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転生皇女はフライパンで生き延びる  作者: 渡里あずま


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ないものねだりは良くないわね

 領主城には流石に料理人達がいるので、クララベルは食事全てを作る訳ではない。

 しかし前世知識の、日本人知識と好みの料理は料理長を始めとする料理人達の胃袋を掴んだ。そんな訳で、食事の一品。または食後や、お茶の時間のデザートは頼めばすぐに作らせてくれる。まあ、少しだが出来た料理のお裾分けをするせいもあるのだろう。

 さて、そんな訳で厨房を使う許可が取れたのでウィラードとグローリアだけではなく、シグネ達三人にも料理を振舞うことになった。長身で大柄なので、たくさん食べそうな感じがする。だから今回は、フライパンを二つ使わせて貰って作った。


(ミルフィーユ鍋……野菜とお肉を、交互に重ねる鍋……白菜のイメージがあるけど、この世界では見かけないものね)


 代わりにキャベツはあるので豚の薄切り肉と重ね、コンソメ味で作る。肉を変えれば巻いてないが、ロールキャベツも作れると思うが──前世からの好みとして、ロールキャベツならトマト煮込みにして食べたい。もっとも、この異世界でトマトを見たことがないのだが。


(皇宮には、美味しいものや有名なものが集まってきてたから……見たことがないなら、ないのかな)


 もしかしたら前世のように、観賞用とされていて食べられると思われていないかもしれない。そうだとしたら、ぜひ美味しくいただいて何なら布教するので生きている間に出会いたい。


(まあ、ないものねだりは良くないわね。コンソメ味も美味しいし)


 そう結論付けると、クララベルは出来上がったミルフィーユ鍋を深めの器によそった。そして、いつものように一部を料理長達に渡し、足りなかったらおかわりが出来るように残りをフライパンごと持っていった。


「これは美味いな」

「本当に。ありがとうございます、お義姉さま」

「妖精の手料理……うまい!」

「……ありがたい」

「妖精は、本当にすごいなっ……あの、おかわりしてもいいだろうか?」

「良かった……ええ、勿論」


 好評だったのを嬉しく思い、予想通りおかわりを希望するシグネに笑っておかわりをよそう。それに便乗し、他のゴーダ族の者達やウィラードもおかわりを求めたので、慌てて交代しようとする使用人達を制して、クララベルは器によそった。

 そんなクララベルの耳に、シグネとゴーダ族の者達との何気ない呟きが届く。


「これは、トメト煮込みにしてもうまいだろうな」

「確かに……今度、里から持ってきますよ。族長」

「……トメト?」

「ああ、赤くて生で食べても、煮込んでも美味しい野菜で……我らゴーダ族が『取引』して、今は里で育てている異国の野菜です」

「「「えっ?」」」


 トメトとは、もしかしてトマトのことだろうか──と、まず思ってしまったクララベルだったが。

 ゴーダ族の男が続けた言葉が予想外で、クララベルだけではなくウィラードとグローリアも驚いて声を上げた。

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