第101話:吹雪の中の要塞コンビニと、ファ〇マの科学力
バックヤードに戻った俺たちはストコンの前に座り画面を凝視する。
ドローンが映す映像は代り映えのしない雪原の風景だった。
「ふ~アブねぇ・・・。」俺は思わず声を漏らす。
だが、何事もなくてよかった気持ちと、何もなかったらどうしようという不安が交互に押し寄せる。
俺の張り詰めた緊張が画面越しに伝わったのか、ルカ君も余計なことは喋らず、黙ってストコンのモニターを見つめている。
その時、画面をじっと見ていたルカ君が、突然ハッとしたように声を上げた。
「マモル店長、見てください!」
「ん……!?」
俺はストコンの画面にギリギリまで顔を近付け、見入るように凝視した。
どこまでも白く代り映えのしなかった雪原のはるか先、激しい吹雪の向こう側に、周囲の空間を圧倒するような超巨大なシルエットが薄ぼんやりと浮かび上がってきたのだ。
「ルカ君、すぐに低空飛行に切り替えてくれ。目的地にたどり着く前に、敵のレーダーか何かに見つかったら面倒だ」
俺はすぐさまルカ君に的確な指示を出す。
「了解です!」
ルカ君はキーボードを叩いてドローンの高度を一気に下げさせ、雪原の地表スレスレを、慎重に、静かに進めさせていく。
徐々に、その敵の拠点のディテールが画面越しに近づいてくる。そのあまりのスケール感に、俺は思わず度肝を抜かれて声を上げた。
「で……デカいな……っ。」
そこに現れたのは、俺たちの知る普通の『コンビニ』という概念を遥かに超越した、まるで巨大な城か秘密基地のような移動式の要塞だった。
「なんだあれは……。──あっ!」
俺は要塞の最も目立つ前方に掲げられた、見覚えのある巨大な看板を見つけて、衝撃のあまり叫んでいた。
「FA〇MA(ファ〇マ)……!? なんだあれは……本当に、あれがコンビニなのか……!?」
「ちょっと、新機能で内部のエネルギー構造を調べてみます!」
ルカ君は本部から届いたばかりの最新型ドローンの新機能をさっそく使い、敵要塞の魔導通信や内部情報を外側からスキャンして調べ始める。
ストコンの画面に、ハッキングされた様々な内部データや見慣れない文字列が次々と映し出されていく。
ルカ君はそれらの文字を目で追いながら、俺にわかりやすくその驚愕の実態を伝えてくれる。
「マモル店長! あのコンビニ……なんと、店内で『衣料の販売』も大々的にやってるみたいですね! ……あっ! それに信じられないことに、試着室まで完備されてますよ……!? あれはなんだ……? ──カフェだ! 専用のカフェスペースまで中にあります!!」
「なんてことだ……。俺は正直、ファ〇マを完全に侮っていた……。まさか、緑と白のストライプの奴らに、これほどまでの凄まじい科学力(品揃え)があるなんて……。」
アパレルからカフェまで網羅した敵の圧倒的なマルチインフラの凄まじさに、俺はショックのあまりよろけそうになるのを必死にこらえ、デスクを叩いてルカ君に次の指示を出す。
「ルカ君。相手がどんなに巨大で、頑強な要塞コンビニであろうとも、ベースが『コンビニ』である以上は絶対に、一般のお客さんや搬入業者が出入りするための【入口】がどこかにあるはずだ。ドローンのカメラで、その場所を徹底的に調べてくれ」
「了解です!」
ルカ君はそう言うと、要塞の周囲を目立たないように静かに飛行させながら、侵入経路となる入り口の探索を始めた。
俺はモニターに映し出される要塞の冷たい外壁を見つめながら、敵の持っている未知の科学力に、底知れない恐怖を抱いていた。
本当に……。
俺たちの一号店と、このドローンたった一機だけで、あんなバケモノみたいな要塞からサカモトを無事に救い出すことなんて、できるのだろうか……。




