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第23話 新たな動乱の兆し

いよいよ反董卓連合の話の開始です。

そして登場人物の大幅な増加。あぁ、これで文章が更に長くなる。

「ん? 何だ、この調子外れの鼻歌は? ……あれは、季衣か?」



零治は中庭に設けられてる東屋で上機嫌な季衣を見つけ、話しかける。



「季衣、何をしてるんだ?」


「あ、兄ちゃん。へへー。手紙を書いてるんだー」


「手紙? ああ、そういえば、黄巾党との戦いがようやく片付いたから、手紙も出せるようになったんだったな」


「ねえ、兄ちゃん。たのしみにしてるって、どう書くんだっけ?」


「筆を貸してみろ……それは、こう書くんだ」



零治は季衣から筆を受け取り、使ってない紙に手本を書いて見せる。



「あ、そっかぁ。ありがと、兄ちゃん」


「どういたしまして」


「あら、二人で何をしてるの?」


「ん? ああ、華琳か。何、季衣に手紙の書き方を教えていただけさ」


「手紙? 相手に証拠にされない、正しい脅迫文の書き方とか?」


「んな事するかよ……」


「ふふっ。冗談よ」


「ったく……。しかし、季衣は秋蘭について、もう少し物事を学んだ方がいいんじゃないか?」


「えー。ボク、勉強苦手だし……。体を動かしてる方が楽しいから、そっちを勉強するんじゃダメ?」



季衣は苦笑いしながら言う。もっぱら体育会系の季衣は積極的に勉強をしたくはないようだ。



「好きな事を学ぶのは勉強とは言わないわ。知らないと困る事や立場が悪くなる事くらい、学んでおいても損は無くてよ?」


「そうだな。例えば……饅頭を山ほど買った時、どれぐら小遣いが残るかは……計算できた方がいいだろう?」


「うぅぅ……。それは、確かに……」


「おいおい。いくらなんでも悩みすぎだぞ……って、聞いちゃいないな。……ところで華琳。その後、都とかでは何事も無いのか?」


「あら、急にそんな事を訊いて、どうしたの?」


「いや、市井は最近は平和だが、ここまで国が腐敗してるとな……何事も無いとは思えんのでな」


「……何進が殺されたそうよ」



零治の問いに、華琳は表情に影を落として答える。



「そうか。やはり権力争いが……?」


「ええ。肉屋のせがれが権勢を振るうのを……面白く思わなかった連中が居たんでしょうね」


「そういう所はやはりどこも変わらんか……。で、今有力なのは誰だ?」


「何でも……董卓とか言うらしいわ」


(……董卓って、あの董卓だよなぁ……? だが、この世界の董卓ってどんな奴なんだ? 張角はあんな奴だったし……正直想像もつかんな)


「……何を変な顔をしてるのよ?」


「別にしてるつもりは無いが……華琳はその董卓って奴の事は?」


「初めて聞く名よ。桂花や秋蘭達も知らないそうだし、張三姉妹も戦っていた将の中に、そんな名前は聞いた事が無いって言っていたわ」


「そうか」


「このあいだ都から戻った間諜も、董卓の正体は不明と言っていたし……恐らく、誰かの傀儡なのでしょうけれどね」


「……傀儡政権か。そういった事がまかり通るのが今の都の現実とは言え……反吐が出るな。遅かれ早かれ、いずれはこっちにもとばっちりは来るだろうな」


「ええ、間違いなくね。零治もその時のために、しっかりと心構えはしておきなさいね」


「分かってる。そのための軍備強化なんだろ?」


「そういう事」


「出来た! 華琳様、兄ちゃん! ボク、ちょっと手紙を出しに行ってくるよ! あっちに行く隊商、昼過ぎに出ちゃうって言ってたし!」


「ええ、行ってらっしゃい」


「気を付けてな」


「うん!」



それまで一人黙々と手紙を書き続けてた季衣は出来上がった手紙を片手に、バタバタと賑やかな足音を立てながら走り去って行った。



(この様子じゃ、もうじき戦いが始まるとは思えんが……嵐の前の静けさというやつか……)


