表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引きこもりニートのコンビニ籠城生活 〜店から出たら即死な異世界迷宮に、なぜかWi-Fiがつながる店舗ごと転移しました〜  作者: autofocus


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/122

第66話:店長、決戦の前夜と容赦なきミサイルお仕置き

俺はバックヤードの壁に掛けられたカレンダーの日にちに、赤ペンでバツ印をつける。

ついに、この地獄のような不眠不休の無睡眠労働にも終わりが近づいていた。明日はいよいよ、バンダル2号店のオープン当日だ。


そんな風に一人で感慨に浸っていると、ストコンからけたたましい警告音が鳴り響き、桜塚マネージャーとの緊急リモート通信が繋がった。


「お疲れ様です、間宮店長。これから新店舗のほうで、システム管理本部の社員と新しい現地スタッフによる、オープン前の最終ミーティングを行います。間宮店長も一号店からリモートで参加してください」


画面を見る限り、今日はいつもの固定カメラではなく、桜塚マネージャーが現地で持っているスマホのカメラから映像が流れているようだった。

彼女のツカツカとした容赦のない歩行スピードに合わせて、ストコンの画面が激しく揺れる。


まず画面に映し出されたのは、完成したバンダル2号店の真新しい外観だった。数日前まで散乱していたという角材などの建設資材はすべて綺麗に片付けられており、店の周りには広々としたアスファルトの駐車場の白線が美しく引かれている。


そのまま彼女が自動ドアをくぐって店内に入ると、商品の搬入や棚への陳列もすでにすべて終わっているらしく、お店は今すぐにでもお客様を迎え入れてオープンできる完璧な状態に仕上がっていた。


売り場の奥へと進むと、そこには本部の人間だろうか、仕立ての良さそうな高価なスーツを着こなした男たちが数人と、ロー〇ソンの制服をビシッと着用した、おそらく新店舗のオープニングメンバーであろう異世界のスタッフたちが数人、緊張した面持ちで整列して立っていた。


すぐに一番偉そうなスーツの男が格式ばった挨拶を始め、桜塚マネージャーがそれに機械的に相槌を打つ。続いて桜塚マネージャーからの訓示があり、いよいよカメラがスタッフたちに向けられて俺へとバトンが渡された。


「え〜……一号店の店長をしております、間宮 マミヤマモルです。これから皆さんと一緒に、このバンダル2号店を全力で盛り上げていけたらなぁと思ってます。どうぞ、よろしくお願いします」


俺の当たり障りのない無難な挨拶が終わると、画面の向こうで新スタッフたちが順番に自己紹介を始めた。

自分で面接しておきながら言うのもなんだが、我ながら結構いいスタッフを厳選して採用できたんじゃないか、とモニターを見つめながら少し鼻が高くなった。


一通りのミーティングが終わり、全員が解散すると、桜塚マネージャーが画面のこちら側に向かって再び冷たく話しかけてきた。


「間宮店長。我々本部の人間は、一応午前0時までは現地のお店に残って最終確認を行いますが、それ以降の夜間警備はそちらでお願いしますね。明日の新スタッフたちが出勤してくるのは、オープンの一時間前である午前6時です。その間の6時間、ドローンによる厳重な警戒を行ってください」


(……お前らがそのまま現地に泊まり込んで警備しろよ、この鬼マネージャーが……っっ!!)


という喉元まで出かかった怒りのツッコミをどうにか喉の奥へと押し込み、俺はすっかり板についた社畜の笑顔で答えた。


「──承知しました」


通信を切り、バックヤードの時計を見る。現在の時刻は23時ちょうど。

指示された0時までまだ時間はあるが、早めにドローンを飛ばして周辺を警戒しておくに越したことはない。俺はストコンを操作してドローンの起動スイッチを入れ、夜の空へと発進させた。


バンダル現地のエリアまでは、ストコンの自動操縦モードで向かわせればいいだろう。

俺はコントローラーを一度机の上に置き、本日すでに三本目となるリゲインの茶色い瓶の蓋を、パキッと小気味よい音を立てて開けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


バンダル2号店──深夜の建設敷地外──。


「こりゃまた……ずいぶんと立派なもんを建てはりましたなぁ〜」


真っ暗闇の木陰から、低くて下品な関西弁がひっそりと漏れ聞こえていた。


「サカモトさん、声が大きいわよ注意して! マモルの馬鹿がまた上空からドローンで警戒任務をしてるんだから!」


サカモトの肩の上にちょこんと乗ったモカが、必死に周囲を警戒しながら相棒の耳元でそう咎めるように囁いた。


「わかってますがな、モカはん。このダイナマイトの束を店の裏にポイと置いたら、ワイらはすぐに退散しますわ」


「はやく建物の明かりが消えないかしら。消えたら一気にいきましょ」


不敵な笑みを浮かべるサカモトの手には、導火線のついた凶悪なダイナマイトの束がしっかりと握りしめられていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……そろそろ、現地に着くころかな」


