幕間5 アメリカ合衆国海軍 配置・装備編成大鑑(1943年2月現在)
【米国太平洋艦隊(対・豊栄大日本帝国戦線)】
アメリカ合衆国が世界に誇る「マニュファクチャリング・モンスター(大量生産の怪物)」としての全質量を太平洋へと投射し、豊栄大日本帝国の生命線である「絶対防衛圏」と「海上シーレーン」を物理的にすり潰すために編制された巨大なハンマー。
職人技と極限の規格化(堺公差)を融合させた日本の二重軍備に対し、アメリカは「未熟な工員でも組み立て可能」「兵器は損耗を前提とした使い捨て」というデトロイトの自動車工場方式を全面転用。天文学的な数の兵器と兵員を怒涛の如く前線へ送り込み、敵の精鋭部隊を物理的な物量差で窒息させることを至上命題としている。
■ 太平洋反攻軍(第61・第62・第64任務部隊 )
戦略目標:ソロモン海域攻略
司令官:フランク・J・フレッチャー 中将
1943年2月、ルーズベルト大統領の宣戦布告と同時に発動された「飛び石作戦」の第一撃として、日本の絶対防衛圏の突端であるソロモン諸島ガダルカナルへ突入した、新鋭艦艇を中心とする巨大な機動反攻艦隊。日本の「三つの槍(第一艦隊・第三機動艦隊・第四機動艦隊)」と正面から激突し、人類史上空前の物理質量の衝突を引き起こした。
【機動空母打撃群(第11・第16・第18任務群)】
新鋭大型空母(エセックス級) 3隻:エセックス / コロンビア(CV-10) / イントレピッド
大型正規空母(ヨークタウン級・改レキシントン級) 3隻:エンタープライズ / サラトガ / ホーネット
新鋭軽空母(インディペンデンス級) 2隻:プリンストン / ベロー・ウッド
[搭載航空機 総計:594機]
F6Fヘルキャット戦闘機 288機
SBDドーントレス急降下爆撃機 162機
TBFアベンジャー雷撃機 144機
日本の重防御・高機動を誇る装甲空母や正規空母群に対抗するため、ワシントン条約の制限をかなぐり捨て、合衆国の工業力のすべてを注ぎ込んで急速・大量建造された「エセックス級」を惜しげもなく最前線へ投入した空母打撃群。「沈んでも次が来る」という空母すら消耗品として扱う恐るべきドクトリンの象徴である。
上空を覆う288機の『F6Fヘルキャット』は、洗練された空力設計を持たない代わりに、巨大な2000馬力級発動機と過剰なまでの極厚防弾鋼板を備え、流れ作業で1日に数十機が粗製濫造されている。この機体の唯一にして最大の目的は、日本の『烈風』などの熟練パイロットに強引な相撃ちを強要し、補充の利かない日本の航空戦力を物理的にすり減らして窒息させる「消耗戦」の強要にあった。
【艦砲射撃および直衛部隊(第64任務部隊)】
司令官:ウィリス・A・リー 少将
新鋭戦艦 5隻:ノースカロライナ / ワシントン / サウスダコタ / インディアナ / マサチューセッツ
重巡洋艦 8隻:サンフランシスコ / ソルトレイクシティ / ミネアポリス / ニューオーリンズ / ポートランド / アストリア / ヴィンセンス / クインシー
防空軽巡洋艦 6隻:アトランタ / サンフアン / サンディエゴ / ジュノー / ヘレナ / ボイシ
駆逐艦 36隻:フレッチャー級18隻(フレッチャー、ラドフォード、ジェンキンス等)、グリーブス級18隻(グリーブス、グウィン、メレディス等)
空母群の盾として前衛に配置された艦砲射撃および防空部隊。新鋭戦艦5隻が40.6センチ(16インチ)砲の全火力を上陸地点へ叩き込み、日本の飛行場インフラを更地にする役割を担う。同時に、これら直衛艦艇は全艦が最新の対空・対水上レーダー(CXAMやSCレーダー)を装備。12.7センチ両用砲には、目標に直撃せずとも電波の反射で自動炸裂する電子技術の結晶「VT信管(的近接信管)」が装填されており、突入してくる日本の『天山』や『彗星』をハリネズミのような防空火網で叩き落とす絶対的な防空陣形を形成していた。
