第16話 黄巾の乱勃発 前編
皆様、新年明けましておめでとうございます。
いつまた亀更新になるかも分からないダメダメな作者ですが、本年もよろしくお願いします。
では本編をどうぞ。
「押せ! 押せい! 押し切れぇい!」
春蘭が率いる軍勢は、とある荒野にて暴徒と思われる一団と激しい戦闘を繰り広げている。
「春蘭様! 敵、撤退していきます!」
「何、もうか!?」
「……はぁ。見ての通りです」
春蘭達の視線の先に居る暴徒の一団は、まるで蜘蛛の子を散らすような勢いで逃げ出していく。
その様を見て、春蘭も季衣も呆気にとられている。
「ちっ。益体もない」
「追撃はどうしましょう?」
「そうだな、必要とも思えんが……まあいい。隊列を整えた後、一応出しておけ。ゆっくりでいいぞ」
「はいっ!」
「相手はただの町人。殺さず、追い払うだけにせよ。分かっているな?」
その指示を聞いた季衣の顔がウンザリした表情になる。と言うのも……。
「はい。……今日だけで、三度聞きましたから」
「そうか。もう三度目か……やれやれ……。我々は、蜘蛛の子を散らすために訓練をしている訳ではないのだぞ……」
「姉者、こちらも片付いたぞ」
「……ふぅ」
そこへ、別の場所で同じ暴徒の相手をしていた零治と秋蘭がやって来る。
秋蘭は普段と変わらぬ様子だったが、零治は少々疲れてる様子で、小さく溜め息を吐いている。
「おお、秋蘭。どうだった?」
「桂花の言う通りだ。これを……」
秋蘭は暴徒の持ち物と思われる物を春蘭達に見せる。
「やはり黄色い布か……。こちらもだ」
「何なんですかね、これ」
「ふむ……」
「むー……」
「うーん……」
「ううー……」
「むむむー……」
春蘭と季衣は秋蘭の手に有る黄色い布を、渋面を作ってじーっと凝視しながら、唸り声を出して考えてるようだ。
「……二人とも」
「ん、何だ?」
「分からないなら、分からないで構わんぞ」
秋蘭が二人にそう言い聞かせる。これ以上放っておいたら二人を知恵熱を出して倒れてしまいかねない。
「……そ、そうか。……まあ、それを考えるのは我々の仕事ではないからな。華琳様や桂花に任せるとしよう」
「はーい!」
「追撃部隊が戻ったら撤収するぞ! 帰ったらすぐ華琳様に報告だ!」
「判った。ならこちらの隊も撤収を始めておこう」
「あ、ボクもお手伝いしますー!」
「なら、オレも……」
「いや、音無は休んでおけ」
秋蘭は首を横に振り、零治の申し出をキッパリと断る。
「あ? なんでさ?」
「音無。お前……疲れているんだろ?」
秋蘭のその言葉に、季衣は怪訝な顔で零治の顔を覗き込みながら聞いてくる。
「えっ? そうなの? 兄ちゃん」
「なんだ音無。この程度で疲れるとは、だらしないぞ」
春蘭が茶々を入れるように口を挟んできたので、秋蘭は真剣な表情でピシャリと春蘭に黙るように言う。
「姉者は黙っていてくれ」
「ん? お、おう……」
「…………」
零治は黙ったまま何も言おうとしない。
「音無、正直に答えてくれ。実際のところどうなんだ?」
秋蘭は再度零治に尋ねる。流石に答えない訳にもいかないので、仕方なく零治は本音を口にする。
「まあ、疲れていないと言えば嘘になるな。相手を殺さずに戦う不殺戦法は、通常の戦闘以上に神経を使うからな……」
「あー、確かに……」
零治の言葉に、季衣も同意する。
「ならば、尚更お前をこれ以上働かせるわけにはいかん。今お前に倒れられたら皆が困るからな。いいな、音無。お前は休んでいろ」
「分かった。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおう」
「うむ。それでいい。……では、季衣。こちらの撤収の作業を手伝ってくれ」
「はーい!」
秋蘭は季衣を連れ、自分の率いる隊の方へ足を運ぶ。
(やれやれ……。秋蘭に見透かされるとは、オレもまだまだ甘いな……)
零治はそう思いながらもその辺に有る小さな岩に腰かけ、懐からタバコを取り出し、火を点け煙を吹かし素直に休むのだった。
「フーー……。しかし……連中、黄色い布を持ってるという事は、やはり……」
零治は自分の世界の知識を思い出すように一人ブツブツと呟く。
