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引きこもりニートのコンビニ籠城生活 〜店から出たら即死な異世界迷宮に、なぜかWi-Fiがつながる店舗ごと転移しました〜  作者: autofocus


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第37話:店長、深夜の先読みと夜の営業名刺

俺は売り場の視認性を高めるための『前出し作業』をするフリをしながら、横目でその女の動向をじっと盗み見ていた。歩くたびに艶めかしく揺れる豊満なヒップに、俺の魂は完全に心を奪われていた。


(……くぅ~っ! 異世界のこんな最果ての地で、これほどの目の保養ができるなんて……生きててよかった……っ!)


女が、カツ、カツとヒールを鳴らしてドリンクコーナーの方へと移動していく。

俺もカサカサと素早い動きで隣の商品棚へと移動し、彼女を最も美しく観察できるキャプチャー用の『ベストポジション』を脳内で索敵した。


俺の引きこもり脳が、この深夜になって最高に冴え渡っていく。

弾き出した最適解は──『スイーツコーナー』の正面だ。


なぜかって? スイーツコーナーの真裏から見えるドリンク棚の正面は、ちょうど『酒類コーナー』だからだ。

考えてもみろ。こんな深夜0時に、ボディコンを着た夜の香りのする美女が、わざわざコンビニに来てコーラや緑茶を買うか?

否だ! 彼女は十中八九、仕事終わりか何かのビールを買いに来たに決まっている。


そしてうちの棚において、缶ビールは下から三段目。

ということは、彼女がビールを取るために取る体勢はどうなる?

その瞬間、ちょうどスイーツコーナーのシュークリームを神妙な顔で整理している俺の視線が、どこに向かうと思う?


……まぁ、いい。これ以上語るのは野暮というものだ。


俺は彼女の行動を完璧に先読みし、スイーツコーナーでカサカサと商品の陳列を直しながら、来るべき歴史的瞬間カウントダウンに備えて全神経を集中させた。

静かな店内に、カツ、カツ、とヒールの音が響く。


(来た……っ!)


俺は心傷の爆発しそうな高鳴りを必死に抑え込み、口の中に溜まった生唾を、生々しい音を立てて飲み込んだ。


ゴクリ──。


脳内を流れる時間が、まるでスローモーションのように遅くなっていく。

予測通り、女が缶ビールが並ぶ酒コーナーの前で足を止めた。その妖艶な視線が、しっかりとビール缶へと注がれる。


俺の読みは、完璧に、そして美しく確信へと変わった。

女がビールを手に取ろうとして、ゆっくりとその豊かな腰を、前へと深く曲げていく──。


俺は心の中で、勝利のカウントダウンを盛大に開始した。


3…………。


2…………。


1…………!


「うわぁっっ!!!!!!」


「ぶふぇっっ!!!???」


まさにその刹那、俺と商品の隙間のわずか数センチの暗闇から、アラクネの顔がヌッと心霊写真のように出現した。心臓が今度こそ停止するかと思った。


「な……な、なんだよ急にっ!? 驚かすなアラクネっ!!」


アラクネは、下半身のクモ脚をカサカサと小刻みに動かしてニタニタと意地の悪い笑みを浮かべると、口元を指先でツンとついてケラケラと笑った。


「店長〜、またエッチなことしてる。リゼッタに言いつけちゃおっかなー?」


ヤバい…………。

これも……あの時と、全く同じ構図の……デジャヴだ……。

俺の脳内の危険察知センサーが激しく明滅する。


そんな無駄なドタバタ劇を繰り広げている間に、いつの間にか用を済ませたボディコン美女は、ビールを持ってレジの前に凛と立っていた。


「ア、アラクネ、これはガチの誤解だ。よく分からないけど絶対に誤解なんだ、いいな!? レジ裏で間違った悪い噂をリゼッタに広めることのないようにっ!!」


俺はアラクネに店長としての毅然とした(死に物狂いの)注意を与えると、何事もなかったかのように大急ぎでレジへと向かった。


ピッ。ピッ。


手慣れた手つきでバーコードを読み取り、会計のボタンを叩く。


「……合計で、2812円になります。ありがとうございましたー」


俺は商品の入った青と白のビニール袋を、丁寧に両手で差し出した。

女はそれを受け取ると、ふわりと、こちらの理性をすべて溶かすような極上のフェロモンを漂わせて微笑んだ。


ああ……なんて濃厚なフェロモンなんだ……。

マスクの下で、俺の意識はうっとりと天国へと昇天しかけていた。


「ねえ……。あなたが、最近この辺りで噂になっている『ロー〇ソン』の店長さん?」


噂の店長……? 俺って、いつの間にか異世界の夜の世界にまで名前が届くほど有名になっていたのか?

そんな最高の悦びに浸りながら、俺は胸を張って答えた。


「はい。私がここの店長です」


すると女は、その豊かな胸元のスリットから、指先で一枚の薄い四角い紙を抜き出し、カウンターの上へとすっと滑らせて置いた。


「時間があったら、いつでもお店に遊びに来ね?」


そう言って片目を艶っぽく瞑ってみせると、女はビール袋を揺らしながら、颯爽と夜の街へと帰っていった。


俺はカウンターの上に残された、その紙──『名刺』を両手で拾い上げ、まじまじと眺めた。


【スナック来夢来人ライムライト / アンナ】


そこには、紛れもない元の世界のキャバクラやスナックで使われているような、煌びやかなロゴと名前が印刷されていた。


「アンナちゃん、かぁ〜……」


俺は昨日リゼッタに怒られたことも、レオナルトに命を狙われていることも一瞬で綺麗さっぱり忘れ去り、限界まで伸びきった鼻の下をさらにだらしなく伸ばしながら、自動ドアの向こうへと去りゆく女の素晴らしいお尻を、いつまでも飽きることなく眺め続けていたのだった。

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