第98章 征途の決意
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1944年12月25日 午後8時00分
帝都・東京 江戸城本丸跡・幕府最高臨戦評議場
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地上では西洋の降誕祭の聖なる夜を迎え、帝都・東京の街が冷たい冬の静寂に包まれていた頃。
江戸城本丸の地下数十メートル、分厚い鉛と親藩・越前松平重工業製の極厚装甲鋼板、そして幾重にも流し込まれた鉄筋コンクリートの複合装甲に守られた豊栄大日本帝国の「脳髄」たる幕府最高臨戦評議場は、外界の安寧とは完全に無縁の、凍りつくような極限の緊張感と、濃密な血の匂いを孕んだ重苦しい空気に完全に支配されていた。
「……以上が、『迦具土作戦』の最終的な戦果、および損害報告の全容です」
幕府特務・防諜総監である小栗 忠純が、漆黒のマホガニーの円卓の中央に、血で汚れたかのような錯覚さえ覚えさせる極秘の報告書を重々しく滑らせた。
「角田 覚治中将率いる新編・第六機動艦隊から放たれた、美濃・岐州重工製『四三式艦上攻撃機 迅星』の極限過積載による長距離奇襲爆撃により、アメリカ合衆国内陸部、ニューメキシコ州ロスアラモスの『マンハッタン計画』中枢施設は地形ごと完全に粉砕されました。敵が心血を注いでいたウラン濃縮およびプルトニウム製造プラント(インフラストラクチャー)は物理的に完全に消滅し、奴らの『神の火』の開発は、事実上数年単位での後退、あるいは完全な頓挫を余儀なくされました」
小栗の淡々とした報告に、国家財務総監・水野 忠徳が、手にした扇子をパチンと鳴らして深く息を吐き出した。
「アメリカの『大量生産』と『神の火(原爆)』。二つの絶望が完全に合致するという帝国の完全敗北のシナリオを、間一髪で物理的に焼き捨てたわけだ。……だが、その代償は決して安くはなかったな」
小栗は、無念に唇を噛み締めながら深く頷いた。
「ハッ。カリフォルニアの防空網を欺瞞し、作戦を完遂した第六機動艦隊でしたが、帰路の太平洋上において完全に目覚めて狂乱したアメリカ本土の防空網と迎撃機の猛烈な波状攻撃に捕捉されました。……元軽空母であった『神鷲』と『黒鷲』はアメリカ軍の飽和雷撃に耐えきれず誘爆・轟沈。さらに、エセックス級の強靭な船体を持っていた『蒼鷲』までもが集中雷撃を浴びて沈没いたしました。作戦の目的は完遂したものの、第六機動艦隊は事実上の半壊状態にあります」
祖国の霊的支柱たる天皇への絶対崇拝を胸に、アメリカ大陸の荒野と太平洋に『天皇陛下万歳』の叫びを残して散華した何千もの将兵たち。彼らが流した夥しい血の代償によって、帝国は「国家が蒸発する」という最悪の未来を回避したのである。
「尊い犠牲だ。彼らの血が、帝都を灰燼から救い出してくれたのだ」
評議場総裁にして永世宰相たる徳川 家正が、目を閉じて深く祈りを捧げるように呟いた。
だが、その哀悼の静寂を切り裂くように、小栗忠純の放った次なる言葉が、地下要塞の空気を瞬時に氷結させた。
「しかし、宰相閣下。……我々はまだ、何も終わらせてはおりません」
小栗は、美濃国の竹中数理演算所が極限の論理アルゴリズムで弾き出した、一枚の恐るべき予測推移図を広げた。
「ロスアラモスの完全破壊により、確かにアメリカの『神の火』の完成は遅れました。しかし、ルーズベルトが発動した『ヌードセン・プラン(国家総力戦体制)』によって限界突破しているアメリカ合衆国の工業力そのものは、一ミリたりとも傷ついていないのです。彼らには、無尽蔵の資金と、西海岸のカイザー造船所やデトロイトの自動車工場群に象徴される天文学的な生産基盤があります。……竹中の電磁自動算盤が弾き出した結論は、極めて冷酷です」
