第65章 燃え盛る鉄の城
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1944年4月14日 午後0時30分
ハワイ諸島 オアフ島沖合 太平洋上空
豊栄大日本帝国 第三機動艦隊 上空
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午前の激戦が嘘であったかのように、太平洋の太陽は痛いほどに白く、そして無慈悲に照りつけていた。
だが、その陽光を遮る巨大な黒い雲が、東の空から再び地平線を埋め尽くすようにして湧き上がってきたのである。
「……敵大編隊、接近! その数、およそ200機! 雲上より急降下爆撃隊、海面スレスレより雷撃隊が同時突入してきます!」
第三機動艦隊旗艦、装甲空母『鳳凰』の電探室で、レーダー員が悲鳴のような報告を上げた。
アメリカ合衆国第5艦隊司令官、レイモンド・エイムズ・スプルーアンス中将は、日本の機動部隊が放った午前中の波状攻撃によって空母『レキシントン(CV-16)』や『エセックス』が深刻な被害を受けたにもかかわらず、その攻撃の手を全く緩めようとはしなかった。アメリカが誇る「マニュファクチャリング・モンスター(大量生産の怪物)」は、工場のベルトコンベアから吐き出された無尽蔵の航空機と、促成栽培された若いパイロットたちを、消耗品として間断なくハワイの空へ投射し続けていたのである。
「迎撃の『天風』および『烈風』隊は、敵戦闘機の群れに完全に絡め取られています! 直掩の網を抜けて、敵の爆撃隊が本隊へ殺到します!」
第三機動艦隊の羅針艦橋で、飛行長の和田 鉄二郎中佐が血走った目で絶叫した。
「慌てるな。我々はこの日のために鋼鉄の城を組み上げたのだ。全艦、対空戦闘! 長10センチ高角砲、全門指向!」
第三機動艦隊司令長官、山口 多聞中将が軍刀の柄を握りしめ、冷徹な号令を下す。
『鳳凰』を取り囲むように輪形陣を敷いていた高速戦艦『榛名』『霧島』、そして多目的航空巡洋艦『最上』『三隈』などの護衛艦艇から、一斉に猛烈な対空砲火が打ち上げられた。オレンジ色の曳光弾と黒い爆発の雲が、第三機動艦隊の上空に分厚い「弾幕のドーム」を形成する。
だが、アメリカのパイロットたちもまた、自らの分厚い装甲を信じ、死を恐れぬ特攻まがいの突撃を敢行してきた。
「ジャップの対空砲火を恐れるな! デトロイトが造り上げたこの『野獣』の装甲は、豆鉄砲では抜けないぞ! ダイブブレーキを開け!」
合衆国海軍・第18急降下爆撃飛行隊の編隊長、ロバート・M・ハンター少佐が、愛機である『SB2Cヘルダイバー』の操縦桿を力任せに前へ押し込んだ。高度4,000メートルから、数十機のヘルダイバーがサイレンのような風切り音を轟かせながら、完全な垂直ダイブを開始した。
同時に、海面スレスレの超低空からは、合衆国海軍・第15雷撃飛行隊の隊長、ウィリアム・T・シェパード少佐が率いる『TBFアベンジャー』の大編隊が、白い航跡を引きながら日本の空母群へと肉薄する。
「目標、輪形陣中央のジャップの空母! 十字砲火で土手っ腹を抉り取れ!」
彼らの照準の先にあったのは、装甲空母『鳳凰』ではなく、その斜め後方を航行していた中型正規空母『雲龍』であった。
「敵急降下爆撃機、本艦の真上! さらに右舷方向より敵雷撃隊、距離2,000!」
『雲龍』の羅針艦橋で、見張員が絶叫する。
第三機動艦隊 中型空母『雲龍』艦長である山口 伝一大佐は、上空から隕石のように迫り来る黒い機影と、海面を這い寄る魚雷の航跡を同時に視界に捉え、即座に回避の号令を飛ばした。
「面舵一杯! 回避しろ! 対空機銃、全門上へ向けろ!」
『雲龍』の基準排水量1万7000トンの艦体が、34ノットの猛スピードのまま激しく右へ傾き、海面を泡立てて急旋回を試みる。飛行甲板の両舷に配置された25ミリ三連装機銃が、銃身を真っ赤に焼きながら必死の弾幕を張り巡らせた。
ダダダダダダダッ!!
数機のアベンジャーが機銃弾を浴びて空中で爆散する。しかし、アメリカ軍の圧倒的な物量は、数機の犠牲など最初から計算に組み込んでいた。
「装甲空母じゃない、通常の空母だ! 甲板をブチ抜けば火だるまになるぞ! 爆弾、投下!」
高度わずか500メートル。ハンター少佐が投下レバーを引いた瞬間、重量2,000ポンド(約900キロ)の巨大な徹甲爆弾が機体から切り離され、『雲龍』の飛行甲板へと真っ直ぐに突き刺さった。
ズドガァァァァァァンッ!!!!
