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引きこもりニートのコンビニ籠城生活 〜店から出たら即死な異世界迷宮に、なぜかWi-Fiがつながる店舗ごと転移しました〜  作者: autofocus


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第72話:恐怖の48時間スタート! 姉の前では整体師、俺の前では死神

「マモル〜、本当に大丈夫なの……?」


バックヤードのデスクの前で、リゼッタが心底心配そうに俺の顔を覗き込んできた。


「あはは、ありがとう。でも、大丈夫だよ」


そう言って俺は努めて頼もしく笑ってみせる。

桜塚マネージャーの冷酷な指令により、俺は今晩から一歩もこの部屋を出ず、寝ずの『48時間連続労働(トラック護衛任務)』に突入するのだ。


(そういえば、昔そんなタイトルの凶悪な犯人と戦うハリウッド映画があったような……)


引きこもりニートだった俺の人生において、まさにアクションコメディそのものの怒濤の展開が今、幕を開けようとしていた。


なお、今夜からの緊急任務にあたって急なシフト変更を行ったため、この深夜の時間帯はレオンが一号店の売り場に入っている。

レオンは当然のように「なんで僕がそんな時間に」と露骨に嫌な顔をして渋ったのだが、俺の代わりにリゼッタが「じゃあ私が入るわ」と言い出した途端、「お姉さんにそんな夜間の危険な仕事をさせられるわけがない!」と態度を急変させ、渋々ながら了承したのだった。


リゼッタが、デスクの上に次々とリゲインの瓶や夜食のおにぎりを置いていく。


「とにかく、食事だけはしっかり摂ってね?」


「ああ、ありがとう……」


机を挟んで、二人の視線がじっと交差する。

バックヤードに、どこか重苦しくも甘い沈黙がゆっくりと流れ始めた。

──この……展開は……まさか……。


リゼッタの整った美しい顔が、少しずつ、ゆっくりと俺の顔に向けて近づいてくる。

その至近距離にある柔らかな唇を見つめながら、俺はドクンと跳ね上がる心臓を抑え、ごくりと熱い唾を飲み込んだ──。


ガタンッ!!!!


「ひゃいっ!?」


バックヤードの頑丈なトビラが、勢いよく蹴破るような音を立てて開け放たれた。

その凄まじい衝撃音の瞬間、リゼッタの唇は宇宙の遥か彼方へと一瞬で消え去った。


「姉さん。早く家に帰らないと、またパパにめちゃくちゃ怒られるよ?」


そう言って、爽やかな笑顔のレオンがズカズカと部屋に入ってきた。パパの門限カードをこのタイミングで切ってきやがった。


「あ……そ、そうよね! もうそんな時間……! マモル、ごめんね、私これから着替えるから、ちょっと一旦バックヤードから出てもらっていいかな?」


「あ……あ、ああ……! ごめん、俺の方こそ気が利かなくて」


俺はリゼッタに返事をすると、レオンと共にバックヤードを出て、一号店の店内へと戻った。


売り場の通路に出ると、俺は前を歩くレオンの背中を見つめながら、慎重に自分の歩幅を調節して、じりじりと後方へ距離を取った。

なぜなら、その細身で美しいレオンの背中からは、今まさに『えも言われぬドス黒い殺気』がオーラのようにメラメラと立ち上っていたからだ。


不意に、レオンの足がピタッと止まった。


(ひっ……心臓が止まる……っ!)


俺はレオンと目が合うのを防ぐため、とっさに近くの棚の商品の陳列を直すフリをして、その場に素早くしゃがみ込んだ。野生のクソ虫の死んだふり作戦だ。


しかし、無駄な抵抗だった。

俺の視界の端に、高級な仕立てをされたレオンの高貴な靴のつま先が、静かに、そして正確に写り込んできた。


──回避失敗。

俺は恐怖でガタガタと震えながら、ゆっくりと上へと視線を上げた。


「なあ……クソ虫よぉ〜〜……」


「えっ……? ど、どうしたの、レオン君……?」


額から滝のような大量の脂汗が流れ落ちる。

レオンはしゃがむ俺に対して、その端正で凶悪な顔をグッと至近距離まで近づけてきた。


「お前……さっきバックヤードで、僕の大切な姉さんに『何』しようとしてたんだよ、あぁあん?」


「な……何って、ただリゼッタと普通の雑談をしてただけだけど……ッ!?」


言い訳を並べ立てようとした瞬間、レオンは俺の制服の襟元を片手でガシッと掴むと、そのまま凄まじい怪力で俺の身体をごぼう抜きに持ち上げた。


まるで店頭の什器に売れ残ってぶら下がっている、不憫なキーホルダーのように、俺の身体は宙空で哀れにぶらぶらと舞う。レオンの手が俺の首元へと動きを変えた。


「やっぱり……お前はここで今すぐ殺──」


「ごめんね〜! お待たせ〜!」


ガチャンとバックヤードの扉が開き、すんでのところで私服に着替えた本物の天使が売り場に舞い降りた。


その刹那。


「──ですからマモル店長! こうしてグッと襟元を持ち上げることで、身体の筋が綺麗に伸びて、日頃のワンオペの肩こりや腰痛にも効果てきめんなんですよ!」


レオンは俺を床に優しく下ろすと、パァァアアと後光が差しそうなほどの眩しい爽やかスマイルで楽しそうに笑ってみせた。


「あ……あはは、あ、ありがとう……レオン君。おかげで、すごく……身体が軽くなった気がするよ……」


俺も涙目で喉をさすりながら、顔の筋肉を総動員して引きつった営業スマイルを返す。


「よかったわねマモル! レオン、あなた意外と気が利くじゃない」


リゼッタは嬉しそうに微笑むと、「じゃあ、二人とも夜勤頑張ってね!」と元気に自動ドアから出て行った。


リゼッタの後ろ姿を見送った自動ドアが静かに閉まる。

店内には、再び俺とレオンの二人だけが残された。


レオンはゆっくりと俺の方を振り返ると、さっき掴まれてねじれたままの俺の制服の襟を、これ見よがしに優しくトントンと直しながら、俺の耳元で信じられないほど低く冷酷な声でささやいた。


「──死ぬほど長い夜になりそうですね……。マモル店長?」


「ノーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


これから始まる不眠不休の48時間労働と、真横にいるサイコパス魔族の恐怖。

深夜の静まり返ったローソン一号店に、俺の魂からの絶叫が虚しくこだまするのだった──。

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