小栗の指が、ボーイング社の巨大な爆撃機のシルエットが描かれたグラフの数年後の地点を鋭く突き刺した。
「アメリカの工業力を根絶やしにしない限り、彼らは必ずや別の砂漠の真ん中、あるいは山脈の地下深くに新たな研究所を建造し、数年後には間違いなく『次の神の火』を完成させます。そして、月産何千機というペースで吐き出されている超重爆撃機『B-29 スーパーフォートレス』の腹にそれを抱え、無限の物量とともに必ずこの日本本土へ報復の刃を突き立ててくるでしょう。我々が払った多大な犠牲は、アメリカの絶望的な生産力の前には、単なる『数年の時間的猶予』を買ったに過ぎないのです」
沈黙が、巨大な氷の塊のように評議場を押し潰した。
「あのバケモノどもは、タラワで8隻の空母を鹵獲されても、わずか半年でその三倍の空母を西海岸のドックから吐き出してみせた。我々がいくら太平洋の島々を地下要塞化しようとも、奴らの工場を物理的に破壊しない限り、無限に湧き出す『鋼鉄の津波』と『神の火』の恐怖に、国家の首を永遠に絞められ続けることになる」
もはや、海上の艦隊決戦や、島嶼防衛という次元の戦いではない。
敵の「生産する力」そのものをこの地球上から完全に消去しなければ、豊栄大日本帝国の真の勝利はあり得ないのである。
「……ならば、結論は一つしかあるまい」
徳川家正宰相が、手元のパイプを灰皿に置き、ゆっくりと、しかし地鳴りのような凄まじい威圧感を伴って立ち上がった。家正は、壁面に掲げられた巨大な世界地図へと歩み寄り、その指揮棒の先端を、アメリカ合衆国の西海岸──カリフォルニア州のロサンゼルスからサンフランシスコ、そしてシアトルに至る巨大な工業地帯へと鋭く、力強く突き立てた。
「数年後に『神の火』を持ったアメリカが襲い来るというのなら。……彼らがそれを完成させる前に、我々自らの手で太平洋を横断し、アメリカ本土・西海岸の心臓部へ直接上陸し、彼らの工業力を根絶やしにするまでだ」
「米本土への……直接上陸作戦、ですか!?」
特例で同席していた軍務局の将校たちが、一斉に息を呑み、血相を変えた。
「しかし宰相閣下! それはあまりにも常軌を逸しています! アメリカの西海岸には、狂気的なペースで建造された新鋭空母群と無数の戦艦が『鉄の壁』となってひしめいています。さらに内陸からは、無尽蔵の航空機と、デトロイトから鉄道で直送された何万両というM4シャーマン戦車群が雨霰と降り注いできます! いかに我が軍が精強であろうと、数千キロの大洋を越えて敵の本土に直接上陸するなど、人類史上誰も為し得なかった不可能事です!」
「不可能で終わらせれば、数年後にこの帝都が蒸発するのだぞ」
家正宰相の眼光が、一切の反論を許さない絶対的な零度まで冷え切った。
「不可能を可能にするために、我々はこれまで極限の兵器を鍛え上げ、技術を収奪してきたのだ。……これより国家の全生産力を、この『人類史上空前の大遠征作戦』のためだけに極限まで最適化させる」
家正は指揮棒を翻し、太平洋の海図の西側、日本本土から南洋に展開するすべての自軍の駒を一気になぎ倒すように指し示した。
「持てる力のすべてを出し尽くす。……松平 保男大将の第一艦隊。大和、武蔵、信濃、甲斐、紀伊の46センチ(18インチ)巨砲すべてを、西海岸への上陸を支援する無敵の盾として用いる。さらに、呉と横須賀で極秘裏に建造を進めている第14号計画超弩級戦艦……51センチ(20インチ)連装砲を戴く超大和型1番艦『駿河』および2番艦『美濃』の就役を極限まで前倒しにし、上陸部隊の絶対的な火力支援として艦隊へ組み込め」
