表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獅子の英雄―語られなかった真実と、小さな騎士の物語―  作者: ぽぷら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/18

第六話 白衣の影

 陽が傾いて、空の色がゆっくりと変わっていく。橙から紺へ、そして灰色へ。街の灯りが一つ、また一つと目立ち始める中、俺は一人で歩いていた。手には持ち手付きの大きめの箱。人の流れとは逆方向に進みながら、少しだけ重たい足を運ぶ。

 向かう先は――白と緑の研究所だ。


「先輩、見張りお疲れ様です」


「おお、お疲れ」


 栽培所の近くで見張りをしている先輩騎士に声をかけると、すぐに俺の手元に目がいった。


「備品の補充か。誰か怪我でもしたのか?」


「護送中の罪人が暴れまして。自分で頭打ちつけたりして怪我を」


「うわあ……」


 顔をしかめる先輩。


「お前らに怪我がないならいいけどな。荷物も取り上げてるのにそこまで暴れるか」


「他の罪人に手は出してませんし、罪状が増えることはなさそうですけど」


「数年我慢すりゃ出られるだろうになあ。……脅したりしたか?」


「まさか。『おとなしくしろ』くらいは言いますけど」


「それは全員言うやつだな」


 軽く笑い合ったところで、視界の奥に人影が見えた。

 ゲージを抱えた二人組。ゆっくりこちらに近づいてくる。布のかかったゲージの中には、何かが横たわっていた。


「お疲れ様です」


「お疲れ様です。住宅街の近くに野生動物が出たって苦情がありまして」


「夜遅くに大変ですね」


 先輩が記録を取りながら誘導しようとすると、二人は首を横に振った。


「いえ、自分たちは白の研究所の者です」


「おや? てっきり緑のほうかと」


「外作業のときは同じ作業着なんですよ」


 慣れた様子で身分証を提示する。

 問題なさそうだと判断して、俺は先に中へ入ることにした。


******


 夜間受付で用件を伝えると、あっさり通された。

 中はまだ明るい。医療棟、薬品棟、研究棟――どこも人が動いている気配がある。薬品棟から来た研究員に箱を渡すと、代わりに書類を渡された。備品の請求書だ。

 名前と日付、使用理由を記入していく。ペンを走らせながら、ふと顔を上げると――研究棟に人影が見えた。

 でも、前に見たゲージや作業着はない。


(さっきの連中か)


 そう思って、特に気にせず書き終える。

 確認とサインを済ませて、俺は外へ出た。


******


 備品を持って、人気の少ない道を急ぐ。

 門の近くまで来たとき――

 視界の端に、光がちらついた。外だ。いくつもの灯りが、地面や木を照らしている。


(……誰だ?)


 警戒しながら近づく。息を殺して、距離を詰めて――


「……そこで何をしている」


 声をかけた。

 振り向いたのは、三人の男。作業着にスコップやシャベル。足元には、何かを詰めた袋がいくつもある。


「しょ、植物の調査です……」


「我々は緑の研究所の者で……土と植物を採取していて……」


 動揺はしているが、言っていることは筋が通っている。

 身分証も確認する。問題はない。

 ……けど。


(ここって……)


 思い出す。ここは、あの獣と戦った場所だ。

 緑の研究所。例の噂。この場所。

 嫌な繋がり方をする。


「これは何のための調査だ?」


 少し強めに聞く。


「植物の生態系の変化を……」


「この場所を選んだ理由は?」


「それは……」


 言葉が詰まる。さらに踏み込む。


「嘘じゃないのは分かる。でも、それが全部じゃないだろ」


 視線が、一人に集まった。金髪を後ろで束ねた男。そいつが、静かに俺を見て――口を開いた。


「ええ。嘘は言っていません」


 一拍置いて、続ける。


「ですが補足するなら……例の獣の情報を得るための調査です」


******


 話は単純だった。

 獣が現れてすぐ、緑の研究所は調査を申し出た。でも、危険を理由に却下された。

 それでも――


「放っておけなかったんです」


 青い瞳に力を込めて、男が言う。


「被害を受けた人もそうですが……何より、あの動物たちを」


 声が少し強くなる。


「原因が分かれば、救えるかもしれない。だから――」


 まっすぐすぎる言葉だった。

 ……でも。


「気持ちは分かります」


 俺は正直に言う。


「でも、噂もある。あなたたちが何かしてるんじゃないかって」


 沈黙。


「今は、無条件で信用はできません」


 そう言うと――


「それで構いません」


 あっさり返された。


「……え?」


「我々は、評価のために動いているわけではありません」


 静かな声だった。


「優先すべきは、現象の解明。それだけです」


 きっぱりと言い切る。

 ……迷いがない。正直、やりづらい。嘘をついてるようには見えないし、かといって証拠もない。考え込んでいると、男が少しだけ表情を緩めた。


「もし興味があるなら、研究所に来てください」


「……いいんですか?」


「ええ」


 そして一枚の紙を差し出してくる。


「この名前を出してください」


 受け取って、目を落とす。

 そこには――

『エアフォル・ノイギー

 緑の研究所 副院長』

 と書かれていた。




緑の研究所との接触回でした。

噂と現実、疑いと信念。

どちらが正しいのか、まだ分からない状態です。

ノードがどう向き合っていくのか、見守っていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