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引きこもりニートのコンビニ籠城生活 〜店から出たら即死な異世界迷宮に、なぜかWi-Fiがつながる店舗ごと転移しました〜  作者: autofocus


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第110話:支持率の政争と、ハエ女のゲスな微笑み

マモルたちが今後の行動を巡って激しく頭を悩ませている、まさにその頃。

極寒の雪原を爆走するファ〇マの巨大移動要塞コンビニの一室では、冷徹な女ボスが周囲の大男たちに向かって矢継ぎ早に指示を飛ばしていた。


「……先ほどサカモトを追ってこの部屋から飛び出していった、あのドローン。どこかで見覚えがあるわ。まだそれほど遠くへは行っていないはず。すぐに追跡用の戦闘ドローン部隊を出撃させてください」


女ボスの容赦のない指示に、スーツ姿の大男たちは無言で一斉に敬礼し、次々と部屋を後にしていった。


部屋に一人残された女ボスは、装甲壁の隙間から見える荒れ狂う外の雪原の景色をじっと見つめながら、苛立ちを隠せずにガリリと己の爪を噛んだ。

「あのドローンの高性能なカメラに、私の姿がハッキリと映ってしまったかもしれない……。ロー〇ソンの奴らに、こちらの情報を渡すわけにはいかないわ。絶対に逃がすわけにはいかない……!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方、こちらはロー〇ソン一号店のバックヤード。

ストコンの前では、命からがら救出したセブン店長・サカモトの今後の処遇を巡って、怒声と舌打ちが激しく飛び交っていた。


「あんた!! この激しい吹雪の雪原の中に、気絶したサカモトさんをあのまま放置して帰るつもり!?」

デスクの上のモカが、大きな目を吊り上げて俺のことを激しく睨みつけながら言った。


「知るかよ! そもそも本部の帰還命令を無視して、あの要塞コンビニから命がけで助け出してやったんだぞ。これ以上の身の安全については、セ〇ン本部の方で何とかしろよ」


俺の隣に座るルカ君も、コントローラーを握ったまま深く頷く。

「僕もマモル店長の意見に賛成です。そもそもセ〇ンとロー〇ソンは競合店ライバルなんですから、これ以上こちらのドローンの電力を使ってまで無償で助けてもらうのは、いくらなんでも虫のいい話だと思いますよ」


ルカ君の至極真っ当なド正論を突きつけられ、モカはぐぬぬと口ごもる。

「でも……っ、でも、このまま極寒の雪原に放っておいたら……サカモトさん……凍りついて死んじゃうよぉ……」


「だーーーかーーーらーーー!! お前が今すぐそのセ〇ンの本部に緊急の連絡を入れて、助けに来てもらえば一発で解決する話だろ!!」

俺はほとほと呆れ果てたようにそう言うと、パイプ椅子の背もたれに深く体重を預けて座り込んだ。


「だって……っ、だってぇ……」

モカが大きな瞳に涙をいっぱいに溜めて、消え入りそうな声で何かを言おうとしている。


「なんでさっきから、そこまで頑なに自分の本部に連絡をしようとしないんですか?」

ルカ君が不思議そうに、デスクの上のモカに問いかける。


「だって……!! だってぇええ……、私、セブン本部の『電話番号』なんか知らないんだもん!!!」


ドカァアアアンッッッ!!!


あまりにも想定外すぎる衝撃の告白に、俺とルカ君は座っていたパイプ椅子から、コントローラーを持ったまま勢いよく後ろへと転げ落ちた。


「なんだよそれ!!! お前は本当に救いようのない馬鹿だな!! 本部の番号すら知らないで、よく今までサカモトの側近マスコットなんてやってこれたな!!」


俺が床から起き上がりながら呆れ返ってそう言うと、モカの目にはいよいよ大粒の涙がみるみるうちに溜まっていき、やがてそれは堰を切ったように一気にフロアへと流れ出した。


「え〜ん……!! え〜ん……うわぁあああん!!! だってぇ……私の家には電話なんて機械なんか無いんだもん!! かけ方なんか全然知らないんだもん!! サカモトさんにだって一度も本部の番号なんか教えてもらったことないんだもんよぉおおおーーー!!!」


