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引きこもりニートのコンビニ籠城生活 〜店から出たら即死な異世界迷宮に、なぜかWi-Fiがつながる店舗ごと転移しました〜  作者: autofocus


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第6話:店長、世界最強の防衛システムと最初のお客さま

「な、何を……してるんだ?」


ガラス窓に張り付いた俺の視線の先で、その黒髪の美少女は何やら巨大なゴーレムたちに毅然とした態度で指示を出していた。

命令を受けたゴーレムたちが、その巨体に見合うだけの巨大な岩を次々と抱え、コンビニに向かってのっしのっしと近づいてくる。


「まさか……それを投げようってんじゃないよな……?」


その、最悪のまさかだった。

ゴーレムたちは一斉に、抱えていた大岩をコンビニめがけて豪快に放り投げてきた。


ビュオオオオッ!!!


凄まじい風切り音とともに、見たこともないような巨大な質量が、容赦なくこの光る建造物へと降り注ぐ。

俺は完全に腰を抜かしたまま、迫り来る死の光景をただ静かに見守るしかなかった。


迫り来る岩が、まるで止まっているかのようなスローモーションに感じる。

……ああ、これが噂に聞く走馬灯ってやつか。大学受験に失敗したこと、三年間部屋に引きこもっていたこと、昨日の梅おにぎりは美味かったな、とか。


俺は静かに目を閉じ、来たるべき衝撃に備えた。


──カーン……。


静まり返った店内に、拍子抜けするほど軽やかな、まるでアルミ缶を蹴っ飛ばした時のような音が響き渡った。


「……え?」


恐る恐る目を開ける。

まず自分の両手を確認し、ペタペタと身体を触る。痛くない。五体満足。


「し、死んで……ないよな?」


視線を外に向けると、俺の頭を粉砕するはずだった大岩が、コンビニの手前で綺麗に弾き返されてゴロゴロと転がっていた。

外では、美少女が「なぜだ!?」と言わんばかりに魔物の軍団へ向かって何やら怒鳴り散らしている。


続いて、ゴーレムたちの第二波が投げ込まれた。

地響きを立てて飛んでくる大岩の嵐。


──カン、カーン、カラン。


だが、それらはやはりコンビニの周囲に展開された見えない壁に阻まれ、ゴミ屑のように目の前へ転がっていくだけだった。


この瞬間、俺の脳内に電撃が走る。

確信した。このコンビニは『無敵』だ。どんな魔法だろうが物理攻撃だろうが、傷一つつけられない絶対不可侵の聖域なのだ。


だとしたら──。


「ハッハハハハ! あんなところに怯えて座り込んでいる必要なんて、これっぽっちも無いわけだ!」


さっきまで縮み上がっていたのが嘘のように、俺の心の中に「無敵の盾を得たニートの全能感」が過去最高潮で沸き上がってきた。

俺はガラス窓のすぐ前に立つと、外の美少女に向かって、ネットで覚えた全盛期の煽りポーズや、とても人には見せられないような卑劣な挑発を全力で繰り返した。


「ほらほら! 当たりませ〜ん! どこ狙ってんの〜? 田舎のゴーレムはコントロールが悪いなぁ!」


ガラス越しに俺がニヤニヤとケツを叩いて煽ると、外の美少女の顔がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。怒りのあまり、彼女の華奢な身体が小刻みに震えているのが分かった。


楽しい。楽しすぎる。

俺は調子に乗ってさらに挑発を重ねる。

そう、俺は今、世界最強の防衛システムを握るコンビニオーナーなのだ。誰にも俺を脅かすことはできない!


ついにしびれを切らした少女が、軍勢を下がらせて単身こちらへと乗り込んできた。


ガラスを挟んで、至近距離で目が合う。

……うわ、近くで見ると、めちゃくちゃ美しいな。


少女は般若のような形相で、俺に向かって何かを激しく怒鳴り散らしている。防音性が高すぎて声は全く聞こえないが、おそらく罵詈雑言の嵐だろう。

俺は腕を組み、ニタニタと歪んだ笑みを浮かべながらその様子を特等席で眺めた。


「ふん、こんな可愛い子にここまで必死に怒られるってのも、悪くない人生だな」


完全なる上から目線。

激昂した少女が、ついに腰の細剣を抜き放ち、ガラスを叩き割ろうと何度も激しく切りつけてきた。

キンッ! キンッ! と鋭い火花が散るが、当然、コンビニの強化ガラスは傷一つ付かない。びくともしない。


俺は圧倒的な優越感に浸りながら、庭に入り込んだ野良猫を追い払うかのように、シッシッと手を振って見せた。

少女は悔しそうに歯噛みしながら、なんとか中に侵入できないかと、コンビニのガラス壁を両手でベタベタと触りながら移動し始める。


「無理だって。諦めてお帰りよ、お嬢さん。現代日本の建築技術(結界)を舐めないでもらいたいね」


完全勝利の余韻に浸りながら、俺が「さて、品出しの続きでもするか」とバックヤードに戻ろうとした、その時だった。


──ピロリオリーン♪


静まり返った店内に、あまりにも聞き馴染みのある、マヌケで軽快な入店音が鳴り響いた。


「え?」


嫌な汗が背中を伝う。

まさか、と思ってロボットのような動きで恐る恐る入り口へと振り返る。


ウィーン、と静かに開いた自動ドア。

そこには、赤外線センサーによって極めてスムーズに『ご来店』を歓迎された、黒髪の美少女が呆然と立っていた。


目が合う。

少女の手には、まだ抜き放たれたままの、ギラギラと輝く本物の剣。


「あ……」


そりゃそうだ。ここは『コンビニ』だ。

外からの攻撃は一切通さないが、入店しようとする『お客様』に対しては──自動ドアは、いつだって優しく全開になる。


世界最強のコンビニオーナー(笑)の思考回路が、本日二度目の完全停止を迎えた。

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