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引きこもりニートのコンビニ籠城生活 〜店から出たら即死な異世界迷宮に、なぜかWi-Fiがつながる店舗ごと転移しました〜  作者: autofocus


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第24話:店長、新機能の誘惑と二度目の失神

俺は気合が空回りしたおかしなポーズのまま、すぐさまバックヤードに駆け込んでストコンの電源を立ち上げた。


……レベル2。一体何が変わるんだ。何が解放されたんだ。

他店を覗き見するスパイツールか? それともスマホの電波増幅機能か!?


「ホーム画面は……うん、今までと同じだな……」


俺ははやる気持ちを抑えきれず、すぐさま発注画面のアイコンをタッチする。

画面に並ぶのは、いつも通りの見慣れたラインナップ。──いや、違った。


画面を一番下までスクロールした時、光り輝く『LV2』と書かれた境界線の真下に、今まで存在しなかった新たな発注カテゴリーがズラリと解放されていた。


「やっぱり……! 発注できる商品の種類が増えてる……っ!!」


俺は息を呑みながら画面をさらにスクロールさせていく。元の世界でも一部の大規模店舗でしか取り扱いのないような、マニアックな便利グッズやこだわり食品がラインナップされている。


その中に──俺の男としての純潔な魂を、ひと際激しくざわつかせるものが紛れ込んでいた。


「おおおおおっ!!!! 成人雑誌(エロ本)のラインナップが、めちゃくちゃ増えてるじゃねえかァァァァァ!!!!!」


深夜のバックヤード。あまりの興奮と感動のあまり、俺は抑えきれずにドデカい歓喜の声を上げてしまっていた。


ガタッ。


「……ッ!?」


その声で、天井の糸の巣でスヤスヤ眠っていたはずのアラクネが目を覚まし、パタパタと目の前に降りてきた。

まずい、アラクネとばっちり目が合ってしまった。俺は最速の動きでストコンの画面を自分の身体で必死に隠す。


アラクネは無言のまま、フリコのように自分の身体を左右にゆらゆらと揺らし始めた。

──デジャブだ。いつか見た、完全に俺のプライバシーが侵害される寸前の最悪の光景である。


だが、今日の俺はレベルアップした店長だ。もう無抵抗で覗かれるわけにはいかない!

俺はアラクネの動きを相殺すべく、自分の身体も左右に激しくフリコのように揺さぶって視線をブロックしにかかった。


左右、左右、超高速の反復横跳びじみた視界のブレ──。

しかし当然ながら、元引きこもりニートの貧弱な三半規管が、先に盛大な悲鳴を上げた。


「あ、これアカンやつ……」


視界がぐにゃりと歪み、俺は力なくその場にバタンと倒れ込む。

急速に薄れゆく意識の淵で、アラクネの、あの底抜けに無邪気で容赦のない声が脳内にエコーした。


「店長……また、エッチなの見てる……」



「……ん」


どれくらい時間が経っただろうか。

冷たい床ではなく、いつの間にかバックヤードの寝袋の中に綺麗に寝かされていた。アラクネが運んでくれたのだろうか。


俺は重い頭を起こし、慌ててバックヤードの周りを見渡す。


「……誰もいない?」


そのまま事務机の上の時計を見た。長針と短針は──夜の【22時】を指していた。


「な、何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!???(驚愕)」


嘘だろおい! 俺はいったい何時間、成人雑誌の興奮と三半規管のバグで失神してたんだ!?

っていうか、その間のワンオペのお店(売り場)はどうなって──。


「やばいやばいやばいっっっ!!!」


俺は軽いパニックになりながら、寝袋を蹴り飛ばしてバックヤードの扉を勢いよく開き、店内の売り場へと滑り込んだ。


すると、商品棚の隙間から、レジカウンターに向かってずらりと並ぶ、夜勤帯とは思えない買い物客の列が見えた。


「終わった……クレームの嵐で店が崩壊する……っ!」


俺は血の気が引くのを感じながら全力でレジへと駆け寄り、カウンターに両手を突いて、お客様の前に思いっきり頭を下げた。


「申し訳ございません!!! 大変お待たせいたしましたっ!!!」


冷や汗を流しながら下げた頭の上から、不思議と、規則正しい音が響いていた。


ピッ……ピッ……ピッ……。


バーコードを軽快に読み取る、手慣れたレジ打ちの音。

……あ、アラクネか!? あいつ、いつの間にかレジ打ちをマスターして店を守ってくれていたのか……っ!


俺は居候バイトの奇跡的なファインプレーに大歓喜し、心底ホッとしながらガバッと顔を上げた。


だが。

そこに立っていたのは、銀髪の蜘蛛女ではなかった。


あの、指定の青と白のストライプ柄のロー◯ソン制服を、なぜか完璧に着こなしてレジ袋におでんを詰めている、金髪ツインテールの戦乙女──。


「なっ……!? な、何してんだよ、お前……っ!!」


「いらっしゃいませ。温めはどうされますか?」


驚愕して絶叫する俺の存在を、完全に、それこそ石ころか何かのように無視して、リゼッタは機械的に次々と買い物客をさばいていく。その横で、アラクネが楽しそうに袋詰めをサポートしていた。


やがてレジの列が完全に途切れ、店内が静まり返ったところで、ようやくリゼッタは俺の方をギロリと睨みつけた。


「……私、今日からここで働くことにしたから」


腕組みをして、短く、それこそ決定事項として言い放つリゼッタ。


「だっ、誰が許可したんだよ!? ここは俺の──」


「お客様をレジで待たせて、バックヤードでずーっと間抜けに寝こけてるような男(店長)に言われたくないわよ! 今日だって、私がたまたまからあげクンを食べに来てあげなかったら、この店どうなってたと思うの!?」


「うっ……」


正論。あまりにもぐうの音も出ない完全なる正論。

お姫様からの痛烈な一撃に、俺は言葉を詰まらせる。


「それに……あんたがそんなところで倒れて寝てた『理由』だけどさぁ……」


リゼッタは冷ややかな目のまま、隣にいるアラクネに視線を送った。

アラクネは、いたずらっぽく小悪魔的な笑顔を浮かべながら、ケラケラと楽しそうに笑っている。すべては筒抜けだった。


「アラクネ……お前、リゼッタに何言った……っ!?」


リゼッタは深い深いため息をつき、制服の襟を正しながら、俺に最後通牒を突きつけた。


「──じゃあ、そういうことだから。よろしくね、……エロ店長」


「リ、リゼッタお嬢様ぁぁぁ……っ(絶望)」


本日二度目の、目の前が真っ暗になる感覚。

俺は自分の尊厳が完全に消滅したのを感じながらその場に崩れ落ち、今日二度目の、極めて深い失神へと旅立っていったのだった。

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