モカはデスクの上で子供のようにジタバタと暴れながら、延々と大声で泣き続け、バックヤードにその不快な泣き声が響き渡る。


ルカ君がほとほと困り果てたようにポリポリと自分の頭をかきながら、俺の方へと助けを求めるような視線を送ってきた。

俺はそんなモカの様子を、氷のように冷めきった瞳で見下ろしながら、ルカ君たちに向かってキッパリと言い放った。


「おい、みんな絶対に騙されるなよ!! こいつのこの涙は、100%全部演技の嘘泣きだ!! 俺はこいつらの汚い嘘にこれまで何度も何度も騙されて、その度に酷い目に遭わされてきたんだからな!!」


だが、俺がどれだけ正論を叫ぼうとも、バックヤードの狭い室内で延々と涙を流して泣きじゃくるモカの姿に、周囲の空気は徐々に流され始めていく。

先ほどまでこの場を完璧に支配していたはずの俺の店長としての『支持率』は急速に右肩下がりで下落し、今やバックヤード内の同情票は完全にモカの方へと傾きつつあった。


「マモル店長……いくらなんでも、これ以上泣かせるのは……」

ルカ君が良心の呵責に耐えかねたように、俺の袖を引く。


「マモル……アラクネ、女の子をいじめる店長、だいきらい……」

俺の膝から下りて椅子に座っていたアラクネまでもが、ジロッと俺を蔑むような目で睨みつけてくる。


「おいおいちょっと待てよお前ら!! 何度騙されたら気が済むんだ!! あの時だって、リゼッタが攻めてきた時だってこいつは──!!」

完全に焦った俺は、みんなの顔を交互に見つめながら、モカがこれまでに一号店で働いてきた数々の悪行や舌打ちの数々を必死に思い出させようと、魂の演説をぶち上げた。


俺のこれまでの被害届のような必死の演説が功を奏したのか、バックヤード内の俺の支持率は、モカの嘘泣きによる同情票と、じわじわと五分五分のところまで拮抗し始めた。

(……よし! あともう一押しだ! あともう一発、こいつの決定的な悪事を暴露してとどめを刺してやる……!)


俺がまさに勝利を確信し、とどめの一撃をお見舞いしようと言葉を発しようとした、その瞬間だった。


画面の数値をチェックしていたルカ君が、弾かれたように叫び声を上げた。


「マモル店長っ!!! 敵の要塞コンビニのハッチから、複数の戦闘用ドローン部隊が、猛スピードでこちらの方角に向かって急接近してきています!!」


「なにっ!?」

俺は自分の政治闘争を放り出し、慌ててストコンの画面を確認する。

たしかに、モニターのレーダー画面には、数十機にも及ぶファ〇マの真っ赤な敵ドローンの光点が、サカモトの気絶している座標目掛けて一直線に蜂の群れのように向かってくるのが確認できた。


「クソッ!!!」

俺はデスクを思いっきり叩き、激しく悔しがった。

敵の容赦ない追撃ドローンがすぐそこまで迫っている。気絶したサカモトをこのまま吹雪の雪原に一人残していけば、今度こそ確実にファ〇マの手にかかって消されてしまうだろう。


「仕方ない……! 作戦変更だ! サカモトを、一回うちの店まで運ぶぞ!! ルカ君、頼む!!」


「はいっ!!」


ルカ君はすぐさまコントローラーを操作し、雪原に待機させていたドローンの強固なアームを動かして、椅子ごとグルグル巻きになったまま気絶しているサカモトの身体をガシッと力強くつまみ上げ、俺たちのロー〇ソン一号店がある方角へと向かって一気に飛び立った。


──その、ドローンを発進させた、まさにその一瞬だった。


俺は、確かにこの目でハッキリと目撃してしまった。

激しい警報の光が点滅するストコンの黒いメインモニターの画面に、ほんの僅かに、鏡のように反射して映り込んでいた──、

さっきまで大粒の涙を流して大号泣していたはずのモカの、最高に邪悪で、最高に下衆な【薄ら笑い】の表情を……!!

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