………


……



それから数日後の昼下がり、街中にて。



「…………」


「んー、本日も異常は無し、ですね」


「ああ」



零治と亜弥はいつものように街の巡回をしていた。



「…………」


「……そんな難しい顔をしてどうしたんです?」


「ん? ああ、董卓の事を考えててな」


「あぁ……」


「お前はどう思う?」


「ま、遅かれ早かれ、いずれ反董卓連合軍が結成されるのは間違いないでしょうね」


「だが、史実だと連合の董卓討伐は失敗に終わったんだろう?」


「ええ。それどころか、連合自体も内部分裂が原因で自然と解散しちゃいましたからね」


「…………」


「まあ、こっちじゃそうなるとは限らないでしょう? 私達の世界の歴史の記録があまり当てにならない事は黄巾党の件で証明されたじゃないですか」


「そうだな」


「あのぉ……すいません」



二人が会話をしてる時、黒髪のおカッパ頭の女性が話しかけてきた。



「はい、何でしょう?」


「すみません。ちょっと教えてほしい事があるんですけどぉ……」


「どうした? 道に迷ったのか? それとも盗難か?」


「えっと、お城……」


「の前に、美味しい料理食べさせてくれる所、教えてくれよ!」



黒髪の女性が城と言いかけた時、連れの緑がかったボサついた頭髪のボーイッシュな女性が会話に割り込んでくる。



「ちょっ! 文ちゃぁん!」


「いいじゃんか。あんなバカでかいもん、別に逃げやしないんだし。それより斗詩ぃ、あたい、お腹空いたよー! お腹空いた、お腹空いたー!」


「うー。まったくもぅ、しょうがないなぁ……」


「で、結局どこに案内すればいいんだ?」


「なら、何か美味しい物を食べさせてくれる……」


「料理屋がたくさん並んでる所、どこ!」


「あー、料理街ですね。向こうに屋台通りが有るので……そこでいいですか?」


「おお! 姉ちゃん、気が利いてるじゃんか!」


「では、こちらへどうぞ」



零治達は二人の女性を屋台通りに案内するため、そちらに足を進めだした。


………


……



「おおおーっ! 斗詩、見ろよ! すげー! 屋台がたくさんある!」



文ちゃんと呼ばれてる女性は目の前に並ぶ屋台通りを見て、眼をキラキラと輝かせながら興奮する。



「そりゃ、屋台通りって言うくらいだし……」


「じゃ、オレ達はこの辺で……」


「何だよ二人とも、アンタ達も食べていきなよー。どうせ昼飯、まだなんだろ?」


「え? まあ、確かに昼時ではありますが」


「ちょっと、文ちゃん。悪いよ」


「気にすんなって。旅費なら麗羽様からたっぷり貰ってるんだし!」


「まあ、そりゃそうだけど……」


「それより何か? あたいの奢りが、食べられないって言うつもりかい?」


「いや、そういうわけじゃ……」


「なら決まり! 兄ちゃん、姉ちゃん、どっかオススメの店、教えてくれよ!」


「オススメの店ねぇ……亜弥、知ってるか?」


「いや、私はそこまで詳しくは……。うーん、こんな時、季衣が居てくれればいいんですが……」


「あ、兄ちゃーん! 姉ちゃーん!」



そこへ絶妙なタイミングで季衣が走りながら零治達の所にやって来る。



「お、季衣、丁度いい所に来てくれた」


「にゃ?」


「季衣、貴方この辺りの店には詳しいですか?」


「この辺り? 任せてよー!」


「ん? このちびっ子、詳しいのか?」


