幕間8 1943年9月末 日米太平洋艦隊 布陣
【豊栄大日本帝国海軍布陣】
帝国海軍は、これまで太平洋とインド洋に分散していた外洋機動航空艦隊の「全質量」を一挙に太平洋へ結集させた。しかし彼らは、アメリカの圧倒的な物量と正面から殴り合う愚は犯さない。米主力艦隊をタラワで釘付けにし、その裏でハワイとミッドウェイを直接攻略するという、計画を立案していた。
1. 第一艦隊(ハワイ真珠湾沖 戦略打撃部隊)
開戦以来、ハワイ沖で米太平洋艦隊を金縛りにし続けてきた「絶対抑止の盾」が、一切の戦力をタラワへ分遣することなく、その全巨砲を真珠湾の物理的解体のために振り下ろす「殲滅の矛」へと転化した。
司令長官:松平保男 大将
展開位置:ハワイ・オアフ島沖合 攻撃機動海域
【編制艦艇】
第1戦隊(超弩級戦艦部隊):戦艦『大和』(旗艦)、『武蔵』、『信濃』、『甲斐』、『紀伊』
46センチ(18インチ)三連装砲3基9門を戴く基準排水量6万4,000トンの巨城が5隻。計45門の巨砲は、真珠湾の残存艦隊だけでなく、ドックや燃料タンクといった米軍のインフラそのものを地図から抹消する。
第2戦隊(準新鋭戦艦部隊):戦艦『長門』、『陸奥』
第4戦隊(重装甲巡洋艦部隊):重巡洋艦『高雄』、『愛宕』、『鳥海』、『摩耶』
第11戦隊(直衛防空巡洋艦部隊):防空巡洋艦『秋月』、『照月』、『初月』、『涼月』、『冬月』、『春月』、『宵月』、『夏月』
長10センチ高角砲の弾幕によって巨艦の頭上を覆う、ハリネズミのような対空の盾。
第17・第18駆逐隊:『雪風』『陽炎』など陽炎型駆逐艦8隻
第7航空戦隊(直衛防空空母群):防空軽空母『鳳翔』、『龍驤』、『龍鳳』
【搭載航空機(計90機)】
四〇式局地戦闘機『轟電改二』(艦載防空改造機) 54機
四〇式艦上戦闘機『烈風』 36機
純粋な水上砲撃部隊である第一艦隊の頭上を守るためだけに編成された防空専任部隊。攻撃機は一機も持たず、絶対的な防空傘を形成する。
2. 第二機動艦隊(ハワイ攻撃・第一艦隊直協支援部隊)
インド洋の制海権確保任務を二線級艦隊へ引き継ぎ、数ヶ月をかけて太平洋の西側から東進してきた帝国の「主矛」の一つ。洗練された空母打撃群のドクトリンを最も忠実に体現する。
司令長官:小沢治三郎 中将 / 首席参謀:古村啓蔵 大佐
展開位置:太平洋中部・ハワイおよびタラワを睨む北側機動海域
【編制艦艇】
第2航空戦隊(前衛・打撃混成空母群):装甲空母『大鳳』(旗艦)、大型正規空母『翔鶴』、中型空母『蒼龍』、『飛龍』、軽空母『飛鷹』
第3戦隊(高速戦艦部隊):戦艦『金剛』、『比叡』
第5戦隊(高速重巡洋艦部隊):重巡洋艦『妙高』、『那智』、『足柄』、『羽黒』
第2水雷戦隊:軽巡洋艦『能代』、夕雲型駆逐艦『夕雲』『長波』など8隻
【搭載航空機(計324機)】
四二式艦上戦闘機『天風』 72機
四〇式艦上戦闘機『烈風』 48機
三九式艦上攻撃機『流星』 108機
三八式艦上爆撃機『彗星』 54機
三六式艦上攻撃機『天山』 30機
四一式艦上偵察機『彩雲』 12機
3. 第三機動艦隊(タワラ救援・南翼)
第二機動艦隊と共に南太平洋の通商路遮断任務から転進。猛将・山口多聞が率いる、攻撃精神の権化とも言える切り込み部隊である。
司令長官:山口多聞 中将 / 首席参謀:鈴木義尾 大佐
展開位置:太平洋中部・タラワ救援に向けた南側機動海域
【編制艦艇】
第3航空戦隊(前衛・打撃混成空母群):装甲空母『鳳凰』(旗艦)、大型正規空母『瑞鶴』、中型空母『雲龍』、『天龍』、軽空母『隼鷹』
第11戦隊(高速戦艦部隊):戦艦『榛名』、『霧島』
第7戦隊(多目的航空巡洋艦部隊):航空巡洋艦『最上』、『三隈』、『鈴谷』、『熊野』
第10戦隊:軽巡洋艦『矢矧』、夕雲型駆逐艦『早波』など4隻、島風型超高速駆逐艦『島風』『嵐風』『疾風』『追風』4隻
【搭載航空機(計324機)】
四二式艦上戦闘機『天風』 72機
