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第10話 傾国の美女?現る

原作をプレイした方なら当然お気づきですね。

みんな大好きのあの方が登場します。

「…………」



とある昼下がり。零治は何をするのでもなく自室のベッドに横たわって天井を眺めていた。

そこへ、亜弥が扉をノックする。



「零治。居ますか?」


「開いてるぞ。勝手に入れよ」



扉が開かれ、奈々瑠と臥々瑠を連れ立った亜弥がやって来る。



「失礼しますよ……って、貴方、何をしてるんですか……?」


「別に何も……。今日は非番だからする事なんか無いんでな。そう言うお前は今日は仕事じゃなかったのか?」


「私は今日は昼までですから。後は優秀な部下がやってくれますよ」


「ウチの警備隊ホントこんなんで大丈夫なのか……?」


「まあ、今は軍部の人間を借りてますから大丈夫でしょう。ただ、いつまでもこのままって訳にはいきませんがね……」



二人は自分達が受け持ってる警備隊の現状を嘆く。

それもそのはず、現在の警備隊は人手、特に指揮官クラスの人間が圧倒的に足りていないのだ。

今は軍部から人を借りてそれを補ってはいるが、いつまでもこのままという訳にはいかない。

何より指揮官、つまり警備隊で小隊長を務められる人間を確保しなければ零治達の負担が増えるだけなので、警備隊の人手の確保は重要課題となっていた。



「そこは優秀な人間が来てくれなきゃ話にならんがな。……で? 今日はそんな話しをするために来た訳じゃないんだろ?」


「ええ。……零治、いま時間はありますか?」


「別に大丈夫だが?」


「なら、今から買い物に行くので付き合ってくれませんか?」


「それは構わんが……何を買いにいくんだ?」


「下着です」


「……他を当たれ」



零治はゴロンと亜弥に背を向けて寝転がり、付き合う気は無いという意思を示すが、この応対の仕方は人としてどうかと思う。



「今、構わないと言ったじゃないですか。零治……」


「毎度の事とはいえ、なんでオレがお前らの下着の買い物に付き合わなきゃなんねぇんだよ……?」



零治は相変わらず亜弥に背を向けたまま受け答えをする。



「男性である貴方の意見を訊きたいからですよ」


「ここには男なんかオレ以外にも居るだろうが……」


「確かに居ますけど……貴方以外の男性の意見は正直言って当てにならないんで。それに奈々瑠達も居ますし」


「見せる相手も居ないのに男の意見なんか訊いてなんの意味があるんだ……?」



零治はボソッとそんな事を呟く。



「今、何か言いましたか……? 零治……」



零治の呟きが聞こえたのか、亜弥はドスの利いた声で零治に背中に向かって言う。

加えて言うと、表情も普段の穏やかなモノとは真逆の険しい表情で、影が差し、眼も据わり殺気を帯びており、もうその視線だけで人を殺せそうな気がする。



(怖っ!!)



零治は亜弥に背を向けたままなので顔こそ見てはいないが、あまりの迫力に思わず身震いをし、ぎこちなく答える。



「いや……別に何も……」


「そうですか。ならさっきのは空耳ですか。……それなら、当然付き合ってくれますよねぇ……?」


「…………」


「付き合ってくれますよねぇ……?」


「はぁ……。分かったよ。付き合えばいいんだろ。付き合えば……」



諦めたように零治はノロノロとベッドから起き上がる。



「結構。……二人ともよかったですねぇ。零治が快く引き受けてくれて」



亜弥は零治の返答を聞くと同時に、いつもの穏やかな表情に戻し、それまで黙っていた奈々瑠達に声をかける。



「えっ? あ、ああ……そ、そうですね……」


「う、うん……そうだね……」


((これからは、姉さんの事も絶対に怒らせないようにしようっ!!))