そう、彼にとって、三国志の世界で黄色い布を身に付けた暴徒の組織は一つしか思い当たらない。
「ん、どうした音無。何をブツブツ言ってるんだ?」
「ん? ああ、何でもない。気にするな」
「そうか」
(考えても仕方ない。どうせ今日の朝議でハッキリするだろう……)
しばらくして追撃部隊が戻り、一同は城に帰還するのだった。
………
……
…
「……という訳です」
「そう……やはり、黄色い布が」
その日に行われた朝議は、暴徒の鎮圧から戻って来た春蘭の報告から始まった。
「こちらの暴徒達も同じ布を持っておりました」
「桂花。そちらはどうだった?」
「は。面識のある諸侯に連絡を取ってみましたが……どこも陳留と同じく、黄色い布を身に付けた暴徒の対応に手を焼いているようです」
「具体的には?」
「ここと……ここ、それからここも」
桂花はそう言いながら、広げられた地図の上に磨きぬかれた丸石を置いていく。
「それと、一団の首魁は張角というらしいんですが……正体は全くの不明だそうです」
「正体不明?」
華琳は桂花の言葉に怪訝な表情になる。
「捕らえた賊を訊問しても、誰一人として話さなかったとか」
「……ふむ。剣を振り上げれば逃げ回るくせに、そこだけは口を割らぬか。何やら気味が悪いな」
「やはり黄巾党か……」
「……ですね」
それまで終始報告の内容に耳を傾けていた零治が歴史の知識を口にし、亜弥も頷いて同意する。
「ん? 二人とも知っているのか?」
その言葉が聞こえたようで、秋蘭が二人に尋ねる。
「知識としては。一応な……」
「なら、それ以上は言わなくていいわ」
「……ん?」
「天の国の技術や考えは確かに興味深いし、それを説明させるために貴方達を飼っている訳だけど……。歴史そのものは、こちらの世界では完全に再現されている訳ではないんでしょう?」
「んー、多分そうかと……」
首を捻りながら亜弥がそう言う。
(そもそもオレ達が知ってる曹操は男だしな……。それにこの世界は平行世界の可能性が高いからな。そう考えるとオレ達の世界の歴史の記録はあまり役に立たない可能性もあるだろうな……)
「なら、明確な根拠のない情報は判断を鈍らせるわ。そんなもの、占い師の予言と変わらない」
「こないだは占い師の言葉を笑ってたじゃないか」
「アレは私個人の問題だもの。外れたところで、笑い話にしかならない。……けれど、国の問題を占いで解決させる気はないわよ」
「そりゃごもっともですね」
「まあ、敵を呼ぶにも名前は必要だわ。黄巾党という名は貰っておきましょう。それで皆、他に新しい情報は無いの?」
「はい。これ以上は何も……」
「こちらもありません」
「ならば、まずは情報収集ね。その張角という輩の正体も確かめないと……」
その場に何となく気の抜けた空気が漂いだしたが、一人の兵士が駆け込み、状況は一変する。
「会議中失礼いたします!」
「何事だ!」
「はっ! 南西の村で、新たな暴徒が発生したとの報告がありました! また黄色い布です!」
「休む暇もないわね。……さて、情報源がさっそく現れてくれたわけだけれど。今度は誰が行ってくれるのかしら?」
「はいっ! ボクが行きます!」
季衣が勢いよく手を挙げ、返事をする。
「季衣ね……」
華琳は顎に手を当てながら、考える仕草をする。
(ん? いつもなら即断即決なのに、あの華琳が言葉を濁すとは珍しいな……)
「……季衣。お前は最近、働き過ぎだぞ。ここしばらくロクに休んでおらんだろう」
(あー……言われてみれば確かに。まあ、オレも人の事は言えんが……)
「だって春蘭様! せっかくボク、ボクの村みたいに困ってる村を、たくさん助けられるようになったんですよ……!」
季衣はどうしても助けに行きたいのか、必死の形相で春蘭に訴えかけるが。
「華琳様。この件、私が」
「どうしてですか、春蘭様っ! ボク、全然疲れてなんかないのに……!」
「そうね。今回の出撃、季衣は外しましょう。確かに最近の季衣の出動回数は多すぎるわ」
「華琳様っ!」
華琳も春蘭の意見に同意するので、さらに声を張り上げる。
「季衣。貴方のその心はとても貴いものだけれど……無茶を頼んで体を壊しては、元も子もないわよ」