「ちょっと文ちゃん、失礼だよぅ……」


「……兄ちゃん。誰、このぼさぼさ」



季衣はちびっ子呼ばわりされたせいでか、むっとした顔で言う。



「…………ぼさぼさ……」


「季衣、初対面の人にそんな事言ったらダメですよ。失礼じゃないですか」


「うー」


「文ちゃんも落ち着いてってば」


「むぅぅ……」



季衣と文ちゃんと呼ばれてる女性は唸り声を上げながら睨み合う。



「あー、彼女はこの辺の料理屋には非常に詳しいから、良い店を教えてくれるはずだぞ」


「兄ちゃん。凄く棒読みだよ」


「へぇぇ……。良かったね、文ちゃん」


「……ふぅん。こんなちびっ子が詳しいのかねぇ」


「この街に来たばかりのぼさぼさよりは、詳しいと思うけどねー」


「なんだとぅ……!」


「なんだよぅ……!」


「ああもう、二人とも喧嘩はしないで……」


「ふー…………」


「むー…………」



季衣と文ちゃんは、今にも取っ組み合いをしかねない勢いで、鼻息を荒くしながら睨み合う。



「はぁ……。とにかくその店に行こうぜ。季衣、案内してくれ」


「いいよ! そっちのぼさぼさに、絶対美味しいって言わせてやるんだから!」


「へっ。あたいの舌は厳しいぜ? ちびっ子程度の選んだ店で、そうそう旨いなんて言わないっての」


「はぁ……どうしてこうなったんだ……」



零治は顔を右手で覆い、俯きながら季衣の案内に続く。そして、店に到着して食事を始めるのだが。



「旨いっ!」


(……舌は厳しいんじゃなかったのかよ)


「うお……こんな旨いの食べた事無いぜ! 斗詩も食ってみろ! びっくりするほど旨いから!」


「もう食べてるよぅ……」


「へぇぇ……お姉ちゃん、いい食べっぷりだねぇ」


「そういうお前もなかなかじゃん。見直したぜ!」


「……おい。人の皿に手を着けようとするな」



零治は、季衣と文ちゃんが自分の料理の皿に手を出そうとしたので、それを自分の箸で阻む。



「あ、ばれた?」


「何だよ兄ちゃん。食わないんなら別にいいだろぉ?」


「誰も食わないとは言ってない」


「ちぇー、ケチだなぁ……」


「とか言いながら、今度は私の皿に箸を着けようとしないでください」


「むぅぅ……こっちもダメか……」


「そんなに食い足りないんなら追加を頼めばいいだろう。金は持ってるんだろ?」


「そうだよ、文ちゃん……って、私の分まで取ろうとしないでよぅ!」


「ああもう、分かったよ。お姉さん、おかわりー!」


「ボクもおかわりー!」


「はいはい! すぐ持ってきまーす!」



季衣と同年代ぐらいの緑色の髪をした給仕の少女が慌ただしく動きながら言う。



「……まるで季衣が二人居るみたいだぜ」


「……私も、文ちゃんが二人居るみたいに見えます」


「それにしても、これ旨いなぁ。南皮でもこんな旨い店、なかなか無いぜ?」


「うーん。なんかこの味、どこかで食べた気がするんだよなぁ……こんな美味しいお店の味、ボクが忘れるはずないんだけど……」


「え? 季衣、この店は行きつけじゃないんですか?」


「違うよ。秋蘭様が美味しいって教えてくれたから初めて食べに来てみたの」


(……なんというチャレンジ精神だ)


「……何だお前。まさか、そんな店でこのあたいと勝負しようと思ったのか?」


(おいおい。食事の場で喧嘩は勘弁してくれよ……?)



