第14話 警備隊の仕事風景
皆さん、長い間待たせてしまってすみませんでした。
ちょっとリアルの方が色々とゴタゴタしていたため、時間がほとんど取れない状況だったので。
少しだけですがリアルもようやく落ち着いてきたのでこれか少しずつになるかもしれませんが、ちょこちょこと投稿していきますのでよろしくお願いします。
「この野郎! 待ちやがれっ!」
「くそっ! しつけぇ連中だぁ!」
昼下がりの街中、零治が率いる警備隊がゴロツキ相手に大捕り物を繰り広げている。
「隊長っ!」
「お前達はそのまま追跡を続行しろ! オレは迂回して反対側に回りこむ! この先の路地で挟み撃ちにするぞ!」
「了解しました!」
零治は部下達にそう告げ、脇道に逸れ、迂回路を全力疾走する。
「ぜぇ……ぜぇ……。こ、ここまで来れば……」
「大丈夫だと思ってるのか?」
「ゲェっ!? て、てめぇ、いつの間に!?」
「これから捕まる奴にそんな事を説明をする必要はないな」
そうしてる間に、警備隊達が反対側からやって来る。
「さあ、これで逃げ道は無くなったぞ。どうする?」
「うっ……。く、くそぉっ!」
あくまでも観念しようとしないゴロツキは手に持ってる大太刀構える。
「フンッ! そう来るか……。おい、お前ら。丁重にお相手してやれ」
「えっ! わ、私達がですか!?」
「し、しかし隊長、我らの武器は六尺棒なんですが……」
「その上、相手は大太刀を持った大男っスよ。正直分が悪いんっスけど……」
零治が引き連れてきた三人の部下は、まだ実戦経験が無いためうろたえてしまう。
しかし、だからといって彼らを甘やかすほど零治は甘くはない。
「なんだお前らぁ。こんな奴相手にビビッてんのか? オレは新人だからって甘やかすような事はしないぞ。ほら、日頃の訓練の成果を見せてみろ」
「わ、分かりました」
警備隊の一人が武器を構え、ゴロツキの前に進み出る。
「うおおおおっ!」
隊員は気合を入れながら武器を振りかぶり、ゴロツキに向かって突進し、攻撃を仕掛けるが……。
「ちっ! この野郎っ!」
「ぐあっ!?」
ある程度の場馴れをしているゴロツキはその攻撃を上手く躱し、隊員を蹴り飛ばした。
「はぁ……何してんだよ。ほら、次だ。さっさとかかれ」
「は、はいっ! ……でええええいっ!」
次の隊員が勢い良く突撃する。が……。
「あっ、あらっ!?」
勢いをつけすぎたせいか、足をもつれさせ、頭から派手に転んで自滅してしまった。
「きゅう……」
「はぁ……情けない……」
零治は新人達の失態を嘆きながら、顔を手で覆い俯く。
「へっへっへ。なんだよ、大したことねぇなぁ」
二人の隊員が醜態をさらしたため、ゴロツキの顔には余裕が現れ、零治達に挑発的な言葉を投げかけてくる。
「おいおい、どうする? このまま舐められっぱなしでいいのか?」
「俺にだって意地は有るっス! この野郎に一泡吹かせてやるっスよ!!」
「よーし、その意気だ。いいとこ見せてみな」
「行くっス! ……でりゃああああ!」
次の隊員が六尺棒を縦に振り上げながら突撃する。
(あぁ、あれじゃダメだな……。ったく、どいつもコイツも……)
零治がそう思っていたその時……。
「貸してみろ」
「へっ?」
突如、隊員の背後から現れた女性が、ひょいっと棒を奪い取り、そのままゴロツキの脳天に強力な一撃を叩き込んだ。
「ぐえっ!?」
あまりにも突然の出来事だったので、ゴロツキは動く事すら出来ず、呻き声を上げて地面に倒れこんだ。
「まったく貴様ら。この程度の相手に手こずっていてどうする?」
「か、夏侯惇将軍……」
「す、すみません。助かりました」
「まったく……貴様ら、それでも我が軍の兵士か? 我らが曹操様に弱卒は不要ぞ!」
隊員達に鋭く叫びかける春蘭。その迫力は、場所が戦場であろうが街中であろうが一切変わる事は無かった。
「は、はいっ! 申し訳ありません!」
