第59話:店長、暗闇の強襲と消えたセブン
俺はサカモトの店舗へあいさつ代わりの一発をお見舞いしてから、悠々と破壊された店の入り口に向けてドローンを前進させた。
「サカモトの野郎。今頃は腰を抜かして、バックヤードの机の下でガタガタ震えてる頃だろうな」
俺はバックヤードの暗がりで、我ながらゲラゲラと卑屈な笑いを浮かべた。
ドローンがセ〇ンの自動ドアに近づくと、小さな影が壊れたドアの隙間にサッと隠れるのが画面越しに見えた。
だが、俺はそのまま構わずにドローンを進める。
大破したドアの枠を通り過ぎ、店内に侵入したその瞬間だった。
「このクソガキがあああああああああああああっっっっ!!!!!」
モカが激しい叫び声とともに、どこからか拾ってきた大きな棒切れをドローンに向かって思い切り振り下ろしてきた。
「ニヤリ」と俺の口元が歪む。その程度の直感的な攻撃、強化されたドローンの機動力なら華麗にかわすことなど朝飯前だ。
俺はレバーを引いて風を切り、棒切れの軌道を完璧に見切って回避した。そして、操作ゴーグルについたマイクのスイッチを入れ、モカに向けて直接語り掛ける。
「バ〜カ!!! お前の考えることなんて、こっちはすべてお見通しなんだよ!」
俺はスピーカー越しに高笑いを響かせてやった。
「キーーーーーーーーッッッ!!!!!」
モカは顔を真っ赤にして、悔しそうに床をドンドンと地団駄を踏んで激怒する。
俺はその隙を逃さず、ドローンの下部ノズルから特製のスプレーをモカの顔面に向けて至近距離で噴射した。
プシューーーーーッ!!!
「えっ!? なに!? え……っ!? イタイイタイ!! 目がぁぁあああああ!!!」
直撃を受けたモカの顔がさらに真っ赤に染まり、彼女は悶絶しながら床の上を激しくゴロゴロと転げ回った。
「ふはははっははははははっはあっは!!!! どうだ! 特製唐辛子スプレーの味は! ざまあみろ!」
「くぅ〜……っ。マモル……っ、絶対に覚えとけよな……っ!!」
俺は涙目で苦しむモカを横目にスルーし、ドローンをさらに奥のバックヤードへと進ませる。
俺の手元には、ストコンの横に新しく配備された『どくろマーク』の描かれた特設の発射スイッチが置かれていた。
「サカモト〜……。お前には、とっておきのこれをお見舞いしてやるからな」
俺は周囲を警戒しながらバックヤードの扉の前まで行き、ドローンから伸ばしたマジックハンドで静かに扉を押し開いた。
ゆっくりとバックヤードの中へ入る。
部屋の中は完全な暗黒だったが、ドローンのカメラが自動で高性能の『暗視モード』へと切り替わった。さらに、レベル25の恩恵である熱感知センサーが、隠れた物体の微かな体温すらも逃さず画面に赤く映し出す。
画面の隅、並べられたスチールロッカーの一番奥のスペースに、あからさまな人間の熱源反応を感知した。
「サカモト〜……。隠れたつもりだろうけど、こっちからはまるわかりなんだよなぁ」
俺は勝ち誇った笑みを浮かべながら、そのロッカーの前へとゆっくりドローンを滞空させた。
そして、再びマイクに向けて静かに話しかける。
「サカモト〜……。いつまでもビビってないで、潔く出て来いよ。……まあ、お前が嫌だと言ったって、今すぐ強制的に飛び出してくることになるだろうけどな」
俺はそう言うと、手元にあるどくろマークのスイッチにそっと指を添えた。
「ジ・エンドだ!」
カチリ、とスイッチを押し込む。
ドローンの先端ハッチが左右に開き、中から禍々しいロケット型のミサイルがその頭を覗かせた。
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
バックヤードにけたたましいロックオンの警告音があたり一面に響き渡り、ロケットが少しずつドローンの射出レールからすべり出し──。
「終わりだ! サカモトおおおおおっっっっっ!!!!!!!!」
俺の絶叫とともに、至近距離からミサイルが爆音を立てて発射された。
弾頭がロッカーの表面に接触し、サカモトごと部屋を木っ端微塵に吹き飛ばす──その、まさに直前の瞬間だった。
フッ……。
信じられないことが起こった。
目の前にあったロッカーも、壁も、サカモトの気配も、セ〇ンの店舗そのものが突然眩しい光の粒子となり、音もなく跡形もなく消え去ってしまったのだ。
完全に目的を見失ったミサイルは、誰もいない空間を直進してそのまま店のあった場所の遥か後方、遠方の巨大な崖へと激突。
ドガガガガガガアアアアアン!!!!!
凄まじい大爆発音とともに、その崖の半分を文字通り丸ごと消し去った。
俺はドローンのカメラが捉えた砂煙の映像を見ながら、バックヤードの椅子の上で完全に呆然と固まっていた。
「いったい……何が起こったんだ……?」
あまりの超常現象に頭が追いつかない。そしてさらに、画面の向こうで信じられないことが起こる。
今しがた光となって完全に消滅したはずのセ〇ンの店舗が、そこから数百メートルほど少し離れた荒野の別の場所に、何事もなかったかのように突然ズドンと出現したのだ。
「どうなってるんだ……。コンビニが……まるごと転移した……?」
その光景を目撃した瞬間、これまで俺の頭の中にあった様々な疑問のピースが、濁流のような勢いで一つの線へと繋がっていった。
(もしかして……俺が店舗ごとこの異世界に飛ばされたあの初日の出来事も……すべて、サカモトがこの『コンビニ転移』のシステムを使って仕組んだことだったのか……!?)
俺は頭が破裂しそうなほどの衝撃を受けながら、ゆっくりと操作ゴーグルを外した。
両目を静かに閉じ、背もたれに体重を預けながら、俺はかつてないほど深い深い思考の海へと、一人沈んでいったのだった。