【揚陸および輸送部隊(第62任務部隊)】
攻撃輸送艦および戦時標準船(リバティ船) 82隻
上陸侵攻部隊:アメリカ第1海兵師団 3万2,000名
揚陸支援装備:M4シャーマン中戦車 120両、LVT水陸両用車 84両、155ミリ榴弾砲 72門
兵員から戦車、ブルドーザー、さらには前線基地建設用のセメント資材に至るまでを、天文学的な速度で建造される使い捨て輸送船「リバティ船」に詰め込み、敵の海岸へそのまま押しつける巨大な兵站部隊。M4シャーマン中戦車は、フォードやゼネラルモーターズといった自動車産業のラインをそのまま転用して量産され、日本の『三五式中戦車改』に見られるような職人技はないものの、部品の完全互換性と「数の暴力」で戦場のあらゆる場所を埋め尽くす。
■ 太平洋艦隊主力(ハワイ・真珠湾 待機部隊)
戦略目標:ハワイ防衛
司令長官:ハズバンド・キンメル 大将
日本の第一艦隊(大和、武蔵、信濃、甲斐)によって公海上から真珠湾に押し込められ、一歩も動けないまま完全に「金縛り」に遭っている、開戦時からの米海軍旧式主力部隊。政治的な理由(先に手を出せば不法な侵略となる)と、物理的な理由(大和の46センチ砲の圧倒的射程)により、艦隊保全主義の檻に縛られ続けている。
【戦艦打撃部隊(バトルシップ・ロウ待機)】
戦艦 8隻:メリーランド / コロラド / ウェストバージニア / テネシー / カリフォルニア / ペンシルベニア / ネバダ / オクラホマ
合衆国が誇る14インチ〜16インチ砲搭載の標準型戦艦群。長きにわたり太平洋の覇権を象徴する存在であったが、ハワイ沖に遊弋する日本の「46センチ(18インチ)巨砲」の圧倒的アウトレンジ射程に睨まれているため、真珠湾から出港した瞬間に海の底へ沈められる運命にある。事実上の「洋上固定標的」と化している。
【巡洋艦および水雷戦隊】
重巡洋艦 4隻:チェスター / ペンサコーラ / ソルトレイクシティ(同型艦) / ノーザンプトン
軽巡洋艦 8隻:ホノルル / ローリー / デトロイト / リッチモンド / トレントン / コンコード / オマハ / シンシナティ
駆逐艦 24隻:マハン級8隻、ファラガット級8隻、ポーター級8隻
戦艦群の護衛および機動打撃を担うはずであった部隊だが、主力戦艦が身動きが取れないため、同様に湾内およびハワイ近海での対潜哨戒と護衛任務に完全に釘付けとなっている。
【ハワイ基地航空隊】
PBYカタリナ大型飛行艇 48機
B-17爆撃機 36機
P-40戦闘機 72機
日本の第一艦隊を監視するため、オアフ島・フォード島海軍航空基地等に展開する航空戦力。大和型戦艦への攻撃命令は下されていないが、常に緊迫した対峙を続けている。
■ 第7艦隊(南西太平洋方面・豪州戦線)
戦略目標:英連邦租界救援
司令官:アーサー・カープマンドル 中将(※代行)
豊秋津島の東海岸に孤立する英連邦租界への救援および補給を企図して急遽編成された部隊。フィジーを拠点として活動するが、日本軍の絶対防衛戦に阻まれている。
【配備戦力】
重巡洋艦 2隻:オーストラリア(豪海軍) / キャンベラ(豪海軍)
重巡洋艦 1隻:シカゴ(米海軍)
軽巡洋艦 4隻:ホバート(豪海軍) / パース(豪海軍) / フェニックス(米海軍) / マーブルヘッド(米海軍)
駆逐艦 12隻:クレムソン級等、米豪混成部隊