三人の隊員は姿勢を正し、大声で謝罪する。
「春蘭。もうその辺で勘弁してやれ。お前ら、ここはいいからそこに転がってるバカをふん縛って連行してさしあげろ」
「えっ? この大男を俺らだけで運ぶんスか……?」
「それぐらいやれよ……。それとも、今回の失態の件の始末書を書かされたいのか?」
「わ、分かりました。運びますから、始末書だけは勘弁してください。……おい、お前らはそっち持て」
「お、おう」
「ちょっ!? コイツ……重っ……!」
始末書という単語を聞かされた隊員達は素早く地面に伸びているゴロツキを縄で縛りあげ、ウンウン唸りながら抱え運び、その場を後にする。
ちなみに当然ながらこの時代に始末書などという物は存在しない。これは零治が自分の世界での知識から導入したもので、効果の方はご覧の通り抜群である。
ましてやこの世界には字の読み書きができない大人も普通に存在している上、文章を書くにしても筆と硯を用意する所から始まり、非常に手間のかかる作業なのだ。おまけに書かされる内容が謝罪文となればただの苦痛でしかない。
「すまんな春蘭。おかげで助かった」
「やれやれ。お前の警備隊の隊員は、少々たるんでいるのではないか?」
「そう言ってくれるな。ウチはタダでさえ人手不足な上に、今回は新人達で編成していたからな」
「それで、責任者自らが陣頭指揮か。だが、そろそろ正規軍から人手を借りてるこの状況を改善してもらいたいものだな」
「それに関しては努力するさ。……で、今日はどうした? お前が一人で街を出歩くとは珍しいじゃないか」
「珍しくて悪かったな。私が一人で買い物に来るのがそんなに不満か?」
「誰もそんな事言ってねぇだろ。何か探してるんなら案内してやるぞ。オレが街に詳しい事は知ってるだろ?」
「ふむ。では頼むとしようか」
「おう。で、今日は何をお求めで?」
「下着だ」
「…………はっ?」
零治は春蘭の口から思いもよらぬ物の名前が出て来たため、きょとんとした顔で間抜けな声を出す。
その姿を見た春蘭は、零治が聞き取れてないと勘違いしたのか、更に大声を出す。
「下着だと言っている!」
「…………」
零治はどう反応していいか分からず、黙り込んでしまい、短気な春蘭は更に大声で、街の大通りで下着下着と連呼しだす。
「聞こえんとでも言うつもりか? 下着を買いに来たのだ、下着を!」
「だーーっ! そんなに大声で連呼すんな! 周りが見てるだろっ!」
「……ふん。小心者めが」
(お前の神経が単に図太いだけだろ……)
「まあ、男である貴様に女物の下着の店の場所を聞くのは野暮だったな。ふははははは!」
一体何を思ったのか、春蘭は勝ち誇ったように高笑いしながら胸を張る。
「いや、知ってるぞ」
「…………なに?」
流石の春蘭も意外と思ったのか、零治が店の場所を知ってると言ってきたので、ポカンとした表情になる。
「流石に品揃えまでは知らんが、どこにどの店があるかは把握してるぞ。道を聞かれる事なんか日常茶飯事だからな」
「そ……そうなのか……」
「若い子によく聞かれる店もいくつか知ってる。そこで良いんなら案内するぞ?」
「あ、ああ……」
「なら、ついて来な」
そうして二人は店を目指し、移動する。
………
……
…
「まずはここだな」
「ここはダメだ。前に来た事があるが……半裸の筋肉達磨が踊りながら接客に出て来て、思わず叩き斬りそうになったぞ」
「半裸の筋肉達磨……? あぁ、貂蝉の事か。そこまで悪い奴じゃないぜ。変態には違いないが」
「アイツの名前なんぞどうでもいい。ともかくここでは買わん! 次!」
「はいよ」
二人は次の店を目指し移動する。
………
……
…
「次はここだな」
「ここもダメだ。ここの店員は私が何を着ても、お似合いですよとしか言わんのだ」
「それはホントに似合ってたからじゃないのか?」