華琳は慈愛に満ちた母親のように季衣にそう言い聞かせるが。
「無茶なんかじゃ……ないです」
季衣は不機嫌そうにそう言う。
「いいえ、無茶よ」
「……でも、みんな困ってるのに……」
「そうね。その一つの無茶で、季衣は目の前に居る百の民は救えるかもしれない。けれどそれは、その先救えるはずの何万という民を見殺しする事に繋がる事もある。……分かるかしら?」
「だったらその百の民は見殺しにするんですか!」
「するわけ無いでしょう!」
「……っ!」
華琳の力強い一声に、季衣だけでなく、その場に居る人間全員が思わず身を縮め声を失ってしまう。
「季衣。お前が休んでいる時は、私が代りにその百の民を救ってやる。だから、今は休め」
「ううー……」
「今日の百人も助けるし、明日の万人も助けてみせるわ。そのために必要と判断すれば、無理でも何でも遠慮なく使ってあげるわ。……けれど今はまだ、その時ではないの」
「…………」
春蘭の言葉にも、華琳の言葉にも、季衣は下を向いたまま何も言わなかった。
「桂花。編成を決めなさい」
「御意。……では秋蘭。今回の件、貴方が行ってちょうだい」
「何っ! この流れだと、どう考えても私だろう! どうして秋蘭が出てくる!」
「今回の出動は、戦闘よりも情報収集が大切になってくると、華琳様も仰ったでしょう。出来る? 貴方に」
バカにしたような視線を春蘭に向ける桂花。しかし、春蘭が情報収集に向いていないのも事実なので反論のしようがなかった。
「ぐ……っ」
「決まりね。秋蘭。くれぐれも情報収集は入念にしなさい」
「は。ではすぐに兵を集め、出立致します」
「秋蘭様!」
季衣が大声で秋蘭を呼び止める。
「どうした。何と言われても、連れては行かんぞ。私とて気持ちは華琳様や姉者と同じだ」
「そうじゃなくって……。あの……えっと…………ボクの分まで、よろしくお願いしますっ!」
「ふ……うむ。お主の想い、しかと受け取った。任せておけ」
静かに頷きながら、秋蘭は季衣に笑みを向ける。
「……秋蘭」
続いて今度は零治が秋蘭に声をかける。
「ん、どうした?」
「情報収集をするんなら、奈々瑠と臥々瑠を連れて行くといい。コイツらは耳と鼻が良く利くからな。何か手がかりが掴めるかもしれん」
「ふむ。……との事ですが、いかが致しますか? 華琳様」
「零治がそう言うのなら間違いはないわね。……二人とも行って来てくれるかしら?」
華琳はそう言いながら、奈々瑠と臥々瑠に視線を向け、奈々瑠達は力強く頷きながら返事をする。
「はい。任せてください」
「うん。それぐらお安い御用だよ~」
「ふふ。頼もしいな。……では音無。少しの間、二人を借りるぞ?」
「ああ」
「では二人とも、行くぞ」
「はい」
「は~い」
秋蘭は奈々瑠達を伴い、玉座の間を後にする。
………
……
…
「…………」
季衣は無言で城壁の上に座り込み、出発する秋蘭の率いる部隊を黙って見つめている。
「ここ、いいか?」
「あ、兄ちゃん……」
零治は季衣に声をかけ、隣に腰掛ける。
「落ち込んでるのか? らしくないぞ」
「ボクだって、落ち込むときくらいあるよぅ……」
「さっきの事か?」
「うん……。ボク、全然疲れてなんかないのに……。そりゃ、ご飯はいつもの倍食べてるけどさ」
(普段あれだけ食ってんのに、その倍食ってんのかよ……。むしろそっちの方が心配だぞ)
季衣が大飯食らいとい事は、いつぞやの盗賊団討伐の時に零治も知ってはいたが、流石にそんな話を聞かされては零治も表情を引きつらせてしまう。
「よく胃もたれとかしないな……」
「……にゃ?」
季衣はなんの事を言ってるのかと首をかしげる。
「いや、分からないんならいい……」
「変な兄ちゃん」
「だが、華琳が言うように、今が無理をする時じゃないのは事実だ」
「兄ちゃんまでそんな事言うー!」
「みんな季衣の事が心配なんだよ。その事を分かってやれよ」
「うぅ……そりゃ、分かってるけどー……」
「今は、黄巾党と張角の正体を突き止めるための情報が必要なんだ。季衣に本気で働いてもらうのは、連中の正体がわかった後さ」
「うん……」
「もちろん季衣の気持ちもみんな理解している。だが、まだその時ではない。困っている人を助けたいその想いは、出番が来た時におもいっきりぶつけてやればいいんだ」