凄まじい衝撃波が『雲龍』の艦体を根本から揺るがした。
アメリカ軍の2,000ポンド爆弾は、防御力の薄い木張りの飛行甲板をティッシュペーパーのように貫通し、艦の心臓部である上部格納庫のど真ん中で炸裂したのである。
「格納庫で大爆発! 第2エレベーター吹き飛びました!」
「火災発生! 航空ガソリンと魚雷に引火ッ!」
艦橋にいる山口伝一大佐の足元が跳ね上がり、乗員全員が床に叩きつけられた。
日本の通常空母が抱える致命的なアキレス腱。それは、艦載機の搭載量を極限まで増やすために密閉式格納庫を採用し、かつ飛行甲板に防御力を持たせていないことであった。爆弾が格納庫内で炸裂した瞬間、そこに満載されていた高オクタンの航空ガソリンと、出撃待ちであった『流星』に懸架されていた魚雷や爆弾が、次々と連鎖的な大誘爆を引き起こしたのである。
ドドォォォォンッ!! ズガァァァンッ!!
巨大な火柱が『雲龍』の飛行甲板を突き破り、数百メートルの高さまで黒煙のキノコ雲を噴き上げた。分厚い鉄の甲板がめくれ上がり、燃え盛る航空機が次々と海へと滑り落ちていく。
さらに最悪なことに、急旋回で速力を落としていた『雲龍』の右舷水線下に、シェパード少佐が放った『Mark 13航空魚雷』が2本、立て続けに突き刺さった。
「右舷水線下に魚雷命中! 機関区画浸水! 速力低下します!」
「消火班、急げ! 隔壁を閉鎖し、スプリンクラーを全開にしろ! 弾薬庫への注水急げ!」
山口大佐が血を流しながら怒鳴るが、艦内の状況はすでに絶望的であった。
アメリカの『エセックス級』空母が、区画を細分化し、大火災を数十時間で鎮火させる強靭なダメージコントロール能力を持っているのに対し、日本の中型空母は軽量化と引き換えに火災に対する脆弱性を極限まで高めてしまっていたのだ。
「ダメです! 消火パイプが爆発で切断されました! 水圧が上がりません!」
「第1格納庫の火災、抑えきれません! 弾薬庫の温度が急上昇しています!」
艦内から逃げ出してきた整備兵たちが、炎に包まれて甲板をのたうち回っている。
『雲龍』の巨体は完全に足を止め、右舷へ大きく傾斜しながら、天を焦がす巨大な火葬の山と化していた。
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同日 午後1時45分
アメリカ合衆国 第5艦隊 旗艦『タイコンデロガ』
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「第18急降下爆撃飛行隊より報告! ジャップの中型空母1隻(『雲龍』)に爆弾および魚雷複数命中! 敵空母は大火災を起こし、完全に沈黙しました!」
旗艦『タイコンデロガ』のCIC(戦闘指揮所)で、通信参謀が歓喜の声を上げた。
スプルーアンス中将は、海図台に両手をつき、冷徹な表情のまま小さく頷いた。
「犠牲を払った甲斐があったな。ジャップの機動部隊は無敵ではない。奴らの空母は職人技で作られた精緻な芸術品だが、装甲の薄い箇所を上からブチ抜けば、火だるまになって沈むただの鉄の箱だ」
だが、スプルーアンスの顔に安堵の色はなかった。
アメリカ軍が日本の空母を沈めたということは、日本軍もまた、同じかそれ以上の殺意をもって、アメリカの空母群へ報復の波状攻撃を仕掛けてきているということである。
「司令官! 西方より、敵の新たな攻撃隊が接近中! 数、およそ150機! ジャップの第四機動艦隊から放たれた第三波です!」
レーダー員の絶叫が響き渡る。
「全艦、対空戦闘! VT信管の弾幕を張れ! ヘルキャット隊は敵の雷撃機を水際で叩き落とせ!」
スプルーアンスの号令とともに、アメリカ第5艦隊の『エセックス級』空母群を取り囲む数十隻の巡洋艦と駆逐艦から、一斉に5インチ両用砲が火を噴いた。空中で自動起爆する悪魔の兵器「VT信管」が、黒い爆発の壁を形成する。
しかし、その黒い壁の向こう側から突入してきたのは、アメリカの防空網を嘲笑うかのような「銀色の欺瞞」であった。
「……まただ! ジャップの偵察機が、上空から無数の金属片を散布しています! 我々のVT信管が、空中で勝手に誤爆を繰り返しています!」
アメリカの誇る電子信管は、美濃の竹中数理演算所が解析し、正確な波長で切断された数百万枚の「電波欺瞞紙」によって完全に幻惑され、日本の攻撃隊が到達する遥か手前で無害な花火として自壊していった。
「敵の対空弾幕に風穴が開いたぞ! 突入しろ!」
第四機動艦隊 第4航空戦隊の攻撃隊長、関 衛少佐の号令とともに、雲海を割って姿を現したのは、2000馬力級の発動機を積み、魚雷と爆弾の両方を同時に抱えて飛来した岐州重工製の究極の雷爆統合機、四三式艦上攻撃機『迅星』の巨大な編隊であった。
「目標、右舷前方のエセックス級(『イントレピッド』)! 雷爆同時攻撃、開始!」
関少佐が率いる『迅星』の編隊が、圧倒的な速度でアメリカ艦隊の輪形陣へと殺到する。戦闘機並みの機動力で急降下と蛇行を繰り返し、アメリカのボフォース40ミリ機関砲の弾幕を紙一重で回避していく。
「面舵一杯! 回避しろ!」
新鋭大型空母『イントレピッド』の巨体が海を泡立てて急旋回を試みるが、関少佐ら日本の熟練パイロットたちが放った魚雷と爆弾の網の目を完全に逃れることは不可能であった。
ドゴォォォォォンッ!! ズドォォォォンッ!!