「私が最初から着ていた下着を着て出ても、お似合いですよと言ったのだぞ?」
「……それは、微妙だな」
「ともかく、次だ、次に案内しろ!」
二人は次の店に足を進める。
………
……
…
「じゃ、ここは?」
「ここもダメだ。ここの生地は妙に硬くて、私の肌には合わん!」
「なるほど……。なら、春蘭はどういうのがいいんだ?」
「なんでもいい」
(そういう注文が一番困るんだよ……)
「ともかく次だ、次!」
「はいはい……」
二人は足を進めるが、流石の零治もこれ以上付き合うのにはウンザリしてきてる様子だ。
………
……
…
「後は、ここぐらいだな。ここがダメならオレは帰らせてもらうぞ……」
「ここは初めて来るな」
「ならここで決まりだな。じゃ、オレは帰って報告書を書かなきゃならんから……」
零治はそう告げ、残っている仕事を終わらせるためその場を後にしようとしたが……。
「ここまで来たんなら最後まで付き合え!」
春蘭に後ろからコートの襟首を掴まれ、そのままズルズルと引っ張られてしまう。
「ちょっ!? おいコラ! 離せ! オレは仕事があるっつってんだろうがぁ!」
「ええい! ゴチャゴチャとうるさいぞ! いいから来いっ!」
抵抗もむなしく、零治は強引に店内へ連行されてしまう。
「春蘭、オレは男だって分かってるのか?」
「そんな事分かってるぞ?」
(絶対に分かってない顔だな、そりゃ……)
「いらっしゃいませー」
「うむ」
「…………」
女性店員の一人が営業スマイルを浮かべながら丁寧に挨拶をし、春蘭は満足げに頷くが、零治は黙ったまま顔を右手で覆い、俯いていた。
「あら、これは夏侯惇様に音無様じゃありませんか。いらっしゃいませ。今日は彼氏を喜ばせるための下着をお探しですか?」
「ちょっと待て! どこの誰が彼氏などと……っ!」
春蘭は顔を真っ赤にして反論するが……。
「でも、殿方に真名で呼ばせるだなんて……ねぇ?」
「ねぇ?」
(さっきの会話を聞かれてたか……)
「…………」
一人の店員が零治に、非難するような鋭い視線を向ける。
「ん? どうした?」
「音無様……。神威様というお人が居るのに……最低です……」
どうもこの店員は零治と亜弥が恋仲であると勘違いしているようである。
たしかに、はたから見ればそう見えるのだろうが、零治はそれは誤解である事を溜め息交じりに説明する。
「あのなぁ、アイツとはそんな関係じゃないと以前説明しただろ。それと、春蘭ともそんな関係じゃないからな」
「では、なぜ真名を?」
「これには深い理由がって、おいこらそこ! その紐はなんだ、その紐はっ!」
春蘭が店員が持って来た下着を指差しながら怒鳴り散らす。
それは、下着というよりただの紐である。はたしてこんな物を下着と言って良いのだろうか。
「あら、こちらは西方の職人が精魂込めて織り上げた、究極の紐下着ですわ」
「そんなの下着とは言わんだろうがっ!」
「では、こちらは……? さる名山で織り上げられた、秘伝織りの下着ですの」
もう一人の店員が持って来たのは、透け透けの布が使用された下着である。先程の紐下着と違い、ちゃんとした下着の形はしているのだが、布地があまりにも薄いので向こう側が透けて見えている。
これも下着と言える代物とは思えない。
「それはあれか! バカには見えない布か何かか! 向こうの景色が透けて見えるじゃないか!」
「流石お目が高い。いやらしい心を持っている者には見えない布地で作られているのですわ」
「それ意味がないだろうがっ!」
(この店って、こんな過激な下着を取り扱っていたのかよ……)
「おい音無! お前も何とか言えっ!」
「オレにどうしろと……?」
「おやめなさい!」
突如、店内に凛とした声が響き渡り、零治や春蘭はおろか、二人を囲んでいた店員達も動きを止めてしまう。
「……まったく、どこの田舎者が騒いでるのかと思えば……。呆れて物も言えないわ」
