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獅子の英雄―語られなかった真実と、小さな騎士の物語―  作者: ぽぷら


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第十四話 互いの正義

 城の前には、見たことがないほどの人だかりができていた。

 石を投げる者、泣き叫ぶ者、怒鳴る者――そのすべてが、明確な敵意を持って城へ向けられている。

 俺はそれを、城の上から見下ろしていた。

 ――ついに、ここまで来た。

 隣に立つレークス様が、小さく息を吐く。


「行くぞ」


 その一言で、俺の背筋が伸びた。

 俺たちは騎士を連れて、王のもとへ向かう。

 


「陛下、失礼します」


 重い扉の先。

 そこには、金の髪と金の瞳を持つ男――この国の王がいた。


「アウルム、レークス。何事だ」


 低く響く声。


 けれど、その圧にもう怯むことはなかった。

 アウルム殿下が一歩前に出る。


「王座を退いていただこうかと」


「……ふん、愚かな」


 鼻で笑う王。

 だが殿下は、まったく揺れない。


「人体実験および動物実験の指示。その結果、民を危険にさらした証拠はそろっています」


「民意も、あの通りです」


 俺が外を示すと、王は一瞬だけ視線を向け、すぐに戻した。


「よく言う。どうせお前たちが煽ったのだろう」


「陛下もよくやる手でしょうに」


 空気が、張り詰める。

 親子のはずなのに、そこに情なんてものは一切なかった。レークス様が静かに問いかける。


「なぜ、こんなことを?」


 王は、当然のように答えた。


「国のためだ」


 ――迷いのない声だった。


「罪人を使って武力を強化することの何が悪い。獣も同じだ。あれのおかげで騎士は強くなった。国を守る力が増した」


 その言葉に、思わず拳を握る。


「犠牲になった命は……どうでもいいと?」


「些事だ。大事のためには犠牲はつきものだ」


 ――やっぱり、分かり合えない。

 守りたいものが違う。だから、この人は止まらなかった。

 王が、こちらを見て笑う。


「その力で私を殺すか?」


「殺しません」


 レークス様が即答する。


「それではあなたと同じだ」


「ふん……綺麗ごとを。――お前たち、捕らえよ!」


 王の怒号が響く。

 けれど――誰も動かなかった。


「何をしている! 命令だ!」


 そのときだった。


「王よ」


 ゆっくりと歩み出たのは、一人の老人。

 ――モレースさん。


「なんだ、お前は」


「騎士を引退した、ただの老人にございます」


 そう言いながらも、その背は真っすぐだった。


「我らは一度、間違えた。ならば、それを正すのも我らの役目です」


 静かな声が、場を支配する。


「“私の力は守るために存在する”――そう教えられてきた」


 騎士たちが、顔を上げる。


「最後に、騎士として命じます」


 一瞬の静寂。

 そして――


「王を拘束しなさい」


 誰かが動いた。

 それに続くように、全員が動く。

 王は抵抗する間もなく、拘束された。

 


 すべてが終わったあと、俺たちはテラスへ出た。

 下では、民衆がこちらを見上げている。

 アウルム殿下が、一歩前に出た。


「正義は成された!」


 その声が、広場に響く。


「本日より、このアウルムが王となる! もう獣に怯える必要はない!」


 一瞬の静寂。

 そして――


「アウルム陛下、万歳!」


 誰かの声をきっかけに、歓声が広がる。

 最初は戸惑っていた人々も、次第に声を上げ始めた。

 その光景を見ながら、俺は静かに息を吐く。


 ――終わったんだ。

 隣で、レークス様が小さく息を吐いたのが分かった。

 俺たちは何も言わず、ただその景色を見ていた。





読んでいただきありがとうございます。

もう少しだけ続きます。

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