第22章 双牙の布陣と新鋭の咆哮
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1943年1月上旬
タイ・ビルマ(ミャンマー)国境地帯
マレー・ビルマ攻略軍(双頭の陸軍)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
熱帯の凶暴なスコールが過ぎ去った直後の密林に、地盤を揺るがすような野太い重機と大馬力航空エンジンの咆哮が響き渡っていた。
大英帝国の東洋最大の軍事要塞・シンガポールを正面から粉砕し、次なる標的「英領インド」へと歩みを進めた豊栄大日本帝国の双頭の陸軍。彼らは、チャーチルの命を受けたウェーヴェル大将がインパールやコヒマに築き上げようとしている鋼鉄の防衛線を叩き割るため、ビルマ国境にその圧倒的な兵力と、1942年に完成したばかりの陸戦新鋭兵器を明確な数値をもって展開させていた。
【マレー・ビルマ攻略軍 陸上兵力】
重加農砲『一五〇ミリ重加農砲』120門
重榴弾砲『三四式十五糎榴弾砲』144門
新鋭ロケット砲『四〇式多連装噴進砲』48門
主力中戦車『三五式中戦車改』180両
新鋭重装甲中戦車『四〇式中戦車 鎧』54両
新鋭自走砲『四〇式自走重榴弾砲 震天』36両
軍用土木重機『キャタピラー社製D8ブルドーザー』45台
兵站輸送車両『三九式四輪駆動大型トラック』850両
精鋭歩兵5個師団(第15〜第19師団)および独立特殊火炎放射器大隊、総兵力13万5,420名
【マレー・ビルマ攻略軍 直協航空兵力】
主力戦闘機『荒鷲』(四〇式戦闘機)340機
主力戦闘機『蒼燕』(三七式戦闘機)180機
双発重火器キャリアー『雷鳥』(四〇式双発襲撃機)72機
重爆撃機『黒雁』(四〇式重爆撃機)144機
近接支援機『黒鳶』(三七式襲撃機)240機
戦略偵察機『白狐』(四〇式戦略偵察機)12機
強行輸送機『山犬』(四一式強行輸送機)165機
頭上の空を支配しているのは、1942年に量産配備が完了したばかりの葵航空工機製・四〇式戦闘機『荒鷲』340機であった。2000馬力級の大出力エンジンと極厚の防弾鋼板を備えたこの空飛ぶ重戦車が英軍の迎撃機を寄せ付けず、その直下では、機首に47ミリ対戦車砲を剥き出しで搭載した四〇式双発襲撃機『雷鳥』72機が、空から直接英軍のコンクリート陣地を粉砕していく。
「止まるな! ジャングルごとイギリスの防衛線を轢き潰して進め!」
島津忠久少将が直卒する第一機動鎮撫兵団の先鋒部隊が、南太平洋で強奪した黄色の大型ブルドーザー45台を駆り、数百年間手付かずだったビルマの原生林をバリバリとへし折りながら突進していく。
ブルドーザーが圧殺して切り拓いた泥濘の即席道路を、細川ゴム工業の熱帯用特殊タイヤを履いた大型トラック850両が、時速40キロという驚異的な速度で爆走していく。
荷台に乗る鎮撫兵団の荒くれ者たちは、佐賀精密機械が極限の生産合理化のもとに**金型プレス加工で暴力的な速度で打ち抜き、溶接・成形した『百式機関短銃』**を構え、英軍の側背へと瞬く間に回り込んで息をつく暇もない弾幕を浴びせた。
前衛の鎮撫兵団が密林の裏側から英軍の退路を遮断すると同時に、本隊である幕府直轄の正規国軍「伝習隊」が、大地を震わせて進撃を開始する。
ここで火を吹いたのは、1942年中に陸軍が米国の工業力を凌駕すべく急ピッチで開発・実戦配備させた新鋭陸戦兵器であった。
「撃てェッ!!」