「か……華琳様っ!?」
「華琳……それに、秋蘭も……」
「あら零治。今日は仕事だと言っていなかった?」
華琳が訝しげな顔で聞いてくるので、零治は疲れ果てた声で事情を説明する。
「……仕事として春蘭をこの店に案内して来たんだが、まさか買う所にまで付き合わされるとは思わなかったんでな……」
「まあ……そんな事だろうとは思っていたが」
付添いの秋蘭が納得したように言う。
「だろう。あろうことかこの男が、店員にこんな下着を勧めさせようとするのだ……!」
「…………」
「…………」
華琳と秋蘭が零治に非難するような視線を向ける。
「……誤解だっつーの。だからそんな眼で見るな」
「あ、あまつさえ、私と音無の事を……そ、その……だな! まったくもう、訳が分かりませぬ!」
「それは姉者が悪い」
「それは春蘭が悪いわ」
「それは春蘭が悪い」
見事なまでに春蘭は三人から全否定を食らう。
「なんですと!」
「女性物の下着を売る店に男連れで来れば、その連れはそれなりに近しい関係と考えるでしょうよ」
「姉者。音無が男だと……忘れているのではないか?」
「ちゃんと覚えてるに決まっているだろう! コイツが男だと忘れた事など、一度とてあるものか!」
「なら、男と女の違いをこの場で言ってみろよ」
「おう。それは……」
「それは?」
「金的を蹴れば悶絶する!」
零治の問いに春蘭は自信満々に胸を張って大声で答えた。
「…………」
「…………」
「…………」
春蘭のぶっ飛んだ答えに、その場の空気が凍りつき、三人は眼を丸くしていた。
「な、なんだその眼は!」
(当たり前だろ……)
「……今回ばかりは部下の無知を詫びさせてちょうだい。零治」
「いや、いいんだ……」
「姉者。姉者の下着は私が選んでやるから。な? こっちへ来い」
「お? おう……?」
「華琳様。申し訳ありませんが、私は我が愚姉の面倒を見ねばならぬようです。代わりに音無がお相手いたしますゆえ、それでご寛恕賜わりたく」
「……仕方ないわね。いいわ、行って来なさい」
「音無。すまんが、華琳様のお相手を頼むぞ」
「オレがここから出るという選択肢は……?」
「ある訳ないでしょう。しっかり私の相手をなさい。いいわね、零治」
「へ~い……」
「ほら。行くわよ」
「はぁ……なぜこんな事に……」
零治はウンザリした表情で華琳の後に続く。
「…………」
零治の目の前には、華琳が選んだと思われる、たくさんの女性用の下着がズラリと並べられている。
「これはアレか? 店の一角を指差して、あそこからあそこまで全部頂戴、とかそういうノリか?」
「誰がそんなバカなお金の使い方をするのよ?」
「違うのか?」
「違うわよ。ここから必要な物に絞り込むのよ」
「ふ~ん。どうやって?」
「本当は秋蘭に選んでもらうはずだったんだけど……」
華琳はそう言って、零治に意味深な視線を向ける。
「…………」
零治は無言でゆっくりと自分を指差す。
「察しがいい子は嫌いじゃないわよ? 零治」
「はぁ……最悪だ……」
「ほら、始めるわよ?」
「ああ……」
「まずは……これはどう?」
華琳は姿見を前にして下着をあてがいながら聞く。
「う~ん、少し地味だな。……こっちの淡い色をしたヤツの方が似合うと思うが?」
「あら、渋ってた割にはちゃんとやってくれるんじゃないの」
「命じられたからにはちゃんとやるさ」
(でないと、後が怖いしな……)
と、零治は内心思いながらチラリと後方に視線をやる。
なにせ今ここには春蘭と秋蘭も居るのだ。不真面目な態度を取ったら二人から何をされるか分かったものではない。
「そう。ならこれは要らないと……。じゃあ、これは?」
「……余計な装飾が多いな。もう少し装飾が少なめの物にしたらどうだ?」
(なんでコイツ顔色一つ変えないのよ! せっかく零治の事を動揺させてやろうと思ったのに!)