「そして、アメリカの分厚い防空網を食い破る機動部隊にも、新たな中核となる『巨大な盾と矛』を投入する」
水野忠徳が、不敵な笑みを浮かべて補足した。
「島津重工(西国重工)のドックで極秘裏に建造を進めてきた第130号艦型……改鳳型超大型装甲空母『蒼鳳』、『飛鳳』、および『天鳳』の三隻ですな」
「そうだ」家正は深く頷いた。「基準排水量6万トン。飛行甲板の装甲厚をこれまでの倍に増強し、アメリカのいかなる爆弾の直撃や特攻兵器にも耐えうる、文字通りの『絶対不沈空母』だ。この三隻の巨体に、佐賀精密機械が極限までチューンナップした超高圧油圧射出機を複数基搭載し、機動部隊の最前衛へと立たせよ」
家正の号令は止まらない。
「これら次世代の化け物を先頭に据え、第二から第六に至る、帝国が保有する『全空母機動艦隊』を一本の矢に束ねよ。上空の防空網は、岐州重工が開発したターボジェット搭載の『四三式艦上噴進戦闘機 焔風』と、2500馬力の『四二式艦上戦闘機 天風』へ更新を急がせ、アメリカのF6Fの分厚い装甲を速度と火力で完全に制圧しろ」
「しかし、問題は上陸部隊と、それを支える『陸戦兵器』だ」
家正は、陸軍を統括する関係者たちへ向けて鋭い視線を突き刺した。
「マレーやインドで活躍した『四〇式中戦車 鎧』は優秀だが、我々が西海岸で相手にするのは、アメリカの広大な本土で、デトロイトの工場から直接吐き出されてくる『M4シャーマン』の数万両の波だ。……現行の陸戦兵器のままでは、西海岸の砂浜に上がった瞬間に、奴らの圧倒的な火力と装甲にすり潰されるぞ」
その厳しい指摘に対し、親藩・越前松平重工業の総帥が、不敵な笑みを浮かべて一歩前へ出た。
「ご安心ください、宰相閣下。我が越前松平と、加賀・前田発動機、そして水戸徳川造兵工機の技術者たちは、すでにアメリカ本土上陸を見据えた『陸戦兵器の完全一新』の準備を終えております」
越前松平の総帥は、机の上に一枚の巨大な青写真を広げた。そこに描かれていたのは、これまでの日本軍戦車の常識を完全に覆す、低く、重厚で、かつ極めて洗練された傾斜装甲を持つ巨大な鉄獣の設計図であった。
「四〇式中戦車に代わる、帝国の新たな主たる矛……越前松平重工業製・『四四式主力戦車 剱』です」
その圧倒的なシルエットに、居並ぶ将官たちが息を呑む。
「重量は45トン。アメリカ軍のいかなる対戦車砲も弾き返すため、車体前面には120ミリに達する極厚の傾斜装甲を採用しております。主砲は、水戸徳川造兵工機が要塞砲の技術を転用して極限まで軽量化した『長砲身105ミリ戦車砲』。敵のM4シャーマンなど、距離2000メートルのアウトレンジから正面装甲ごと串刺しにしてスクラップにできます」
「45トンの巨体を動かせるのか?」と水野が問う。
「もちろんです。心臓部には、加賀・前田発動機が開発した『排気過給機付きV型12気筒空冷ディーゼルエンジン』を搭載。1000馬力という怪物的な大出力を叩き出し、アメリカの広大な荒野を時速50キロで疾駆することが可能です。すでにプロトタイプの耐久試験は完了しており、明日より量産ラインをフル稼働させます」
さらに、外様名門・伊達家が率いる『奥州鉱業』傘下の『上杉製作所』の代表が進み出た。