伝習隊の砲兵陣地から、凄まじい噴射音とともに無数の火柱が空へ向けて飛び立った。青山火薬工機が開発した新鋭『四〇式多連装噴進砲』48門である。巨大なロケット弾の雨が、英印軍の防衛線へ文字通り降り注ぎ、広範囲のジャングルを一瞬で更地へと変えていく。
さらに、その硝煙の壁を割って現れたのは、越前松平重工業製の新鋭『四〇式中戦車 鎧』54両であった。
アメリカのM4シャーマン戦車に対抗すべく開発されたこの鉄獣は、水戸徳川造兵工機が削り出した長砲身の75ミリ戦車砲を搭載し、車体には敵弾を滑らせる避弾経始に優れた鋳造装甲を採用している。
『鎧』の長砲身が火を吹き、英印軍の対戦車砲座を粉砕する。その後方からは、三五式の車体に150ミリ榴弾砲をそのまま搭載した水戸徳川製の『四〇式自走重榴弾砲 震天』36両が追従し、コンクリート陣地を直接射撃で容赦なく土砂もろとも吹き飛ばしていく。
歩兵たちの武装も進化を遂げていた。
伝習隊の精鋭たちが手にするのは、伝統の井伊銃器と佐賀精密機械が共同開発した新鋭の『四〇式自動小銃』である。アメリカのM1ガーランドに対抗すべく、主要部品をプレス加工で大量生産しつつも、井伊の職人技で精度調整が施されたこの半自動小銃は、英軍歩兵へ向けて圧倒的な連続精密射撃を可能にしていた。
さらに、この陸からの進撃と完全に連動し、ベンガル湾の海上には、小沢治三郎中将率いる第二機動艦隊が進出を完了していた。
【第二機動艦隊(インド洋・蘭印方面制圧部隊)】
司令長官:小沢治三郎 中将
装甲空母『大鳳』『瑞鳳』2隻
大型正規空母『翔鶴』『千鶴』2隻
中型正規空母『蒼龍』『飛龍』2隻
中型改装空母『飛鷹』1隻
高速戦艦『金剛』『比叡』2隻
重巡洋艦『妙高』『那智』『足柄』『羽黒』4隻
軽巡洋艦『能代』1隻
駆逐艦12隻
【第二機動艦隊 搭載機内訳(総計488機)】
四〇式艦上戦闘機『烈風』 144機
三九式艦上攻撃機『流星』 168機
三八式艦上爆撃機『彗星』 56機
三六式艦上攻撃機『天山』 72機
四一式艦上偵察機『彩雲』 24機
三八式艦上戦闘機『凱風』 24機
1942年中に島津と毛利のドックで建造を終え、新たに就役した装甲空母『瑞鳳』と大型正規空母『千鶴』が艦隊に合流したことで、その打撃力は開戦時よりもさらに凶悪なものへと変貌していた。
最新鋭装甲空母2隻を前衛の盾とし、大型空母2隻を後衛の矛とするこの精鋭部隊は、英軍がインド洋を経由してカルカッタへ運び込もうとする海上補給船団を物理的に粉砕すべく、282機の航空機を研ぎ澄ませていた。
インドという広大な大陸を、陸と海から同時にすり潰す「西の矛」の配置は、ここに完璧に完了した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
同刻
南太平洋 ソロモン諸島 ガダルカナル島 および トラック環礁
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
西のインド洋で猛攻の準備が整う一方、遥か東の南太平洋では、アメリカが振り下ろそうとしている巨大なる断頭台(飛び石作戦)の刃を受け止めるための、冷徹な防衛線の構築が完了していた。
灼熱の太陽が照りつけるガダルカナル島のルンガ岬。
鬱蒼としたジャングルを切り拓き、重爆撃機すら離着陸可能な巨大な滑走路の建設現場では、第四島嶼鎮撫兵団がアメリカの巨大な反攻を監視する目を光らせていた。