華琳は零治があまりにも慣れてるのを疑問に思い、内心の動揺を表に出さないように落ち着いた態度で話しかける。
「零治。貴方、随分と慣れてるのね?」
「ん? ああ、そりゃ身の回りに女が三人も居るからな」
「あら、あの子達の下着も貴方が?」
「ああ。よく買い物に付き合わされてたからな。嫌でも慣れるさ……」
当時の出来事を思い出したのか、零治はどこかウンザリした表情でぶっきらぼうに答える。
(なるほど。これは思ったより手強そうね。でも、私だって負けないわよ!)
そう思い華琳は次の下着を手に取る。それも、かなり過激なデザインの……。
「これは……どう……?」
華琳は頬を赤らめながら問いかける。どうも本人も恥ずかしいらしい。
「…………」
(ん? 効果はあったかしら?)
零治が黙ったまま見つめてるので、華琳は上手く行ったのかと思う。だが……。
「……そういった下着は男が出来てから着けるべきだろ?」
「なっ!?」
真顔で返答されてしまう。どうやら効果はなかったらしい。
「華琳。オレを動揺させたいと思ってるんなら諦めろ。その程度の事じゃオレは動揺しないぞ」
「い、言ったわね! 見てなさい! 必ず貴方を動揺させてやるんだからっ!」
「おい。目的の趣旨が変わってるぞ……」
「うるさいわね! 早く次の下着をよこしなさい!」
(やれやれ。怒らせちまったか……)
零治はひょいっと肩をすくめる。
「…………」
「…………」
少し離れた位置から二人のやり取りを、春蘭と秋蘭は黙って見つめる。
「楽しそうだな、華琳様……」
「まったく、華琳様の事となると気が付くのだな、姉者は。……羨ましいか?」
「う、羨ましくなど…………うぅ」
春蘭の悔しげな表情を見る限りでは、やはり羨ましいらしい。
「まあ、買い物が終わればお茶の時間の一つも取れよう。だがまずは自身の下着を選ばねばな、姉者」
「うむ……」
春蘭は秋蘭に言われ、辺りの売り場を見渡しだす。
「それにしてもなぜ武人たるこの私が、こんな下着までわざわざ選んで買わねばならんのだ……おお?」
「何か良い物が見つかったか? 姉者」
「なんだ、良い物が有るではないか!」
そう言いながら春蘭が手に取ったのは……。
「三枚一組で……」
「ちょっと待てい!」
秋蘭がいつになく珍しく、声を張り上げる。
「な、何だ……?」
「それだけはやめろ! いや、むしろそれを選んだら私は姉者との縁を切る! 切らせてもらう!」
「おう……? 分かった……これはやめればいいんだな、やめれば……?」
「……はぁ。もう姉者は座っていればいい。姉者の下着は、私が選ぼう」
「うむ……。なら、お前に任せるぞ……」
………
……
…
「…………」
一同は買い物を終え、店を後にしたが、華琳はえらく不機嫌な様子だ。
「なにを仏頂面してんだよ?」
「貴方、分かってて聞いてるの……?」
「さあな?」
「貴様ぁ! さては、華琳様の下着を真面目に選ばなかったんだろぉ!」
春蘭は零治に剣を突き付けながら言う。
「おい。街中でそんな物騒な物を抜くんじゃない」
「やめなさい、春蘭。零治はちゃんと真面目に選んでくれたわよ」
「は、はあ……。それならいいんですが」
「それより、春蘭はちゃんと買えたのかしら?」
「もちろんです! 三枚一組の……」
「……秋蘭?」
眼を閉じて静かに問いかける華琳。
秋蘭はビシッと姿勢を正して答える。
「は。全身全霊をもって阻止いたしました」
「結構」
(よりにもよって、なんて物を選んでんだよ……アイツは……)