亜弥のもう一つの姿を垣間見た奈々瑠と臥々瑠は心の中で固く誓うのだった。



「ったく……。せっかくの休みなのに……」


「何をブツクサ言ってるんですか? 早く行きますよ」


「へ~い……」



一同は零治の部屋を後にし、街に向かう。


………


……



「で? 行く店とかは決まってるのか?」


「えぇ。最近この辺に新しく出来た店が有るんで、そこにしようかと」


「あぁ、それならオレも知ってるぞ。この先の通りに有る店だろ?」


「そうです。流石は隊長殿。ちゃんと街の事は把握してるようですね?」


「茶化すな。行き先が決まってるんなら、さっさと行くぞ」


「はいはい」


「奈々瑠、臥々瑠。この時間帯は人が多いからはぐれないように注意しろよ」


「む~……。子供扱いしないでくださいよ……」


「そうだよ……。それに、いざとなったら建物の屋根の上を移動するから」


「それは目立つから勘弁してくれ……」



零治達は目的地の店を目指して通りの人込みをかき分けるように移動し、やがて目的の店にたどり着く。



「ここだな」


「そのようで」


「なら、さっさと店に入って、さっさと用件を済ませて、さっさと城に帰るぞ」


「なんです。そんなに嫌なんですか?」


「男が女との買い物、もしくはデートで行かれると一番困る店は、ランジェリーショップと相場が決まってるんだよ……」


「はいはい……。なら、早々に終わらせますから、少しだけ我慢してください」


「ああ。じゃあ、入るぞ」



一同は店の入り口の扉を開けて中に足を踏み入れ、亜弥と奈々瑠は店内の売り場を見回す。



「ほぉ……これは中々の品揃えですね」


「そうですね。……あっ! あの下着すごく可愛い~♪」


「あ~あ、メンドくさいな~……」


「アンタはもう少し女としての自覚を持つべきじゃないの?」


「うるさいな~……」


「はいはい、ケンカはしない」


「おい、いいから早く用件を済ませろよっ!」


「分かってますから、そう怒らないで。……すみませ~ん。誰か居ませんか~?」


「は~い♪ 今行くわ~ん♪」



店の奥から独特のイントネーションで、店員と思われる男の声がする。



「おい。この店、男が店員なのか……?」


「まあ、そういう店も有るんでしょう?」


「にしても妙な喋り方だったな。一体どんな奴……」


「いらっしゃいませ~ん♪」



零治の言葉を遮るようなタイミングで、店の奥から営業スマイルを浮かべた、左右にお下げ髪があるスキンヘッドでピンクのビキニパンツ一丁姿のゴリモリマッチョの大男が姿を現した。