一号店のバックヤードで、俺はストコンの画面を見つめながらドローンの自動操縦を解除し、完全な手動操縦モードへと切り替えた。

もし、あのサカモトの野郎が何か姑息な手を仕掛けてくるとしたら、本部の人間が帰る今夜、オープン直前のこのタイミングが一番危ない。


俺はドローンの高度を極限まで下げて低空で飛ばしながら、完成したばかりの2号店の店舗周辺を慎重に巡回させた。


暗視カメラのモードを切り替え、熱源を探知するサーモグラフィ画面をオンにする。

青く染まった画面をじっと睨みつけていると、敷地外にある大きな岩陰に、細長い奇妙な熱源と、そのすぐ隣にあるごく小さな熱源の2つを発見した。


その瞬間。眠気で半分下がりかけていた俺の瞳に、ギラリとした怪しい狂気の力がこもり、自然と口角が釣り上がった。


「サカモトちゃんやないか〜〜〜」


俺は自分の口から漏れ出た慣れない関西弁を小さく口ずさみながら、ドローンを音もなくその岩陰のすぐそばへと接近させた。

機体から集音マイクを音もなくスルスルと伸ばし、隠れている二人の密談をリアルタイムで拾い上げる。


ーーーーーーーーーーーーー


「本部の連中、いつまで店の中にいるのかしら……。早く寝ないと本当にお肌が荒れちゃうんだけど」


「モカはん、そないツンツン言わんといてや〜。もうちょっとの辛抱やさかいに」


「そのダイナマイトの点火スイッチ、絶対に私に押させてよね! こないだマモルの野郎のせいで、私どれだけ酷い目に遭わされたと思ってんのよ!」


「おうおう、もちろんモカはんに押させたるとも。そやから、もう少しだけ静かにしてや」


「ふん。でも……オープン当日の朝、お店が跡形もなく爆発して消えてなくなった時の、あのマモルの絶望したマヌケ面が直接見られないのだけが本当に残念だわ〜!」


「そやな〜。アイツ、爆発した店を見て多分……『ノーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!』って、お決まりの顔で叫ぶんちゃいまっか?」


「キャハハハッ! 間違いないわ、きっとそうよ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


カチッ。


俺は無表情のまま、ストコンのボタンを押して集音マイクの音声をOFFにした。


──よし、覚悟は完全に決まった。

ほんの少しでも、あのハエ女に「あの時は楽しかったな」なんて淡い情を抱いた俺が、とんでもない大バカ野郎だった。


俺は岩陰のすぐ近くにいたドローンを、一度爆風の及ばない安全区域まで急速に後退させた。そして、画面にある赤い兵器管理パネルを開き、ドローン搭載型ミサイルの安全装置をガチャリと解除する。


それから再びマイク音声をONに切り替え、最大出力の音量で、暗闇に潜む二人のクズに向かって冷酷に呼びかけた。


「サカモト!!!!! ──それと、モカァ!!!!!!」


「「えっ!!?」」


突然頭上から響き渡った死神のような声に、驚愕した二人が岩陰から勢いよくマヌケな顔を突き出した。


「安らかに……永遠に眠れ」


俺はストコンの特大エンターキーを、一切の躊躇なく思い切り叩きつけた。


シュバァァアアアアッ!!!


ドローンの下部から放たれた小型ミサイルが夜の闇を切り裂き、二人が隠れていた巨大な岩へとピンポイントで直撃、大爆発を起こした。


ズガァァァァァァン!!!!!


夜の静寂を切り裂く凄まじい大爆発の火柱が画面いっぱいに広がる。

当然、バンダル店のすぐ外で突如として巻き起こった大爆発の衝撃に、店内に残っていた桜塚マネージャーからすぐさまストコンへ緊急入電が入った。


『間宮店長!! 一体外で何が起こったんですか!? 爆発音が聞こえましたが!!』


画面の向こうで珍しく取り乱す鬼マネージャーに対し、俺はリゲインの力で完全にキマった虚ろな目を向けながら、静かに、そして淡々と答えた。


「……あ、大丈夫です。ただの薄汚いネズミと、一匹のうるさいハエを、今ここで綺麗に始末しただけですから。──これで、もうバンダル店は絶対に安心です。それじゃあ、私は予定通り休ませてもらいますので」


『えっ? ちょっと、店長──』


「お疲れ様でした」


ブツッ。


俺は桜塚マネージャーが何かを言いかける前に一方的にリモート通信を遮断すると、ドローンの帰還設定を『全自動操縦』へと切り替え、そのまま限界を迎えた身体ごとベッドへと豪快に倒れ込んだ。


マットレスに身体が沈んだ数秒後、俺は文字通り、泥のような深い深い眠りへと落ちていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