【第四島嶼鎮撫兵団およびソロモン防衛・監視部隊】
大型飛行艇『海神』(四〇式大型飛行艇)12機
局地戦闘機『轟電』(四〇式局地戦闘機)48機
野戦電波探知機6基
沿岸海峡監視ソナー網 24基
携帯用動力削岩機 150基
歩兵および工兵守備隊 1万2,500名
筑前の黒田精機と宗電子工作の技術者たちで編成されたこの特務兵団は、島の要所に野戦レーダー6基を設置し、沿岸には対潜ソナー網24基を張り巡らせていた。
上空には立花飛行機が生み出した新鋭の局地戦闘機『轟電』48機が待機し、沖合には村上産業の技術の結晶である四発の超大型哨戒飛行艇『海神』12機が着水し、アメリカ艦隊の接近を24時間体制で警戒している。
そして、この前哨基地を背後から支える広大なエメラルドグリーンの海──中部太平洋のトラック環礁には、世界を戦慄させる「三つの巨大な艦隊(三つの槍)」が、その威容を並べて待機していた。
一つは、南太平洋の通商路遮断と機動防衛を担う、猛将・山口多聞中将率いる第三機動艦隊である。
【第三機動艦隊(南太平洋・通商破壊方面遊撃部隊)】
司令長官:山口多聞 中将
装甲空母『鳳凰』『祥鳳』2隻
大型正規空母『瑞鶴』『真鶴』2隻
中型正規空母『雲龍』『天龍』2隻
中型改装空母『隼鷹』1隻
高速戦艦『榛名』『霧島』2隻
多目的航空巡洋艦『最上』『三隈』『鈴谷』『熊野』『石狩』『十勝』6隻
軽巡洋艦『矢矧』1隻
超高速駆逐艦『島風』『嵐風』『疾風』『追風』『北風』『高風』『大風』『清風』8隻
駆逐艦12隻
【第三機動艦隊 搭載航空機 総計:488機】
四〇式艦上戦闘機『烈風』144機
三九式艦上攻撃機『流星』168機
三八式艦上爆撃機『彗星』56機
三六式艦上攻撃機『天山』72機
四一式艦上偵察機『彩雲』24機
三八式艦上戦闘機『凱風』24機
1942年末に前線へ急行した『祥鳳』と『真鶴』、さらには12機の烈風を運用可能な新設計の多目的航空巡洋艦『石狩』『十勝』2隻が加わったことで、艦隊の索敵網と空戦能力は飛躍的に拡大した。
護衛の足元には、40ノット超を誇る島風型の第2次量産分『北風』『高風』『大風』『清風』4隻が合流し、計8隻の超高速駆逐艦が魚雷の壁を構築している[74]。
二つ目は、新たにトラックへ入泊したばかりの第四機動艦隊である。
【第四機動艦隊】
司令長官:立花宗紀 中将
装甲空母『白鳳』1隻
大型正規空母『彩鶴』1隻
中型空母『神龍』『海龍』『翔龍』3隻
高速戦艦『生駒』『阿蘇』2隻
重巡洋艦『利根』『筑摩』『伊吹』『鞍馬』4隻
軽巡洋艦『阿賀野』『大淀』2隻
駆逐艦16隻
【第四機動艦隊 搭載航空機 総計:384機】
四〇式艦上戦闘機『烈風』132機
三九式艦上攻撃機『流星』204機
三八式艦上爆撃機『彗星』36機
四一式艦上偵察機『彩雲』12機
九州・筑後国を治める外様名門であり、立花飛行機の総帥でもある立花宗紀中将が率いるこの新鋭艦隊は、旧式艦を後方へ回し、1942年末に竣工した新造空母群のみで編成された「航空打撃力特化」の暴力的な部隊であった。
そして三つ目。トラック泊地の最も水深の深い最深部に、文字通りの動く鉄の山脈として鎮座しているのが、徳川幕府直轄の絶対決戦部隊──第一艦隊であった[65]。
【第一艦隊(天領・幕府直轄)】
司令長官:松平保男 大将
超弩級戦艦『大和』『武蔵』『信濃』『甲斐』『紀伊』5隻
準新鋭戦艦『長門』『陸奥』2隻
防空軽空母『鳳翔』『龍驤』『龍鳳』3隻
重巡洋艦『高雄』『愛宕』『鳥海』『摩耶』4隻