潜水艦部隊 24隻:ガトー級 16隻 / サーゴ級 8隻
日本軍のニューカレドニアおよびニュージーランドの電撃的奪取によって、シドニーへの海上ルートは完全に遮断され、手出しできない状態に追い込まれている。水上部隊は外洋への進出を諦め、現在は24隻の潜水艦部隊を用いて、日本の海上護衛総隊が護るシーレーンを脅かそうと試みている。しかし、鍋島家の佐賀精密機械がブロック工法で超量産した日本の『海防艦』部隊が敷くソナーと爆雷の厚い壁の前に、潜水艦の未帰還率が跳ね上がり、苦戦を強いられている。
■ 海軍建設工兵大隊
前線基地の滑走路や港湾を、大型土木重機を用いて急速構築する建設・土木のプロフェッショナル部隊。将来の対日大反攻の拠点とするため、極秘裏に南太平洋へと派遣されていた。
【人員および鹵獲された重機群】
建設工兵(第1特別設営大隊): 2,400名
キャタピラー社製D8ブルドーザー: 45台
モータースクレイパー(牽引式土木機械): 24台
大型牽引トラクター: 18台
10トン積載ダンプトラック: 60台
南太平洋(ニューカレドニア・ヌメア等)において、日本の第三機動艦隊が電撃的な航空封鎖を行った際、逃げる間もなく上記の最新型土木重機ごと、日本軍の「第三洋上鎮撫兵団(財閥陸戦隊)」に完全に無傷で生け捕りにされた。
現在、2,400名の工兵たちは国際法の労役規定に従う形で、日本の島津財閥等が主導する「ニューカレドニア・ニッケル鉱山増産シフト」に強制従事させられている。彼らが持ち込んだD8ブルドーザー45台は、前田発動機の技術者によって徹底的にリバースエンジニアリングされ、マレー戦線でジャングルを時速数十キロで走破する双頭の陸軍の「切り込み重機」として、皮肉な形でその真価を発揮することとなった。
【第二部:米国大西洋艦隊 および その他の海域】
前年(1941年11月)のナチス・ドイツによるソ連・モスクワの完全占領、および本年(1942年8月)のドイツ国防軍による英国本土上陸(アシカ作戦)と「ロンドン陥落・シティの灰燼」。 大英帝国の本国機能が完全に消滅し、ウィンストン・チャーチル首相がカナダのオタワへと逃れて「イギリス亡命政府」を樹立するという絶望的な地政学変動の中、ユーラシア大陸はアドルフ・ヒトラーが支配する巨大な独裁・ファシズムの要塞へと変貌した。
ルーズベルト大統領の宣戦布告とともに、合衆国は太平洋で日本の「異形の連衡国家」と激突する一方で、大西洋側においては、迫り来るナチス・ドイツの脅威からアメリカ東海岸を死守し、さらに群狼作戦(Uボート群)が血の海路を築く大西洋を力づくで切り拓くという、重大にして過酷な任務を負うこととなった。
■ 大西洋艦隊主力(第4・第8・第10艦隊 統合防衛部隊)
戦略目標:イギリス亡命政府の支援及びソ連への物資輸送
司令長官:ロイヤル・E・インガソル 大将
ドイツ海軍カール・デーニッツ提督が指揮する無数のUボート群と凍てつく大西洋で死闘を繰り広げ、カナダへ逃れたイギリス亡命政府、およびソ連(シベリア残党)への兵站物資を送り届けるための巨大な船団護衛部隊。太平洋戦線(対日戦線)に最新鋭のエセックス級空母や精鋭部隊を集中させているため、こちらの大西洋側は「貨物船の改造」と「天文学的な数の使い捨て護衛艦」で海を埋め尽くし、ドイツ潜水艦を文字通りの「量」で窒息させるドクトリンを採用している。
【主力艦艇および対潜護衛部隊】
新鋭戦艦 2隻:アイオワ(公試中) / ニュージャージー(艤装中)
旧式戦艦 3隻:テキサス / ニューヨーク / アーカンソー
正規空母 1隻:レンジャー