零治は二人が喧嘩を始めるのではないかと内心不安に思ったが、文ちゃんの口から予想外の言葉が出て来た。



「気に入ったっ! そのイチかバチかの勝負度胸、ちっこいのに大したもんだっ! あたいの事、猪々子って呼んでいいぜ!」


「おーっ! なら、ボクの事も季衣って呼んでいいよ! いっちー!」


「はっ? ……いっちー?」



亜弥が首を傾げる。



「いっちーか! いいなぁ、気に入った! 今日はいい日だ! すっげーいい日だっ!」


「なあ、あれは……真名か?」


「……はい。真名です」



斗詩は苦笑交じりの呆れ顔で答える。



「真名ってそんな軽々しく呼ばせていいモノでしたっけ?」


「軽くなんかないっ! あたいが、いっちーの事を認めた……って、あれ?」


「二人ともいっちーじゃ呼びにくいねぇ。ならボクは、きょっちーでいいよ」


「……許緒だからきょっちーかよ」


「……直球過ぎでしょう」


「おお、きょっちー!」


「いっちー!」



出会った当初の険悪な仲が嘘のように、二人はすっかり意気投合してる様子。

そこへ、先程の給仕の少女が追加の料理を零治達の居るテーブルに運んでくる。



「はい大皿、これとこれとこれ……追加ですー!」


「ご飯おかわり!」


「こっちもおかわり!」


「は、はぁいっ!」


「……忙しそうですね、あの子」


「そりゃこんなのが二人も居たらな……。で、君らはこの街に何をしにきたんだ? さっき城と言いかけたから、城に用があるんだろうが……」


「そうなんです。ええっと、ですね……」



と、そこへ。



「失礼する」


「ん? おお、華琳に秋蘭」


「あら。零治達も来ていたの。……そちらは?」


「旨い料理屋を案内してくれって頼まれたんで案内したら、なぜかこんな事にな……」


「お二人にはお世話になっていますー」



斗詩はぺこりと、丁寧に華琳にお辞儀をする。



「ふぅん……若い女の子には優しいのね、零治」


「いや、仕事でやってるだけで……」


「…………」



零治はそう言うのだが、華琳は無言で意味深な視線を向け続ける。



「…………」


「…………」



斗詩と猪々子はその視線から何かを感じ取ったのか、表情を強張らせながら無言で零治を見る。



「二人とも、誤解だからな。……亜弥、お前からも言ってくれよ」


「…………」


「黙るなよ」


「あ、いらっしゃいませ! 曹操様、夏侯淵様、今日もいつものでよろしいですか?」


「っ!」


「……?」



華琳達の名を聞いて、斗詩の顔色が変わるが猪々子は何の事か分かっていない様子だ。



「ええ。お願いするわ」


「私も同じもので」


「はいっ。すぐお持ちしますねー!」



給仕の少女は注文を受け、大急ぎで裏の厨房に駆け込んでいく。



「おや? 二人はよくこの店に来るんですか?」


「ええ。まだ若いのに、大した腕の料理人よ。お抱えで欲しいくらいなのだけれど……」


「ふーん……」



零治は頬杖をつきながら厨房の方を見つめる。



「あら。対抗意識でもあるのかしら?」


「んなもん無ぇよ。オレの料理は、あくまで趣味の域なんでな」


「やれやれ。つまらない男ね……」


「ほっとけ……。で、お抱えの話はどうした? 断られたのか?」


「ええ。親友に呼ばれてこの街に来たのだけれど、結局合流出来なかったらしいのよ。それで、手掛かりが見つかるまでここで働いてるんですって」


「やれやれ。では、オレ達が一肌脱いでやるかね」


「ええ。人捜しも私達の仕事ですからね」


「ふふ。分かってるじゃない」


「はいっ。お待たせしましたー!」



しばらくして、給仕の少女が華琳と秋蘭の席に二人分の料理を運んでくる。



「失礼、お嬢さん」


「はい? ご注文ですか?」


「彼らが貴方の親友を捜してくれるそうよ。良かったら、特徴を言ってみてはどうかしら」


「本当ですか?」


「そういうのがオレ達の仕事だからな。その子も料理人か?」


「いえ、食べる方は大好きなんですけど……料理はさっぱりなんです。ただ、私を呼んでくれたっていう事は、料理屋で働いてるんじゃないかな……と」


「手紙に仕事の内容とかは書いてなかったんですか?」


「住み込みのいい仕事が見つかったから、来いとだけしか……ただ、私が呼ばれるくらいですから、彼女も食堂の給仕か、力仕事の裏方をしているのかと。力には自信のある子なので」