「左舷後部に魚雷1本命中! さらに飛行甲板前部に500キロ爆弾直撃!」
凄まじい衝撃波が『イントレピッド』の艦体を揺るがし、巨大な水柱と炎のキノコ雲が空母を包み込んだ。飛行甲板の分厚い鉄板がめくれ上がり、エレベーターが吹き飛び、格納庫で火災が発生する。
「やったぞ! 敵空母に命中!」
関少佐が歓喜の声を上げる。
だが、アメリカの「マニュファクチャリング・モンスター」の真の恐ろしさは、ここからであった。
「消火班、急げ! 燃料ラインのバルブを遮断しろ! スプリンクラー全開! 隔壁を油圧で即座に閉鎖しろ!」
炎上する『イントレピッド』の艦内で、アメリカのダメージコントロール要員(ダメコン班)たちが、炎と煙の猛威に怯むことなく、マニュアル化された完璧な消火作業を開始した。燃え盛る機材や航空機は、被弾を恐れずにブルドーザーでそのまま海へ蹴り落とされ、浸水した区画は油圧隔壁によって瞬時に封じ込められる。
日本の空母『雲龍』が致命傷を負ったのとほぼ同等の被害を受けながらも、アメリカの空母ではわずか数十分のうちに火災が鎮火へと向かいつつあった。
「……沈まないだと? あれだけの魚雷と爆弾を食らって、まだ微速で陣形を維持しているぞ!」
上空からその光景を見た関少佐が、驚愕に目を見開いた。
アメリカのエセックス級空母は、区画の細分化と徹底的な防火システムによって「絶対に致命傷を負わない不沈の箱」として設計されていたのである。一撃で空母を海の底へ沈めるという日本軍の期待は、アメリカの強靭なダメージコントロール能力の前に、見事に打ち砕かれた。
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同日 午後3時
ハワイ諸島 オアフ島沖合 激突空域
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空母同士が互いに爆弾と魚雷を叩き込み、燃え上がる残骸が海面を覆う中、ハワイの上空数千メートルでは、日米の戦闘機同士による「純粋な削り合い」が極限の疲労状態のまま継続されていた。
「クソッ、落としても落としても湧いてきやがる! アメ公の空母には無限に戦闘機が積んであるのか!」
第二機動艦隊 第2航空戦隊の制空隊長、岩本 徹三少佐は、愛機である四二式艦上戦闘機『天風』の風防越しに汗を拭い、荒い息を吐いた。
彼の周囲には、アメリカ合衆国海軍・第8戦闘飛行隊長であるジョン・M・テイラー大尉が率いる『F6Fヘルキャット』の群れが、まるで銀色の壁のように立ちはだかっていた。
「ジャップのエースを孤立させろ! 教本通りにサッチ・ウィーブを展開しろ!」
テイラー大尉の冷徹な指示のもと、アメリカの若きパイロットたちは個人の技量に頼ることなく、常に二機一組の編隊を維持し、相互に死角をカバーし合う十字の機動を描きながら突入してくる。
ダダダダダダッ!!
F6Fの6門のブローニング12.7ミリ重機関銃が、猛烈な火線を「面」として空間にばら撒く。
「させるか!」
岩本少佐は、2500馬力の超大出力エンジンを全開にし、圧倒的な加速力でF6Fの弾幕を強引に突破した。機首の30ミリ大口径機関砲が火を噴き、テイラーの僚機の分厚い装甲板を叩き割って火だるまに変える。
しかし、一機を撃墜した直後、即座に死角から別のF6Fが岩本の『天風』へ向けて機銃掃射を浴びせかけてきた。
カンカンカンッ!
