そうするしか、本当に道はないのかしら?
皇女、つまりはクララベルの異母姉であるエリザベスには、実は婚約者がいない。皇帝の娘であり、王太子にはアンドレアがいる。だからと言うのも何だが彼女は政略結婚をすることはないし、結婚相手を選び放題だったりする。
(今まで婚約者がいないのは、高位貴族のご令息達を選り好みしているからなのよね……彼女、すっごい面食いだし)
エリザベスが気に入り、周りに侍らせていた面々を思い出してクララベルはそう結論付けた。
実は姉、とは言っているがクララベルとエリザベスは一歳しか違わない。皇帝は、皇妃の妊娠中にクララベルの母に手を出したからだ。とは言え、この異世界の女性の結婚適齢期は成人となる十六歳から十八歳までなのでそろそろ、ということで今回の宴が開かれることになったのである。
(そして、そんなエリザベスだからこそ……)
クララベルを亡くし、独身であるウィラードに目をつける。そして宴でアプローチをするが、すげなく断られたりする。ちなみにその時、シグネが護衛として同行していたので、好きなキャラクターが並んでいたのを喜んでいた。
(だけど断ったのに、皇帝が勝手にウィラードとエリザベスの、更にアンドレアとグローリアの婚姻を発表するのよね)
ルチアーノは、ウィラードを服従させることを諦めていなかった。だからウィラードだけではなく、人質としてグローリアも絡め取ろうとした。
そのことでウィラードはこれ以上、皇帝に縛り付けられない為に反旗を翻し、己が皇帝となることを決めるのだが。
(そうするしか、本当に道はないのかしら?)
ふと、そこに引っかかったのはクララベルにとって、ウィラードもこの辺境での生活も物語ではなく、現実だからだ。もう皇帝に振り回されたくないのは同感だが、そもそも物語のように帝都に行かなくてはいけないのだろうか?
(グローリアを行かせなければいい? いや、でもウィラードが行ったら……エリザベスと……)
今は年が明けたばかりで、雪があり出られない。しかし、エリザベスの生誕を祝うのはおよそ三か月後だ。雪も溶けて、帝都への移動は全く問題ない。
……思考がまとまらない。どうしよう、と目線を落としたクララベルに、ウィラードが声をかけてきた。
「クララベル……久しぶりに、君の料理が食べたい」
「……えっ?」
「駄目か?」
「えっ? 妖精は、料理も出来るのか?」
「ええ。お義姉さまの料理は絶品です」
その申し出に戸惑うがシグネが興味を示し、食べたことのあるグローリアが無表情ながらもキッパリと言う。
戸惑いながらも、確かに色々あって料理を作っていないのはその通りだったので、クララベルはウィラードの言葉に頷いた。
「……駄目じゃないです。腕によりをかけて、作りますね」