「……分かったよ」
そう元気よく答えた季衣は、ひょいっと城壁の上に軽快に飛び乗る。
「おい。危ないぞ」
「大丈夫だよー。それに今、なんていうか、力が湧いてきて、我慢できない感じなんだ!」
そういうやいなや、季衣は城壁の上で、不思議な節回しの歌を朗々と歌い始める。
あまり上手いとは言えないが、零治は眼を閉じ、耳を澄ませ、その歌を聴き入る。
「……ほぉ。悪くないな。何て歌なんだ?」
「さあ? ちょっと前に、街で歌ってた旅芸人さんの歌なんだけど……。確か、名前は張角…………」
「……何っ!?」
「あっ! 兄ちゃん!」
「ああ、すぐ華琳に報告だ!」
………
……
…
秋蘭達が討伐から戻ったのは、その日の晩遅く。普段なら報告は翌日に回す時間だが、今夜は主要メンバーが玉座の間に集められ、すぐに報告会が開かれた。
「……間違いないのね」
華琳が秋蘭に念を押すように確認を取る
「確かに今日行った村でも、三人組の女の旅芸人が立ち寄っていたという情報がありました。恐らく、季衣が見た張角と同一人物でしょう」
「はい。ボクが見た旅芸人さんも、女の子の三人組でした」
季衣が頷きながらそう答え、さらに桂花からも報告がされる。
「季衣の報告を受けて、黄巾の蜂起あった陳留周辺のいくつかの村にも調査の兵を向かわせましたが……大半の村で同様の目撃例がありました」
「これで、張角の正体は判明だな……」
「正体が分かっただけでも前進ではあるけれど……。可能ならば、張角の目的が知りたいわね」
華琳の言葉に、臥々瑠は首を捻りながら奈々瑠に聞く。
「目的~? ねえ、奈々瑠。アレって目的があるって言えるのかな?」
「う~ん……どうなんだろ。聞いた話じゃ、ただ村の中で歌を歌っていただけって話だったし……」
「なるほど……。という事は、本人はただ楽しく歌ってるだけで、単に周りの連中が暴走してるだけの可能性が高いな」
「ああ、あり得ますね。私達の世界でも似たような事がよくありましたからね」
零治はの言葉に、亜弥が軽く頷きながら、自分達の世界で起こっていた過去の出来事を口にする。
「……というと?」
零治達の言葉に、華琳が怪訝な顔で聞いてくるので、零治は簡単に説明をする。
「例えば、その張角が……『私、この大陸が欲しいのー』とか何とか、その場の勢いで言っちまって、熱狂的な客が真に受けて暴れだした……とか」
つまりは、デモとかそういった類の事柄である。
「何? それ」
桂花が訝しげな表情で訊いてくる。
「だとしたら余計タチが悪いわ。大陸制覇の野望とか持っていてくれた方が、遠慮なく叩き潰せるのだけれど」
「叩き潰すのが前提なんですか……」
「夕方、都から軍令が届いたのよ。早急に黄巾の賊徒を平定せよ、とね」
その言葉に零治は、眉をひそめながら華琳に訊き返す。
「……今頃にか?」
「ええ、今頃よ」
「それはこれだけ大騒ぎになった後に出すような命令じゃないでしょうに……」
亜弥が呆れ果てた表情で言い、零治も不機嫌そうに顔を歪め、吐き捨てるように言う。
「反応が鈍いどころの話じゃないな。これでは今の朝廷の実力もたかが知れてるな……」
「良く分かってるじゃない。まあ、これで大手を振って大規模な戦力が動かせる訳だけれど……」
「華琳様っ!」
そこへ、春蘭が慌てた様子で駆け込んで来る。
「どうしたの、春蘭。兵の準備は終わった?」
「いえ、それが……また件の黄巾の連中が現れたと。それも、今までにない規模だそうです」
「……そう。一歩遅かったという事か」
「後手に回らされちまったか……」
「ええ。まったくよ」
華琳はイラついた様子で呟くと同時に、その怒りを吐き出すように、溜め息をつく。
「……ふぅ。春蘭、兵の準備は終わっているの?」
「申し訳ありません。最後の物資搬入が、明日の払暁になるそうで……既に兵に休息を取らせています」
「間が悪かったわね……。恐らく連中は、いくつかの暴徒が寄り集まっているのでしょう。今までのようにはいかないわよ」
「え? 単に集まってるだけじゃないの?」
「人が集まるという事は、集まろうとする意志か、集めようとする意志が働いてるとみるべきよ。集団同士が合流するなら、尚更ね」