曳光弾が『天風』のエンジンカウルに命中したが、越前松平製の防弾鋼板が火花を散らしてこれを弾き返す。日米双方の「重装甲化」と「大馬力化」が行き着いた結果、空戦は一撃で決着がつく華麗なドッグファイトではなく、互いの機体の装甲を限界まで削り合う、泥沼の消耗戦と化していたのである。
パイロットたちの肉体と精神は、すでに限界を迎えつつあった。
岩本少佐も、テイラー大尉も、極度のG(重力加速度)と緊張によって視界が赤く染まる「レッドアウト」や「ブラックアウト」を繰り返し、血の滲むような思いで操縦桿を握りしめていた。
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同日 午後4時30分
第三機動艦隊 旗艦 装甲空母『鳳凰』
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夕闇が迫る太平洋の海原。
第三機動艦隊の陣列の最後尾では、大破炎上した中型空母『雲龍』が、ついにその命脈を絶とうとしていた。
「……『雲龍』、総員退艦を開始。沈没は免れません」
羅針艦橋で、通信士が苦渋に満ちた声で報告した。
山口多聞中将は、双眼鏡越しに燃え落ちていく自軍の空母を睨みつけ、深く、重い息を吐き出した。
「アメリカの大量生産が吐き出した『数』と『装甲』の暴力。それがついに、我が国の職人技の防空網を食い破り、肉を削ぎ落としに来たか」
山口中将の背後で、和田鉄二郎飛行長が沈痛な面持ちで進言する。
「長官。パイロットたちはすでに三度の出撃をこなし、極度の疲労状態です。これ以上の連続出撃は、未帰還機を増やすだけです。一度艦隊を後退させ、戦力の再編を……」
「退く必要はない」
山口の眼光に、猛将としての獰猛な炎が燃え上がった。
「アメリカの消火ポンプの水が枯れるまで、上から爆弾を降らせ続けるのだ。休むな! 稼働可能なすべての機体を空へ上げろ! 第五次攻撃隊を編成せよ!」
「長官……!」
「出撃させろ!」
山口は、通信管に向かって吠えた。
「アメリカの工員が工場で安全に汗を流している間に、我々はこの海で血と命を削って奴らの生産力を叩き割るのだ! 息をつかせるな、敵の甲板が完全に燃え落ちるまで、上から爆弾を降らせ続けろ!」
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同日 午後5時
アメリカ第5艦隊 旗艦『タイコンデロガ』
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一方、アメリカ第5艦隊の司令部もまた、狂気的な出血を強いられる極限状態にあった。
「『イントレピッド』、火災は鎮火しましたが、飛行甲板の損傷が激しく発着艦不能! 『レキシントン』にも魚雷1本命中! 護衛の戦艦『インディアナ』が大火災を起こし戦列を離脱しました!」
旗艦『タイコンデロガ』のCICは、絶え間なく届く悲鳴のような被害報告と、間断なく響き渡る対空砲火の轟音によって、完全に狂乱の坩堝と化していた。
スプルーアンス中将は、スプリンクラーの水と煤にまみれた海図台の前に立ち、双眼鏡で燃え盛る自軍の艦隊を絶望的な目で見つめていた。
日本の猛禽たちは、VT信管の弾幕をチャフで無効化し、死を恐れずに次々と超低空から肉薄してくる。アメリカ軍が誇った数百機のF6Fヘルキャットも、『天風』の圧倒的な性能と日本の熟練パイロットの前に、すでにその半数近くが火だるまとなって海に消えつつあった。
「司令官! このままでは艦隊が全滅します! 一度東へ後退し、西海岸からの増援を待つべきです!」
参謀が血を吐くような声で進言する。
「退く? どこへ退くというのだ!」
スプルーアンスは、血走った眼で参謀を怒鳴りつけた。
「ここで背を向ければ、足の遅い上陸輸送船団の数万人の海兵隊員が、残らずジャップの航空機に背中から食い殺される! 新鋭戦艦『アイオワ』『ニュージャージー』を前面に押し出せ! 空母の盾となって、ジャップの魚雷をすべてその分厚い装甲で受け止めろ!」
もはや戦術すら崩壊した、極限の死闘。
装甲と消火能力で耐え凌ごうとするアメリカの巨大な鉄の浮城と、銀色の欺瞞紙で防空網をこじ開け、自らの血を流してでも飽和攻撃によって完全にすり潰そうとする日本の猛禽たち。
ハワイ沖の海は、文字通りの煮え滾る地獄の釜へと変貌し、日米双方の血と鉄が際限なく消費される「空母決戦の極致」は、決着の天秤をどちらにも傾かせることなく、ただ狂気的な夕闇の底へと続いていくのであった。