(……そんな内容で呼ぶ方も問題だが、来る方もどうかと思うぞ)


「ふーむ。食べるのが大好きで、力持ちの子、ですか……」



亜弥が顎に手を当てながら給仕の女子が述べた親友の特徴を口にする。

それを耳にした零治は、何か思い当たる節があるように、はて、と首を傾げる。



「ん? なんか身近にそんな奴が居た気がするんだが……気のせいか……?」


「気のせいでしょう? ……しかし、それだけじゃ情報が少ないですねぇ。その子、真名じゃない方の名は何て言うんですか?」


「ええっと、真名じゃない名前なら、許緒……」



給仕の口から出て来たのは予想外の名前だった。

零治、亜弥、華琳、秋蘭の間に奇妙な沈黙が広がる。



「…………にゃ?」


「あーーーーーーっ!」



給仕の少女が季衣を指差しながら驚きの声を上げる。



「あー。流琉ー♪ どうしてたの? 遅いよぅ」


「遅いよじゃないわよーっ! あんな手紙をよこして私を呼んだと思ったら、何でこんな所に居るのよーーーーっ!」


「ずーっと待ってたんだよ。城に来いって書いてあったでしょー!」


「季衣がお城に勤めてるなんて、冗談としか思わないわよ! どこかの大きな建物をお城と思ってるんだと思って……もぅぅっ!」


(何気に酷い事言ってるな。コイツ本当に親友か?)



