表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生皇女はフライパンで生き延びる  作者: 渡里あずま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/43

辺境伯夫人、ではないのですね

 ドレスは決まったが、帝都には即日到着する訳ではないので直接、着て出発はしない。

 最北である辺境伯領は勿論、普段、領地にいる者達も移動には時間がかかり──だから、貴族は帝都にも屋敷を持っている。それはウィラードも例外ではなく、先に使用人達を手配しておき、宴の数日前に到着したクララベルを完璧に磨き上げた。

 既婚を示す、結い上げた金髪。その髪と露になった首には、銀の髪飾りとチョーカーを。そして、女性陣の意見により決まった若草色のドレスを纏った。

 そんな彼女のエスコートの為、手を差し出したウィラードは前髪を上げ、黒い軍服を模した礼服を着ている。思わず見惚れたクララベルに、ふ、と笑ってウィラードは言った。


「よく似合っている」

「ありがとう」


 最初は敬語だったし、褒め慣れていなくて恐縮するばかりだったが、今のクララベルは照れこそするが、ウィラードの賛辞を素直に受け入れることが出来る。そんなクララベルに、背後から声がかかった。


「流石、妖精! いや、春の女神のようでもあるな!」

「シグネ……ありがとう。あなたも素敵よ」

「こちらの台詞だ」


 今の彼女はクララベルの近衛騎士として、ウィラードよりシンプルだが同じく軍服を模した黒い礼服を着ている。

 その凛々しい姿を褒めていると、不意にウィラードから取られた手を引かれた。驚いてウィラードを見ると、唇を拗ねたようにへの字にしていた。


「シグネの誉め言葉が達者なのは認めるが、そんなに嬉しそうにしないでくれ」

「……ウィラードが、一番よ?」

「男では?」

「男女問わずです」


 真っ直ぐに見上げ、取られた手をきゅっと握ると、機嫌を直してくれて──可愛いと思いつつ、クララベルは微笑んだ。

 それから、彼らは笑顔のまま馬車で皇宮へと向かい──武器の持ち込みがないかボディチェックを受けた後、宴の会場に入る時の紹介に、おや、と思う。


「ラス辺境伯、ならびに皇女クララベル殿下!」

「……辺境伯夫人、ではないのですね」

「おそらく、エリザベス殿下との話を進めやすくする為だろうな」

「ずる賢い」


 小声でクララベルとウィラード、そして二人の背後に付き従ったシグネは言い合って会場内に入った。

 ウィラードの美男ぶりと、公式の場に出たことのないクララベルの可憐さ。更に、魔物めいた色合いだが、シグネの凛々しい麗人ぶりに一同の目が奪われる。

 入場したクララベル達は、あいさつの為にそのまま皇帝達の座る玉座へと向かった。今日は皇帝夫妻の他、皇太子であるアンドレアと本日の主役であるエリザベスもいる。


(アンドレアの視線は気持ち悪いし、エリザベスはウィラードに見惚れて……大っぴらにじゃないけど、扇の向こうからこっちを睨んでる)


 内心、うんざりしているとウィラードの手に力がこもるのが解った。その力に励まされながら、クララベルはウィラードと共に皇族の前に立ち、ここで手を離してそれぞれウィラードは胸に手を当て、クララベルはドレスの裾を摘まんで頭を下げた。

 そんな彼女達に、皇帝ルチアーノが口を開く。


「ラス辺境伯、よく来てくれた……クララベルは、長旅で大変だっただろう」


 言葉だけだと労いだが、適当な理由をつけてクララベルを引き離そうとしていると感じた。

 けれどこの流れを予想していたウィラードは、上の存在であるルチアーノから声をかけられたのを利用して、顔を上げて返事だけではなく言いたいことを口にした。


「本日はお伝えしたいことがあり、妻と共に馳せ参じました……ラス辺境伯家はこの場にて貴族籍を返上し、ここに独立することを宣言致します」


 そう、オルランド帝国からの独立宣言を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