護衛空母(C3型貨物船改造・ボーグ級およびサンガモン級) 14隻:ボーグ / サンティー / サンガモン / スワニー / シェナンゴ / アルタマハ / チャージャー / カーデュー / コパヒー / コア / ナッソー / ブレトン / バーンズ / ブロック・アイランド
重巡洋艦 3隻:オーガスタ / タスカルーサ / ウィチタ
軽巡洋艦 4隻:ブルックリン / フィラデルフィア / サバンナ / ナッシュビル
駆逐艦 120隻:ベンソン級40隻 / グリーブス級50隻 / 旧式タウン級30隻
護衛駆逐艦(DE・大量生産型) 250隻:エヴァーツ級100隻 / バックレイ級150隻
【対潜哨戒および護衛航空機 総計:485機】
TBFアベンジャー雷撃機(対潜爆雷・ソノブイ搭載型) 280機
PBYカタリナ大型飛行艇 120機
B-24リベレーター(長距離対潜哨戒仕様) 85機
合衆国の工業力の真骨頂たる「護衛空母群」と「護衛駆逐艦(DE)」の暴力的な生産ライン。C3型規格の大型貨物船の船体をベースに、甲板を電気溶接で強引に後付けした14隻の護衛空母が、休むことなくTBFアベンジャーを空へ放ち、24時間体制で大西洋の波間を監視する。
さらに、安価なディーゼル機関と最低限の武装のみを搭載し、ブロック工法によってわずか数ヶ月で進水する「護衛駆逐艦」250隻が、商船団の足元をハリネズミのように固めている。 彼らが護るのは、カイザー造船所等で数週間という暴力的速度で粗製濫造された戦時標準船(リバティ船)400隻からなる巨大輸送船団である。「ドイツが魚雷で沈める速度よりも速く、輸送船と護衛艦を工場から吐き出し続ければ、兵站は決して途切れない」という、血も涙もないマニュファクチャリング思想の極致である。
■ 欧州・地中海方面派遣軍(トーチ作戦・北アフリカ上陸支援部隊)
戦略目標:北アフリカ攻略
司令官:ヘンリー・K・ヒューイット 中将
ロンドンがドイツ軍に占領され、イギリス本国という「不沈空母」を失った合衆国が、欧州大陸へ直接反攻の橋頭堡を築くために編成した巨大な殴り込み部隊。ユーラシア大陸の南腹──モロッコおよびアルジェリア(北アフリカ)のヴィシー・フランス軍およびドイツ・アフリカ軍団を物理的に粉砕し、地中海の制海権を強奪するための上陸侵攻艦隊である。
【艦砲射撃および直衛部隊】
新鋭戦艦 1隻:マサチューセッツ
旧式戦艦 2隻:テキサス / ニューヨーク
軽巡洋艦 4隻:ブルックリン / フィラデルフィア / サバンナ / クリーブランド
駆逐艦 48隻:ベンソン級24隻 / ブリストル級24隻
【揚陸および巨大輸送部隊】
攻撃輸送艦(APA) 35隻
攻撃貨物輸送艦(AKA) 28隻
戦車揚陸艦(LST) 150隻
歩兵揚陸艇(LCI) 240隻
[上陸侵攻兵力および支援装備]
上陸侵攻部隊:アメリカ陸軍 第3歩兵師団、第2機甲師団、第9歩兵師団 合計 6万5,000名
揚陸支援装備:M4シャーマン中戦車 350両、M3スチュアート軽戦車 180両、105ミリ榴弾砲 144門
イギリスの命脈が絶たれた欧州戦線において、アメリカ軍自らが直接血を流して大地を奪い返すための「鉄の槍」。ここで最も恐るべきは、アメリカの造船所がこの上陸作戦のためだけに新規開発・大量建造した「戦車揚陸艦(LST)」150隻と「歩兵揚陸艇(LCI)」240隻の存在である。 日本の浅野港湾や藤堂製作所が開発した「油圧バウ・ランプ(道板)」の技術思想を、アメリカは自動車産業のラインと電気溶接を用いて桁違いの規模で具現化。兵員6万5,000名とM4シャーマン中戦車350両を、洋上で小舟に乗り換えることなく、艦首の巨大な扉を開いて直接アフリカの海岸へと吐き出す。