四〇式艦上戦闘機『烈風』 48機
三九式艦上攻撃機『流星』 108機
三八式艦上爆撃機『彗星』 54機
三六式艦上攻撃機『天山』 30機
四一式艦上偵察機『彩雲』 12機
4. 第四機動艦隊(ハワイ攻撃・第一艦隊直協支援部隊)
これまで本土・後方警戒部隊として温存されていたが、第一艦隊のハワイ総攻撃を支援するため、急遽第五機動艦隊から新造空母2隻を転属させ、さらに護衛艦艇を大幅に増強した超重量級の遊撃部隊[69]。
司令長官:立花宗紀 中将(立花家の末裔・「雷神」の血統)
展開位置:ハワイ方面・第一艦隊直協海域
【編制艦艇】
第4航空戦隊(増強空母群):装甲空母『白鳳』(旗艦)、大型正規空母『彩鶴』に加え、新編の第五機動艦隊から急遽引き抜かれた新造の大型正規空母『千鶴』、『真鶴』の計4隻。
超甲型巡洋艦部隊:高速戦艦『生駒』、『阿蘇』
31センチ砲9門を搭載し、33ノットの快速を誇る機動部隊直衛専用の新鋭艦。
第8戦隊(重巡洋艦部隊):重巡洋艦『利根』、『筑摩』、『青葉』、『衣笠』
第4・第11水雷戦隊(直衛増強部隊):軽巡洋艦『阿賀野』、『酒匂』、夕雲型駆逐艦『早霜』『秋霜』『清霜』『朝霜』、防空駆逐艦『秋月』型初期生産分など計16隻。
【搭載航空機(計336機)】
四〇式艦上戦闘機『烈風』 96機
三九式艦上攻撃機『流星』 168機
三八式艦上爆撃機『彗星』 48機
四一式艦上偵察機『彩雲』 24機
5. 第五機動艦隊(タワラ救援・北翼)
新造艦艇と最新鋭の航空機のみで再編された、極めて足の速い真新しい「剣」。タラワ周辺に釘付けとなっているアメリカ新鋭空母群の横腹を強襲する。
司令長官:真田 幸道 中将(真田家の末裔・六文銭の智将)
展開位置:ギルバート諸島・タラワ環礁周辺 逆包囲海域
【編制艦艇】
第5航空戦隊(新鋭空母群):装甲空母『瑞鳳』、『祥鳳』、中型快速空母『神龍』、『海龍』、『翔龍』の計5隻。
新鋭巡洋艦部隊:多目的航空巡洋艦『石狩』、『十勝』[75]、新造重巡洋艦『伊吹』、『鞍馬』
新鋭水雷戦隊:軽巡洋艦『大淀』、島風型超高速駆逐艦(第2次量産分)『北風』、『高風』、『大風』、『清風』など計12隻。
【搭載航空機(計336機)】
四二式艦上戦闘機『天風』 90機
四〇式艦上戦闘機『烈風』 60機
三九式艦上攻撃機『流星』 120機
三八式艦上爆撃機『彗星』 48機
四一式艦上偵察機『彩雲』 18機
6. 第六艦隊(太平洋逆包囲・隠密打撃部隊)
司令長官:清水光美 中将
編制:伊号第一潜水艦〜伊号第二十六潜水艦など、大型潜水艦計30隻以上
解説:ハワイからタラワにかけての海域に緻密な哨戒網を敷き、米艦隊の退路を海中から遮断する「見えない首輪」として機能する。
4. 第五艦隊(ミッドウェイ攻略部隊)
これまで本土や重要拠点の防衛を担っていた「動く洋上要塞」が、重い腰を上げて出撃。ハワイ攻略と連動し、ハワイまでの補給路を確保する。
司令長官:細萱戊子郎 中将
展開位置:ミッドウェイ環礁周辺
編制艦艇:
第5戦隊(重火力旧式戦艦):『扶桑』『山城』『伊勢』『日向』
計44門に及ぶ36センチ砲の圧倒的な面制圧力で、ミッドウェイの防衛陣地を粉砕する。
上陸輸送部隊:浅野港湾の高速揚陸艦群および財閥の武装開拓陸戦隊。
5. 第六艦隊
司令長官:清水光美 中将
編制:伊号第一潜水艦〜伊号第二十六潜水艦など、大型潜水艦計30隻以上
役割:ハワイからミッドウェイにかけて緻密な哨戒網を敷き、米本土からの増援艦隊を海中から遮断・雷撃する。
【アメリカ合衆国海軍 太平洋反攻布陣】
ヨーロッパ戦線の泥沼化に焦るルーズベルト大統領が、国家の全生産力を強制的に戦時体制へと移行させて生み出した、規格外の暴力の結晶。しかし彼らは、日本の「拘束」という罠に自ら飛び込み、タラワの環礁に全主力を吸い寄せられるという致命的な戦略的錯誤を犯していた。
1. タラワ強襲部隊(第5艦隊基幹・機動反攻艦隊)