「「「「…………」」」」



零治達は目の前に現れた大男の姿を見て、どう反応していいのか分からずに絶句してしまう。



「あらあら~。どうかしたの~?」


「アンタ……この店の……店員なのか……?」



零治は恐る恐るの声で男に問いかけると、男の口から予想だにしない名前が出てきた。



「いいえ~。あたしはこの店の店主をやってる貂蝉よ。よろしくねん♪」



貂蝉と名乗る大男は、シナを作ってセクシーポーズを取って零治達に挨拶する。

その名を聞いた零治と亜弥は同時に驚きの声を上げる。



「「はあっ!?」」


「貂蝉っ!?」


「貴方がですか!?」


「そうよ。な~に? あたしの名前がそんなに珍しいのかしらん?」


「いや、なんでもない。気にしないでくれ……。亜弥、ちょっと来いっ!」


「はい……」



零治は小声で亜弥に呼びかけ、貂蝉から距離を取り、声を潜めて話し合う。



「亜弥……これは流石にキツいだろっ!!」


「ええ……。今までの経緯を考えれば、貂蝉が男性になっていても不思議じゃありませんが……流石にこれはキツいですねぇ……」


「おいっ! 今すぐ別の店に行くぞ!!」


「そんなぁ……。この店、品揃えは悪くないのに……」


「そういう問題じゃねぇだろっ! 見ろ! 奈々瑠と臥々瑠、完全に怯えてるじゃないか!!」



零治の言う通り、二人は貂蝉に対して完全に怯えきっており、店の隅に移動して、まるで小動物のように縮こまっていた。



「あらあら。お嬢さん達、どうかしたの?」


「「ひっ!?」」



貂蝉がその場から一歩動いただけで奈々瑠と臥々瑠は過敏な反応をして、互いが胸の内に抱えるその恐怖心を誤魔化すかのように抱き付き合う。



「おいっ! この筋肉達磨っ!! その二人に近寄るんじゃねぇ!!」



零治は貂蝉に怒鳴りながら叢雲に手をかける。もはやその怒りようは本当に抜刀しかねないほどの勢いだ。



「ちょっ!? 零治! 春蘭じゃないんですから、店内で抜こうとしないでくださいよっ!!」


「いや~ん。怖~い」



貂蝉は身体をクネクネさせてワザとらしい反応をし、それを見た零治は更に逆上する。



「殺すっ!!」



このままでは本当に零治は貂蝉を殺してしまいかねない。そう判断した亜弥は素早く零治を背後から羽交い絞めにし、落ち着くように言い聞かせる。



「だから荒事はやめてくださいっ! とにかく一度落ち着いてくださいよっ!!」


「ぜぇ、ぜぇ……ぜぇ……っ!」



零治は肩で激しく息をし、なんとか気持ちを落ち着けて踏みとどまる。



「零治。買い物に関してはここで済ませますよ」


「なんだとぉ!?」


「話は最後まで聞いてください。そのかわり出来るだけ手早く済ませます。奈々瑠達もあの有様ですからね……」


「…………」



亜弥は零治にそう聞かせるが、当の本人はまだ納得のいかない顔である。



「それでも不安なら、私達が下着を選んでる間、貴方が彼に眼を光らせてればいいでしょう?」


「……別の店に……」


「却下です」



亜弥はピシャリと言い放つ。

この決定はもはや覆る事は無いだろう。零治は諦めたようにガックリと頷く。



「……分かった」


「話はまとまったかしらん?」


「ええ。では貂蝉、下着を幾つか拝見させてもらいますね」


「ええ、どうぞ。うちの店は品揃えには自信があるわよん♪」


「ふふっ。なら期待させてもらいましょうか。それと試着室はどこですか?」


「ああ、それならこの先の奥に有るわよ」



貂蝉はそう言いながら店の奥を指差す。



「どうも。……ほら、二人とも行きますよ?」


「は、はい……」


「…………」



亜弥について来るように促され、奈々瑠と臥々瑠は貂蝉の様子を窺いつつ、壁を背にして、そのまま張り付きながら横ばいに移動を始める。

正直、大袈裟すぎとも思えるのだが、奈々瑠と臥々瑠にとって貂蝉がそれほど異様な存在だと認識されているのが見て取れる。



「零治。意見が訊きたいときは呼びますから、貴方は試着室の手前で待機しててください」


「へ~い……」


「うふふ。ごゆっくり~」


(こんな奴と二人っきりなんて勘弁してくれ……)



零治は胸中で呟きながら、ウンザリした表情でガックリと項垂れる。


………


……



「奈々瑠。貴方にはこれが似合うと思いますが?」


「あっ、いいですね~。すごく可愛いです」


「臥々瑠は……これなんかどうです?」


「そんなヒラヒラしたのなんか穿きたくないよ~。……アタシはこれでいい」


「ちょっ!? それボクサーブリーフじゃないですか!? なんでそんな物がこんな所に……」


(ボクサーブリーフ? ここって中国だよなぁ……?)



零治は首を傾げる。この時代、それも古代の中国にボクサーブリーフなんか存在していないはずなのだからそう思うのも無理はない。

この場合、店主である貂蝉に話を訊けば早いのだろうが、零治は貂蝉に関わりたくないので話しかけようとはしなかった。



「アンタってホント女らしさの欠片も無いわねぇ……」


「別にいいじゃん。動きやすいし」


「あっそ。……姉さんは……これなんかどうですか?」


「う~ん、デザインは悪くないんですが……ちょっと胸が……きついですね」


(羨ましいっ!!)



試着室からは女の子らしい会話が聞こえてくる。そしてそれは、試着室の手前で待機している零治の耳のも当然入ってくるのだが、当の本人は健全な男子らしい反応はせず、それどころか苛立ちを募らせ、足で床を一定のリズムで叩き始めていた。



(ったく! 早くしてくれよっ!!)


「あらあら。そんなにイライラしちゃダメよ。女の子の買い物は長いんだからん」


「おい、あまり近寄るな……」



貂蝉が苛立ってる零治をなだめながら近寄ってくるが、零治は関わり合いを持ちたく無いようで、スゥッと横にスライドして貂蝉から距離を取る。



「あらん。つれない人ねぇん」


(いちいちシナを作りながら答えるなっ! キモいわっ!!)