これらもまた「作戦で半数が沈んでも構わない」という前提のもとに規格化・粗製濫造された使い捨ての揚陸プラットフォームであり、ドイツ国防軍の精鋭を「無限の資源と機械の波」で圧殺するための合衆国の冷徹な解答であった。
【第三部:合衆国海軍・海兵隊 航空機・主要兵器ドクトリン】
豊栄大日本帝国の兵器が、旧大名の系譜を引く重工業財閥(島津、毛利、鍋島、織田)の熾烈な技術競争と、職人の極致たる精緻な空力設計、そして和泉堺の商工組合が取り仕切る「堺公差」によって極限まで規格化された『芸術的な工業品』であるならば、アメリカの兵器は思想の根底から異なっている。
アメリカ合衆国の兵器開発における絶対の基準は「兵器は戦場に到着した瞬間に壊れ、使い捨てられる消耗品である」という冷徹な前提に基づいている。 未熟な工員がプレス機械と電気溶接だけで組み立て可能であり、訓練期間がわずか3週間の未熟なパイロットや動員兵であっても生きて帰還できる。彼らは人間すらも巨大なマニュファクチャリング(大量生産)システムを構成する「代替可能な規格モジュール」の一つとみなし、兵器の損耗を天文学的な生産数で強引に上書きする。これこそが「マニュファクチャリング・モンスター」と畏怖される、合衆国の暴力的な生産力の結晶であった。
■ 第一項:航空機群(徹底した防弾・大馬力と消耗戦の強要)
F6F ヘルキャット 艦上戦闘機
初期発注および生産予定数:1万2,275機
エンジン:プラット・アンド・ホイットニー製 R-2800-10 空冷星型発動機(出力2,000馬力)
武装:12.7ミリ・ブローニングM2重機関銃 6門(弾薬総数 2,400発)
防弾装備:操縦席背面38ミリ防弾鋼板、12.7ミリ防弾ガラス、セルフシーリング防弾燃料タンク
【運用ドクトリン】
デトロイトの巨大な自動車工場ラインを全面転用し、大型のプレス機械で成形された鋼板を流れ作業の電気溶接で接合して造り上げられる、アメリカ海軍の絶対的主力戦闘機。月産540機という暴力的速度で粗製濫造されている。 日本の『烈風』が持つような洗練された空力設計や軽量化は微塵も存在しない。あるのはただ、2,000馬力という巨大なエンジン出力の暴力で、鈍重な装甲の塊を強引に空へ蹴り上げるという力技だけである。 日本の職人技が光る戦闘機を相手に格闘戦(巴戦)を挑むことは固く禁じられており、38ミリの極厚防弾鋼板と防弾ガラスを盾にして日本の20ミリ機関砲弾を耐え抜き、すれ違いざまに6門の12.7ミリ重機関銃から合計2,400発の弾幕を浴びせかける「一撃離脱の消耗戦」のみをパイロットに強制する。「1機撃墜されても、翌朝には工場から3機の新品が届く」という絶対的な数の暴力によって、補充の利かない日本の熟練パイロットを物理的にすり減らし、窒息させるための冷酷な兵器である。
SBD ドーントレス 急降下爆撃機
生産予定数:5,936機
エンジン:ライト製 R-1820-52 空冷星型発動機(出力1,000馬力)
武装:1,000ポンド(454キログラム)航空爆弾 1発
特殊装備:スイスチーズ型穴あきダイブブレーキ(急降下制動板)
【運用ドクトリン】
開戦前から配備されている、極めて頑丈で信頼性の高い急降下爆撃機。空気抵抗を減らすために流線型を追求した日本の『彗星』とは異なり、無骨な直線的デザインを持つ。主翼の後縁に備えられた多数の穴が開いた特殊なフラップ(ダイブブレーキ)を展開することで、70度の急降下時でも機体のブレを完全に抑え込み、日本の装甲空母の飛行甲板やガダルカナルの滑走路へ向けて、1,000ポンドの巨大な鉄の塊を正確に叩き込む。
