣きじゃくった。



「…………」



沙和はしばらく二人だけにしてやろうと気遣ったのか、無言でその場から立ち去って行った。

しばらく歩いて、救護所に向かっていた零治達と鉢合わせする。



「ん? どうしたんだ、沙和。お前、救護所に居たんじゃなかったのか?」


「なんだか、お邪魔みたいだから出て来たの」


「そうか。なら、オレ達ももうしばらく後にしてからの方がよさそうだな」


「……ええ主やな。アンタらの主は」


「ああ。で、逃げないのか? 霞」



秋蘭の言葉に張遼は首を横に振り、ニッと笑ってみせて答える。



「ンな必要あるかい。あの主なら、色々楽しませてもらえそうや。色々肩の荷も下りたし、当分世話ンなるで。よろしゅうな!」



こうして、大陸の諸侯達を巻き込んだ反董卓連合の戦いは終わりを告げた。


………


……



洛陽を立ち去り、自分の領地の帰路についてる劉備軍陣営達。

黒狼は一人思案を巡らせている。



(ようやく下らん戦いも幕を下ろしたか。これでようやく私も本格的に動く事が……ん……?)



黒狼の視線が街道の脇に生い茂っている森に止まり、黒狼は不意に足を止める。



「…………」


「黒狼さん、どうかしたんですか?」



気になった劉備が話しかけ、黒狼は目の前の森を睨み付けたまま口を開く。



「劉備、すまんがあの森を少々調べたい」


「え? 森を……ですか?」


「心配はいらん。時間は取らせん」


「分かりました」


「すまんな。……金狼、銀狼、貴様らも来い」


「はいはい……」


「ケッ! メンドくせぇなぁ……」



二人は不満げながらも黒狼の言葉に従い、彼の後に続き、茂みの中に足を踏み入れて行った。



「…………」



黒狼は終始無言のまま草木が生い茂っている獣道をズンズンと歩いていく。



「おい、黒狼。こんな森の中に一体何の用が有るって言うんだよ?」


「貴様がそれを知る必要は無い」


「何だよそりゃ……」


「いいから黙って歩け」


「やれやれ。相変わらずアンタの考えは理解できないよ」


「理解する必要は無い。貴様らは私の命令に従っていればいいんだ……」


「まったく、人使いの荒い上官殿だね」


「無駄口を叩くな」



金狼と銀狼は黒狼の行動を疑問に思いながらも彼の後に続き、しばらくの間足を進める。

やがて小川が流れている開けた場所に出ると、そこにはあまりにも場違いな物が存在していた。それは……。



「おい、これって……」


「ああ。戦闘獣人バイオロイドの培養カプセルだね。しかもこれ、戦闘獣人の開発区画ではなく、神器が封印されていた地下区画に有った物だね。何でこんな物がこんな場所に? ひょっとしてあの時の転移現象にコイツも巻き込まれたのかな? でも、あの現象が発生したのは最上階の制御室内だったから、地下にあったはずのコレが転移するはずが……」


「この際そんな事はどうでもいい事だ。銀狼、貴様は劉備の所に戻ってここに兵を何人か連れて来い。それと荷車も持ってこさせろ」


「ああ? 何でだよ?」


「コイツを回収するためだ。早くしろ。それとも、ここで私と邪魔な草木の除去がしたいのか?」


「チッ、分かったよ……」



銀狼は不満げに舌打ちをして、来た道を戻っていった。



「黒狼、荷車って……まさかカプセルごと回収するつもりなの?」


「そうだが?」


「それは無理なんじゃない。この世界の荷車が、こんな機械の塊の重量に耐えられるとはとても思えないんだけど……」


「その時は物質変換魔法で荷車を頑丈な物に創り変えて強化すればいい。それより金狼、貴様は私と一緒に邪魔な草木の除去を行え」


「はいはい」



二人はカプセルの周りに茂っている邪魔な草木を、自らの神器で切り払い始める。



「それにしても、よくこれがココに有るのが分かったね、黒狼。一体どうやって察知したんだい?」


「ただの勘だ……」


「ふーん……。ん……?」



不意に金狼の視線が、カプセルの底の両脇に取り付けられてる、ある物に止まる。



「どうした?」


「黒狼、このカプセルの脇に取り付けられてる、この手甲と具足って……神器だよね?」



金狼が指差してる、狼の頭部を模った白銀の手甲と、狼の後ろ足を模った白銀の具足は陽光を反射させながら煌いている。



「ああ、そうだな」


「でも変だな。確か戦闘獣人って、神器は使えないように調整されていたはずじゃあ……」


「量産型はな。だが、コイツは例外だ……」


「例外?」


「コイツは現存する戦闘獣人の原点……つまり、プロトタイプだ」


「プロトタイプ!? コイツがっ!?」



金狼が珍しく驚きの表情を浮かべ、声を張り上げ、カプセルに視線を向ける。



「何をそんなに驚いているのだ? 量産型が存在しているのなら、試作型が存在しているのは当然だろう?」


「いや、確かにそうだけど……現存してるなんて普通は思わないだろう? プロトタイプなんて、とっくの昔に破棄されているものだとばかり思っていたから……」


「まあ、確かにそうだな。……それより無駄話はココまでだ。早いとこ作業を終わらせるぞ」


「ああ」



二人は黙々と草木の除去作業に専念する。その時、黒狼がカプセルのすぐそばに無造作に落ちていた辞書並みの厚さがある一冊の本を見つけ、拾い上げる。



「ん? これは……」


「どうしたんだい?」


「いや、何でもない……」


「そう」



金狼は視線を黒狼から周囲の藪に戻して草木の除去を再開する。

それを確認した黒狼は拾い上げた本にもう一度視線を向ける。

その本の表紙は血のように真っ赤で禍々しい雰囲気を放っており、中央には黒字で題名と思われる奇妙な形の文字が書き込まれており、その周囲には同じく黒字で魔方陣やら何やら模様みたいな形をした何かがびっしりと書き込まれていた。



(これは……魔導書だな。しかもこれは……フッ、丁度いい。保険としてこれも一緒に回収しておくとしよう)



黒狼はコートの下に、血のように真っ赤な表紙の禍々しい雰囲気のある魔導書を仕舞い込んだ。



「黒狼、銀狼が戻ってきたよ」


「ああ」


「ったく、こんな面倒事はこれっきりにしてくれよな」


(クックック。これでこの外史の下らん茶番劇にも、少しは楽しい演出が加えられるというものだ。影狼、これから先に待ち受ける血みどろの殺し合いを、共に楽しもうではないか……)



黒狼はその場に居る者全員を震え上がらせるような冷たい笑みを浮かべながら、この先に待ち受ける零治達との戦いに胸を躍らせていた。

零治「おい。ここは変わってないがまたオリキャラが増えてるじゃないか」


作者「何か問題でも? オリキャラが少なすぎてもつまらんだろ」


亜弥「それは分からなくはありませんよ。私達が言いたいのはちゃんと収拾がつけれるのかって意味です」


奈々瑠「その通りです。面白みを出すために風呂敷を広げるのは大いに結構です」


臥々瑠「だけど広げっぱなしは良くないよ。広げた以上はちゃんと畳まなきゃいけないんだから」


作者「分かってるさ。ちゃんとその辺は考えてるって」


零治「本当にか……?」


作者「何でそんなに疑うんだよ?」


亜弥「それは貴方の日頃の行いのせいでしょうが……」


作者「生みの親に対してなんて失礼な連中だ! お前らの存在を作品内から抹消するぞ!」


奈々瑠「そんな事したらこの作品、終わっちゃいますよ……」


臥々瑠「ねぇ~」

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