二人は店内でギャーギャー言い合いながら派手に暴れ始める。それこそ店を破壊しかねないような勢いで。



「季衣のバカーーっ!」


「流琉に言われたくないよぅっ!」


「零治、亜弥、止められそう?」


「はぁ……オレ達は落ち着いて飯も食えないかよ……」


「ぼやかないでください。このままじゃ食事が出来ないどころか、店が破壊されかねませんよ?」


「へいへい。じゃ、季衣の方は頼むな」


「はい」



零治と亜弥は落ち着いた足取りで暴れる二人に歩み寄り。



「って言うか、来たんなら来たって連絡頂戴ってばー!」


「連絡先書いてから言いなさいよぅっ!」


「連絡先なんて手紙をくれた人に聞けば…………ひゃぅっ!」


「そんなの先に確認できるわけ……ひゃふっ!」



零治は流琉を、亜弥は季衣を猫の子でも掴み上げるようにあっさりと抱き上げ、二人を引き離し仲裁に入る。



「はーいどうどう。二人とも少し落ち着けよ」


「そうですよ。店内で暴れて周りの人に迷惑を掛けちゃいけませんよ?」


「うみゅぅ……」


「うぅ……」



季衣と流琉は申し訳なさそうな顔で縮こまる。



「……へぇ」


「おおっ! 二人ともやるねーっ!」



それを見た斗詩と猪々子は感心したように声を漏らした後、華琳に向き直り。



「お初にお目にかかります、曹孟徳殿。私は顔良と申します」


「あたいは文醜! 我が主、袁本初より言伝を預かり、南皮の地よりやって参りました」


「……こんな場面で恐縮ではありますが、ご面会いただけますでしょうか?」


「……あまり聞きたくない名を聞いたわね。まあいいわ、城に戻りましょうか」


………


……



華琳達は城に戻り、現在、玉座の間にて顔良、文醜と面会をしている。



「袁紹に袁術、公孫賛、西方の馬騰まで……よくもまあ、有名どころの名前を並べたものね」



華琳は顔良から手渡された、手紙の文面に眼を通し、感心したように呟く。



「董卓の暴政に、都の民は嘆き、恨みの声は天高くまで届いてると聞いております。先日も、董卓の命で官の大粛清があったとか……」


「それをなげいた我が主は、よをただすため、董卓をたおすちからをもったえいゆうのかたがたに……」


「手本になるぐらいの見事な棒読みだぜ……」



零治は文醜に呆れた視線を向けながら呟く。



「持って回った言い方は止しなさい。あの麗羽の事だから……どうせ、董卓が権力の中枢を握った事への腹いせなのでしょう」


「う……っ」



顔良が小さく呻く。つまりは図星という訳だ。



「その大粛清も、都で悪い政事をしていた官を粛清しただけと聞いてるわよ?」


(えっ!? あの……董卓がですかっ!?)


(話を聞く限り……史実の董卓とは完全に別人だな)


「統制の取れていない文官がやりたい放題にしている事を、董卓のせいにしているだけではなくて?」


「……よく知ってますねー」


「あまり知りたくないけれどね。どう思う、桂花」


「は。顔良殿、先程挙げた諸侯の中で、既に参加が決まっている方々は?」


「先程挙げた皆様は既に。今も、流れを見ていた小勢力や、袁家に縁のある諸侯達を中心に、続々と参戦の表明を受けております」


「おい。その中に、孫策という奴は居るか?」


「孫策……ですか? 文ちゃん、知ってる?」


「んー。袁術様の所の怖い姉ちゃんかな……?」


「おお、それだ!」


「その方なら、恐らく袁術様と一緒に参戦されるのではないかと」


「華琳様!」


「春蘭、私情は控えなさい。個人的な借りを返すために参加するなど、愚の骨頂よ」


「うぐ……」


「桂花。私はどうすればいい?」


「ここは参加されるのが最上かと……」


「何だとぅ! 貴様、私の意見は散々こき下ろしておいて、結局は賛成なのではないか!」


「……当たり前でしょう。華琳様、これだけの英傑が一挙に揃う機会など、この先あるとは思えません。ここで大きな手柄を立てれば、華琳様の名は諸侯の間に一挙に広まります」


「そうね。顔良、文醜。麗羽に伝えなさい。曹操はその同盟に参加する、と」


「はっ!」


「ありがとうございます! これであたい達、麗羽様にお仕置きされないで済みます!」


(こっちもお仕置きか……。この世界の君主様は随分とお仕置きが好きなんだな……)


………


……



「……この辺だよな?」



顔良達との面会を終えて、華琳、零治、亜弥、奈々瑠、臥々瑠の四人は近場の森の中を進んでいる。すると、しだいに進む先から金属の塊がぶつかり合うような轟音が響いてくる。