「ねえ、ちょっと質問してもいいかしらん?」


「なんだよ……?」


「零治ちゃんとあの銀髪のお嬢さんって恋人同士なの?」


「違う。って言うか、気安く人の名前を呼ぶな……」


「あん、堅い事を言わないの。じゃあ、今付き合ってる人とかは居るの?」


「はぁ……。いや、居ないが……なんでそんな事を訊く?」


「うふふ♪ 気にしないで♪」



貂蝉は不気味な笑いを漏らして、零治に意味深な視線を向ける。



「おい……オレにそっちの気は無いからな。妙な真似したら、どうなるか分かってんだろうなぁ……?」



零治は貂蝉がどういう人種なのか今の反応で即座に悟り、叢雲の鞘に手をかけ、殺気の籠もった視線で睨み付けながら脅しをかける。



「もう、短気な人ねぇん。そんなにカリカリしてたら女の子に嫌われちゃうわよん?」


(誰のせいだと思ってんだっ!?)


「零治~。ちょっとこっちに来てくれますか~?」



零治が今にも爆発しそうな怒りに耐えていた時、試着室から亜弥が呼びかける。



「連れが呼んでるから行かせてもらうぞ……」


「ええ、どうぞ。零治ちゃん、あの娘達を傷つけるような事言っちゃダメよ?」


「うるせぇぞ。この筋肉達磨……」



零治は忌々しげに毒づいて試着室の方に移動する。



「おいっ! まだ終わらねぇのかよっ!?」


「いきなりソレですか……?」



零治の態度に亜弥は呆れた視線を向ける。



「オレはもう一秒たりともアイツと同じ空間に居たくないんだよっ! それに身の危険も感じてるんでな……」


「身の危険?」


「あの筋肉達磨は……ゲイだ……」


「まあ、それはさて置き」


「さて置くな……」


「まあまあ。それより貴方の出番ですよ。意見を訊かせてください」


「はいはい……」


「奈々瑠~。出てきても構いませんよ」


「は、はい……」



か細い声で返事をした奈々瑠が試着室から下着姿で、オドオドしながら出てくる。



「どうです?」


「…………」


「に、似合ってますか……? 兄さん……」



淡い水色の下着を着けた奈々瑠が、はにかみながら零治に聞く。



「…………」


「に……兄さん……?」



零治が無言なので、奈々瑠の表情に不安が浮かぶ。



「よく似合ってるじゃないか」


(……よかったぁ。似合ってないのかと思っちゃった)



零治の感想を聞き、奈々瑠の不安は一気に吹っ飛び、安堵の……いや、キラキラと輝いた恋する乙女の笑顔になった。



「じゃあ、私はこれにします!」



奈々瑠は満面の笑顔で言う。零治に似合ってると言われたのがよほど嬉しかったのがのだろう。



「なら、奈々瑠はそれに決まりとして、次は臥々瑠なんですが……」


「どうせそのボクサーブリーフにするんだろ?」



零治は臥々瑠が手に持ってる下着を指差しながら言うと、臥々瑠も軽く頷く。



「うん」


「なら、オレの意見は必要ないだろ?」


「まあ、本人が良いって言うんなら別に構いませんが……。なら、後は私だけですね。しばしお待ちを」



亜弥は零治達にそう告げ、試着室に入る。



「二人とも、他には選ばなくていいのか?」


「大丈夫です。もう何着か決めてますから」


「アタシはこれ以外に要らないし」


「そうか」


「お待たせしました」



そこへ、きわどいデザインの黒色の下着姿の亜弥が試着室から出て来た。

上のブラジャーは普通の形はしているものの、布の面積が通常の物の半分ぐらいしかないため、大きな胸が今にも零れ落ちそうである。下の方も布地が必要最低限の部分を隠すほどしかないので、この調子では後ろもどうなっているのかはある程度の予想がつく。