「ほえ? ……兄さん。つまりどういう事?」
臥々瑠は桂花の言った事が全然理解できなかったのか、零治に問いかける。
「はぁ……。要するに、その集団を集めた奴……つまり指揮官が居るって事だ」
「恐らくそうだろう。仮に居なかったとしても……それだけの能力を持つ奴は、集団に一人二人は居るものだ。そいつは必ず指揮官に祭り上げられる」
「秋蘭の言う通り。万全の状態で当たりたくはあるけれど、時間も無いわね。さて、どうするか……」
「華琳様っ!」
華琳が思考を巡らせてる時、今まで黙っていた季衣が手を挙げる。
「…………」
「華琳様! ボクが行きます!」
「……季衣! お前はしばらく休んでおけと言っただろう!」
「だって! 華琳様仰いましたよね! 無理すべき時は、ボクに無理してもらうって! それに百の民も見捨てないって!」
「…………」
華琳は季衣を見つめたまま何も言わない。
季衣は再度、大声で華琳に問いかける。
「華琳様!」
「……そうね。その通りだわ」
「華琳様……」
「春蘭。すぐに出せる部隊はある?」
「は。当直の部隊と、最終確認をさせてる隊はまだ残っているはずですが……」
「季衣。それらを率いて、先発隊としてすぐに出発なさい」
「はいっ!」
「それから、補佐として秋蘭を付けるわ」
「え……? 秋蘭様、が……?」
季衣は呆気にとられる。何しろ、本来自分より立場が上の秋蘭を補佐につけると言われたのだから当然であろう。
「秋蘭にはここ数日無理をさせているから、指揮官は任せたくないの。やれるわね? 季衣」
「あ……は、はい…………。秋蘭様、よろしくお願いします」
「うむ。よろしく頼むぞ、季衣」
「へへ……っ、なんか、くすぐったいです……」
「ただし撤退の判断は秋蘭に任せるから、季衣はそれに必ず従うように。すぐに本隊も追いつくわ」
「御意」
「分かりました」
「桂花は後発部隊の再編成を。明日の朝来る荷物は待っていられないわ。春蘭は今すぐ取りに行って、払暁までには出立できるようになさい!」
「「御意!」」
「今回の本隊は私が率います。……それから、零治、亜弥。貴方達も季衣達と一緒に先発隊として出撃してちょうだい」
「了解した……」
「フッ……お任せを」
「……あれ? 華琳さん、あの……私達は?」
奈々瑠は自分たちが指名されなかったのを疑問に思い、自分を指差しながら聞く。
「貴方達二人は本隊に残ってもらうわ。これ以上戦力を割いたら本隊が手薄になっちゃうでしょう? だから二人は、それまで戦いに備えて体を休めていなさい」
「そういう事なら仕方ないですね。分かりました」
「ちぇ~……。アタシも暴れたかったのに……」
奈々瑠は納得した様子だが、臥々瑠は決定に不満があるようで、膨れっ面をする。
「ふふ。そんな顔をしないの。出番が来たら存分に暴れさせてあげるから、それまでは我慢してなさい」
「は~い……」
返事はするものの、やはりまだ不満らしい。
「やれやれ……。すまんな華琳。オレの教育不足だったようだ」
「ふふ。いいのよ。臥々瑠は、ああだから可愛らしいんじゃないの」
「まあ、それは否定せんが……」
「さあ、無駄話は終わりよ。零治……季衣達の事……お願いね」
「ああ。任せろ」
「ええ。……では各員、それぞれの持ち場に付き作業に取り掛かれ。以上、解散!」
華琳の号令と共に、その場居る全員が慌ただしく動き出す。
「では、私達も行きますかね」
「ああ。……そういう訳だ。よろしく頼むぞ、季衣」
「うん! こっちこそ!」
「今回は亜弥も一緒か。なら、お前の弓の腕前をじっくり拝見させてもらうとしようか」
「別に構いませんが……過剰な期待はしないでくださいよ?」
そんな会話をしながらも、零治達は準備を早々に済ませ出撃し、戦場に赴くのだった。
作者「なあ。今日はもう休んでいいか?」
零治「新年早々いきなり何言ってんだ……?」
作者「いや、ホントもうここでのネタが……」
亜弥「自分で続けると言っておいて、それはあまりにも無責任なのでは……」
奈々瑠「と、言いつつも」
臥々瑠「これその物が実はネタなのでした~」
作者「お後がよろしいようで」
零治「全然よろしくないわ……」