防空巡洋艦『秋月』『照月』『初月』『涼月』『冬月』『春月』『宵月』『夏月』8隻
駆逐艦16隻
【第一艦隊 搭載航空機 総計:90機】
四〇式艦上戦闘機『烈風』36機
四〇式局地戦闘機『轟電改二』(艦載防空用改造機)54機
ハワイ沖で真珠湾を睨みつける金縛りの政治的任務を終え、この泊地へ帰還した大和型戦艦群。そこへ、横須賀小栗工廠での艤装を終えたばかりの大和型5番艦『紀伊』が合流を果たしていた。
46センチ(18インチ)という人類史上最大・最強の巨砲を計45門も戴く5隻の怪物は、もはや抑止力ではなく、純粋な暴力の権化としてこの海に待機している。さらに、その頭上を守る防空巡洋艦にも秋月型の第2次量産分4隻が追加され、艦隊の対空火網は文字通り鉄壁と化していた。
アメリカがソロモンに向けてどれほどの大量生産の質量を投射してこようとも、この『大和』型戦艦5隻が海峡へ突入し、巨砲を一斉に火を噴かせれば、海兵隊の上陸拠点もろとも一瞬で灰燼に帰すことができる。
飛び石を踏み砕く「東の三つの槍」の配置もまた、トラックの海において完全に整っていたのである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1943年1月中旬
東シナ海沖合 海上護衛総隊 旗艦特設巡洋艦『赤城丸』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
西のインド攻略と、東のソロモン防衛。
この二つの巨大な軍事作戦を根底で支え、帝国の絶対的な全盛期を可能にしているのは、日本本土と南方資源地帯とを繋ぐ「帝国の血流」の完全なる保護であった。
【海上護衛総隊(第一・第二海上護衛隊 統合防衛網)】
司令長官:及川古志郎 中将
特設護衛空母『大鷹』『雲鷹』『冲鷹』『神鷹』『海鷹』『瑞鷹』6隻
特設巡洋艦『赤城丸』『浅間丸』『報国丸』『愛国丸』4隻
海防艦(占守型、択捉型、御蔵型)38隻
旧式駆逐艦 18隻
航空直衛:対潜哨戒機および水上機 112機
アメリカのルーズベルト大統領が巨大なる断頭台として切断しようと狙っている、帝国のシーレーン。
船団の頭上には、特設護衛空母6隻が24時間体制で112機の対潜哨戒機を空へ放ち、足元では、佐賀精密機械がプレス成形された鋼板のブロック工法で凄まじい速度で量産した海防艦38隻が、ソナーと爆雷をハリネズミのように備えて海を睨みつけていた。
「アメリカが我々の動脈を狙っていることは、江戸城の脳髄たちがとうに計算済みだ」
海上護衛総隊司令長官・及川古志郎中将は、海原を埋め尽くすように進む原油と鉄の輸送船団を見渡し、不敵に呟いた。
「ここが止まれば、大和も烈風もただの鉄屑になる。我々はこの動脈を絶対に守り抜く」
帝国の生命線を護る不落のロジスティクス網もまた、米軍の反攻を迎え撃つ完全な陣形を敷き終えていたのである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1943年1月下旬
帝都・東京 江戸城本丸跡・幕府最高臨戦評議場
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
世界中で四つの巨人の軍隊が不気味なほどの静寂の中で最終配置に就く中、江戸城本丸跡の地下要塞でも、第二期の総決算とも言える厳粛な評議が執り行われていた。