「鈍重な戦車がこじ開けた突破口へ雪崩れ込むための歩兵の『足』も用意しております。豊秋津島の広大な内陸部専用に開発された八輪駆動装甲車『上杉式・多軸快速装甲車』を西海岸へ大量投入します。キャタピラではなく特殊タイヤ駆動による高速性を持ち、重機関銃を備えたこの不整地の王者ならば、カリフォルニアの荒野をアメリカ軍の機動力以上の速度で蹂躙できます」
「素晴らしい。だが、装甲車両だけではアメリカ軍の歩兵の波は止められんぞ」
家正宰相の言葉に、今度は外様名門、鍋島家が率いる『佐賀精密機械』の総帥、鍋島 直泰が自信に満ちた顔で進み出た。
「歩兵の携行火器につきましても、完全なパラダイムシフトをご用意しております。すでに全軍の標準装備として配備を完了している『四二式半自動小銃』によって我が軍の基礎火力は向上しておりますが、アメリカ本土という絶望的な広さの戦場を制圧するためには、さらにその先が必要です」
鍋島は、木箱の中から一丁の真新しい銃を取り出した。それは、従来の小銃のような長い木製の銃床を持たず、無骨な金属のプレス加工部品で構成された、極めて機能的で短い銃であった。
「我が佐賀精密機械と井伊銃器が共同開発した、新時代の歩兵火器……『四四式突撃自動小銃』です」
「突撃自動小銃だと?」
「はい。これまでの機関短銃は近接戦では無類の強さを誇りましたが、拳銃弾を使用するため有効射程が短く、アメリカの広大な平原での撃ち合いには不向きでした。一方、通常の小銃弾は反動が大きすぎて連射ができません」
鍋島は、短く切り詰められた特殊な銃弾(7.7ミリ短小弾)のダミーを卓上に置いた。
「そこで、装薬を減らした『短小弾』を新たに開発しました。この四四式突撃自動小銃は、距離400メートルという実戦で最も多用される射程内で、小銃の『正確な狙撃能力』と、機関短銃の『フルオート連射能力』を完全に両立させた悪魔の兵器です。これを前線の歩兵全員に配備すれば、アメリカ兵の持つM1ガーランド小銃(半自動)を、純粋な『面制圧力』で完全に圧倒できます」
さらに鍋島は、アメリカ軍のバズーカをリバースエンジニアリングした図面を提示した。
「対戦車兵器として、青山火薬工機の新型成形炸薬弾を撃ち出す『四三式無反動噴進砲(国産バズーカ)』も部隊配備を開始します。これで、歩兵だけでもアメリカの戦車を容易く火だるまにできます」
戦車、装甲車両、そして歩兵の携行火器。
アメリカ本土という広大で絶望的な戦場を制圧するため、帝国の陸戦兵器はこれまでの局地戦仕様から、「完全なる自動車化と圧倒的な火力投射」を前提とした次世代の装備へと、文字通り「完全一新」されようとしていたのである。
「よし。陸戦の矛は完全に研ぎ澄まされた」
家正宰相は深く頷いたが、ここで最も凶悪な笑みを浮かべて前に進み出たのは、海軍の航空機開発を担う親藩・尾張徳川家の『葵航空工機』と、外様・美濃織田家の『岐州重工』の総帥たちであった。
「宰相閣下。艦隊と陸軍の刷新だけでは、アメリカのマニュファクチャリング・モンスターを完全に止めることはできません。奴らがシアトルのボーイング社で超重爆撃機『B-29』を月産千機単位で吐き出し、本土を空から焼き尽くそうとしているのなら……我々も、西海岸の巨大造船所や航空機工場そのものを、彼らが手出しできない高さから『直接焼き払う』必要があります」
尾張徳川の代表が机の上に広げたのは、これまでのいかなる航空機とも次元の違う、絶望的なまでに巨大な威容を誇る六発超重爆撃機の青写真であった。
「我が葵航空工機が威信をかけて開発した、四四式超重爆撃機『蒼鸛』です」
その図面に、評議場の将官たちが息を呑む。
