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引きこもりニートのコンビニ籠城生活 〜店から出たら即死な異世界迷宮に、なぜかWi-Fiがつながる店舗ごと転移しました〜  作者: autofocus


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第25話:店長、西からの求婚者と本部からの業務連絡

目が覚めると、バックヤードの寝袋の中だった。


「いててて……」


俺は失神した時に床へ思いきり打ち付けた後頭部を痛々しく押さえながら、のそりと身体を起こす。


ふと、つけっぱなしにしていたストコンの画面が目に入った。その中心に浮かび上がる奇妙な表示を見て、俺は完全に動きを止めた。

画面のメールアプリのアイコンに、見慣れた『①』という赤い通知マークがついていたのだ。


チサからのメッセージの件もある。俺はすぐさまアプリを立ち上げ、届いたばかりのメールを開いて内容を確認した。


ーーーーロー〇ソン本部より業務連絡ーーーーーーー

日々の業務お疲れ様です。

この度は店舗LVアップ、誠におめでとうございます。

当チェーンでは、コンビニレベルの上昇ごとに、店長様へ様々な特殊権限の付与を行っております。

今後とも売上を伸ばし、さらなる権限獲得を目指してください。


以上

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なっ……なんだこれ……!? レベルアップによる、権限付与……?」


たしかに、レベル2になってから発注できるマニアックな商品(主に成人雑誌)は増えている。だが、メールの文面を見る限り、このままレベルを上げ続ければもっと凄まじい『権限』が解放されるということじゃないか。もしかして、現実世界との完全な双方向通信とか、そういうのも……。


実家でのニート生活、丸三年。

ずっと死んでいた俺の心の中に、本当に久々となる、猛烈な「向上心」が芽生えた瞬間だった。


「よし、とにかく売上を──」


色々と壮大な妄想を膨らませていた、まさにその時だった。

バックヤードの事務机にある、監視カメラのモニター(店外の様子を映す画面)に、信じられない映像が飛び込んできた。


地平線の向こうから、一台の禍々しく重厚な馬車が、文字通り猛スピードでこちらへ近づいてくるのが見えたのだ。


「なっ……なんだあれは!!! 減速してない……このままじゃ店に突っ込むぞ!!!」


俺は寝袋を跳ね除けて飛び起きると、そのまま店内の売り場へと駆け込んだ。


「アラクネ!!! リゼッタ!!!! 襲撃だ!!!! あの暴走馬車を今すぐ停めてくれ!!!!」


俺のただ事ではない絶叫に、レジで一般客を接客中だったリゼッタとアラクネが揃ってガラス窓の外を見る。

アラクネは事態の深刻さが分かっていないのか、ケラケラと窓の外を指さして笑い、リゼッタは「はぁ……」と心底うんざりした顔で深いため息をついた。


そうしている間にも、重厚な馬車は一直線にこの店を目がけて猛進してくる。激激突まで、あと数秒。


「チッ……」


リゼッタはもう一度不機嫌そうに舌打ちをすると、レジカウンターを軽やかな身のこなしでひらりと飛び越えた。そのまま自動ドアへと突っ走り、驚いてドアの前で固まっている一般客の身体をグイと力強く押しのけて店外へ飛び出すと、ロー〇ソンの敷地ギリギリの正面に、堂々と仁王立ちした。


馬車はトップスピードのまま、まさにリゼッタを轢き殺さんとする勢いで突っ込んできたが──彼女の爪先が触れるかというすんでのところで、凄まじい破壊音と共に急ブレーキをかけ、猛烈な煙を上げて急停止した。


ゴォォォッ!!!


凄まじい風圧でリゼッタの美しい黒髪が激しく舞い上がる。だが、彼女の気高き表情は微塵も変わらず、瞬き一つすらしていなかった。さすがは魔王の娘、肝の据わり方が人間とは次元が違う。


ドンっ!!!!


急停止の凄まじい慣性の法則により、一度大きく持ち上がった馬車の後部が、激しい衝撃音を立てて地面に叩きつけられた。


周囲を不気味な静寂が包み込む。

やがて、これ見よがしに豪華な装飾が施された馬車の扉が開き、中から一人の男が優雅に降りてきた。白いタキシードをまとった、いかにも育ちの良さそうな魔族のイケメンだ。


男は真っ直ぐリゼッタの前まで歩み寄ると、その場に流麗な動作で跪き、手に持っていた真っ赤なバラの花束を恭しく差し出した。


「ご機嫌麗しゅう……我が愛しのリゼッタ姫」


男はキザに微笑みながら、深く頭を下げる。

対するリゼッタは、コンビニの制服を着たまま、この世の終わりのような超絶不機嫌な顔で彼を見下ろした。


「……何しに来たのよ、レオナルト」


氷点下の声で冷酷に言い放つリゼッタと、全く動じていない謎の男。

店内のレジ裏からガラス越しに二人のその光景を見つめながら、俺は、これからこのロー◯ソンに巻き起こるであろう、新たなる悪夢の予感にただただ絶望していた。

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