TBF アベンジャー 艦上雷撃機
生産予定数:9,839機
エンジン:ライト製 R-2600-8 空冷星型発動機(出力1,700馬力)
武装:Mark 13 航空魚雷 1本(または500ポンド爆弾4発)
防御火器:後方旋回12.7ミリ重機関銃 1門、腹部旋回7.62ミリ機関銃 1門
【運用ドクトリン】
巨大な爆弾倉を胴体内部に備え、操縦士、雷撃手、旋回機銃手の3名が搭乗する大型雷撃機。日本の『天山』や『流星』のような超低空を這う極限の飛行性能や機動力はないが、その分厚い装甲と後方の動力銃座によって、敵の対空砲火や迎撃機からの攻撃を強引に耐え抜きながら目標へ肉薄する。1万機に迫る生産数を背景に、空を埋め尽くすほどの編隊を組み、日本の『大和型戦艦』の土手っ腹にMark13魚雷を扇状に投下するための重火力プラットフォームである。
■ 第二項:艦船・電子兵装
エセックス級 正規航空母艦
建造発注数:32隻
基準排水量:2万7,100トン
搭載航空機数:104機(F6F 36機、SBD 36機、TBF 18機、予備機 14機)
航空艤装:油圧式カタパルト 2基、昇降用エレベーター 3基
防御火器:5インチ(12.7センチ)連装両用砲 4基(8門)、5インチ単装両用砲 4基(4門)
【運用ドクトリン】
1922年のワシントン海軍軍縮条約の制限を完全に引き裂き、合衆国の巨大な工業力のすべてを注ぎ込んで量産される3万トン級の巨大空母群。 日本の鶴型(『翔鶴』『瑞鶴』)や鳳型(『大鳳』『鳳凰』)が、一隻ごとに戦訓を取り入れて職人が手作業で設計を磨き上げる「一品モノの芸術品」であるのに対し、エセックス級は設計図の段階で完全に規格化・モジュール化されている。ニューポート・ニューズ造船所、ベスレヘム・スチール、ニューヨーク海軍造船所といった全米の巨大ドックにおいて、まったく同じ設計図面を用いたブロック工法により、32隻の同型艦が同時に起工・大量建造される。空母という戦略兵器すら「沈めば次を補充する」消耗品として扱う、アメリカの恐るべき戦略の真髄である。
5インチ(12.7センチ)38口径両用砲 および VT信管(的近接信管)
搭載艦艇:米国海軍の全戦艦・空母・巡洋艦・駆逐艦(計450隻)に標準装備
VT信管開発予算:8億ドル
VT信管内蔵真空管数:4個(極小耐衝撃真空管)
有効炸裂半径:21メートル
【運用ドクトリン】
大艦巨砲主義の常識と、従来の対空戦闘の概念を根底から覆した、アメリカ電子技術の最高傑作。5インチ両用砲弾の先端部に、衝撃に耐える特製の超小型真空管4個を組み込んだ発信機を仕込んでいる。砲弾から発せられた電波が日本の航空機(目標)に反射し、距離21メートルまで接近した瞬間に自動的に起爆回路が作動して炸裂する。 従来の時限信管のように「直撃」や「正確な高度設定」を必要とせず、ただ目標の方向へ撃ち上げるだけで確実に敵機を粉砕する。これにより、米艦隊の対空砲火の命中率は従来比で5倍に劇的に跳ね上がり、肉薄雷撃を仕掛ける日本の『天山』や、急降下爆撃を敢行する『彗星』に甚大な出血を強いることとなった。
CXAM / SC 対空・対水上レーダー
最大探知距離(CXAM型):111キロメートル(大型編隊に対する探知)
最大探知距離(SC型):120キロメートル
配備数:第61任務部隊および第64任務部隊の全艦艇(空母8隻、戦艦5隻、巡洋艦14隻、駆逐艦36隻)
【運用ドクトリン】