日本の島嶼防衛線を力づくでこじ開け、国内の士気を高揚させるために編成された水陸両用強襲部隊。しかし、日本の地下要塞による凄惨な出血強要と、山口・真田の機動艦隊による巧みな「拘束戦術」によって、タラワ周辺に完全に釘付けとなっている。
司令官:フランク・J・フレッチャー 中将
展開位置:ギルバート諸島・タラワ環礁周辺
【編制艦艇】
機動空母打撃群(第11・第16・第18任務群):新鋭大型空母『エセックス』、『レキシントン(CV-16)』、『バンカー・ヒル』など数隻。大型正規空母『エンタープライズ』『サラトガ』『ホーネット』、新鋭軽空母(インディペンデンス級)『プリンストン』『ベロー・ウッド』など計8隻。
仕様:エセックス級は基準排水量2万7,100トン。油圧式カタパルト2基、5インチ両用砲12門を備え、ブロック工法で32隻が同時に起工・大量建造される消耗品ドクトリンの象徴。
艦砲射撃・直衛部隊(第64任務部隊):真珠湾攻撃を免れた旧式戦艦『コロラド』、『メリーランド』、『テネシー』など。
重巡洋艦、軽巡洋艦、およびVT信管(的近接信管)を搭載したフレッチャー級駆逐艦など数十隻が、空母の周囲に黒い爆発の壁を張る。
揚陸輸送部隊(第62任務部隊):無数の攻撃輸送艦およびLVT(水陸両用装軌車)を搭載した戦時標準船(リバティ船)群。
【搭載航空機(推定総計 約750機)】
F6Fヘルキャット戦闘機 約400機
2000馬力エンジンと極厚の防弾鋼板を備え、日本の戦闘機と強引な相撃ちを狙うための「空飛ぶ鉄の塊」。デトロイトの自動車工場ラインで月産540機という暴力的速度で粗製濫造されている。
SBDドーントレス急降下爆撃機 約200機
TBFアベンジャー雷撃機 約150機
2. 太平洋艦隊残存部隊(ハワイ真珠湾・防衛部隊)
司令長官:ハズバンド・キンメル 大将
展開位置:ハワイ・真珠湾内
編制:『メリーランド』『コロラド』級など旧式戦艦(修理・待機中)、および残存巡洋艦群。
解説:日本の第一艦隊の46センチ砲の射程内にあり、迂闊に出撃すれば即座に海の底へ沈められるという強烈な重圧のもとで身動きが取れない。さらにタラワへ主力を送ってしまった現在、彼らの頭上へ、第一艦隊の巨砲と第四・第五機動艦隊の新鋭空母群が、真珠湾の「完全攻略」を目指して殺到しようとしている。
3. 大西洋からの増援・戦略予備部隊
役割:太平洋での大規模攻勢を支えるため、大西洋側からパナマ運河を経由して順次投入される予備兵力。
編制:最新鋭戦艦『アイオワ』、『ニュージャージー』、『マサチューセッツ』などが急ピッチで大西洋から太平洋へ回航中。
解説:カイザー造船所をはじめとする米本土の巨大ドックから、エセックス級空母やフレッチャー級駆逐艦が狂気的なペースで続々と就役し、太平洋へ向けて押し寄せようとしている。しかし、ハワイとミッドウェイで今まさに開こうとしている「絶対殲滅戦」の火蓋には、時間的に間に合っていない。
【帝国の無尽蔵たる生産力:1943年9月末 建造・計画中艦艇大鑑】
タラワの海に「第五機動艦隊」という真新しい剣を吐き出したばかりの帝国全土の造船所群。しかし、彼らの巨大なドックは1日たりとも空になることはない。アメリカが『マニュファクチャリング・モンスター』として粗製濫造による質量を稼ぐのであれば、帝国は「究極の質を極限まで巨大化・最適化させた暴力」でそれをすり潰す。 1943年9月末現在、戦場の遥か後方で産声を上げようとしている、次世代の怪物たちの全容である。
■ 幕府直轄(天領・徳川派)建造・計画中
重防御・絶対制圧を至上命題とする幕府直轄の工廠では、大和型すら過去のものとする「化け物の系譜」が静かに鉄を纏いつつある。
第14号計画超弩級戦艦(超大和型)1番艦『駿河』 / 2番艦『美濃』
進捗:呉および横須賀のドックにて、基礎船体の組み立てと龍骨の据え付けが進行中。
