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引きこもりニートのコンビニ籠城生活 〜店から出たら即死な異世界迷宮に、なぜかWi-Fiがつながる店舗ごと転移しました〜  作者: autofocus


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第91話:妖精の嘘と、深夜の一号店の静寂

「ヒック……ヒック……」


ローソン一号店の店内で、売り場の床にペタンと座り込んで激しく泣きじゃくるモカ。その小さな肩を、リゼッタが心配そうに優しく抱きしめている。


「で……サカモトが何者かに連れ去られたって、一体どういうことなんだ?」


俺はレジカウンターの横に腕を組み、モカへの警戒を一切緩めないトーンのまま、冷ややかに問いかけた。


「ヒック……ヒック……」


モカは泣きじゃくりながら、涙で濡れた瞳で上目遣いに俺の顔を見てくる。


(……騙されねぇぞ。こいつには前回、思いっきり騙されて大変な目に遭わされたからな……)


俺は以前、モカに騙されて(正確に言えばモカ自身もサカモトの口車に騙されていたわけだが)、セ〇ンにサカモトをわざわざ助けに行かされた時の最悪なトラブルを思い出していた。あの時は、一号店が誇る虎の子のドローンを危うくセ〇ン側に強奪されるところだったんだ。


「おいモカ。お前……またサカモトに都合よく騙されてるんじゃないのか? 前回だって、あいつはお前を利用して、俺をセ〇ンの防衛網の中に誘い込んだわけだしさ」


「違うの! 今回は……本当に、本当に連れていかれたのぉっ!」


そう言って、モカは妖精の羽を小さく震わせながら、売り場の床に突っ伏して大声をあげて泣きじゃくった。


「ちょっと、マモル〜。そんなにモカちゃんをいじめちゃかわいそうでしょ。これだけ大粒の涙を流して泣いてるんだから、嘘なわけないじゃない」


リゼッタがモカを庇うようにして、俺をジロリと睨みつける。


(……おいおいリゼッタ、お前たちはこのモカっていう妖精を完全に見くびっているぞ。こいつはな、裏に回ればハリウッド女優並みの極上の演技を見せやがるんだよ……)


俺は喉元まで出かかったその警告の言葉を、辛うじて胃の底へと飲み込んだ。

女(魔族と妖精だけど)を敵に回して良いことなど、この世界には一つもない。異世界コンビニ生活で骨の真髄まで培われた俺の生存本能が、「ここは黙っておけ」と脳内で激しく警報を出しているからだ。


「……はぁ。わかったよ。で、サカモトを連れて行った奴らは、一体どんな見た目の奴らだったんだ?」


俺がそう尋ねると、モカは床から顔を上げ、上空を見上げながら「う〜ん」と少し頭を傾げた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ダメだ、完全にフリーズしてやがる。

そうだ……忘れてた、こいつは救いようのない本物の馬鹿だったんだ。質問の角度を変えよう。


「じゃあさ、サカモトを連れてった奴らは、全部で何人くらいいたんだよ?」


モカは相変わらず斜め上を見つめたまま、頭をさらに深く傾けている。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・


──おい!! モカ!!! どうなってんだお前のその頭のキャパシティは!? 人数くらい数えられるだろ!?


何も答えられないモカをさらに愛おしそうに強く抱きしめながら、リゼッタが可哀想なものを見る目でぽつりと呟いた。


「本当にかわいそう……。怖すぎて、ショックで記憶が飛んじゃってるのね……。ちょっとマモル! あんた、いい加減にしなさいよ!」


リゼッタが売り場に響く声で、俺をキッと鋭く睨みつけてくる。


「……ごめん……」


俺は謝った。何に対して悪いのか自分でもよく分からなかったけれど、とにかく全力で謝った。


だが、その瞬間。

リゼッタの胸に顔を埋めたモカの口角が、ほんの一瞬だけ「ニヤリ」と勝ち誇ったように上がったのを、俺の目は絶対に見逃さなかった。


(……クソ、このクソ妖精め……! こいつはどんなシリアスな時でも、確実に人の神経を逆なでしてきやがる……!)


「ゴホン!」

俺は大きくわざとらしい咳払いをして、売り場の空気を強引に変えた。


「機材を取りに実家に帰っているルカ君が、もうすぐ一号店に戻ってくるはずだ。彼が来たら、すぐにセ〇ンのサーバーへ外部からアクセスしてもらって、何か連れ去られた手がかりが残っていないか調べてもらおう」


そこまで言って、俺はふと大事な現実に気づき、肩を落とした。


「それに……そもそも、今はうちの店にドローンが無いんだ。手がかりが分かったところで、サカモトを助けに突入することすらできないよ」


「えっ!?」

その言葉を聞いた瞬間、モカの顔色がガラリと変わった。


「おい! マモル!! どうすんだよそれ!! てめぇドローン無くしてんじゃねぇよ! 本当に使えねぇな! これじゃあサカモトさんを助けに行けないじゃねえかよ!!」


さっきまでの神がかった泣き真似はどこへやら、モカは凄まじい大声で俺に向かって理不尽極まりない罵声を浴びせてきた。


ブチィッ……。


俺の中で、何かが派手に弾け飛ぶ音がした。

もう我慢の限界だ。俺はレジカウンターの前に一歩踏み出し、床のクソ妖精に向かって人差し指を突きつけ、思い切り怒鳴り返した。


「おめぇたちが前回の襲撃でぶっ壊したんだよ!!!!」


シーン・・・・。


深夜24時間営業のローソン一号店の店内に、身の毛もよだつような深い、深い静寂が訪れた──。

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