日本の筑前・黒田精機製レーダーが、熟練した職人や調整員による手作業のチューニングを必要とするのに対し、アメリカのレーダーは工業的に規格化され、未熟な兵兵でもマニュアル通りに操作・保守ができるように設計されている。遠距離の111キロメートル先から日本の攻撃隊を捕捉し、無線電話(VHF)を通じて上空に待機するF6Fヘルキャットの編隊を効率的かつ機械的に迎撃位置へと誘導する。人間の勘を排除した「システムによる完全防空」の要である。
■ 第三項:陸戦兵器・後方支援(自動車産業の暴力と使い捨ての兵站)
M4 シャーマン 中戦車
生産発注数:4万9,234両
主砲:75ミリ戦車砲M3 1門
前面装甲厚:51ミリ
エンジン:コンチネンタル製 R975 空冷星型発動機(出力400馬力)
【運用ドクトリン】
フォード、クライスラー、ゼネラルモーターズといった全米の巨大自動車産業のラインをそのまま戦車工場へと転用し、天文学的な数で量産されるアメリカ軍の標準中戦車。 単体の性能や乗員の生存性、あるいは鋳造の美しさにおいては、日本の越前松平重工業製『三五式中戦車改』や『四〇式中戦車 鎧』の職人技に劣る。しかし、M4シャーマンの真の恐ろしさはその「完全互換性」にある。戦場でエンジンが破壊されても、履帯が切断されても、後方から届く木箱入りのスペアパーツをボルトで留めるだけで、工員の手で数時間のうちに完全に修理される。4万9,234両という狂気的な生産台数を背景に、ジャングルから砂漠まで、戦場を隙間なく埋め尽くすための「使い捨て戦車」である。
戦時標準船 リバティ船(EC2-S-C1船型)
建造計画数:2,710隻
基準載貨重量:1万800トン
平均建造日数:42日(最速記録 4日と15時間)
【運用ドクトリン】
日本の通商破壊艦隊や潜水艦隊、さらには大西洋のドイツUボートによって失われる輸送船の数を、工業的な「建造速度」だけで強引に上回るために設計された、徹底的な粗製濫造の貨物船。 カイザー造船所をはじめとする全米18箇所の造船所において、従来のリベット打ちを完全に廃止し、電気溶接と巨大なブロック工法のみで建造される。美しい船体曲線を持たない直線的な無骨な船体は、平均42日という驚異的な速度で次々と海へ放り出され、戦車や弾薬、兵員を満載して戦地へ向かう。帝国の海上護衛総隊が護る緻密で繊細なロジスティクスとは次元が異なる、海を埋め尽くす「使い捨ての動脈」である。
LVT(水陸両用装軌車)
生産発注数:1万8,620両
搭載兵員数:完全武装の海兵隊員 24名
武装:12.7ミリ・ブローニングM2重機関銃 2門
【運用ドクトリン】
南太平洋のガダルカナルなどへの上陸作戦において、リバティ船から直接海面へ降ろされ、鋭い珊瑚礁を無限軌道で乗り越えて兵員を直接海岸へ送り届ける水陸両用トラクター。日本の浅野港湾や藤堂製作所が開発した『油圧バウ・ランプ搭載大発動艇』のような複雑な機構は持たず、ただ巨大なポンツーン(浮舟)にキャタピラを巻きつけただけの単純な構造を持つ。上陸時に破壊されることを前提としており、1万8,620両が量産された。
155ミリ榴弾砲 M1
生産発注数:1万1,500門
最大射程:1万4,600メートル
砲弾重量:43キログラム
【運用ドクトリン】
アメリカ軍の標準的な重砲。水戸徳川造兵工機が職人技で鍛え上げる日本の『150ミリ重加農砲』に対し、M1榴弾砲は部品のモジュール化とマニュアル化が極限まで推し進められている。上陸した海兵隊の足回りとともに海岸へ揚陸され、訓練期間がわずか数ヶ月の動員兵であっても、マニュアル通りに装薬を詰め、ダイヤルを合わせるだけで、1万4,600メートルの彼方へ向けて寸分の狂いもなく43キログラムの榴弾の雨を降らせることができる。個人の熟練度を完全に排除し、数字とマニュアルだけで最大の火力を発揮する、アメリカ砲兵ドクトリンの象徴である。