「──報告いたします。ビルマ国境へ向けた山下・島津の双頭陸軍の進発、およびソロモン方面における第一、第三、第四機動艦隊の迎撃配置、すべて完了いたしました」
国家財務総監・水野忠徳が、巨大な世界地図の前に立ち、青い駒の最終配置を指し示しながら宣言した。
「1942年中に就役した陸軍の四〇式中戦車や自走重榴弾砲、および海軍の大和型5番艦『紀伊』、正規空母『千鶴』『真鶴』をはじめとする新鋭兵器の戦線投入は、すべて計画通りに完了。毛利の油と伊達の鉄は間断なく帝国の工廠へと還流し、次の戦いのための弾薬を吐き出し続けています」
水野はそこで言葉を区切り、眼鏡の奥の目を鋭く光らせた。
「そして……第一線の主力部隊へ新鋭艦を送り出して空いた日本本土の巨大ドックには、すでに『次なる帝国』の要石となる新造艦の龍骨が据え付けられています」
【帝国海軍 1943年次期新造・計画艦艇】
超大和型戦艦『駿河』『美濃』2隻:51センチ(20インチ)の怪物的な巨砲を戴く第14号計画超弩級戦艦。呉のドックにて基礎船体の組み立てと龍骨据え付けが進行中。
大型正規空母『若鶴』『栄鶴』『寿鶴』3隻:外洋侵攻の主矛たる鶴型を計8隻体制へと拡充する大計画の後半陣。豊秋津島から届く潤沢なボーキサイトと鋼材を用いて建造が開始された。
「アメリカの断頭台の刃がどれほどの大量生産の質量を持っていようとも、我が国のこの分厚い防衛線と、無尽蔵の資源から生み出される次世代の生産力をすり潰すには、彼らもまた天文学的な血を流すことになる」
幕府特務・防諜総監の小栗忠純が、葉巻の煙をゆっくりと吐き出しながら同意した。
「そして西のインドでは、チャンドラ・ボースの独立軍が、我々が供与した機関短銃をもって内部からの巨大な反乱の火蓋を切る準備を終えました。イギリスの命脈は、間もなく完全に断ち切られます」
江戸城の地下要塞を支配する冷徹な頭脳たちは、自らが構築したこの「双頭の矛と不落の盾」の完成度、そして未来の生産力に絶対の自信を持っていた。
徳川宗家第十七代当主にして永世宰相・徳川家正は、パイプを口から離し、静かに立ち上がった。
その端正な顔には、大英帝国の心臓を潰し、蘭印を呑み込み、完全なる全盛期を築き上げた覇者としての、冷たくも誇り高い笑みが浮かんでいた。
「配置はすべて完了した。我々はやるべきことを、完璧にやり遂げた」
家正宰相の重々しい声が、地下要塞の分厚いコンクリートの壁に響き渡る。
「ワシントンの地下でルーズベルトが怒りに震えながら生産の歯車を回そうと、カナダでチャーチルが血の涙を流しながらインド死守を叫ぼうと、もはや歴史の奔流を止めることはできん。我々は、この完璧な全盛期の質量と新鋭の刃をもって、彼らが振り下ろす刃を正面から叩き割り、世界の新秩序を完全に固定化する」
1943年初頭。
武力と法理で大英帝国からインフラを奪い返し、絶対的なブロック経済を完成させた豊栄大日本帝国。
その東の海にはアメリカのマニュファクチャリングの津波が迫り、西の大陸ではイギリスとソ連の執念が燃え上がり、欧州では狂気に満ちたドイツの狼が咆哮を上げている。
四つの巨人が、その国家の全生産力と生存を懸けた軍事質量のすべてを完璧な配置に就かせ、不気味な静寂の中でその瞬間を待ち受けていた。
「さあ、ルーズベルトよ。いつでもかかってくるがいい」
家正宰相が世界地図のアメリカ大陸を睨みつけ、静かに呟いたその時。
人類史上最大の激突、すなわち純粋な鉄と血がすべてをすり潰すカウントダウンは、ゼロ目前に指し示したのである。