「……? よく分かりませんが、それは秋蘭に止められたので、秋蘭に選んでもらいました」
「それは、ちゃんと買えたとは言わないでしょう」
「はぁ……」
「今度は零治にでも選んでもらいなさい」
「それは勘弁してくれ……。じゃあ、オレは行かせてもらうぞ。帰って報告書を書かなきゃならないんでな」
零治はそう告げ、その場を去ろうとするが……。
「待ちなさい」
「ん? なんだよ、まだ何かあるのか?」
「…………」
華琳は黙ったまま零治を睨み付けてる。次第にわなわなと体を震わせ……。
「華琳?」
「ああっ! やっぱり負けたままなんて私の気が済まないわ! 零治、もう一件行くから付き合いなさい!」
「はあっ!? いきなり負けたとか、なに訳の分からない事言ってんだよ!」
「黙りなさい! 次の店では必ず貴方を動揺させてみせるわ! さあ、行くわよ!」
「おい! オレは帰って報告書を……」
「そんな物は明日でも構わないわ!」
華琳は零治の言葉を遮るようにピシャリと言い放つ。
今の華琳にとって報告書はどうでもいいようだ。
(そんな物!? 報告書をそんな物って言ったぞ! コイツ!!)
「春蘭、秋蘭! 零治が逃げないようにしっかりと見張ってなさい!」
「はっ!」
「そういう訳だ。悪いが付き合ってもらうぞ、音無」
春蘭は剣を、秋蘭は弓を零治に突き付け、逃げないようにしっかりとガードを固める。
(……まったく。華琳も華琳なら、この姉妹も姉妹だな)
零治は内心呆れ果ててしまうが、この状況、どう見ても逃げると後が大変なので、零治は諦めたように力なく答える。
「はぁ……。分かったから。付き合うからその物騒な物を引っ込めてくれよ……」
「ふんっ! そんな事を言って、逃げるつもりなんだろ? そうはいくか!」
(いや、確かにその気になれば逃げれるが……それをやったらオレ、二度と城に戻れないと思うんだが……)
「音無の事を信用してない訳ではないが、これも華琳様の命なのでな。すまんが我慢してくれ」
「はいはい……」
「話はまとまったわね? なら、行くわよ」
「華琳様の行くところなら、どこへでも!」
「喜んでお供いたします」
(ったく、コイツらは……。まあ、たまにはこんな日があっても悪くないか……)
零治は心の中でそう思いながら、華琳達の後に続いた。
作者「メリークルシミマス!」
零治「何を言ってんだ、お前は……」
亜弥「世間一般ではクリスマス本番は昨日でしょうが……」
奈々瑠「僻みですか? 周りに対する」
臥々瑠「うんうん。どうせ相手なんか居ないもんね」
作者「うるさーい! リア充爆発しろ! だいたいイブの夜は恋人同士で過ごす日なんて誰が決めた! この日は正しくはキリストの生誕祭だろうがぁ!!」
零治「はいはい。お前の言いたい事はよ~く分かったよ。……ほら、こっちでオレ達とパーティしようぜ?」
作者「へっ?」
亜弥「こんな日ぐらい、貴方の事もちゃんと扱ってあげないと可愛そうですしね。ほら、早くしないと零治の手料理が冷めちゃいますよ」
作者「お、お前ら……」
奈々瑠「はい。クラッカー持ってください」
作者「お、おう!」
臥々瑠「……あれ? もしかして泣いてんの?」
作者「ち、ちげーよ! ちょっと眼にゴミが入っただけだ!」
零治「はいはい。そういう事にしといてやるよ。……じゃあお前ら、クラッカーを鳴らしたと同時に、あの言葉だぞ?」
亜弥「ええ。分かってますよ」
奈々瑠「じゃあ、行きますよ」
臥々瑠「せーの……」
全員「「「「「メリークリスマス!」」」」」