「はぁ……はぁ……はぁ、はぁ……」


「ふぅ……ふっ…ふぅ……ふぅ……」



轟音が響いてくる場所では、季衣と流琉が武器を手にした状態で、肩で激しく息をしながら睨み合っていた。

そこから少し離れた位置では、真桜が二人の闘いぶりを見守っている。



「どう? 調子は」


「あ、華琳様。見ての通りですわー」


「やるんなら徹底的にやれ、か……。ホントに全力でやってたのか、あの二人」


「ウチ、何度死ぬ思うたか、教えたろか?」


「……少なくともオレよりは少ないだろう?」


「え……? それはどういう……」


「何だ? 訊きたいのか?」


「……遠慮しとくわ」



零治達がそんな会話をしてる間も、二人の激突は続く。



「…………流琉、お腹空いた」


「……作ってあげるから、降参しなさい」


「……やだ。流琉をブッ飛ばして、作らせるんだから!」


「言ったわね! なら、季衣を泣かして、ごめんなさいって言わせてやるんだから!」


「ちょぉりゃああああーーー!!」


「どぉりゃぁぁぁーーー!!」



再び、季衣の巨大鉄球の付いたけん玉と流琉の持つ巨大な金属のヨーヨーが火花を散らす。



「……凄いですね」


「うん……。季衣もそうだけど、あっちの子も凄いよね」


「ええ。流石は季衣さんの親友ね……」


「そういうお前らも似たようなもんだろうが。特に……臥々瑠、お前はな……」



零治は過去に、臥々瑠に訓練と言う名目で散々な目に遭わされた経験があったので、臥々瑠に恨めし気な視線を向けながら言う。



「うぅ……そんな事ないもん……」


「どうだか」


「零治、あまり臥々瑠を苛めては……。あ、木が吹っ飛びましたよ」


「さっきから、ずーっとあのノリやで」


「あれでいいのよ。下手にしこりが残るよりは、余程マシだわ」


「まあ、互いに加減はしてるようだが……見ていて危なっかしいぜ」


「で、隊長。その面会とやらはどうなったん?」


「ああ、これから全員で都に遠征する事になった。もう凪と沙和には準備をさせてる」


「都かぁ……」


「恐らくこの戦いで、都の権力は完全に失われる。大陸も、もっと混乱する事になるはずよ……」


「……黄巾の時よりもですか?」


「アレが凪の海だと思えるくらいにね」


「なんやて……!? じゃあなんで華琳様は、そんな戦いに行くん? 守るための力を溜めた方が、ええんとちゃうん?」


「変化の波にむざむざ呑まれるよりも、波の頂に居たいと思ったからよ」


「……ごめん。ウチ、海って見た事ないねん」


「混乱が起こるのを外から見るより、内側からしっかり見届け、確実に収める、て所ですかな?」


「まあ、そんな所ね」


「……ああ、そういう言い方やったら、なんか分かる気がするわ」


「ちょぉりゃああああーーー!!」


「どぉりゃぁぁぁーーー!!」



そこに、森に今まで聞いた事のない快音が響いた。



「……きゅう」


「……うみゅぅ」



二人は同時に倒れる。



「相打ちか……」


「やれやれ。向こうも終わったようね……」


「……ごめんね、流琉。ボク、流琉と早く一緒に戦いたかったから……手紙、きちんと書けなかったんだよね」


「……いいよ。私も季衣と早く働きたかったから……州牧様の所で将軍をやってたのは、びっくりしたけどね……」


「じゃあ、ご飯、作ってくれる?」


「うん。一緒に食べよ」


「ようやく決着がついたようね。二人とも」


「あ、華琳様……」


「曹操様……」


「立ちなさい、典韋」


「はい」



流琉はその場から立ち上がり、佇まいを正し、華琳に向き直る。



「もう一度誘わせてもらうわ。季衣と共に、私に力を貸してくれるかしら? 料理人ではなく、一人の武人……武将として」


「分かりました。季衣にも会えたし……季衣がこんなに元気に働いてる所なら、私も頑張れます」


「ならば私を華琳と呼ぶ事を許しましょう。季衣、この間の約束……確かに果たしたわよ?」


「はい、ありがとうございますっ!」


「約束……?」


「季衣の願いを一つ叶えると約束していたのよ」


「だからボク……流琉を呼んでもいいかってお願いしたんだよ」


「もっとも、貴方ほどの人物と知っていれば、そんなものが無くても招いていたでしょうけれどね」


「ありがとうございます……華琳様」


「季衣。流琉の件は貴方に任せるわ。流琉も、分からない事は季衣に聞くようにね」


「はいっ!」


「分かりましたっ!」



華琳はこうして新たの将を迎え入れ、数日後、都の遠征に赴くのだった。

零治「…………」


亜弥「…………」


奈々瑠「…………」


臥々瑠「…………」


作者「……何か言ってよ」


零治「何を言えと?」


亜弥「ええ。今回は特に変わったところは無いですし……」


奈々瑠「内容も原作に沿ってますし……」


臥々瑠「特に言う事は無いよ」


作者「いや、それでも何か一言……」


零治「じゃあ……頑張れ?」


作者「なぜ疑問形なんだよ……」

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