「おおっ! すご~い」


「お、大きい……」



言わなくても分かると思うが、奈々瑠が大きいと言ってるのは亜弥の胸の事である。



「…………」


「フッ。どうですか、零治?」



亜弥はその場でクルリと一回転して後姿も披露して、ビシッとモデルのようなポーズを取る。

その時一瞬だけ見えたのだが、案の定、下の方の後ろはTバックだった。

亜弥は自分のスタイルに余程の自信が有るのだろう。でなければこんな過激な下着を進んで身に着けるはずがない。



「はいはい。よく似合ってるぞー」


「おもいっきり棒読みじゃないですかっ!」



亜弥は零治の態度に憤慨する。



「そう怒るなよ。似合ってるってのはホントだぞ」


「まあ、それなら構いませんが……」



亜弥はいまいち納得のいかな表情をするが、とりあえず良しとすることにした。



(むぅ……これだけ過激な下着を見せても相変わらずの反応ですか。なら次はもっと……)


「なあ、今までずっと言いたかったんだが……」


「なんです?」


「男であるオレに、そうホイホイと下着姿を見せるのはどうよ……? しかもそんな過激な……」


「今更何を言ってるんですか? 私の下着姿なんか見慣れてるじゃないですか」


「おいっ! まるで普段からオレがお前の下着姿を見ているような言い方をするんじゃねぇ!!」


「ハハハ。冗談ですよ」


「ったく……」


「なら、私はこれにしましょう」


「じゃあ、全員決まったな?」


「ええ」


「はい」


「うん」


「なら、さっさと会計を済ませるぞ」



一同は試着室を後にし、会計を済ませに行く。



「は~い、お会計確かに。ありがとうございま~す♪」


「貂蝉。なかなかの品揃えでしたよ。また来ますね」


(ゲッ! マジかよ!?)


「うふふ。気に入ってもらえてうれしいわん♪ その時は零治ちゃんも一緒に来てねん♪」


「おや、いつから名前で呼び合う仲になったんです?」


「コイツが勝手に呼んでるだけだ……」


「ふむ……。貂蝉、私の事は亜弥と呼んでくれて構いませんよ」


「あらん、ありがとねん。ならついでに、そっちの可愛らしいお嬢さん達も名前を教えてくれないかしら?」


「「…………」」



二人は相変わらず貂蝉にビビりまくっていて口を開こうとしない。



「二人とも失礼ですよ。そんなに悪い人じゃないんですから」


(変態には違いないがな……)


「な、奈々瑠です……」


「が、臥々瑠……」


「奈々瑠ちゃんに臥々瑠ちゃんね? 素敵な名前じゃないの」


「ど、どうも……」


「あ、ありがと……」



二人は礼を言うものの、まだどこかぎこちない反応をする。



「おい。用は済んだんだから行くぞ」


「はいはい。では貂蝉、失礼しますね」


「ええ。また来てねん♪」


「兄さん。お腹空いた~」


「なら、どこかで飯にするか?」


「あっ、それならこの近くにいいお店がありますよ」


「じゃあ、そこで食事にしますか?」



零治達はそんな会話をしながら店を後にした。



「…………」



貂蝉は黙ったまま店の出入り口を見つめる。



「ふふ。零治ちゃんか……。それにしても驚いたわ。まさかこの外史の起点がご主人様以外にも居たなんてね。このままご主人様を捜しに行ってもいいのだけれど、彼の事も気になるし、もうしばらくはここに留まって様子を見るとしましょうかね」



貂蝉は誰に言うのでもなく、一人意味深な事を口にする。

と、その時、店の戸がゆっくりと開け放たれて、零治同様に全身黒ずくめの服装をした一人の男が来店する。



「いらっしゃいま……って、あら? これはまた随分と珍しいお客さんじゃないの……」


「…………」



貂蝉の視線の先に無言で佇む人物、それは……零治の宿敵、黒狼であった。

零治「やっぱりコイツも登場するんだな……」


作者「当然だ! 恋姫に貂蝉は欠かせないからな!」


亜弥「その事で思ってたんですが……」


作者「何だ?」


奈々瑠「やっぱり……あの話も?」


作者「あの話?」


臥々瑠「ほら、だいぶ後の方で兄さんが……」


作者「あぁ、アレね。当然だ。あの話はオレの力作だぞ」


零治「ほう、そうかい。ならばこの場でお前を締め上げて……」


作者「ぼ、暴力はダメよ! 暴力反対っ!!」


亜弥「零治、諦めなさい。醜態を晒す話を書かれたのは私も同じなんですから……」

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