「島津重工(西国重工)が長距離潜水艦(伊号)で培った『深海用耐圧殻』の密閉技術を空へ転用し、居住区画を完全に『与圧』しました。乗員たちはマイナス50度の成層圏にあっても防寒着なしで巡航でき、無菌室のような快適な空間から、アメリカのインフラを無慈悲に焼き払うことが可能です。B-29すら子供扱いするこの怪鳥の大編隊で、上陸部隊が西海岸の砂浜に到達する前に、アメリカの生産力の中枢を空から直接粉砕します」
「葵航空だけに良い顔をさせるわけにはいきませんな」
美濃の織田家を総帥とする『岐州重工』の会長が、対抗心を燃やすように別の巨大な図面を広げた。
「我が社が『四六式』として相模航空廠と計画していた完全なる空の決戦兵器。……この度のアメリカ本土上陸作戦に合わせ、開発と量産を狂気的に2年前倒しいたしました。四四式戦略爆撃機、通称『試製富嶽』です」
「富嶽が、もう飛ぶというのか!」と水野忠徳が驚愕の声を上げる。
「ええ。初期不良には目を瞑り、極秘裏に約20機ほどの『試製富嶽』の生産を強引に完了させました。全幅65メートル、ペイロード20トンを誇るこの超巨大六発機を『蒼鸛』の爆撃部隊の先鋒として組み込み、ロサンゼルスからシアトルに至る西海岸の工業地帯に、アメリカ人が見たこともない絶望的な質量の爆弾の雨を降らせてご覧に入れます」
陸戦兵器の完全一新と、ジェット戦闘機、超大型装甲空母、そして『蒼鸛』と『試製富嶽』が並び立つ成層圏からの絶望。
最後に瀬戸内海を拠点とする芸州・浅野港湾の代表、浅野 鉄平が、これらすべてを運ぶための巨大な船の図面を広げた。
「これら45トンの主力戦車『剱』や多軸装甲車、何十万という兵士を、西海岸の砂浜へ直接叩きつけるための足も用意できております。アメリカ軍のLST(戦車揚陸艦)の脅威を直接的に模倣・改良した国産強襲揚陸艦、『第一号型 / 第百一号型高速強襲揚陸艦』の群れです」
浅野は、ロサンゼルスの海岸線を指でなぞった。
「巨大な観音開きの艦首扉と、藤堂製作所の油圧システムによる強靭な道板を装備し、数百隻規模での量産がすでに進行中です。大和型と超大和型、そして『蒼鳳』をはじめとする機動部隊が西海岸の防空網を更地に変えた直後、この揚陸艦が直接カリフォルニアの砂浜に乗り上げ、扉を開く。そこから『剱』が直接砂浜へ躍り出て、M4シャーマンの弾幕をすべて弾き返しながら、デトロイトの心臓部へ向けて進撃するのです」
地下要塞に、帝国の放つ究極の殺意と、極限まで練り上げられた狂気的なロジスティクスの匂いが充満していく。
「アメリカの大量生産が新たな『神の火』を完成させ、B-29の雨を降らせるのが先か。我が帝国の質の暴力が、西海岸に直接上陸し、奴らの工場を物理的に焼き尽くすのが先か。……もはや法理も計略も不要だ。これは、互いの国家の心臓を直接抉り出す、純粋な殺し合いである」
家正宰相は、眼鏡の奥の瞳に一切の容赦のない冷光を宿し、最終宣告を下した。
「ルーズベルトに教えてやれ。太平洋の海は我々の内海であり、その向こう側にあるお前たちの安寧の地も、我が豊栄大日本帝国の刃からは絶対に逃れられないということを。……全軍、出師の準備を急げ。アメリカ合衆国の心臓部に、我々の全質量を叩き込むのだ!」
1944年、冬。
『神の火』の脅威を辛うじて退けた豊栄大日本帝国は、その元凶たるアメリカ合衆国の工業力そのものを根絶やしにするため、陸海空の全兵器を次世代の怪物へと完全に一新し、人類の歴史上いかなる国家も試みたことのない、「アメリカ本土・西海岸への直接上陸」という絶対狂気の大遠征作戦の準備へと、国家の全生産力を完全にシフトさせたのである。