解説:46センチ砲すらも凌駕する「51センチ(20インチ)連装砲」を戴く、究極の海戦決戦兵器。アメリカが1945年以降に投入してくるであろう『モンタナ級』などの新鋭戦艦群の装甲を、水平線の彼方から紙のように叩き割るために設計された。
第15号・第16号計画超弩級戦艦 3番艦『近江』 / 4番艦『筑前』
進捗:資材調達および専用巨大ドックの拡張が完了し、起工準備段階。
次世代大型防空巡洋艦(改秋月型)『満月』『清月』『大月』『白月』
進捗:舞鶴および長崎にて船体ブロックの溶接が急ピッチで進行中。1944年末の就役を目指す。
解説:第一艦隊の盾として活躍する『秋月型』の船体をさらに大型化。アメリカのエセックス級が放つ無数の艦載機を叩き落とすため、長10センチ高角砲と、黒田精機製の最新型電波探知機をハリネズミのように増載した「空飛ぶ要塞の天敵」である。
■ 海外領・財閥連合(航空主兵派)建造・計画中
外洋への拡張と強奪を担う外様財閥連合は、アメリカの圧倒的な航空戦力に対抗すべく、装甲と艦載機の世代交代を見据えた空母プラットフォームの超量産に突入している。
改鳳型超大型装甲空母(第130号艦型)『蒼鳳』『飛鳳』『天鳳』
進捗:島津重工(西国重工)にて基礎設計が完了し、起工準備段階へ移行中。
解説:装甲空母『大鳳』の実戦データを基に船体をさらに巨大化させ、飛行甲板の装甲厚を倍増させた「絶対不沈空母」。間もなく完成する2500馬力級戦闘機『天風』や、さらに先の未来で空を裂く『ジェット戦闘機』の運用を前提とした超高圧カタパルトを備える、1945年以降の外洋制圧の要石である。
鶴型大型正規空母 6番艦『若鶴』 / 7番艦『栄鶴』 / 8番艦『寿鶴』
進捗:豊秋津島から届く潤沢なボーキサイトと鋼材を用い、毛利・島津の工廠にて専用ドックの確保と龍骨据え付けが進行中。
島風型超高速駆逐艦(第3次・第4次超量産計画)
進捗:佐賀精密機械(鍋島家)が主導するブロック工法により、1944年以降に向けて十数隻規模での大量建造・順次進水が認可・進行中。
解説:次世代の機動部隊において、艦隊のベース巡航速度そのものを「40ノット」へと引き上げるための壮大な計画。アメリカの駆逐艦を置き去りにする速度で魚雷の壁を形成する。
次世代機動部隊旗艦用 軽巡洋艦(改阿賀野型)『仁淀』『吉野』『剣埼』
進捗:各工廠にて建造中。1944年の就役を目指す。
解説:時速800キロに達する次世代航空機や、40ノット超の駆逐艦群を最前線で統率するための「高速電脳巡洋艦」。美濃の竹中数理演算所が開発した最新型電子算盤を中核とした洋上管制室を持ち、情報処理能力でアメリカのCIC(戦闘指揮所)を凌駕する。
潜特型潜水艦(第十八号型特型潜水母艦)伊号第四百潜水艦〜
進捗:島津重工の地下ドックにて、極秘裏に複数隻が建造進行中。
解説:世界最大の「潜水空母」。耐圧格納筒を備え、特殊水上攻撃機『晴嵐』を3機搭載可能。太平洋の防衛戦とは別に、アメリカ東海岸やパナマ運河を直接打撃し、敵の兵站の心臓部を破壊することを企図した狂気の戦略兵器。
高速強襲揚陸艦(第一号型 / 第百一号型輸送艦)
進捗:瀬戸内海周辺の各ドック(浅野港湾等)で大量起工中。
解説:アメリカ軍のLST(戦車揚陸艦)の脅威を直接的に模倣・改良した国産強襲揚陸艦。浅野港湾と藤堂製作所が開発した「油圧バウ・ランプ(道板)」を備え、財閥の快速陸戦隊(鎮撫兵団)を敵海岸へ直接吐き出すためのプラットフォーム。
量産型海防艦(日振型・鵜来型)量産計画
進捗:佐賀精密機械が主導する「完全ブロック工法」により、艦首・機関・艦尾などの区画を別々の工場で製造し、船台で一気に溶接結合。驚異的なペースで大量進水中。
解説:アメリカの潜水艦(ガトー級)から帝国のシーレーンを死守するための、猟犬の究極量産モデル。
これら天文学的な数と質量を誇る新造艦群がドックから放たれる時、アメリカが信奉する「大量生産の暴力」は、帝国の「質の暴力」の前に真の絶望を知ることになるのである。




